« 大阪の生保プリカ支給案、各方面で議論を呼ぶ | トップページ | 今日のぐり:「料理旅館 冨久美味(ふくみみ)」 »

2015年1月31日 (土)

医療従事者に求められる情報発信とは

猫も杓子もネット利用が当たり前と言う時代ですが、先日こんな記事が出ていたことをご存知でしょうか。

医療者が患者との距離縮める試み 素顔を次々ウェブマガジンに(2015年1月20日産経新聞)

 東日本大震災をきっかけに地域医療に携わる医療者らが、自分たちの素顔を紹介するインターネット上の雑誌「ウェブマガジン(ウェブマガ)」や、住民交流のためのカフェを始めている。患者と医療者の距離を縮める試みとして注目されている。(村島有紀)

交流の場に

 「地方と都市の医療情報の格差を埋めたい」と話すのは、宮城県登米市で在宅診療所「やまと在宅診療所・登米」を運営する医師の田上佑輔さん(34)。東日本大震災で大きな被害を受けた被災地への医師派遣プロジェクトを通じ、地方の医師不足を痛感。東大附属病院(東京都文京区)を休職し、一昨年4月に市立登米市民病院の近くに同診療所を開設した。1日平均10軒を訪問診療する。
 昨年6月には、震災のボランティア活動などで知り合ったウェブデザイナーや後輩医師らとともに、ウェブマガ「coFFee doctors(コーヒードクターズ)」(coffeedoctors.jp)をスタート。診察室では伝わらない医師の素顔を紹介しようと、がんの先進医療、精神科や美容など各界の医師30人のインタビュー記事などを掲載する。昨年末に始めた記事配信では、在宅診療から海外の医療情報まで幅広く扱う。
 田上さんは、ケアマネジャーらが常駐するカフェもオープン。医療関係者と患者、地域住民の交流の場になっている。
 「気軽に話せる環境があれば、医療情報を知っている人が得をして、知らない人が損をするようなことにはならない」と田上さんは語る。

大学病院も

 東北大病院(仙台市青葉区)の広報室が、昨年11月から始めたのはウェブマガ「hesso(へっそ)」(www.hosp.tohoku.ac.jp/hesso)だ。震災前には広報室もなく一般向けに情報を発信する態勢ではなかったが、震災後に転換した。被災地の医療機関に医師を派遣することが増え、地域社会とコミュニケーションを図る重要性が増したためだ。
 ウェブマガの開始は、国立大病院の中では初の取り組みといい、広報室副室長の溝部鈴(れい)さん(39)は「大学病院は、研究の実験台にされるというイメージを持たれがち。しかし、実際はチーム医療で患者にとって最善の医療をしている。大学病院のイメージを変えたい」と話す。

若手の医療者も

 医師や看護師、薬剤師の卵が発信するウェブマガもある。平成25年11月にスタートした「M-Labo(エムラボ)」(mlabo.net)は医療系学生が主に記事を書く。編集長の東京薬科大5年、藤巻慎(しん)さん(24)は、震災直後の23年3月20日に宮城県石巻市に入り、病院などでボランティアをした。
 それをきっかけにチーム医療に関心を持ち、学外の勉強会などに参加。知り合った医学、看護学生らとエムラボを立ち上げた。
 藤巻さんは「医学、薬学、看護学生の情報格差を埋めたい。自分たちが外部に発信することで、外部とも連携しやすくなり、医療が抱える課題を解決できるようにしたい」と話している。

 ■多くの患者にとっても有益

 東大医科学研究所の上昌広特任教授(医療ガバナンス論)の話 「これまで医療界は仲間内で閉じこもることが多く、社会への説明という意識が希薄だった。医療は多様で、現場の医師が直接、自分が直面している具体的な問題を伝えることは、多くの患者にとっても有益。今後、試行錯誤を繰り返しながら、よりよい情報伝達手段として発展していくと思う」

しかし医療の情報発信と言えば、以前に医療崩壊と言うことが盛んに言われ始めた頃から、それまで医療バッシングと言われるほど医療に対して否定的なスタンスで接してきたマスコミ諸社が手のひらを返し始めたのはご記憶かと思いますが、当時マスコミの中の人から「こんなに困っていたのなら、医療側からもっと早くマスコミに発信してほしかった」と責めるようなコメントが出ていたと言うのが懐かしく思い出されますね。
そもそも医療崩壊と言う現象が顕在化し始めた大きな理由の一つとしてネットの発達があり、医療以外の世界に済む方々とごく当たり前に意見交換出来るようになった医師らが「あれ?もしかして俺達の業界の常識って世間の非常識なんじゃね?」と知るようになった、その結果労働者として当たり前の権利を追及し始めたと言うことが挙げられていたかと思いますが、世間から見てもこうしたカルチャーギャップは存在する道理ですよね。
「医者の常識は世間の非常識」と言う言葉は従来マスコミが常套句的に使って来た言葉ですが、医師自身がそのギャップを認識した上で一つは世間並みに常識を是正しようとするだろうし、また世間が思いの外医療事情に無知であると知って啓蒙活動の必要性を自覚するなど、このところマスコミのバイアスを介さないところで市民と医療との交流が進んできたことは基本的には肯定的文脈で捉えられるべきことだと思います。
その意味ではこの種の情報発信もどんどんやった方がいいだろうと言うことなんですが、一方では個人情報保護と言うことが盛んに言われる時代で、ひと頃あちこちの病院公式サイトで掲載されていたスタッフ写真等の個人情報も削除されているところが増えていると言うのは、やはり何かあれば即座に晒されると言うリスクを反映した対応なんだろうなと思うのですが、先日発生したこういう事件を紹介してみましょう。

医師がブラジル人患者家族に「クソ、死ね」 静岡・磐田(2015年1月28日朝日新聞)

 静岡県磐田市立総合病院の20代後半の男性医師が緊急外来で受診したブラジル人の女児(6)や家族と応対中に「クソ、死ね」と口にしていたことが、28日明らかになった。医師は不適切な発言を認め、家族に謝罪したという。

 病院によれば、昨年12月24日午前0時過ぎ、同県菊川市在住の女児が両足の不調を訴えて緊急搬送され、受診した。血液検査などの結果、治療や入院の必要はない軽度のウイルス性紫斑病と判断し、当直医だった医師は十分な栄養と安静を求めて帰宅を促した

 父親は「入院させてほしい」「万一のことがあったら責任を取れるのか」などと医師に詰め寄り、2時間以上にわたって押し問答となった。その際に医師が不適切な言葉をつぶやいたという。

 病院は朝日新聞の取材に対し、「当直医は他の緊急患者にも対応しなければならず、なぜ分かってくれないのかといういらだちからつぶやいてしまったようだ。差別する意図はなかった」と説明した。医師はその日のうちに家族に謝罪し、院長から厳重注意を受けた。

医師がブラジル人の患者に「クソ、死ね」と罵倒、動画流出で非難殺到!(2015年1月27日探偵ウォッチ)

夜間に病院を訪れて治療を求めたブラジル人に対して、応対した医師らが罵倒したとの情報が出回り、非難が殺到した。

今回話題になったのは、2本の動画である。動画には、ブラジル人の男性やその家族らが病院の医師たちと口論になっている場面が映っていた。娘の具合が悪くなったため、夜間に病院を訪れたという。ところが、診療時間外であるという理由で、納得のいく治療を受けることができなかったようだ。

医師も怒り心頭の様子で、ポケットに手を突っ込んだまま「小児科に行け、小児科に」などと乱暴な口調だ。これ以上の処置を受けられないことに納得できない男性が、もし娘の病状がひどかったらどうするかと問うと、医師は「じゃあ、訴えてください。その時はもう、裁判で訴えて」と挑発した。

医師側の主張としては、救急外来で全ての診療を行うことは不可能であるという。また、緊急を要するものではないと判断し、検査についても十分になされていると説明。男性らは、それでも納得できず、他の病院を紹介してくれるように繰り返し要求した。これらのやり取りの途中で、動画は終わる。

特に問題視されているのは、医師の一人が男性らに「クソ、死ね」と発言したとされることだ。当該の場面は動画に収録されていないが、この発言について男性に問いただされた医師らは、頭を下げて謝罪している。動画には、医師のネームプレートも映っていた。それを手がかりに調べると、静岡県磐田市立総合病院と判明した。
(略)

しかしテレビ番組においてもネット動画をただ垂れ流すだけと言う安易な作りのものが昨今増えているようですが、大手の大新聞がネット発の話題をこうして取り上げる時代になってきたわけですね。
実際の動画についてはこちらこちらから各自参照いただきたいと思いますが、動画を見ても判る通り意志疎通や医療システムの違いなどに関しても齟齬があった様子で、ともすると市民の側に立ったコメントに終始しがちな公立病院が珍しくかなり突っ込んだ状況説明をしている点を見ても、当該医師一人を悪者にして済む問題ではなさそうには思います。
興味深いのは各紙の記事では医師の対応に対する批判的な内容で取り上げているものがほとんどなのですが、実際に動画を見た方々からはもう少し別な印象も受ける方が多かったようで、これも他人を晒したつもりが実は自らを晒していたと言う良くある話ではないのかと言う声も少なからずあるようなんですが、そうした事情もあってか当初アップされた動画はすでに削除されたとも言います。
一般論としてこの種の顧客トラブルはどこの業界でもあることとして、そこで汚い言葉を使ってしまっては仕方がないんだろうなと思いますし、その意味で医師らスタッフに対するトラブル対応も含めた接遇教育と言うものはもっと重視されてしかるべきだと思うのですが、ともかく晒すのと晒されるのでは自ずから意味が違うだろうと言う話で、すでに医師の個人情報までもが流出してしまったのがお約束と言うものではあるでしょう。

医療訴訟などにおいてもそうなのですが、今の時代何らかの紛争が発生した場合に当事者の一方がネット等で情報発信を行うと言うことはごく普通のことだとして、当事者の一方が医療従事者であった場合に関しては守秘義務と言うものがあることから情報発信に極めて大きな制約がかかり、結果として相手側の一方的な主張だけが世間に流布してしまうのは不公平ではないか?と言う声はありますよね。
もちろん実際に裁判になればきちんとした証拠に基づいて判断を下されることになるのだろうとは思いますが、一昔前であればこれにマスコミが荷担し「何たる悪徳医師!司法は正義の鉄槌を!」などと煽り立て裁判前に既成事実化していたようなところがありましたから、少なくとも匿名のネットと言う場で双方の立場から意見を戦わせることが出来るようになっただけでもずいぶんと助かっている部分はあるでしょう。
その意味で何かしらトラブルが発生した場合に当事者同士で感情がこじれ後戻り出来ない状況になってしまうことは仕方のない部分もあるかも知れませんが、世間に対してこれはこれこれのやむを得ない事情があってと言い訳の出来ない対応をしてしまうと同情の余地もなくなると言うもので、目の前の顧客だけではなくその背後にある数多の世間の目をも意識した仕事を常時心がけていく必要があるのかも知れませんね。

|

« 大阪の生保プリカ支給案、各方面で議論を呼ぶ | トップページ | 今日のぐり:「料理旅館 冨久美味(ふくみみ)」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

余計なことは言わないくらいの分別はないとね

投稿: | 2015年1月31日 (土) 08時28分

真冬の当直は、戦場だからしょうがないんだと思います。
厚労省が無駄な入院を抑制したから、下手に入院すると余計酷くなる場合もあります。
病院にお金がない!問題が昔からあります。インフルが院内流行しちゃうレベルで、ヤバイのです。

投稿: | 2015年1月31日 (土) 09時17分

暴言に対して厳重注意は妥当な処分でしょうな。

ところで「探偵ウォッチ」の(略)の部分にあった静岡県西部健康福祉センターてなんじゃらほい?と思って調べたら、保健所業務もしているのね。
それにしてもお門違いという気がするのですが。もし病院の体制の不備が見つかれば、この医師に対する同情票が増えるかもしれないけど。

投稿: JSJ | 2015年1月31日 (土) 09時48分

応召義務ってモンペの言いなりになる義務じゃないんだけど
勘違いしたモンペはつけあがらせちゃいけないよ

投稿: | 2015年1月31日 (土) 10時14分

>医師はその日のうちに家族に謝罪し、院長から厳重注意を受けた。
市立総合病院の勤務でしょ?このDR.にとっては渡りに船の
辞める良い切っ掛けになったりして。

投稿: | 2015年1月31日 (土) 11時18分

医者の言う事は聞かないけど、こっちの言い分はすべて聞けとか、普通じゃないですよね。

恐らく医者に対する嫌がらせ、遠回しには退職の強要なのでしょうが、
それが果たしてほかの患者も含めた地域の為になるかどうかは
こちらのブラジル人さんにとっては関係のない話なんでしょうね。

投稿: | 2015年2月 2日 (月) 12時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61052450

この記事へのトラックバック一覧です: 医療従事者に求められる情報発信とは:

« 大阪の生保プリカ支給案、各方面で議論を呼ぶ | トップページ | 今日のぐり:「料理旅館 冨久美味(ふくみみ)」 »