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2015年1月15日 (木)

あらゆるリソースが制約される時代の医療の行方

本日の本題に入る前に、時期的にこれも毎年恒例と言えばそうなんですが、このところ構造的に不足してきているのではないかと思われるニュースが出ていました。

求む!O型 赤十字センター、献血を呼びかけ 適正在庫、半分の日も(2015年1月10日朝日新聞)

 中四国でO型の輸血用血液が足りない状況が続くとして、県赤十字血液センター(松山市)が献血を呼びかけている。適正在庫に対し、400ミリリットル献血で500人分が不足すると見込まれる日もあるという。

 センターによると、冬季は献血者が減るうえ、年末年始が例年に比べ少なかった。さらに医療機関からO型の赤血球製剤の需要が多く寄せられたため、O型の不足が目立つという。献血が3日間ゼロでも対応できる量を適正在庫としているが、今月にこの量を確保できるのは4日程度。最も落ち込むとみられる30日は、適正の半分程度しか在庫がない見通しだ。

 赤血球製剤の有効期間は採血から21日間で、輸血用血液を安定供給するには継続した献血が欠かせない。センターは、発熱や発疹など輸血を受ける人の副作用が少なくて済む400ミリリットルでの献血を呼びかけている。
(略)

血が足りない! 平成39年に85万人分 若者への啓発が鍵握る(2014年12月27日産経新聞)

 高齢化で輸血の需要が増す中、必要量が最も多くなると予測される平成39年に、献血者が約85万人分不足することが日本赤十字社の試算で分かった。厚生労働省と日赤は1月から、「20~30代の若年層への啓発を強化したい」としてフィギュアスケートの羽生結弦選手をキャンペーンに起用し、呼びかけを始める。

 東京都の24年調査によると、輸血用血液製剤の約85%は50歳以上の患者に使用されている。日赤が将来の推計人口を使って計算したところ、輸血用血液製剤の医療機関への供給量は39年にピークを迎え、延べ545万人の献血者が必要となることが分かった。しかし、少子化などにより献血者が減ることから、延べ約85万人分が不足する見込みだという。

 昭和60年度に延べ876万人いた献血者は、平成19年度に過去最低の延べ496万人にまで減少。その後、集団献血に協力する企業の増加などにより回復し、25年度は延べ516万人だった。日赤は4年前に初めて将来予測を公表し、39年に約101万人分が不足すると試算。献血率の増加などにより、今回の試算では不足分は約16万人分減ったものの、いまだに大きく不足している。

 献血が可能な年齢は16歳~69歳までだが、特に若年層の献血者の割合が低くなっている。25年度の10代の献血者(延べ数)は10代全体の6・3%、20代は7・2%、30代は6・7%にとどまっている。そこで、日赤は32年度までにそれぞれ7・0%、8・1%、7・6%に引き上げるとの中期目標を設定。日赤血液事業本部の千葉泰之広報担当参事は「小学生に血液センターを見学してもらったり、職員が命の大切さについて教える出張授業を行ったりして、若年層に献血の重要性を伝えていきたい」としている。

例によって「若者の献血離れ」云々と言う話に持って行かれるのもどうなのかですが、若年者のうちから献血習慣を開始してもらえばその後長期間にわたって安定供給が見込めるわけですから、年配の方々に人生最後の献血のチャンスですなどと呼びかけるよりはまあ効率的ではあるのかなと言う気がします。
ただ献血不足に関して少しばかり現実的な側面を考えてみますと、例のメタボ健診導入以来全国各地の企業で生活習慣病の早期発見、早期治療が政策的に推し進められてきた経緯がありますが、この結果高血圧等々の基礎疾患に対して薬をもらっていると各地の献血センターで献血を拒否されると言った事例が増えてくる可能性はありますよね。
一般論として薬を使っている人は献血中にも薬の成分が残り悪影響を及ぼす可能性があるからだとか、血圧異常のある人は献血後の血圧変動によるトラブルが起こりやすいだとか様々な理由があるようなんですが、日赤としてもこうした問題点を把握しているのでしょう、平成25年から複数の降圧剤を飲んでいても血圧が安定していれば献血可能だと言う通達を出しているようです。
しかし献血の現場を担当している医師は多くアルバイトであって詳しい献血可能条件を承知していない可能性が高いことも考えると、実際には献血可能であっても拒否されている方々も少なからずいるのでしょうし、この辺りはせっかくの善意を無駄にしないためにも運用上の改善をさらに図っていく必要がありそうですよね。
いささか脱線が長くなりましたけれども、一生にそう何度もないだろう難病の治療と言えば誰しもなるべくなら名医にかかりたいと思うものでしょうが、先日こういう記事が出ていたことをご存知でしょうか。

がんの種類ごと 病院の検索システム(2015年1月10日NHK)

全国のがん拠点病院が、がんの種類ごとにこれまで何人の患者を治療してきたのか各病院の実績を検索できるシステムが開発され、国立がん研究センターは、どの病院で治療を受けるのか決める際に役立ててほしいと話しています。

この検索システムは、全国407のがん拠点病院で治療を受けた患者200万人のデータを基に、国立がん研究センターが開発したものです。
肝臓がんや肺がんなどがんの種類を入力すれば、各拠点病院が平成24年までの4年間に何人の患者を治療したのかその実績を調べることができます。
希少がんで治療経験を持つ医師を探すことがなかなかできなかったという患者でも、どの病院に治療したことのある医師がいるのかすぐに知ることができるということです。
システムの利用は、全国のがんの拠点病院に設置されているがん相談支援センターなどの窓口で専門の相談員と共に行え、電話でも受け付けているということです。
システムの開発を担当した国立がん研究センターがん政策科学研究部の東尚弘部長は、「珍しいがんだということで、どこの病院に行ったらいいのか主治医からも分からないと言われるケースも少なくない。情報がなくて困っているという方は、このシステムを病院探しに役立ててもらいたい」と話しています。

治療成績と言うわけではなくあくまでも治療した数の話なんですが、各施設とも近年治療成績公表が当たり前と言う流れであり、そうでなくとも雑誌や書籍でこうした成績の一覧が年中公開され「ここに名医が!」となっているのですから、今後もこうした流れが加速することはあっても逆戻りはちょっと考えにくい時代になってきました。
こういう話を聞くと以前であれば「成績を公表すると治療成績優先で難治症例を拒否する病院が出てくる」と言った弊害も指摘され、また実際に一部病院では治る患者しか受けてくれないと言った問題も起こっているやに聞くのですけれども、医療に関する諸問題が相次いで議論され医療現場の認識が変革されると言う事例が続いてきた今の時代になってくると、これもありなんじゃないかと言う気もしてきます。
治療成績優先の施設には決まり切った術式でやれる患者をどんどんさばき数をこなしてもらう、そして厄介な難症例を敢えて扱うと言う施設ではその分手間暇がかかるわけですから、患者が他施設に流れることで難治症例の治療に集中できると言った棲み分けが出来るのであれば、結果的にこうしたシステムも全体的な癌治療の向上に役立つ可能性があるかも知れませんね。
ただ前述の記事にもあるように今後構造的に献血不足が起こってくるとなれば、かつてのように術中術後好き放題に血液製剤を使っての無理矢理気味な難手術と言うのはやりにくくはなりそうで、いかに侵襲を少なくして効率的に切るかと言うことも単純に合併症の多寡や治療成績以外に、消費する医療リソースとの絡みにおいても追及されるようになってくるように思います。

その意味で結局医療も使えるリソースの範囲内で、場合によっては医療経済的な側面にも配慮しながら行わなければならない時代なのだろうし、これまた医師らの意識改革が求められる問題であると言うことにはなりそうですが、本来的には医療経済学的改善効果を期待されるはずのDPCと言うものも、個々のレセプトが見えにくくなると言う点では善し悪しなのかも知れませんね。
近年では医療訴訟頻発であるとか標準治療やガイドラインの普及に伴って、医者が治療に伴うリスクを冒しにくい時代になっていて、患者からすれば10%は治る可能性があると聞けば是非手術をと希望したくなるでしょうが、切ってもどうせ9割が死ぬとなれば普通は手術の対象にはならないと判断されるのが通例でしょう。
その意味で昔ながらの黙って私に全て任せなさいと言うタイプの先生はインフォームドコンセントの時代には否定的に言われますが、普通の医者には見放されたと言う患者にとってはありがたい存在でもあって、そうした熱心な先生ほど訴訟リスクが高まり医療現場から排除されやすいと言うのも患者からしても紹介する医師の側からしても困った側面もあるわけです。
ともかく色々と余計なことまで考えなければ医療が出来ない時代にはなってきたと言えますが、単純に治療成績がいいから名医だとか治療成績が悪いから…とも言えない事情もまたあると言うことで、医療も患者主体になって自ら選ぶ時代になってくるほど、素人が情報を読み違えて大失敗するリスクがあると言うのは投資などと同じで当たり前のことですよね。

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コメント

まっなるようにしかならんでしょ医療なんて
もう社会保障に贅沢できる時代じゃないよ

投稿: | 2015年1月15日 (木) 09時30分

医療機関もさっさと集約化しる
と思っても中々進まない
よく考えたら医師会は中小病院の経営者が幹部には多いのだった

投稿: | 2015年1月15日 (木) 10時33分

誰しも自分にとっての利益になる方向へと望むものですので、勤務医が勤務医としての権利を追及するなら医師会任せではどうしようもないとは言えると思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年1月15日 (木) 11時07分

国に金がないってイヤだなあ

投稿: まだお | 2015年1月15日 (木) 16時23分

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