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2015年3月31日 (火)

高齢者の行き場が年々縮小中?

先日日経メディカルに医師のヘッドハンティングをしている企業の代表が昨秋から病院に求められる医師像が変化してきたと言う記事を掲載していて、それまでは急性期の医療機関からの専門医志向の強い求人が主体であったものが、回復期や慢性期におけるジェネラリストを求める求人がほとんどになってきたと書いています。
その背景には7対1看護や患者重症度など急性期の認定基準が厳しくなり、高額の医療費を消費する急性期のベッドを国が削減する方向性が明確になってきたことが挙げられると言いますが、それでは慢性期に患者を移行させるのかと言えば必ずしもそうではなく、先日はこんな記事が出ていました。

高齢者が長期入院「療養病床」患者を削減の方針(2015年3月23日読売新聞)

 団塊世代が全員75歳以上になる2025年に向け、在宅重視の医療体制づくりを進める厚生労働省は、寝たきりの高齢者らが長期に療養している「療養病床」の入院患者を減らす方針を固めた。
 入院患者の割合が全国最多の県を全国標準レベルに減らすなど、地域ごとに具体的な削減目標を設定する。

 厚労省のまとめでは、人口10万人当たりの療養病床の入院患者数(11年)が最も多いのは、高知県の614人で、山口、熊本、鹿児島県と続き、西日本で多い傾向がある。最も少ないのは長野県の122人で、高知県はその約5倍になる。
 入院患者の多い県は、療養病床の数自体が多い。病院が経営上の理由から、既存のベッドを入院患者で埋めようとしているとの指摘もある。多い県は1人当たりの医療費も高額化する傾向があり、厚労省は是正に乗り出すことを決めた。

 具体的には、2025年をめどとし、全国最多の高知県は、全国中央値に当たる鳥取県(人口10万人当たり213人)程度まで6割以上減らすことを目標とする。高知以外の都道府県も、全国最少の長野県との差を一定の割合で縮めるよう具体的な削減目標を割り当てられる。

名ばかりの急性期病床で半ば社会的な入院を続けてきた患者が慢性期や在宅へ移行させられると言うのであれば療養病床などは一部その受け皿となって需要が拡大しそうなものですけれども、こちらも長期間安定的に入院している患者は病院ではなく施設での介護でも十分だと言う判断なんでしょうか、ともかくも入院患者をトータルで減らしていこうと言う戦略が見えていますよね。
もちろん記事にもあるように病院側が経営上の判断から敢えて患者を入院させていると言う場合もないわけではなく、それはベッドを空ければ経営が成り立たないような診療報酬体系になっている以上は当然の経営的判断としてベッドを埋めにかかるはずだと思いますけれども、仮に診療報酬体系を大きく変えベッドを空けても経営が成り立つようになれば、過剰な医療リソースが地域内で出てくると言うことにもなりかねません。
まずは急性的にトータルでの病床数を削減し、病院側が自主的な判断で本当に入院が必要な患者だけを入院させるようにすると言えば一見妥当な話に聞こえますが、当面はいきなり在宅介護が急増するはずもない以上は医療から介護へと言う病床転換が各地で進んでいくことになるのでしょうか。
とかくこうした医療費削減政策が単純な診療報酬マイナス改定などと言うレベルではなく、システムとしての医療供給体制にまで踏み込んで行われるようになってきたのは国の本気度を示すものではありますが、これまで病院側の自主的判断によって行われてきた医療供給に国が責任を持つようになると言うことでもあって、病床削減の結果医療難民でも発生するようなら世間も黙ってはいないかも知れませんし、すでに気になる話も出ています。

10年後の東京…高齢者の4人に1人要介護(2015年3月28日産経新聞)

 ■団塊世代、75歳以上に/保険費の負担増加

 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる平成37年には、東京都内の高齢者の4人に1人に介護が必要となり保険費負担が増加する。そんな推計が27日、都が公表した「都高齢者保健福祉計画」で示された。支えるためには現役世代(15~64歳)の35人に1人が介護職に従事しなければならない。だが、全国平均に比べれば、高齢化率はまだ低い水準という。

 同計画は、都が平成27年度から3年間の福祉政策の指標とするために策定。今回は団塊の世代が75歳を迎える10年後の「2025年問題」に焦点を当てた。これによると、後期高齢者は5年後の32年に171万人となり、65~74歳の前期高齢者(153万人)を超過。37年には約198万人に及び、都内の人口の15%を占めるようになる。

 さらに要介護認定者は27年の約57万人から20万人増の約77万人に。これは65歳以上の高齢者の24・5%にあたる数字という。

 また、これに伴い、各種サービスにかかる介護保険給付費も27年度の8363億円から1兆2107億円に増加。65歳以上の都民が支払う介護保険料の平均月額は現在の4992円から、10年後には8436円に上昇する見通しという。

 要介護者の増加に対応するため、都は37年までに特別養護老人ホーム1万8千人分▽介護老人保健施設9700人分▽認知症高齢者グループホーム1万600人分-を新たに整備し、10年後には17万4374人に上るとされる施設・居住系サービス利用者を受け入れる計画を示した。

 一方、それを支えるためには32年度の介護人材が、同年度の生産年齢人口(15~64歳)854万人の約3%にあたる計24万7786人必要といい、学生や主婦も含めた現役世代の35人に1人がヘルパーなどの介護職に就くことが求められるという。だが、これでも37年の都内の高齢化率は25・2%で、全国平均の30・3%よりは低い。都は「介護職員の昇級を促すキャリアパス制度などを活用し、これまでの増加率に加え、さらに年間3千人の介護従事者を確保すればいい。実現可能な数字だ」としている。

まあしかし、現状で人手不足で集まらない集まらないと大騒ぎしている介護従事者を「さらに年間三千人の介護従事者を確保すればいい」とおっしゃると言うのはずいぶんとお気楽と言いますか気宇壮大と言いますか、そう簡単に確保出来るのであれば何故今までやらなかったのかと突っ込まれかねない話ではありますよね。
こうした点に関しては国の方がもう少しシビアに考えているようで、二年ほど前には厚労省が都市部で増加する高齢者をどう地方に押しつけるかの検討を始めたと言うニュースがありましたけれども、この点で記事にある「生や主婦も含めた現役世代の35人に1人がヘルパーなどの介護職に就くことが求められる」と言う予測は実はかなり厳しいものがあります。
社会生活を引退した人が趣味や人生観に基づいて行うのであればともかく、職業として十分食っていけ家族も養えると言う見返りがないために人材が集まらないのは介護も農業も同じことであり、その点で結婚し家庭を持てば転職せざるを得ないことが確実であるのならば、若い世代にとってわざわざキャリアに傷がつくことが確実な道を選ぶと言うのは大変にハードルが高い選択でしょう。
この点で結局対価としてのお金をきちんと支払う、しかもワープア化した現役世代ではなく介護の受益者である高齢者に相応の負担を求めざるを得ないのは誰が考えても規定の路線だと思うのですが、未だに政治の方面からは高齢者の負担増加と言うことに関してあまり積極的な声が聞こえてこないようにも思えるのは気のせいでしょうか?

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コメント

無理です
以上

投稿: | 2015年3月31日 (火) 07時43分

>急性期の医療機関からの専門医志向の強い求人が主体であったものが、回復期や慢性期におけるジェネラリストを求める求人がほとんどになってきたと書いています。
科目不問で安い求人ならたくさんみますが、総合診療できる方は年収2000万超出します、なんて求人みたことありません。ようするに、安い給料の介護職員が足りないと騒いでいるのと同じ。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年3月31日 (火) 08時53分

求めているのが本物のジェネラリストなのか単なる非専門医なのか。
専門医資格が厳しくなったら市中病院じゃいずれみんな非専門医ですし。
専門医維持にこだわりない人求むって可能性もあるのかも?

投稿: ぽん太 | 2015年3月31日 (火) 09時10分

逆に急性期は業者に頼らなくなったと言うことであれば、医師の志向によって病院間の分化が進んだ結果なのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月31日 (火) 10時51分

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