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2015年1月27日 (火)

今年のインフルエンザはやはり厄介?

ともかく全国的にインフルエンザ流行の真っ最中で、とりわけ今年のインフルエンザは何かが違う、対応が難しいと言う印象を抱く先生方も少なからずいらっしゃるようなんですが、特に医療機関においては院内での大々的流行と言う事態は最悪のシナリオと言うべきで、先日もこんな怖い記事が出ていました。

看護師がインフルエンザ脳症で死亡、松本市の病院で集団感染(2015年1月20日日経メディカル)

 長野県松本市の国立病院機構まつもと医療センター松本病院でインフルエンザの集団感染があり、70歳代の患者と同院の看護師の2人が死亡した。患者は白血病の治療中でインフルエンザ肺炎で死亡。また、看護師はインフルエンザ脳症による死亡だった。同院が19日に発表した。

 同院によると、1月10日に3人のインフルエンザ患者が入院。14日にはこの3人とは別の入院患者の3人がインフルエンザに感染していることが確認された。その後、院内で感染者が増え、入院患者21人、看護師4人の計25人が感染した。
 70歳代の患者は15日に感染が確認され、17日にインフルエンザ肺炎で死亡した。
 一方、看護師は16日朝に発熱(38.7度)があり、自宅近くの医院を受診。その診察中に意識障害を起こし、松本病院に救急搬送となった。同日夕には信州大学医学部附属病院に移送されたが、翌17日朝、インフルエンザ脳症で死亡した。
 看護師はインフルエンザの予防接種を受けていたが、70歳代の患者は受けていなかった。
 死亡した看護師は40歳代女性で、10日にインフルエンザで入院した3人の患者を担当していた。基礎疾患などは確認されておらず、発熱前日の勤務でも、特に体調の変化は見られなかったという。

 同院では職員のインフルエンザワクチン接種率が91%と高く、また流行期にはマスク着用や手洗いの励行、患者の面会制限などの対策に取り組んでいた。新たに3人の入院患者がインフルエンザに感染していることが分かった14日からは、感染制御チームを中心に対策を徹底し、19日までに全入院患者と職員がタミフルやリレンザなどを服用した。その結果、19日、20日と新たな感染者は出ていないという。
 他の感染患者について同院は、「インフルエンザだけが原因の重症者はおらず、(インフルエンザの症状は)快方に向かっている」としている。

看護師でなくとも40代の元気な人が亡くなったと言う点でやはり怖い病気なのだなと改めて思うのですが、インフルエンザ脳症の場合もともと数が少ない上にほとんど小児の疾患と言うイメージがありますから大人が発症すると言う時点で例外的なケースと言えそうですし、ワクチンや抗ウイルス薬の効果もあまり期待出来ないと言いますから発症してしまうと非常に厄介なものではあると思います。
その意味では若くして亡くなられた看護師さんはかなり運が悪かったとお悔やみ申し上げるしかないのですが、幸いその後は対策に取り組んだ結果新規発症を抑制出来たと言うのは良い知らせですし、改めて感染防御の徹底と言うことが持つ意味を教えてくれる貴重な事例として院内外を問わず共有すべき経験ですよね。
今年のインフルエンザの特徴として典型的な高熱や関節痛と言った症状で発症する方ばかりではなく、ごく軽微な症状だけで普通ならむしろインフルエンザではないだろうと判断されそうなケースでも検査をするとインフルエンザだったと言う場合が多く対応に困るようですが、個人の症状としては軽くて良かったで済むとしても集団での感染防御と言う点に関してはこうした非典型例がしばしば厄介な感染源となってしまうようです。

インフル感染後も「鼻水程度の症状」で勤務続行(2015年01月24日読売新聞)

 愛媛県西条市朔日市の西条中央病院でインフルエンザの集団感染が起き、入院患者4人が死亡した問題で、23日の記者会見で、感染拡大を防げなかった病院の体制の甘さが明らかになった。

 会見で、高田泰治院長らは、感染していた職員が勤務を続けたため、職員同士で感染が広がったと説明した。「職員は予防接種を受けていて、鼻水程度の症状はあったが仕事を続けた」として、当初、職員には感染の自覚がなかったことがわかった。16日に集団感染とわかってから、発表が23日まで遅れたことについては、高田院長は「保健所などに報告する義務はないと思っていた」と述べた。
 患者が死亡したことには、「高齢で心臓や腎臓を長く患っており、治療が効かなかった」と説明した。

 県は、西条中央病院の報告が遅かったことから、今月中にも、県内の病院や高齢者施設などに対し、集団感染が起こった場合は迅速に情報を寄せるように周知する文書を出すことを検討している。

いささか事後の対応もお粗末であった点は否めないようで、その意味でもう少し発症者数の抑制は可能であった可能性もあるかと思いますが、日本の医療事情から考えると院内感染が一気に広まってしまうと言うことはどうしても一定確率で起こり得ることであり、その意味ではどの段階でそれが起こっているのかを把握することと、そして気付いた後での適切な対応を取ることについて普段から意識する必要がありそうです。
以前から予防接種を受けているだとか、市販の感冒薬を飲んでいると言った場合に典型的な症状が出にくく診断を誤る可能性があると言う点はよく知られているのですが、そうした履歴がない非典型例の症例に対してどうすべきなのかは迷わしいところで、診断に苦慮するとか一定確率で見逃すと言うところまでは仕方ないにしても、感染症である以上インフルエンザであろうがなかろうがうつさない対策は必要だろうとは思います。
特に症状がはっきりしないのが今年のインフルエンザの特徴ではあるようで、咽頭不快程度の患者に全例で迅速検査を出すかと言えばなかなか医療資源的にも難しい問題がありますけれども、ただ医療従事者の間においてさえ「インフルが出たら面倒だから検査は受けない」と言う人間が一定数いて、そうした人間ほどしばしばきちんとした感染防止策を取らずに仕事を続けているのはどうなのかですね。

この点で医療従事者の認識が甘く「インフルエンザでないから大丈夫」と安易に考えてしまうのは論外としても、一般の職場などでも「ただの風邪だから」とマスクもせずに普通に接客をしているのは他人にとっても危険な行為だと言う認識を持つべきだとも思うのですが、これがあまり行きすぎるといわゆる患者差別問題などにもつながってきてケシカラン!患者にも健常者と同じに暮らす権利がある!と言う話になりかねません。
ただこと院内感染と言うことに関しては最大の感染防御策は収束するまで診療をやめ病棟も閉鎖すると言ったやり方で、今話題のエボラのような感染力も強く致死的な感染症が出た場合に組織としてどうするべきかと言った話は常に議論に登るところですが、インフルエンザだったらどうするか、薬剤耐性菌ではどうなのかと言う個別の議論においては各施設毎の実情を抜きに総論だけで語ることは出来ないですよね。
この点で厄介なこととして国内の医療リソースはよく言えば非常に無駄なく整備されていて、突発的な事態で一部施設が最善の対策を取るためとして一時的にせよ診療をやめてしまうと連鎖的に地域の医療崩壊にも至る恐れがあるのは困った問題ですが、そう考えるとやはり常時満床にしておかなければ経営が成り立たない診療報酬体系などもいざと言う時の対応に向いたシステムではないんだろうなとは思います。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

ゴホゴホやってんだからマスクくらいしろと言いたい!ヒトに風邪をうつすな!

投稿: | 2015年1月27日 (火) 10時06分

小児科ではすでに行われていることですが、病院診察室での感染を防ぐための患者分離など、施設としてもそれなりの対応をしていくべきなのかなと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2015年1月27日 (火) 11時22分

>ゴホゴホやってんだから
流行中は、鼻水程度でも検査してみりゃ軒並み陽性にでる。
>マスクくらいしろと言いたい
それでも漏れて蔓延する。
>ヒトに風邪をうつすな!
お前は偉そうに馬鹿を垂れ流すな。

投稿: 莫迦は黙れ | 2015年1月27日 (火) 11時26分

つまりはこの時期の風邪ってじつは大多数インフルエンザだってことですか?

投稿: てんてん | 2015年1月27日 (火) 12時58分

やってるつもりは 笊に等しいんです。一般内科、小児科の外来は。 そろそろ頭を打ったようですが。

投稿: そう思って対処しなければ | 2015年1月27日 (火) 15時05分

インフルと肺炎は、地味に死に至る病ですからね。

投稿: | 2015年1月27日 (火) 15時29分

>インフルと肺炎は、地味に死に至る病ですからね。
 インフルは 地味にも派手にも、死に至ります。インフルの感染性の強さ、毒力の問題をはぐらかさないでほしい。

http://www.m3.com/iryoIshin/article/291900/
 発症後1日半で急死、インフルエンザ脳症
まつもと医療センターの看護師、3月に症例検討を計画
2015年2月5日(木) 橋本佳子(m3.com編集長)

 生々しい症例報告が公開されてます。
 対策として
>抗インフルエンザ薬も、全職員と前入院患者に対し、おおむね8日間から10日間予防投与した。オセルタミビルが基本だが、服用が難しい患者にはザナミビルまたはペラミビルを使用した。
 
 

投稿: 感情的な医者 | 2015年2月 5日 (木) 11時18分

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