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2015年2月20日 (金)

介護領域での最近の話題

このところ大きなニュースとして取り上げられたのがこちらの事例なんですが、まずは記事から紹介してみましょう。

拘束介護の医療法人に改善勧告 東京都(2015年2月17日NHKニュース)

東京・北区の高齢者向けのマンションで、介護ヘルパーが複数の入居者に対して必要性を十分に検討せず、日常的に体を拘束していたとして、東京都は介護ヘルパーなどを派遣している事業所を運営する医療法人に対し、再発防止を求める改善勧告を行いました。

改善勧告を受けたのは、介護ヘルパーなどを派遣している事業所を運営する東京・北区の医療法人「岩江クリニック」です。
去年11月、北区の高齢者向けマンションで、「入居者に虐待のようなことが行われている」という情報が寄せられ、都は介護ヘルパーや事業所から聞き取りをするなど調査を進めてきました。
その結果、入居する複数の高齢者に対し、ベッドにベルトで固定するなど日常的に体を拘束していたことが確認されたということです。体の拘束が認められるのは、生命の危険があるなど緊急時のやむをえない場合に限られますが、介護ヘルパーは必要性を十分に検討せず、体の拘束を行っていたということです。
このため都は、事業所を運営する医療法人に対し再発防止を求める改善勧告を行いました。
また、北区がこうした行為の一部が「虐待に当たる」と認めたのを受け、都は今後さらに調査を進めることにしています。
(略)

北区の医療法人、高齢者をベッドに拘束 都が改善勧告 (2015年2月17日東京MXニュース)

 東京都はきょう、北区にある高齢者向けのマンションでお年寄りを常にベッドに拘束するなどして介護をしていた介護事業所とそれを指示していたクリニックに対し、処遇改善の勧告を出しました。

 改善勧告を受けたのは北区にある医療法人社団・岩江クリニックとこの医療法人が運営する2つの介護事業所です。東京都によりますと高齢者向けマンションに入居している130人のお年寄りに対して、介護事業所が派遣したヘルパーがクリニックの医師の指示書に従って、常時、部屋をロックして出られないようにしたり、拘束具を使ってお年寄りをベッドに固定したりして介護サービスを提供していたということです。
 要介護度の高いお年寄りを拘束するには厚生労働省が定める厳密な基準を満たすことが必要ですが、派遣されたヘルパーは「医師の指示があれば拘束が許される」と判断していました。

 舛添知事はきょうの会見で「こういうことが許されてはいけない」として強い口調で批判しました。知事は「こういった法の隙間を縫って出てくるような悪質なことに対して、厚生労働省を中心に、全体に網をかけるような法整備が必要ではないか」と述べました。
 東京都はきょう、入居者の処遇改善などを事業者に勧告した上で、来月末までに改善されない場合はその旨を公表し、より強力な業務改善命令などの措置を取る可能性もあるとしています。

この種の高齢者向け住宅の実質的介護施設化は昨今珍しいものではないし、そこで拘束や移動制限等々様々な物理的対応が行われているのも程度の差こそあれ全国共通ではないかと思うのですが、今回の場合無許可施設のような怪しげなものではなく医療法人が行っていたことであって、なおかつ医師の指示を得た上で拘束等が行われていたと言うことが注目すべき点でしょうか。
もちろん拘束が良いか悪いかと言われれば良くはないことなのは言うまでもありませんが、特養の入居条件が要介護度3以上の重症者に限定されるなど早々に高度な介護を行える施設への入居が厳しくなり、入居待ち高齢者がこれだけ世間にあふれている状況下で、在宅で十分に介護も望めないとなればとりあえず入居出来る施設に入れてもらうしかないだろうし、施設としても多少対象外であっても受け入れざるを得ないでしょう。
そこで「こんな状態の方は当施設では責任をもって対応できませんから」と受け入れを断ってしまえば「正しい介護」にはなるのでしょうが、トータルで見た場合にそれが利用者家族の利益の最大化につながるのかどうかは極めて微妙な問題ですし、実際問題としてケースバイケースで多少の正しさからの逸脱は見て見ぬふりをされているのが現状ではないかと思います。
これだけ介護領域で施設不足、人材不足が言われる状況にあっても、先日は介護報酬が切り下げられると言うことが報じられ「特養の半数が赤字になるのでは」と言う試算もあるそうですが、赤字にはならないまでも経費節減が今まで以上に重要視される状況で国の思惑通りスタッフへの報酬だけが引き上げられると言うことがあるものなのかどうかだし、多少の引き上げ程度で3kだ4kだと言われる介護業界に人が来るのかですよね。
国としても実際の政策上の実効性はともかくとしてこの辺りの状況に一定の危機感は持っているようで、先日こんな記事が出ていたことを紹介してみましょう。

介護福祉士の試験義務化、6年先送り 厚労省案(2015年2月14日日本経済新聞)

 厚生労働省は13日、介護福祉士に国家試験への合格を義務付ける時期を、6年先送りし2022年度からとする案を、自民党の関係会議に示した。現行は、福祉系の大学や専門学校の卒業者は試験なしで介護福祉士になれる。試験を義務付けると若者が介護の世界に集まりにくくなるとの指摘があるため、人手確保を優先して延期する。

 これまでは16年度から国家試験を義務付けるとしていた。義務化先送りの一方で、17年度から21年度までの5年間を、義務化に向けた経過期間と位置づける。この間の卒業者に与える介護福祉士資格は、暫定的に卒業後5年限りとする。5年以内に国家試験に合格するか、原則5年間続けて現場で働く事を条件に、正式な資格として認める

 厚労省は13日、25年度に約30万人が不足する介護職員の確保対策も自民党の関係会議に示した。25年度に向けて、都道府県単位で計画的に人手の確保に取り組む。既に決めた職員の賃上げに加え、いったん辞めた介護スタッフの復帰の仕組み作りや、高齢者の介護職への参入促進策を15年度から始める。

ちなみに現状で介護福祉士になる方法論としては専門学校に通って教育を受けるか、あるいは国の資格試験を受けて合格するかの二つの道があって、このうち前者に関しては今まで試験が免除されていたものが全員必須と言うことになっていくと言う話で、もともと2012年から試験義務化と言う話だったものが過去に三度にわたって延期されてきたと言う経緯があります。
この人手不足のご時世に国家試験受験を義務づけるなど何たることか、ますます人手不足が加速するだけではないかと言う声ももちろんあるでしょうが、現状を見る限り実際にはきちんと学校で教育を受けてきた方々であればまあ余程のことがない限りは合格する程度の難易度でしょうから、お金を受け取って専門教育を施すとうたう以上その程度の教育水準は期待されてしかるべきですよね。
将来的には臨床研修医にバイトをせずとも食べていける最低限の給与を担保したように、介護資格を持つことに対する最低給与の保証なりが制度化されればようやく介護をやって食っていける、家族も養えると言う環境が成立するようになるかも知れませんが、介護においても医療と同様に「国民負担が増える」と言う文脈で支出増を嫌う方々がいるのは事実であるようです。
一方で国民にすれば冒頭の記事からもうかがわれるように待ったなしの現状があるわけで、多少負担が増えてもしっかり介護を受けられる方がいいと言う声も世論調査上は決して少数派に留まらないのですが、現実的に負担金額が高い施設ではまだ空きがあるのに安い施設にばかり入所希望が殺到し行列待ちになっているのも事実で、実際どこまでお金を出せるのかと言う疑問はありますよね。
ハコモノや人材にコストを遠慮なく使った高級志向の一部施設はともかくとして、医療よりもコスト削減圧力の厳しいだろう大多数の介護施設においてはやはりスタッフへの待遇の良悪がその士気やレベルにも結びつきやすい危惧はあるだろうし、その意味ではより「安かろう悪かろう」な状況に陥るリスクは高いのかも知れませんが、「気に入らないから他所に行きます」と簡単に話が進まないのが利用者目線で困るところですよね。

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コメント

徘徊老人を施設に預けるって時点で閉じ込めるのが目的でしょ?
閉じ込めないで外に出て事故ったら巨額賠償金だし

投稿: | 2015年2月20日 (金) 07時55分

施設に閉じ込めておけば、転んだり誤嚥したら、裁判でお金ももらえてとってもお得です。
家庭でみるなんて、家族の生活は破壊されるし、巨額賠償のリスクもあるし、費用もかかるし、いいことなんて何もありません。

介護報酬を切り下げて利用者負担を少なくしたのも、姥捨て山にどんどん入れてくださいという国の施策です。

投稿: おちゃ | 2015年2月20日 (金) 10時44分

>厚生労働省を中心に、全体に網をかけるような法整備が必要
おまえ厚労大臣だったじゃないか
人ごとみたいに言うな。任期中には何かしたのか。

おまえが南朝鮮旅行で使った金と暇を施設建設に回せよ。ハゲ。

投稿: 嫌われくん | 2015年2月20日 (金) 10時53分

>北区にある高齢者向けのマンション
これって自宅ですよね。施設入所じゃないですよ。
国の推進する「国民が望んでいる在宅療養」ですよ。

投稿: JSJ | 2015年2月20日 (金) 11時13分

なるほど言われてみれば確かにマンションは終の棲家であり、自宅であるという考え方もあるわけですね。
家庭内介護に問題ありとして介入し始めるとなると、これは話が予想外に大きくなってしまいそうですが。

投稿: 管理人nobu | 2015年2月20日 (金) 11時37分

ボケ爺ちゃんが電車に飛び込んで目離した婆ちゃんに賠償金がいった裁判ありましたよね
あれ爺ちゃん出られないように家に閉じ込めてたら虐待になるのかしら?
詰んでるなあ……

投稿: タマ | 2015年2月20日 (金) 12時26分

※週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150219-00000006-sasahi-soci

働き手が不足している介護の現場。団塊世代が75歳以上を迎える25年までに、介護職員が30万人不足すると言われている。
いずれ介護職は外国人に頼らなくてはいけない時代がやってくるのかもしれない。日本の介護現場ですでに働く外国人たちを取材した。

 インドネシア人の介護福祉士、ジョコさん(30)が東京都足立区にある特別養護老人ホーム「ウエルガーデン伊興園」に就職したのは1年半前だ。
その前は、都内の別の施設でEPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者として働いていた。
 このEPAによる介護福祉士候補者の受け入れは、「二国間」の経済活動の連携強化の観点から、外国人の就労を特例的に認めるものだ。
日本ではインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国と協定を結び、インドネシアは2008年から、フィリピンは09年から、ベトナムは昨年から候補者を受け入れている。
国家試験を受験して、受かれば日本で就労できる。
在留期間は資格取得までは4年間、取得後は3年間で更新は可能だ。

 ただ資格が取得できなければ基本的に帰国しないといけない。
試験は簡単ではない。外国人向けには漢字にルビが振ってあるものの、内容は日本人と同じ。合格率は、日本人を含めた全体の約半分だ。 

 ジョコさんは2回目の受験で国家試験に受かったという。
「じつは漢字のルビは、ギャクに読みづらかった(笑)」
 昨年12月にフィリピン人女性の介護福祉士候補者を4人受け入れた特別養護老人ホーム「浅草ほうらい」(東京都台東区)では、
週に3回(6時間)日本語のレッスンをしているが、テキストにない言葉が現場でいきなり出てきて、彼女たちは面食らうらしい。

 候補者のマギーさん(26)は、「ゴフジョウ(ご不浄)さんに行くって利用者様に言われて、なに?と思ったら、トイレでした」と驚く。
 レイチェルさん(24)は、「メニューのさわら、パソコンで漢字変換したら難しい。魚偏がいっぱい出てきた」。
 日本に来て間もない彼女たちは、毎日必死だ。
今は介護現場に出ながら、トイレやベッドからの移動や、ベッドメイキング、オムツ交換をおさらいしている。

「ホームシックになりませんか?」と聞いたら、「なる、なる」と皆が即答。
「だけどスカイプで家族と話せる」といちばん年長のコニーさん(31)。それよりも困ったのはお金で、初めて1月末にもらった給与は、「仕送りしたら、残りちょとだけ」(グラシアさん=24)。
 異国の地の生活は期待と不安に満ちているようだ。でも口をそろえて「一生懸命、試験受かります。働きます」と白い歯を見せる。

 関係者によると、「中には出稼ぎ感覚が強く、試験に受かっても帰国する人もいる」そうだ。候補者の帰国後に現地を訪ねたら、立派な家が建っていた、という例も。
 目的が学びであろうとお金であろうと、彼女たちがひたむきなのは事実だ。ところで日本で働く外国人たちが、“嫌な思い”をしたことはないのだろうか?

 伊興園の杉本浩司施設長はこんな話を明かしてくれた。
「高齢の男性の家に訪問介護に行ったとき、外国人のヘルパーさんを派遣したんです。
そうしたら、『二度と連れてくるな。今度連れてきたら撃つぞ』と後から私がモデルガンを見せつけられました」

 千葉県のある老人施設でも、「おとうさんがガイジンさんに世話を受けるのはいや」と、入居をやめたケースもあるという。
少ないながらも、アレルギーのように受け付けない人もいるようだ。

投稿: | 2015年2月20日 (金) 23時05分

>ご不浄さんに行く

同年代の日本人でも大半分からんだろう。

投稿: | 2015年2月23日 (月) 09時05分

>テキストにない言葉が現場でいきなり出てきて、彼女たちは面食らうらしい。
>同年代の日本人でも大半分からんだろう。

 一度体験すれば次にはたいていきっちりできることを、全て事前に準備させる、それを謳うような規制と教育が結局、賃金の中抜構造を温存させる構造になっているのだ、と 再認識しました。

投稿: 感情的医者 | 2015年2月23日 (月) 11時19分

年配の方々の言うことが100%判る人はネイティブ日本人でも必ずしも多くはないと思いますし、ましてや出身の地方が違えばちんぷんかんぷんな言葉は多いので、要は判らない言葉にどう対処するかだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年2月23日 (月) 12時23分

人工知能の進歩やロボット技術に一番期待しているのが介護。
1人で自立生活できていた者が他者の手助け抜きで生活できなくなったとき、当人からすれば自分+人間でようやく自立できるよりは、自分+ロボットで自立できた方がベターだと思う。もちろん当人以外は言うまでも無い。

投稿: | 2015年2月24日 (火) 18時21分

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