« 近い将来に横たわる大きな社会的リスク | トップページ | 今日のぐり:「丸源ラーメン 福山神辺店」 »

2015年2月 7日 (土)

安かろう悪かろうではない商売のやり方

先日ちょっと面白いと思ったのがこちらの記事なんですが、概略から説明するとブラジルに世界遺産にも指定されたフェルナンド・デ・ノローニャ島と言う非常に風光明媚な島があるのですが、この島には入島数制限があって大変面倒くさい手続きもいる上に費用も多額にかかると言うのに、観光地として非常に評価が高いと言います。
普通に考えて一見さんお断りどころか、数多のハードルを乗り越え大変な代償も支払った上でなければ入れないとなれば「何たる殿様商売だ!」と批判も集まりかねないと思うのですが、何故この島がそれほど高評価を得ているのかと言う考察の部分がなかなか興味深いのですね。

【ビーチ】遠い!高い!面倒!…でも超人気な南の小島(215年1月29日まぐまぐ!ニュース)より抜粋

(略)
多くの旅行者や観光業関係者が誤解していると僕はよく思うのですが、レストランも観光地も、そこに来る「人」がもっとも価値であり、ダメなゲストばかりが来ている場所は、どんなに一時的に人気が上がっても、中長期的に見れば良い観光地やレストランになることはありません。すなわち、「良いゲスト」を呼び込むことが「良い観光地」や「良いレストラン」を作る最大の秘訣です。

この「良い」意味は色々あると思いますが、少なくても「治安」の意味において、観光地では大きな意味を持ちます。このフェルナンド・デ・ノローニャ島では、表のドアに鍵をかける人は、ほとんどいません。また、島の平均的乗り物であるドアがないオープン・バギーに、カバンをおいたまま出かける人は少なくありません。僕が知る限り「東京より治安がいいブラジル」は、ここだけです。

前述しましたように「いくら海がキレイだ、といっても、こんな面倒臭くて高価な島に誰が行くか」と考えるような人はここにはいませんので、それなりにお金があって、それなりに旅行上手な人たちだけが、結果的にこの島に訪れることになります。ですので、あらゆる意味でトラブルが滅多になく、その人たちが「良い環境」を作り上げ、その「良い環境」が「世界でもっとも美しい島第1位」となって世界に発信されているのです。

実は、この島の大きなターニングポイントは、数年前にありました。5年ほど前まで、このフェルナンド・デ・ノローニャ島は、いまほど大きな評価を得ていませんでしたが、国立公園のマネージメントを役所が行うのではなく、数年前に私企業に任せたことが大きなターニングポイントとなりました。それまで、ボロボロで歩くのもままならなかった木の遊歩道は、キレイな再利用可能なプラスティック製に置き換わり、主だったビーチにトイレなどが常設され、マーケティング活動も刷新されました。

あわせて、マネージメントを手がける国立公園の入園料は年々高額になり、当初は地元の人たちからも反発を呼んでいましたが、それによって良い顧客が集まり、治安が著しく良くなったこともあって、いまではその「戦略」に地元の人たちも納得しています。

ダサい役所や古くからの地元の人たちではなく、その地とは関係無いプロフェッショナルに任せたことが、この島のターニングポイントとなって、「東京より治安がいいブラジル」を作り、「世界でもっとも美しい島第1位」に押し上げることに成功したのです。

その成功理由は明白です。ダメな観光地がいつまでたっても飛躍しないのは、その地にいる役所の人々や古くからの権力者が、求める「良いゲスト」と正反対の人たちだからなのです。それをフェルナンド・デ・ノローニャ島は、教えています。

まあ「ダメな観光地がいつまでたっても飛躍しないのは、その地にいる役所の人々や古くからの権力者が、求める「良いゲスト」と正反対の人たちだから」と言うのもなかなかキツイことを言うなとも感じるのですが、実際にこんな連中がお客さんいらっしゃいと呼びかけたところで誰も来たがらないよな…と言う方々がイベントを仕切っていると言うケースはままあって、一つの自戒として皆が心がけておくべきことなのかも知れません。
実際とにかくお客を大勢呼ぶのが大事なんだと言うことばかりに気が行ってその質には目が行かず、当初はそれなりに集客が出来ていてもすぐに飽きられ寂れていく観光地など幾らでもありますけれども、それは人が一杯で待たされるわゴミも散乱しトイレも汚いとなれば誰も二度と行きたくないと思うだろうと言う場合も多々あって、いくら量を追及すると言ってもそれなりに質もなければお客はついてきませんよね。
その意味でこの記事から読み取れる教訓として、いたずらに顧客数増加だけを追い求めることが必ずしも観光地としてよいことではなく、むしろ数を制限しても顧客の質を追及した方が長期的に高い評価も得られ、また金額的にもさして見劣りしない場合があるのだと言うことなんだと思いますが、もちろんそのベースになるのは高いお金を払ってでも利用したいと思わせるだけの魅力ある環境を提供出来るかどうかです。
先日「日本で唯一成功しているテーマパーク」だとも表される東京ディズニーランドが各種料金を大幅値上げすると言うニュースが流れ、各方面から「これじゃもう行けない!」と悲鳴が上がったと言い、「何故経営も順調なのに値上げする必要があるんだ?」と批判的な記事も出ていたのですが、もともと料金が高くなったら行かないと言う方々はぶっちゃけ園内で多くのお金を落としてくれるとも期待出来ませんよね。
それに対して大きな金額を落としてくれると期待出来る「優良顧客」の中には、こうも連日大混雑でアトラクションに何時間も待たされるのではたまったものではないと来園を敬遠している方々も少なからず含まれているかも知れずで、今回の実質的な入園規制によって長期的に見てみれば顧客満足度も向上し評価がますます高まると言う可能性もまたあるわけです。

病院で不要不急の夜間救急受診に対して一定金額を追加徴収いたしますと言う話が昨今各地の基幹病院を中心にすっかり定着し、その結果実際に不要不急の時間外来院患者が減っていると各種データで示されているようですが、これだけ救急医療の逼迫が各方面からアナウンスされているにも関わらず不要不急の受診でリソースを浪費してしまう方々と言うのは、少なくとも優良顧客だとは思えませんよね。
だからただちに切り捨ててしまえ!と言うわけではなくて、もちろん医療には応召義務もあるわけですから来た以上はみないわけにはいかないでしょうが、ともすれば顧客側の一方的需要に基づいて供給拡大ばかりが急務とされてきた医療需給バランス崩壊と言う現象に対して需要の抑制を行うことによって改善が出来る、しかも単なる量的のみならず質的にもお金をかけずにそれが果たせるとなれば悪い話ではありません。
その結果当直時間帯で不要不急のコンビニ受診患者の相手で酷使され疲れ果てた医者が、せっかく通常営業時間まで待ってくれた患者さんに不親切に当たるようなことが減るだとか、当直明けの執刀医が眠い目を気合いでこじ開けながら手術すると言ったことが減らせるなら患者にとってもメリットがあると言う話ですが、一般論としても客筋がいいと言うのは他の顧客や従業員のみならず、経営者目線でも悪い話ではないはずですよね。
日本では国民皆保険制度が出来上がって以来、ある種理想主義的な医療こそ目指すべきものだと言う考えが医療従事者の間に共有されてきた歴史的経緯がありますけれども、モンスターだクレーマーだと言うものの存在が当たり前の時代に生きる今の若い世代は、顧客は決して皆が皆同じ存在ではないし、無条件で平等に対処すべきものでもないと言うことを肌感覚で知っているようにも思えます。

|

« 近い将来に横たわる大きな社会的リスク | トップページ | 今日のぐり:「丸源ラーメン 福山神辺店」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

皆保険制度の中でどれだけ付加価値がつけられるかが医療の課題でしょうかね。
ブランド病院なら個室料金だけでもかなりもうかりそうですけど。

投稿: ぽん太 | 2015年2月 7日 (土) 09時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61090022

この記事へのトラックバック一覧です: 安かろう悪かろうではない商売のやり方:

« 近い将来に横たわる大きな社会的リスク | トップページ | 今日のぐり:「丸源ラーメン 福山神辺店」 »