« 今日のぐり:「すし遊館 新倉敷店」 | トップページ | 上小阿仁村に新たな伝説の一ページ? »

2015年2月23日 (月)

東京女子医大プロポフォール死亡事故、刑事告訴へ

東京女子医大のICUで小児にプロポフォールが大量投与されていた死亡事件で、亡くなった男児の親が医師らを刑事告訴したことが報じられていますけれども、医学的な事実関係については今後の検証に委ねるとして、報道を見ていて気になったのが今の時代らしい状況がここでも発生しているらしいと言うことです。

東京女子医大病院医療事故 父親「息子は実験で殺された...」(2015年2月19日FNNニュース)

東京女子医大病院で2歳の男の子が死亡した医療事故で、両親が警視庁に告訴状を提出した。
(略)
注射するだけの簡単な手術は、わずか7分で無事終了した。
その後、手術の影響による、のどのむくみが治るまで、ICU(集中治療室)で人工呼吸器をつけることになった。
このとき、体を動かさないよう、投与された鎮静剤がプロポフォール。
集中治療中の子どもには原則使用禁止の薬品だった。
投与された量は、異常なものだった。

病院側の説明会で、父親が「これ140mgとあるんですけど、この子に対して、マックスでいくつまで使えるんですか?」と質問すると、ICU責任者の麻酔科医は「これはですね、(男の子の体重)12kg、40mgです。通常使う量は40mgです。(マックスで使うのは?)マックスで時間あたり。(40mgのところ、140mg使ったんですか?)はい、結果的に使っておりました」と語った。
父親は「異常な量で、大人に使っていい最大量の4倍を超えている。なぜ、そこまで上げる必要があったのか」と語った。
亡くなった男の子は、大量に鎮静薬を投与された。
しかしカルテには、本来あるべき投与を指示した医師のサインはなかった

男の子に投与された鎮静剤の記録。
なぜか大量投与された日の夜に限って、医師のサインがなかった
その日の当直医は、事故後、すぐに海外留学したままで、両親は、いまだに納得のいく説明を受けていない。
いったいなぜ、子どもには原則使ってはならない薬が使われたのか。

FNNは、その疑問を解く鍵となる内部告発文書を入手した。
そこには、「今、適応の拡大を検討している薬も入っていたので、この薬が、死因に関係しているかを明らかにするためにも、病理解剖をお願いしたい」と記されていた。
男の子が亡くなった直後、遺族に向けられたというICU責任者による発言。
しかし、当のICU責任者は、遺族に面会したことも、解剖を持ちかけたことも否定している。

ところが、男の子の父親が、当時撮影していたビデオには、そのICUの責任者の姿と発言が残されていた
当時のビデオで、ICU責任者の麻酔科医は「こういう立場で、病院側が解剖させてくださいというと、酷なことだと、われわれも重々存じ上げているが、われわれが使った薬の中に、薬の試験の完璧な試験ではない。麻酔の病名に関しては、非常に少ない確率で合わない方がいる。もしも、そういう薬であったならば、非常に危険なことになるので、そういうことを含めてお話ししている」と語っていた。
両親は、一連の記録の内容などから、本来禁止されている薬が、その適応範囲の拡大を検討するデータ収集目的で投与された疑いがあるとして、今回の刑事告訴に踏み切った。
両親側の弁護士、貞友義典弁護士は「(治療ではない)何らかの目的を持って、使ってはいけない薬を使う。あるいは、量をたくさん投与することになると、これは、医療とは言えない、傷害罪になる」と語った。
(略)

「麻酔医、危機感が希薄」 2歳死亡、外部調査委 東京女子医大(2015年2月20日朝日新聞)

 東京女子医大病院で昨年2月、麻酔薬プロポフォールの大量投与後に2歳男児が死亡した事故で、外部調査委員会(委員長=飯田英男・元福岡高検検事長)の報告書の内容がわかった。麻酔科医が薬剤のリスクを十分認識せず、容体の異変を見過ごしたとしている。遺族は19日、麻酔科医ら5人について傷害致死容疑の告訴状を警視庁に出した

 報告書によると、麻酔科ナンバー2の准教授は、プロポフォールを集中治療室で人工呼吸中の小児に鎮静のため使用するのは原則禁止と知りながら「切れ味がよい」と男児への投与を決めた。70時間の投与量は成人基準の2・7倍に達し、副作用で死亡した可能性が高いと調査委は認定した。

 また調査委は、複数の麻酔科医が心電図や血液検査の異変を見過ごしたとし、「禁忌薬の長時間・大量投与に対する危機感が希薄だったため」と指摘。異変への評価や対応を診療記録に残さなかったことも「重要な問題」とした。さらに、麻酔科の医師団は調査に「記憶がない」と述べるなど、「真相解明を求める遺族に対し、はなはだ無責任」と厳しく批判した。

 男児の両親は告訴状の提出後に記者会見した。薬剤が使える条件の拡大を検討していたと麻酔科医が発言したとの内部文書もあるとして、「果たして医療行為だったのか。報告書でも疑問は解消されない」と語った。

 岡田芳和病院長は「報告書の指摘を受け止め、再発防止にあたる」との談話を出した。

亡くなられた男児にはお悔やみを申し上げるしかない事故であり、是非とも何故このような結果になったのかと言う検証は行われ問題意識の共有を図るべきだと思いますが、ただ同時に重大な結果になったのだから誰かが罪に問われるべきだと言う責任追求にばかり陥ってしまっても十分な教訓が引き出せなくなるのは、昨今の医療事故調を巡る議論においても危惧されてきたところですよね。
注意すべきなのはプロポフォールを小児に使ってはいけないのではなく、今回のようにICUで人工呼吸管理中の小児に使うのがよろしくないと言う点なのですが、一連の報道を受けて全国で調査したところ同様の状況で使用している施設は小児専門施設の四割にも登るなど、実際の臨床の現場においてはやはり使い慣れた薬が優先される傾向にあるようですし、適応外使用を全て禁止すると患者の不利益も大きいはずです。
調査報告によれば医師も適応外使用になることは知っていたと言うことですが、大量投与に伴うリスクを過少評価し単純にうっかり使ってしまったと言うことなのか、それとも何らかの意図があって敢えて使ったのかは判りませんけれども、いずれにしても適応外使用をする以上普通よりもずっと神経質に副作用チェックをしておくべきだったとは言えるだろうし、その点で大学病院での医療としては至らぬ点はあったと見るべきでしょう。

またここで注目頂きたいのが医療側は守秘義務もあって情報を出せない状況であるのに、患者側は動画を公開するなど一方的に情報を流せるという不均衡が存在していると言う点で、過去の医療紛争においても同様の現象が見られ、最近では静岡の病院で外国人との間で発生したトラブルが公開され大きな話題になっていましたよね。
事の真相なり判断の是非なりはここでは何とも言えませんが、知らない言っていないと言ったことが後で動かぬ証拠と言う形で出てくると世間の心証が非常に悪くなるのは別に医療に限った話でも何でもなく、今回の場合当事者が否定したことがテレビで映像として流されたと言う時点で世間的なイメージは完全に固定化されてしまうことは避けられないでしょう。
本来的には医療側がこの種の紛争に備えてカルテ等に詳細な記録を残しておくことが当たり前で、医療訴訟などにおいてもそうした明確な記載があれば認められると言うケースの方が圧倒的に多いはずなんですが、今回の場合必要な指示医師の署名すら抜け落ちているなどこうした面において規範となるべき大学病院としては、いささかお粗末な状況であったことも明らかになってしまった格好です。
多忙な実臨床の場で手続き的な部分を厳格化し過ぎると大変だ、面倒くさいと言う部分は多々ある一方で、何かトラブルが起これば手続きに抜かりがあった、さらに厳格なルール運用が必要だと言う話になりがちなだけに、今回の事故で一番大きな影響を被るのは同院他部署で真面目に診療に従事してきた方々であるのかも知れませんね。

|

« 今日のぐり:「すし遊館 新倉敷店」 | トップページ | 上小阿仁村に新たな伝説の一ページ? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

お亡くなりになられたお子さんのご冥福を祈ります。
研修医か何かだと思ってたらベテランの先生だったんですね。
これで小児には一律使用禁止にでもなったら影響も大きいでしょう。
事故の教訓が十二分にくみ上げられ再発防止につながることを望みます。

投稿: ぽん太 | 2015年2月23日 (月) 08時09分

私は原則として医療事故の刑事事件化には反対ですが、
「傷害致死容疑」(過失がついていない、つまりこの告訴は本件を「事故」と認めていない)では仕方ないですねぇ。

投稿: JSJ | 2015年2月23日 (月) 09時24分

JSJさんの重複コメントを削除いたしました。
行為の妥当性等の検証はこれからですが、御指摘のように罪名を見るだけでも医療訴訟としては少しばかり例外的なケースになりそうには感じます。

投稿: 管理人nobu | 2015年2月23日 (月) 12時19分

幼児殺しは殺人罪で起訴すべきだろjk

投稿: | 2015年2月23日 (月) 13時40分

>幼児殺しは殺人罪で起訴すべきだろ

幼児殺しなら その通りですね。
ただ今回 原告側の法律家の判断においては
それは無理筋ということでは?

投稿: | 2015年2月23日 (月) 17時35分

枝葉末節かもしれませんが
>本来あるべき投与を指示した医師のサインはなかった。
電子カルテだったらサインはないのでは?

投稿: 嫌われクン | 2015年2月23日 (月) 20時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61171445

この記事へのトラックバック一覧です: 東京女子医大プロポフォール死亡事故、刑事告訴へ:

« 今日のぐり:「すし遊館 新倉敷店」 | トップページ | 上小阿仁村に新たな伝説の一ページ? »