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2014年12月10日 (水)

子供にかかわる最近の話題二題

本日は子供にちなんだニュースを二つ取り上げてみたいと思いますけれども、まじ最初に先日こういう不幸な死亡事例があったと報じられ、ちょっとした話題になっています。

見知らぬ人にキスをされた赤ちゃん、ヘルペス感染で死亡 豪州(2014年12月6日びっくり!世界の面白ニュース)

見知らぬ人にキスをされた赤ちゃんが感染症で死亡したというニュースが報じられました。

11月1日、オーストラリアのクイーンズランドで生まれたL.エロイーズちゃんは健康そのものでした。
しかし退院から1週間後から体調が悪化、24日後に死亡したのです…
医師は口唇ヘルペスであると診断しました。

母親のプーさんは「他の赤ちゃんを持つ両親に、ヘルペス感染症の危険性を知って欲しい」と述べています。

出生直後だったと言うことですから恐らく新生児ヘルペスだったのでしょうが、抗ウイルス薬が開発された現在でも高い致命率を示す恐ろしい感染症であることもさることながら、ヘルペスウィルス属全般の特徴として多くの人間が子供の頃からウイルスに感染していて、時折あるいは常時周囲にウイルスをばら撒いていると言う点では、誰もが「加害者」になる可能性があると言うこともやりきれない話ですよね。
この点で新生児ヘルペスの原因はほとんどが周囲の(口唇ヘルペスを持つ)大人のキスによると言われているようですけれども、同じヘルペスウィルス属であるEBウイルスなども何かと色気づいてくる思春期に感染・発症することから俗に”kissing disease”と呼ばれるように、この何気ないキスと言う行為が時に非常に重大な結果を招くことは知っておいた方がよさそうです。

母親のキスで生後11日の赤ちゃんが死亡、ヘルペスウイルスにご注意。(2009年3月1日ナリナリドットコム)

母親が生まれたばかりの赤ちゃんを抱きしめてキスをする。新生児のいる家庭なら日本だけでなく世界中で見られる光景だが、この愛情表現によってわが子を失うという悲劇が英国で発生した。ラス・ショフィールドさんの娘ジェニファーちゃんの人生をたった11日で終わらせたのは、単純ヘルペスウイルス(HSV)。口唇ヘルペスの原因となるウイルスだ。

病気や疲労、ストレスなどで体が弱ったとき、唇の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペス。その原因となるHSVは世界人口の約半数、日本でも10人に1人が感染しているといわれ、年齢が高くなるにつれて感染率も増加する。
ラスさんはジェニファーちゃんを妊娠中にHSV感染が判明し、出産前は医師に風邪の兆候を訴えて抗生物質を処方された。さらに、出産2日後に口唇ヘルペスの治療を受けたが、ラスさんはジェニファーちゃんにキスをし続けていたという。
ジェニファーちゃんは生まれて間もない頃から食欲が振るわず、生後8日目には病院で検査を受けることに。しかし、検査前に容態が急速に悪化したため延命治療を受け、さらにその3日後、家族は延命治療の中断に同意。ジェニファーちゃんは生まれてわずか11日でこの世を去った

口唇ヘルペスは2週間程度で治るものの、原因となるHSVは完全に消えず「三叉神経」の奥に潜んでいる。そのため、体が弱ったときにHSVの活動が活発になり、口唇ヘルペスを再発することが多い。また、免疫を獲得していない成人やアトピー性皮膚炎患者、新生児がこのHSVに感染すると重症化し、新生児の場合は死亡するケースも。新生児の死亡例は、英国で年6件報告されているという。
そのため、医療機関などではHSV感染者に新生児へのキスを避けるよう訴えているが、母親が感染者の場合、新生児でも重症化しないというのが定説。製薬大手グラクソ・スミスクラインのヘルペス専門サイト「Herpes.jp」(http://herpes.jp/)でも、「母親がすでにヘルペスウイルスに感染していて免疫がある場合、新生児の症状はそれほど重症化しません」と説明している。
しかし、ラスさんのケースは出産前にHSV感染が認められたものの、ジェニファーちゃんの出産までに免疫を獲得できなかったことが悲劇を招いたようだ。

ラスさんは、英紙デイリー・ミラーに対して「ジェニファーはHSVに感染していた兆候も口唇ヘルペスの症状も出ていませんでした。子供を失うというのは、母親にとって最も痛みを伴うこと。それは終生、自分の中に刻まれます」とコメント。また、妊娠した女性へより多くの警告を訴えるよう求める手紙を、ゴードン・ブラウン英首相に送ったという。

長年当たり前にやってきた習慣が思わぬ悲劇を呼んだと言うことなんですが、一般にはさほどにキスの習慣が広まっていない日本でも赤ん坊に思わずキスしてしまうと言うことはまあないとは言えないはずで、親御さんはもちろんですが特に体力の低下等もあってヘルペスの出やすい祖父母世代にはくれぐれも用心いただくしかないのかなと言う気がします。
さてもう一つ、こちらもさらに議論を呼びそうな話なんですけれども、以前から当「ぐり研」においても何度か卵子の凍結保存と言う話題を取り上げていて、特に昨年学会が独身者にも保存を容認したりとこのところ対象が拡大中なのですが、その凍結された卵子がずっと後に子供となって生まれていたと言うことがニュースとなっています。

がん発症し高2で卵子を凍結保存、13年後出産(2014年12月6日読売新聞)

 愛知県の女性(30)が、高校時代にがん治療で生殖機能を失う前に卵子を凍結保存し、12年後、受精卵にして子宮に戻し、今年8月に出産していたことが分かった。

 卵子を10年以上凍結保存して出産に至ったケースは珍しいという。

 女性の卵子凍結に関わった桑山正成リプロサポートメディカルリサーチセンター(東京都新宿区)所長によると、女性は高校1年時に血液がんの悪性リンパ腫を発症。抗がん剤治療で不妊になる恐れがあった。そのため高校2年になった2001年に不妊治療施設「加藤レディスクリニック」(同区)で卵子を2個採取し、凍結保存した。悪性リンパ腫は抗がん剤治療などで克服した。

 女性は昨年結婚し、解凍した卵子2個と夫の精子で体外受精を行った。子宮に戻した受精卵1個で妊娠することができ、今年8月、3295グラムの男児を出産した。

留意いただきたいのはこの場合、病気に対する治療によって不妊になりそうだとあらかじめ判っていたことから卵子保存をしていたと言うことなんですが、しかし女子高生の段階ですでにこれだけの決断を強いられ無事子供を持てたと言うこともさることながら、10年以上もたって出産出来たと言うのは長期保存の技術的進歩を示す一方で、あくまでも今回のケースは「珍しい」例外的事例であると言う点は留意いただきたいと思います。
興味深いなと思ったのは男性の場合も同様に不妊になることが予想される治療前の精子保存と言うことは昔から行われていて、こちらも昔から当たり前に子供となって世に出て行っているにも関わらずニュースにならないのは男女不平等じゃないかと言う気もするのですが、まあ男の場合個室に籠もって空容器とある種の体表解剖学的図譜さえあれば事が足りるのですからニュースとしてのドラマチックさでは数段劣ると言うことでしょうか。
以前にも取り上げた通り、今は病気等の理由がなくとも「とうぶん出産しないが、後々高齢で出産しようと思った時に困るかも知れないから」と言う理由で健康な若い人が卵子保存を行うようになってきていて、どこまでそれが行われるべきなのか未だに議論が続いているところですけれども、学会の調査によると卵子保存をした方が後に凍結卵子を体に戻しても実際に出産に至ったのは1割ほどだと言います。
もともと卵子の条件が悪かったのか、子宮など母体の側に妊娠し難い理由があったのか、それとも卵子自体が凍結保存によって痛んでいたのかは何とも言い切れないところですが、これも著名人が高齢出産をするたびに大々的に取り上げられ「まだまだ産める」と勘違いする女性が増えるのでは?と言う声があるのと同様、ニュースとなってこうして取り上げられるのはあくまで成功例だと言うバイアスを認識しておかなければならないですよね。

その意味では今回どういう経緯でこのケースが公表されたのかと言うことも気になるのですが、各社ともはっきりとソースを出していないものの別記事を読む限りでは患者団体を介して女性側から公表したようにも見えますし、学会発表等であれば当然個人情報を隠されているはずですからここまで詳細な本人情報は出て来ないでしょうが、他の患者に勇気を与えると同時に世間では誤解を招く可能性もありそうには感じられます。
アメリカなどでは大企業が女性のキャリア形成の支援の一環として社員の卵子凍結保存に補助金を出す、などと言うところにまで話が進んでいるようで、これ自体も未だナイーブな議論に終始している日本などと比べるとずいぶんとストレートだなと思うのですが、しかしこうして凍結保存された卵子がどれくらいの確率で出産に結びつけられるものなのかと言えば、日本の事例からするとむしろ失敗する確率の方が高そうですよね。
アメリカなどは訴訟社会ですから「話が違う!会社に騙されて人生台無しだ!」と訴えられるリスクもないのだろうかと率直に思いますし、そうでなくともそれが失敗と判った時にはもうどうしようもなくなっていると言う点で極めて悲劇的な状況になりかねないだけに、単純に倫理的に良い、悪いの議論で終わらず学会や専門医の側からも妊娠の成功率等々もっとデータを絡めて積極的に情報発信していただきたいとも感じてしまいます。

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コメント

ほっぺに軽くキスでもうつるんですか???

投稿: ひろみ | 2014年12月10日 (水) 08時35分

精子は数限りなく取れるけど卵子は数が取れないからリスキーですね。
無事にお子さんが生まれてよかったです。

投稿: ぽん太 | 2014年12月10日 (水) 10時04分

水疱が出ている時期の口唇ヘルペスはかなり感染力が強く注意が必要ですが、一般的にはうつったところで大きな問題にはならないと言うことから、罹患する側が過度に恐れる必要はないと思います。
その昔ヘルペスの権威と言われる先生が「ヘルペスが重症化して大変なことになるかどうかは宝くじに当たるようなものだ」と言われていたのを聞いたことがありますが、こういうことにこそ気をつけるべきでしょう。

「宝くじ当たったら」で大喧嘩、夫が思い描いた配分案に妻が激怒。
http://www.narinari.com/Nd/20141128980.html

投稿: 管理人nobu | 2014年12月10日 (水) 11時10分

>ヘルペスが重症化して大変なことになるかどうかは宝くじに当たるようなものだ

だから、過度に恐れる必要はないってことは、
ほっぺにキス禁止とかでもなく、特に対策は必要ないってことかな

おたふくとか重症化して大変になる確率は、宝くじよりだいぶん高いってことなんですかね
だから、子供にワクチン打たせない人がけちょんけちょんに言われるの?

そこらへんの違いがよくわからん
ちなみに、ワクチン否定の人間じゃないですので、単なる素朴な疑問ですから

投稿: | 2014年12月10日 (水) 12時46分

実際はキスしようがしまいがみなさんヘルペスはもらっちゃうんだけどね。
ヘルペスの場合感染を防ぐってのは事実上不可能だから人からもらうのは仕方ない。
でも自分がうつした、死なせたって後悔する可能性は少ないけどあるよねって話。
そういう後悔をしたくなけりゃ親は気をつけなさいよって記事ですよこれは。
ワクチンで防げる病気とはちょっと違う話。


投稿: | 2014年12月10日 (水) 13時13分

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