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2015年2月 5日 (木)

高齢出産のリスクは知った上で、ではどうするかと言う疑問

学校教育とはどうあるべきかと言うことには各人各様の意見もあって、例えば道徳教育だとか歴史教育と言ったものは何をどのように教えるべきかでしばしばマスコミなども格好のテーマとして取り上げますけれども、むしろ当事者である市民の間でより大きな関心を集めやすいデリケートな話題の一つに性教育と言うものが挙げられますよね。
これだけ性的活動年齢が下がってきている、そしてまた若年と言うよりも幼少と言うべき年代が商業利用も含め世間から関心を向けられていく中で、当の本人が不当な不利益を被らないためにも早い段階から具体的なリスク等も含めて教育を行うべきだと言う意見もある一方で、そんなことをすれば子供が余計な関心を向けるだけだと否定的に捉える人も根強くいるようです。
この点で少なくともある程度年齢がいった世代に対してはきちんとした教育を行うことに関して異論は少ないと思うのですが、先日高校生の教育に関してこんな記述が登場してきたとニュースで報じられていました。

高校生の副読本に“不妊”記載へ(2015年1月16日日テレニュース)

 高校1年生に配布する保健体育の副読本に、来年度から「不妊」に関する内容が含まれることがわかった。

 この保健体育の副読本は文部科学省が作製するもので、全国の高校1年生が来年度から使用することになっている。文部科学省によると、この副読本には喫煙や飲酒、危険ドラッグの問題点などのほか、今回から初めて不妊に関する知識も記載する方針が決まった。高齢出産の場合、染色体異常の確率が上がるリスクがあることや、年齢が上がると妊娠しづらくなることなども記載される方針だという。

 文部科学省は、高校生に妊娠・出産に関する正しい知識を学んでほしいとしている。

しかしこれから妊娠可能年齢に達する高1に不妊教育も何もないんじゃないか?と感じられるかも知れませんが、現実的に高校生と言えばその後の人生の大枠にかなり大きな決定力を及ぼす時期であり、特に女性にとって妊娠、出産という一大事業が単に個人の問題で終わらずキャリア形成上も非常に大きな意味を持つことを考える時、むしろ遅すぎると言ってもいいくらいかも知れません。
もちろん公平を期すために言えば男性についても加齢が妊娠に影響を及ぼすことが知られており、先日は35歳以上は妊娠させる能力が衰えると言う海外からの報告が話題に出ていましたが、遺伝子的に見ても各種の異常等を来しやすくなることが次第に明らかになってきている以上、やはり生物学的に見ると適切な妊娠・出産年齢と言うものはあると言うしかないのでしょう。
ただ一方で生物学的妥当性と社会的妥当性が一致するかと言えばまた別な問題で、今どきの人間は高学歴である以上ちょうど生物学的妊娠適齢期はとてもそんなことを言っていられない時期と重なりがちであり、特に女性にとっては男社会に伍して仕事をしているといつの間にか結婚や出産の時期を逸していたと言う哀しい結果にもなりがちですが、先日はこんな記事が出ていました。

いのちの“選択” 「卵子凍結」に向き合う女性を取材しました。(215年1月27日FNNニュース)

シリーズ「いのちの“選択”」。女性が第1子を出産する平均年齢は、晩婚化にともない、今では30歳を超えています。そんな中、注目を集めつつある、「卵子凍結」に向き合う女性たちを取材しました。 
(略)
アベさん(仮名・46)独身。
電機メーカーで主任をしている。
学会の推奨年齢を超えた46歳だが、現在、卵子凍結を検討している。
アベさんは、「本当に疲れて帰ってきて、(結婚・出産を)考える時間がないというか。もう少し早く知っておけば、何かちょっと違う手を打てていたかな」と話した。
この日、アベさんが不安を打ち明けたのは、卵子凍結に関心を持つ同世代の女性たち。
アベさんは「50代ぐらいになって、実際おなかが大きくなっていっても育てられるのかなって」と話した。
アベさんの友人(42)は「決して安いものではないので。簡単に、すぐやりましょうと言える金額ではないのは確か」と話した。

仮に、今46歳のアベさんが、4年間10個の卵子を凍結保存し、その後体外受精をしたとすると100万円前後になる。
しかし、妊娠の確率は、決して高くないという。
慶応義塾大学(産婦人科学)吉村泰典名誉教授は「非常に妊娠率が低いことが問題。凍結の卵子で、生まれてくる妊娠率は、だいたい10%。自然妊娠で子どもを産んでいただくことが理想」と述べた。
アメリカでは、2014年、フェイスブックやアップルが、1人あたり最大2万ドル(およそ240万円)を上限に、卵子凍結費用の補助を打ち出した。
アベさんは「1ミリの可能性でも、もう1人の自分がいるというのは、すごく心の支えになる」と話した。
注目されつつある卵子凍結だが、女性たちが妊娠適齢期に出産できる社会を整えることも、必要とされている。

卵子凍結の年齢制限については、ガイドラインがあるのみで、拘束力はない
今回取材した産婦人科では、卵子凍結をしている女性の半数以上が、40歳を超えているのが実情となっている。

この卵子凍結と言うことに関してはちょうど一年ほど前から健常人にも認められるようになり、一部では「卵活」などと称して女性のキャリア形成の自由度を高めるものだと大いに期待されているようですが、学会指針で採卵40歳、使用期限45歳と言う年齢制限が設けられているように妊娠可能性や各種リスク上昇などを考えると、現段階ではそうした利用にあまり高い期待を持つのもいかがなものかと言う扱いになりそうですよね。
一方で厳しい生活に疲れ今現在とてもそんなことを考える余裕もないと言う方々が、とりあえず判断を先送りするためにこうした手段に期待する気持ちも理解出来るわけで、この辺りはやはり教育と言うものが非常に重要な意味を持ってくるのはもちろんなんですが、一方では生殖医療の進歩に対して率直な危惧を抱く方々も増えてきていて、例えば体外受精卵に対する遺伝子スクリーニングの是非などが議論になるわけです。
成人においても海外では遺伝子検査で高いリスクを認められた著名人の乳癌予防目的での乳房切除が話題になったように各方面で利用が進んでいて、ごく近い将来には遺伝子検査など当たり前のものになっているだろうと言う声もありますが、一方で一卵性双生児の疾患一致率が30%に留まるなど遺伝子の限界を指摘する声も根強くあって、今のところ高いコストに見合うものなのかと言う疑問も当然あるでしょう。
アメリカなどでは保険加入等における遺伝子検査での不利益を回避するため、2008年にはすでに遺伝子情報差別禁止法(Genetic Information Non-Discrimination Act:GINA)が成立したと言い、日本でも先日患者・身障者団体から受精卵への遺伝子検査中止を求める抗議があったと報じられていましたが、これまた当事者の権利と言う点で見れば規制強化と緩和の妥協点を見いだすのも難しいところがあるでしょう。
ただ当然ながら年齢が進み親の老化が進んでくるほど子供にもその影響が出るのは間違いないわけで、「模範解答」としては余計な心配をしなくてすむようなるべく早く生むのが一番いいと言うことになりがちですが、前述のように妊娠・出産が本人だけで決められるものではなくなっている社会の現状を考えると、例えば「少子化対策として国が行うべきことは女性の支援ではなく男性への支援だ」と言った当事者の声にも耳を傾ける必要がありそうですね。

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コメント

卵子の核移植、英が世界初の合法化…「親が3人」に
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=111694

投稿: | 2015年2月 5日 (木) 07時33分

選択枝が拡がったら拡がったで悩みのタネはつきませんからね。
でも本人が決めたことを他人が文句言うのも違うんじゃないかな。
明らかに違反だ違法だってことはともかくですけどね。

投稿: ぽん太 | 2015年2月 5日 (木) 09時55分

>「本当に疲れて帰ってきて、(結婚・出産を)考える時間がないというか。もう少し早く知っておけば、
何かちょっと違う手を打てていたかな」

知ろうとしないから知らないだけだし、考える時間がない(遊ぶのに忙しくてか?)とか全部言い訳だけ
なんですよね。その時よければって先のことを考えないからこうなるんです。

きつい言い方だけど、こういう低レベルが淘汰されていくのもいいかも。

投稿: | 2015年2月 5日 (木) 11時17分

そして子沢山は、低学歴ヤンキーさんばかり?
高学歴になる遺伝子は、淘汰されていくんですかねぇ

投稿: | 2015年2月 5日 (木) 14時00分

現状では高学歴女性は子孫を残す上では不利なように見えますが、男性に関しては高学歴が高年収に結びつくなら子供を持てる可能性は高くなるかも知れません(ただし少子化には大いに影響がありそうですが)。

投稿: 管理人nobu | 2015年2月 5日 (木) 14時22分

まずは産まないと何も始まらないでしょ
注文つけるのはそれから先だわ

投稿: | 2015年2月 5日 (木) 19時29分

まずは結婚しないと何も始まらないでしょ
結婚は一人じゃできないからね

投稿: | 2015年2月 6日 (金) 10時23分

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