« 産科の現状は未だ改善途上? | トップページ | 今度は千葉県に独創的な医学部が誕生? »

2014年12月25日 (木)

国がすすめる安い薬が生むトラブル

昨今では国を挙げてジェネリック(後発医薬品)推進と言うことを言っていて、もちろん医療費抑制に簡単に効果が出やすいのだろうし大多数の場合それで問題ないだろうとは思うのですが、それでも同じ成分だから同じ薬なんだと言われてしまうといやそれはちょっと違うだろう…と思ってしまう先生方も多いんじゃないかと思いますが、実際にこんな調査結果が出ているようです。

後発医薬品は信頼不足が普及の妨げ(2014年12月21日NHKニュース)

医薬品の特許が切れたあとに販売される価格の安い「後発医薬品」について、日本医師会の調査で、品質や効果の面で問題があると答えた医師が半数を超え、厚生労働省は、医師の信頼を十分得られていないことが普及の妨げになっているとして、情報提供などに取り組むことにしています。

日本医師会は、ことし10月から11月にかけて、全国の診療所の医師3410人を対象に調査を行い、45%に当たる1519人から回答を得ました。
それによりますと、医薬品の特許が切れたあとに販売される価格の安い「後発医薬品」、いわゆるジェネリックについて、複数回答で尋ねたところ、副作用の面で問題があると答えたのは30%でした。
その一方で、薬の破損や変色など、品質の面で問題があると答えた医師は54%、薬の効果の面で問題があると答えた医師は50%でした。
「後発医薬品」の普及率は去年9月の段階で46.9%と欧米諸国より低くなっており、平成29年度末までに60%以上への引き上げを目指している厚生労働省は、「医師の信頼を十分得られていないことが普及の妨げになっている可能性がある」として、「後発医薬品」に関する情報提供などに取り組むことにしています。

まあうどん県あたりで何軒か食べ比べをして回るだけでも、同じ小麦粉と塩、水を使って何故これほど違ううどんが出来るのか?と誰しも感じるところでしょうが、あれを全部「同じ成分同じうどん」と言われたのでは長年修行をしうどん打ちの技を極めた名人級の職人さんの立つ瀬がなさ過ぎると言うものですよね。
とは言え実際に効果が明らかに違うと実感されるようなゾロも一部あるやなしやに噂もあるとは言え、概ね多少の違いはあれど臨床上はまあ用法用量の調節くらいで加減出来ると言うのは使う対象である人間の側のばらつきの方が薬のそれよりもずっと違うからでしょうし、仮に効果が1割劣ると言っても値段が半分ならばまあ大多数の人間はそっちでいいかと考えるものなんだろうと思います。
それだけに先発品ならまだしも後発品は勝手に薬局で相談して決めてと適当に投げっぱなしにしている先生がほとんどなんだろうと思いきや、実はこんな不思議な?ケースもあると言う症例報告があったことを紹介しておきましょう。

「後発品の銘柄処方」を認めていいのか(2014年12月19日DIオンライン)

(略)
 さて、今回の薬価収載に関する話題ではないのですが、後発品に関連して、ちょっと気になることがありました。発売前、メーカーMR氏や卸MS氏から色々な情報をもらうのですが、その中で、「A医院はXX社の後発品を『変更不可』で出すようです」という話を耳にしたのです。

 処方箋の「変更不可」の欄にチェックが付けられてくるケースは、時々あります。もちろん、様々な理由があってのことだと思うのですが、ちょっと困ったケースとして、後発品がメーカー名入りの商品名で記載され、しかも変更不可にチェックが付いている、いわゆる「後発品の銘柄処方」があります。

 この変更不可チェック欄は、そもそも「先発品から後発品に変更しないように」という医師の意思表示であって、後発品の銘柄処方に用いるというのは、ちょっと目的が違うと思うのです。もちろん、味が良い、剤形に特徴があるなど、特定の後発品を使用したくてチェックを入れるケースもあるとは思いますが、実際のところ多くの処方箋を見ていて、そのような印象を受けるケースはごくまれです。

 今回、MR・MS氏の話を総合すると、どうやらXX社は医師に対して、「当社の後発品を変更不可で出してください」という働き掛けをしているようだとのこと。これまで受けたA医院の変更不可処方箋も、そういえば全てXX社の製品についてだったと、合点がいきました。

 メーカーはもちろん、自社製品のシェア拡大を至上命題としているのでしょう。各薬局に売り込むよりも、処方元を押さえた方が確実だというのも分かりますが、こうした制度の側面を突いたプロモーションというのは感心しません。
(略)
 こうした制度の不適切な運用は、薬局の在庫負担を増やすだけでなく、医療資源の浪費にもつながります。一部のメーカーが利を得て、国民がそのツケを払うようなことは、決してあってはならないと思いますが、いかがでしょうか。

もの凄く単純な話として何が先発品で何が後発品かよく判らない場合と言うのもまあないわけではないのだろうし、先発品に何かしら思い入れがあるなら後発品であっても同様のことがあってもおかしくないとは思うのですが、書かれている内容が事実であるとすると単純にメーカー担当者が熱心であり処方医もそれに乗ってしまったと言うことなのでしょうか(まあそうまで熱心なゾロメーカーさんもそれはそれで感心と言う気もしますが)。
実際にやたらと処方にこだわりがある先生がいて、もちろんガイドラインや個人的知見など何らかの医学的な理由があって「こちらの方がより患者のためになる」と言う理由ならまあ構わないのですけれども、他の先生のかかりつけ患者がたまたま一度その先生の外来に来た瞬間に処方を変更してしまう、しかも同じ系統の薬で別に効果が違うようにも思えないとなるとなんだかなあと言う気がしてしまいます。
臨床研究での不正や疑惑が続き、昨今では製薬会社の方でも業界自主規制の強化等々で様々な縛りがあって、学会の休憩所に無料のドリンクさえなくなったとこぼしている先生もいるやに聞きますが、企業が弁当代を負担するランチョンセミナーについて学会参加者の7割があった方がいいと言い、一方で宣伝混じりの講演内容であったとしても気にしない、処方等で影響はされないと言う声が多かったと言います。
確かに企業協賛の講演会ではあからさまな宣伝スライドを出す講師先生もいらっしゃいますが、あれは宣伝戦略上むしろ逆効果なんじゃないかと言う気もする一方でスポンサーに対する配慮上の必要悪だと考えると、「こんな会社の薬は絶対処方するまい」と参加者に考えさせるくらいに露骨に扱っておいた方が変に企業との癒着を疑われずにすむと言う可能性もありますよね。

ただ面白いと思ったのが製薬会社側からの各種便宜が自主規制された結果、実は病院・医師の側においてもMRの扱いが厳しくなって訪問規制を強化する病院が多数に登っていると言う話で、もちろんこれまた余計な誤解を避けるだとか様々な理由付けはあるのでしょうが、やはり個人的に親密になっているとそれなりの有り難みもあったのか?と逆に痛くもない腹を探られることにもなりかねない話でもあるでしょう。
公的病院と私的病院でこの辺りの基準に差があるべきなのかどうかも考え方が別れるところだと思いますが、一般論として治験などに関わりのない末端の小さな私的医療機関で癒着による弊害がせいぜい処方箋の変更不可のチェックくらいなのだとすれば、個人的にメーカーさんとつながりを強化して何かしらの実益を取ると言う先生も当然にいるだろうとは思いますが、さてそれがどれほど悪いことなのかが問題ですよね。
何らかの理由から特定の先発品を指定するのが有りなら特定の後発品を指定するのも有りでなければおかしいし、あくまでも同じ成分で同じ薬だと言い張るなら銘柄を指定させることがおかしいと言う話ですが、先発品指定と違って後発品指定ならそもそも国が使用を推奨している安い薬ですから実は悪い話ではないし、特定ブランドしか置いてないので困ると言うなら薬局側にも何故その薬だけなのか?と言う説明責任はある理屈です。
実際に医薬分業と院外処方の普及もあって、メーカーさんの接待なども何かと世間の風当たりも厳しい医師から調剤薬局の方へ軸足を移しつつあると言う風の噂も聞くところなんですが、薬局にしろ安く入れてくれるメーカーがいれば親しくなっておくに越したことはないのは当然で、世間で当たり前に行われている商習慣をどこまで問題有るものと判断するのかはなかなか難しいものがありそうですね。

|

« 産科の現状は未だ改善途上? | トップページ | 今度は千葉県に独創的な医学部が誕生? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

まじめな臨床の話をするならば、
薬の銘柄をコロコロ変えるのは、添加物に対するアレルギーに起因する副作用のリスクを増大させるだけで、臨床上の利益はないので避けたほうがよいと思っています。
血中濃度の維持がクリティカルな意味を持つ薬も、銘柄を変えるのは避けたほうが無難です。
こういった理由でのジェネリックの銘柄指定はアリだと思います。

あたかも医師と製薬会社の癒着が最大の理由であるかのように示唆する日経DIの記事は下衆です。

投稿: JSJ | 2014年12月25日 (木) 08時50分

ゾロの薬価がバラバラな理由って何なんだろ?

投稿: | 2014年12月25日 (木) 09時09分

先発品も後発品も全部同じ値段なら純粋に医学的理由だけで処方が決まるでしょうかね。
先発メーカーも減価償却は終わってたら損はしないですむんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2014年12月25日 (木) 09時29分

>病院・医師の側においてもMRの扱いが厳しくなって訪問規制を強化する病院が多数に登っている

患者ならどんなモンペでも一応はお金払ってくれるお客様だけどw、金にもならんのにいけすかんMRに会ってやる理由はないですもんねえ。ウチも一人出入り禁止にしましたw。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年12月25日 (木) 09時39分

なんか複雑怪奇だなー
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2014-08-18

投稿: | 2014年12月25日 (木) 10時08分

基本的には薬価と言う国の決めた制度に最大の問題があることなのだと思いますが、ジェネリックメーカーにしても安定供給と言う点でいささか懸念があるとは言われるところですね。
何度も途中撤退を繰り返しているようなメーカーはさすがに利用に躊躇するところがありますが、そうしたブラックリスト?は医療の側ではあまり見かけないのですが薬剤業界では共有しているのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2014年12月25日 (木) 10時16分

薬局は先発品と一番安い後発品だけ置いとけばいいのでは?って気がしますが。
中間の値段の後発品メーカーが困るんだろうけど。

投稿: てんてん | 2014年12月25日 (木) 12時59分

 田舎の開業医として,ジェネリックが国としての医療費を下げるために必要であると理解しても,少しでも先発に近いものを探しますねえ.あの薬は直系子会社で作ってる,あの薬は先発で開発した人が天下った会社で作ってる,あの薬はコーティングが先発と同じ,等々.それらは変更不可.分かる範囲で患者さんの不利益が出ないようにはしたいです.日経の記事は,ほんと下衆,かつおバカ,ですな.

投稿: | 2014年12月25日 (木) 22時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/60855195

この記事へのトラックバック一覧です: 国がすすめる安い薬が生むトラブル:

« 産科の現状は未だ改善途上? | トップページ | 今度は千葉県に独創的な医学部が誕生? »