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2015年2月 6日 (金)

近い将来に横たわる大きな社会的リスク

先日こんなちょっと怖い事件が起きたと報じられたのですが、御覧になりましたでしょうか。

スーツケースに女性遺体=川で発見、遺棄容疑で捜査-滋賀県警(2015年2月3日時事ドットコム)

 3日午前10時半ごろ、大津市晴嵐の盛越川にスーツケースが浮いているのを、川の様子を見回る仕事中の男性(57)が見つけ110番した。中から70~90歳とみられる女性の遺体が見つかり、滋賀県警大津署は死体遺棄容疑で捜査している。

 同署によると、遺体は膝を抱えるような姿勢で、目立った外傷はなく腐敗も進んでいなかった。青い長袖シャツと黒いズボン、成人用おむつを着用し、はだしだった。身元を調べるとともに、4日に司法解剖し死因などを特定する。

各社報道内容が微妙に違っていて当初は殺人事件か?とも思われたこの事件、目立った外傷のない高齢者でおむつをしていたと言った情報が入って来ますと、もしかすると何かしら介護関係のトラブルなりがあったのか?と言った方向で憶測を呼んでいるようですが、実は一年余り前に愛媛でも高齢女性の遺体がスーツケースに詰められて捨てられていたとニュースになっていたことがありました。
その際には同居の息子が死体遺棄容疑で逮捕されたそうですが、息子によると「気がついたら死んでいた」と言い、死体の扱いに困って捨てたと言ったことであったようで殺人と言ったものではなく文字通り死体遺棄であったと言うことのようなのですが、そんなもの捨てればすぐに身元が知れるだろう…と言えばさにあらず、昨今では全国的に身元不明の認知症高齢者の発見が増え行政も対応に苦慮していると言う話もありますよね。
いずれにしても生きていても亡くなっていても身内が身内を捨てると言ったことはもちろんよろしくない話で、そうしたことが起こらないよう各種社会的サービス等も活用しながら早めの対応を進めていきたいところなのですが、昨今実生活でもしばしば聞く話としてなまじ肉親の情等々によって自宅介護を、などと考えてしまうと大変なことになってくる(かも知れない)と言うケースも決して珍しいものではないようです。

親の介護のため40歳で無職に。その過酷な現実とは?(2015年2月3日日刊SPA)

 先進国の中でも類をみない少子高齢化時代に突入した日本。30~40代という働き盛りの時期に両親の介護問題に直面する人も少なくない。都内の印刷会社に勤めていた上田仁美さん(仮名・39歳)もその1人だ。

親の介護のため40歳で無職に。その過酷な現実とは?

 上田さんに故郷の長崎から悲しい知らせが届いたのは、今から1年ほど前のことだった。
「お母さんが自転車で転倒して骨折したんです。明らかに状況がおかしかったので病院で調べてもらうと、パーキンソン病と診断されました。私は1人娘で、父が『自分だけでは面倒が見きれない』というので、地元に帰って働くことにしました」
 社交的で面倒見もよく、友人が多かった上田さんの母。掛け持ちで複数のパートをこなすほどの働き者だったが、病魔はその言動をガラリと変えてしまった。
「飲む薬が毎月変わるのですが、中には副作用がきついものもあって、無気力になったり足のふるえが止まらなかったり……。母は料理が好きなのですが、味覚がなくなってしまったことにも落ち込んでました。そのうち、財布をなくしたり、どこからかトイレットペーパーを勝手に持ってきてしまったりと認知症のような行動が目立ち始めて。目が離せなくなってしまった

 地元に戻ってから、当初は派遣社員として事務職に就いた上田さんだったが、母の介護が原因で遅刻や早退を余儀なくされることもままあった。ある程度は覚悟していた、と語るが、想像を超えていたのは頼りになるはずの父の豹変ぶりだった。
「母の介護を巡って私と言い合いになり、ついには暴力を振るうようになりました。突き飛ばされ、拳で何度も殴られ、救急車が来たほどです。比較的大人しい性格だったのに、子供のように怒りっぽくなって……正直、父の認知症も疑っています
 結果、不安定な両親の面倒を1人で見ることになった上田さんの負担は文字通り倍増。派遣社員として働くことも困難となり、今年に入って退職した。無職となった現在、収入は両親が受給する年金のみ。貯金を切り崩してなんとか凌いでいるが、先細りは明らかだ。
 上田さんはそれでも気丈に語る。
「先日、具合の良かった母が『私たちのことはいいから、東京に戻りなさい』と通帳を渡してきました。2人して泣き崩れました。どん底ですが、やれるところまでは頑張ろうって思います」

何とも悲惨な実例と言ってしまえばそれまでなんですが、ここまで顕著な話でなくともまだまだ働ける、あるいは一家の支え手として働かなければならない年代の方々が親の介護によってキャリア半ばでの退職、転職を余儀なくされたと言う話はしばしば聞くところですし、しかも自ら体を張ってでも親の面倒を見ようと言う気持ちのある方々ほどこうした境遇に追い込まれやすいと言うのは問題ですよね。
特に出産年齢の高齢化が進んで世代交代の周期が延長してくると、親が介護を要する年齢になる頃にはまだ子供が若いと言うこともあり得ますが、最悪の場合若年発症の認知症で年金もまだもらえない段階から介護となり子供も離職したとなれば資産を食いつぶすしかないわけで、仮に親の介護は乗り切ったとしても後にはキャリアも積み上げられず貯蓄も遺産もない、下手をすれば年金すらない子供が残される道理です。
こうなると現実的に生活保護なりに頼らなければ生きていけないはずですが、国策として施設入所から自宅介護へと国が言っていると言うのも突き詰めればお金がない、介護の人材もいないと言うことから給付を切り詰めないと言う事情が先にあることだとして、それを家族の無償(と言うより持ち出しの)ボランティアで何とか当座はしのげたとしても下手すると次の世代により大きな社会保障コストが必要になるかも知れないと言うことです。

ちょうど先日「家を借りることがリスクの時代:檻のない「牢獄」と化した実家」と言うなかなかにセンセーショナルなタイトルの記事が出ていて興味深く拝見したのですが、要は家賃コストを負担できないことから低所得層の現役世代が親との同居を選択せざるを得なくなっている、そして物質的にも心身の面でも子供世代が親のサポート無しに生きられなくなりつつあると言う話であるようです。
興味深いのはこうした状況に陥る子供像としてどうも学歴はあまり関係ないらしいと言うことで、逆に言えば一般に高学歴は高収入を得る大きな手段になり得るのですから余程に心身の大きな問題があるのかですが、例えば大学を出たはいいがブラック企業に勤めてしまい、ドロップアウトし半ば引きこもりになってしまった息子などと言うのは今のご時世決して珍しいものではありませんよね。
こうした方々を老いた親が扶養できるだけの余力があるのが戦後日本の経済成長を示すものでもあるのでしょうが、かれこれ低成長・低賃金の時代が20年以上も続いている中でこれから昭和の栄光を知っている親世代がどんどん亡くなっていき、いずれはその世代が残してきた「貯金」も尽きてくると考えると、21世紀を生きる我々にはなかなか暗い未来絵図が待っていると考えるべきなのでしょうか。

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コメント

2つの事例、誰かに相談すればいいのに・・・というのが私の感想です。
まあ、長崎の事例は脚色されている可能性もありますけれど。

投稿: クマ | 2015年2月 6日 (金) 09時36分

>誰かに相談すればいいのに・・・

追い込まれて思考停止に陥っちゃってるんでしょうね。産科医みたいなもんでw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年2月 6日 (金) 10時48分

最初のケースでは、金がなければ公費負担で葬儀はできるし、
何かあったとしか思えないんですけど。
次のケースじゃ、介護認定を受け使えば、そこまで大変なことはない。
自分がしないとって思い詰めてしまったのが原因かと。
(しかも相当脚色されていそう)

投稿: | 2015年2月 6日 (金) 10時53分

>次のケースじゃ、介護認定を受け使えば、そこまで大変なことはない。
私にはそうは思えませんけど。介護度は低かったんじゃないかな。
中途半端に動けるもんだからかえって目が離せない状態だったんじゃないかしらん。
根拠は経験と勘だけだけどね。

投稿: JSJ | 2015年2月 6日 (金) 12時09分

おっしゃる通りマスコミ報道に伴うバイアスも十分考えられると思いますが、完全にフィクションであったとしても同様の事例が発生する可能性もまた十分考えられるとは思います。
その際にこれこれの制度があるんだから何故と言うだけでは駄目で、当事者が情報を持たず適切な対処も出来ていないと誰がどの時点で判断し介入すべきなのかと言う部分が一番難しいのでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2015年2月 6日 (金) 12時11分

政治家が年寄りの金持ちばかりだから、国民はみんなそれなりの蓄えがあって当たり前だって思い込んでる可能性もこれあり

投稿: | 2015年2月 6日 (金) 12時18分

安楽死制度を作り、選択肢を増やす必要がある。逃げ道を作る方が良い。
舛添都知事みたく東大のエリートは介護放棄を合法的に言い訳して放棄する。
有言実行をエリートは本気でやるからかっこいい。厚労省、民主党関係者。覚えて置けよ!祟るぞ^^早く安楽死制度を導入しろ!

投稿: | 2015年2月 6日 (金) 12時23分

安楽死の対象になる人て、そんなに手はかからないような気がするんですけど。

投稿: JSJ | 2015年2月 6日 (金) 12時45分

念のため、私の考える安楽死の対象
自分の意思で安楽死を希望することができる
その時点の医療で目下の苦しみを除去することができない
その時点の医療で目前に迫った死を避けることができない

投稿: JSJ | 2015年2月 6日 (金) 12時54分

長崎の例は、レビー小体型認知症を除外したいところですね。その診察を受けるのにお父さんも連れて行って、ついでにお父さんも診察してもらって周辺症状かどうかを確定できたら良いのですが。

投稿: | 2015年2月 7日 (土) 16時24分

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