« 救急隊が救急車有料化に反対? | トップページ | 医療・介護の労働環境改善は未だ途上 »

2015年1月 6日 (火)

大阪で新たな生保改革案出る

先日こういう記事が出ていたことを御覧になりましたでしょうか。

保護費一部、プリカで支給 大阪市が全国初試行(2014年12月27日大阪日日新聞)

 大阪市の橋下徹市長は26日の定例会見で、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を実施すると発表した。過度な飲酒やギャンブルに生活保護費を使用するなど、金銭管理が不十分な受給者への自立支援のツールとすることが狙い。来年2月から受給者に利用希望を募り、半年から1年をかけて実施して効果を検証した上で、2016年度の本格実施を目指す。

 プリペイドカードでの支給は全国初の取り組み。三井住友カードと富士通総研が事業提案し、25日に市と協定を締結した。

 利用者は、生活保護費のうち、衣、食などの日常生活を満たすために支給される生活扶助費の一部から一律月額3万円が入金された「VISA」のプリペイドカードが貸与され、カード加盟店で買い物ができる仕組み。利用者のほか、受給者に金銭管理支援が必要だと判断した場合は、ケースワーカーらが利用明細を確認することができる

 橋下市長は「受給者にはいろいろな事情があるが、自らの支出を記録し、把握することが自立支援につながる。生活保護制度全体の適正支給、受給者の支出の適正化から考えると、管理をするのは当たり前」とメリットを強調した。

 大阪市の生活保護受給世帯は11月時点で11万7505世帯と全国政令市トップ。市は、1割に当たる約2千人での実施を想定している。モデル事業では、特定業種に対する使用制限、1日あたりの利用額上限を設けていないが、本格実施の際は検討し、あらためて事業者を募るとしている。

当然ながら本実施に当たっては利用対象にも縛りが加えられる可能性があると言うことなんですが、まずはモデル事業と言うことで少人数を相手に制限も緩くと言うことでのスタートであるようです。
橋下大阪市長と言えばかねて生保行政に関連して様々な施策を打ち出してきた事でも知られていますが、この件に関しては三井住友カードと富士通総研の側からシステムの売り込みがあったと言うことで、もちろん一連の生保制度改革と言う橋下行政の意向に沿ってと言う話でもあるとは言え、商売としてもそれなりに期待される話ではあるようですね。
ご存知のようにアメリカでは低所得者向けの食料品向け金券としてフードスタンプと言うものが支給されていますが、現在では磁気カード(EBTカード)化され買い物以外に補助金の引き出しにも使えると言うことで、ちょうど今回のシステムのモデルになったのだろうと想像されるのですが、この場合いわゆる生保受給者が対象と言うより家族の収入が一定額以下の世帯が対象になると言う点が日本と異なっています。
日本においても一般の低所得者と生保受給者の間に大きな壁があって、必死に働いているワープア層は「生保の方がいい暮らしが出来る」と不公平感を募らせる一方で、生保受給者もそこから仕事について生保から抜け出すことが難しいと言われる所以ですが、そうした事情もあって低所得者全般に食料品現物支給を行うと言う制度の方がメリットも少なくないとは言われるところですよね。
フードスタンプに関しても転売や二重取得など様々な不正が言われているように決して万能の制度ではないことはもちろんですが、今回のプリカ方式にしても様々な弊害もあるだろうことは想像に難くないところで、そうではあっても使途の明確化や金銭管理など様々なメリットもあると判断されたからこそ導入が検討されているのだと思いますが、これに対して各方面から反対意見が続出していると言います。

大阪市の「プリペイドカードによる生活保護費支給」は官製貧困ビジネス(2014年12月29日ハーバービジネスオンライン)

(略)
 2014年12月26日、大阪市の橋下徹市長は定例記者会見において、「VISAプリペイドカードによる生活保護支給のモデル事業の開始」を発表した。当初は希望者のみということだが、後述するが、その先の展開を考えているとしか思えない
 三井住友カード、富士通総研、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、NTTデータの4社が主導して事業を運営するという。

 橋下市長の会見によると、この事業は、
1)「支出管理」を通し「自立支援」の一助とすることを目的とする
2) 三井住友カード株式会社と富士通総研が支払いシステムを構築する
を骨子としたもので、全国初の試みとのこと。
 また、NTTデータの発表資料(http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2014/122600.html)によれば、このモデル事業の成否によっては全国的に展開することも視野に入れているという。

 日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。生活保護制度は、この理念に基づき、国がすべての生活困窮者に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする制度だ。従って、生活保護制度を運営する行政が、「生活保障」のみならず「自立支援」を行うことは当然とはいえる。
 しかし、この仕組みははたして、「自立支援」として機能しうるのであろうか?

 今回のモデル事業は三井住友カードが発行する「VISAプリペイドカード」を利用する。プリペイドカードといえども、クレジットカード決済基盤が利用される。そのため利用場所は、クレジットカードが使える場所に限られる。つまり現状でクレジットカード決済を導入していない、地域の小さな商店などでは利用できない可能性が高い
 厚生労働省の「福祉行政報告例の概況」によると、生活保護受給者の44.2%は高齢者世帯であり、36.7%が障碍者世帯とのことだ。つまりこの「プリペイドカードによる支給」施策は、受給者の8割を占める高齢者と障碍者に「自分の足でカードの使える店まで行け。もしくは、ネットショッピングで買い物をしろ。」というものであって、「自立支援」である以前に、受給者の実態からかけ離れた利用方法を押し付けるものと言わざるを得ない。

 また「自立」のためには、受給者側がいくばくかの現金を手元に作る必要がある。しかし、現金支給でないこの制度では、貯蓄とまで行かないレベルの緊急の出費を見越した一時的な現金の留保すらも許されないのである。
 一時的な現金留保さえできない仕組みで、「自立を支援」などできるはずがないではないか。
 受給者の支出を規制し、現金留保さえ許さないこの仕組みは、冒頭で紹介した「典型的な貧困ビジネス」と本質的になんら変わるところはない。

 そして、最大の問題は生活困窮者への公的扶助として支給される公金である生活保護費に、営利企業が関与することだ。
 平成25年度の大阪市の生活保護予算は約2900億円であり、そのうち現金で支給される生活扶助額は約1000億円にあたる(大阪市発表資料より)。
(略)
 つまり、三井住友カードはこのシステムを大阪市で実施するだけで、毎年1000億の預託金と13億円前後の手数料収入を得ることになるわけだ。
 先に引用したNTTデータの発表資料によると、三井住友カード、富士通総研、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、NTTデータの4社は、このビジネスモデルを「大阪市同様に全国の自治体への展開を進め」ることを視野に入れている。彼らの意図どおりこの事業が全国展開すれば、企業側が手にする金額は、膨大な金額になるだろう。
 これは明確な「生活保護制度の利権化」と言えるのではないか。

 このような観点からみると、今回の「プリペイドカードによる生活保護支給」の、「受給者自立支援に結びつかない」「生活保護制度を営利企業が利権化する」という姿が浮き彫りになる。
 「生活保護受給者の支出を管理し自立を促す」との美辞麗句で飾られた事業ではあるが、はたして、冒頭で紹介した「ユニティー出発」に代表されるこれまでの「貧困ビジネス」と、一体どこが違うというのであろうか?

生活保護費 大阪市がプリペイドカードで支給 受給者の権利を侵害(2014年12月30日しんぶん赤旗)

 大阪市がカード会社と提携し、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給する全国初のモデル事業を始めると発表し、波紋を広げています。橋下徹市長は26日の発表会見で「本来、全員カード利用にして記録を全部出させ、ケースワーカーが指導すればいい」などと発言しています。
 市は、家計・金銭管理が必要な受給者への支援に資すると強調しますが、専門家からは「受給者の権利侵害だ」との指摘が出ています。
(略)
 橋下市長の発言について、自治体情報政策研究所の黒田充代表は「受給者本人が保護費の使い道を決めるという憲法上の権利を侵すものだ。大阪市単独の動きではなく、生活保護費の抑制を狙う国の大きな流れの一環ではないか」と指摘します。

 全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)の大口耕吉郎会長は「受給者にとって何の利益にもならない。社会福祉士の資格を持った正規職員を増やし、一人ひとりに寄り添った、きめ細かな指導ができる体制の整備こそ必要だ」と述べています。大生連は、市に対し事業の中止を要請していくとしています。

ネット上でも各方面から賛成、反対の意見が出ているのですが、賛成の意見としてはやはり公費でお金を出している以上無駄遣いをされるのは望ましくなく、管理するための手段として有用であろうと言った意見が多い一方で、実効性に対する疑問視や、現実的に日本ではまだカード払い対応の小売り店は多くないのだから、地域の小さな商店で買い物が出来なくなるだろうと言った懸念の部分も大きいようです。
それに加えて一定数は主義主張に基づく強固な反対意見の主張もあって、率直に申し上げて「受給者本人が保護費の使い道を決める」と言う憲法上の権利が存在するとは寡聞にして存じ上げなかったのですが、様々な観点から見て管理する側の都合が優先されたシステムであると言うことは確かであろうし、その意味で「受給者にとって何の利益にもならない」と言うのはその通りではあるのだろうと思います。
特に金銭支出を管理すること自体が問題だと主張する声が一部にあるのですが、以前に兵庫県小野市で生保受給者のパチンコ問題が盛大に炎上した経緯などもあって、これも各方面から強力な反対論が出たことと何やら共通するものを感じるのですが、要するに生保と言う制度のあり方がどうあるべきなのかと言う部分と共に、実際の運用のどこに問題を感じるかと言う部分に関して人それぞれの考え方があると言うことでしょうね。
いずれにしてもいきなりこのシステムが全国的に拡がるとも思えないにしろ、大阪で先行的にやってみる分には色々と興味深い点は多々ありますから、まずは何がどうなるかと言うことをやってみせてもらうのがいいのかなと思うのですがどうでしょうね。

|

« 救急隊が救急車有料化に反対? | トップページ | 医療・介護の労働環境改善は未だ途上 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

>ネット上でも各方面から賛成、反対の意見が出ているのですが

その反論のソースが菅野完だの赤旗だのでしかない所からも 
お察し

投稿: | 2015年1月 6日 (火) 08時21分

アカやプロ市民が反対してるからこれは大賛成w

投稿: ゴメス | 2015年1月 6日 (火) 08時55分

クレジットカードを持たない受給者にとって、通信販売を振り込み手数料も代引き手数料も無しで利用できる利益はかなり高いかと。
スマホを所持している受給者ならいくらでも使いこなせるでしょうし、買い物難民対策にもなるでしょう。(大阪に買い物難民がどのくらいいるのかはわかりませんが)
三井住友1社でやるのが問題なら、本格的に実施するときには好きな会社のプリペリドカードを選べるようにすればいいのではないかと思われます。

あと、公金である生活保護費に営利企業が関与するのが問題なら、銀行が利用できなくなりますが・・・

投稿: クマ | 2015年1月 6日 (火) 09時09分

ナマポ優遇したって一般国民には何の利益にもならないからね

投稿: | 2015年1月 6日 (火) 10時39分

生保受給者の生活安定は長期的には市民の利益にもかなうことだとは思うのですが、どこまでの支給水準が妥当なのかと言う議論に関しては聖域化すべきではないと言うのが現在の市民感情なのかなと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2015年1月 6日 (火) 11時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/60926467

この記事へのトラックバック一覧です: 大阪で新たな生保改革案出る:

« 救急隊が救急車有料化に反対? | トップページ | 医療・介護の労働環境改善は未だ途上 »