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2014年12月18日 (木)

お役所的対応?によって生まれた混乱

臓器移植に関して言えば日本では公正中立を厳重に守って行われている建前で、ひと頃国内でも話題になった臓器売買のような行為は臓器移植法によって裁かれることになりますけれども、やはり必要数に対してドナーからの提供数が圧倒的に不足しているのは事実であり、また巨額のお金を支払って海外に臓器移植をしに行くのが臓器売買とどう違うのか?と言う根強い意見もありますよね。
そうではあってもとりあえず大多数の一般人に関してはきちんと医学的な優先順位のみに従って配分されていると言う信頼関係は非常に重要視されるべきなのは言うまでもありませんが、先日珍しくこの手順にミスがあったと言う報道がなされています。

脳死移植、臓器提供時に待機患者の選定でミス(2014年12月16日読売新聞)

 日本臓器移植ネットワークは15日、今年11月中旬に行われた脳死判定後の臓器提供の際に、待機患者の選定作業にミスがあったと発表した。

 ミスがあったのは、11月14日、東京都内の病院で脳死判定された30歳代男性のケース。男性は心臓、肺、肝臓、腎臓などを提供したが、膵臓(すいぞう)は医学的理由で提供できなかった。

 発表によると、同ネットワークの担当者が待機者リストに基づき腎臓移植の希望者の意思確認をする際、膵臓と腎臓の同時移植の希望者にも腎臓のみの移植を受けるかどうか意思を確認すべきところを、同時移植の希望者は対象外と誤解し、リスト上では下位にある腎臓のみの移植希望者を優先させた。手術が始まった後に、別の担当者が選定手順のミスに気づいたという。

 同ネットワークは、主治医を通じて意思確認の対象から外された患者に直ちに連絡し、今月上旬には、この患者に経緯を説明して謝罪したという。

 

脳死腎移植で手続きミス 希望聞かずに次の希望者に移植(2014年12月15日産経新聞)

 日本臓器移植ネットワークは15日、11月中旬に行われた脳死腎移植で、本来なら腎移植を受けるか意思を確認すべきだった患者に確認せずに、次の希望者に移植を行ったと発表した。患者が膵(すい)臓(ぞう)との同時移植を希望しており、腎臓単独の移植の際は意思を確認する必要がないと担当者が誤解したため。患者は体調不良のため移植を受けられない状態で、結果的に移植が行われた患者の順序に影響はなかったという。

 同ネットワークによると、ドナーは30代男性で、腎臓のほか心臓や肺、膵臓などの提供を希望していたが、膵臓は医学的に提供が見送られた。腎移植の手術が始まる直前に同ネットワークが対応を誤ったことに気づき、本来なら意思確認すべきだった患者に連絡した。しかし、すでに手術は開始されていたことから、脳死移植手続きを検証する厚生労働省の会議は、手術が中止できない段階で軽々に患者側に連絡を取ったことを不適切と判断。厚労省は、再発防止を文書で指導する。

事実関係を整理しますと本来移植の優先順位で上位にあるはずの方に連絡しないまま、順位下位の方に移植の手術を始めた段階で選定のミスに気付いた、そして大慌てで本来の対象者に連絡を取ったがたまたまその対象者は移植が出来ない状態で、結局そのまま順位下位の対象者に対する移植手術が行われたと言うことです。
もちろんルールを誤解したミスである以上今後の再発防止策をきちんと講じて頂くのは当然なんですが、ここで注目頂きたいのはこの一件を検証した厚労省の会議が「手術が中止できない段階で軽々に患者側に連絡を取ったこと」を不適切だと判断した点で、確かにすでに手術も始まっている状態で本来の対象者が移植を希望したところで、今さら手術を中止したり出来るのかと言う話ではありますよね。
結果としてたまたまこれでよかったと言う形に落ち着いたとは言え、この段階では手術が終わってから謝罪の連絡をする等の方が混乱しなかったのでは?と言う考えももちろんあるはずなんですが、ただ手術が始まったからと言って絶対に中止出来ないと言うわけでもないのだろうし、本来の対象者が「それはそちらの問題で、こちらは正当な権利を要求してるだけですから」と断固臓器提供を主張していればどうなっていたかですよね。
この辺りは移植ネットワークと移植希望者との契約関係がどのようになっているのかが判らない限り何とも言えない話なんですが、一般論として言えば顧客に被害を与えるような不始末をしでかした場合にはなるべく早く連絡し早急な是正を図るのが当たり前でしょうから、この場合果たして何が正解だったのかと言う点に関してはかなり微妙な議論になりそうな気はします。
同じく微妙な議論になりそうだと言う点で気になったのが先日出ていたこちらの事件なのですが、これまた法務省の見解が果たして妥当なのかどうか?と言うと立場によって様々な解釈の余地がありそうに思いますね。

入管で外国人男性死亡 法務省「常勤医の不在が問題」(2014年11月21日朝日新聞)

 不法滞在の外国人などを収容する東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で3月、外国人男性2人が相次いで死亡する事案があり、法務省は20日、1人が体調の異変を訴えたにもかかわらず医師に受診をさせないなど、医療態勢に問題があったと発表した。常勤の医師がいないため、今後、常勤医を確保するなどの改善を図るという。

 問題があったのは、国外退去を命じられて収容されたカメルーン人男性(43)への対応。男性は3月30日朝、意識がない状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。

 同省の調査によると、男性は16日に脚の痛みを訴えたが、医師の診察は27日だった。その後も胸の痛みなどがあったが、土日で非常勤の医師もおらず、外部の医師にも相談しなかった

 同省入国管理局は「診療を受けていたら助かった可能性は否定できない」と説明。センターは2012年度から常勤医が不在だといい、今後は、非常勤や民間の医師に速やかに判断を仰ぐよう改善するという。

 一方、食事中にのどを詰まらせて死亡したイラン人男性(33)の対応について、同局は「適切だった」と説明した。

ちなみにこの東日本入国管理センターなる施設は千葉県の中でもかなり田舎と言ってよさそうな立地ではあるのですが、近隣には医療機関もそれなりにあるようですから決して医療過疎地域と言うほどでもなさそうですから、収容者数最大700人の施設に対して現在非常勤医師一人と言う態勢が妥当なのかどうかは一概には言い難いところがあるかとも思います。
ただ近年たびたび話題になっている刑務所の医療問題に関してもそうですが、法律に従って人権を制約し収容している施設での出来事となれば収容している側が全面的に責任を負うのが当然で、例えば立場を変えて日本人が某国で強制収容所に押し込められ死亡したなどと言うニュースを聞けば、一体どんなひどい扱いを受けていたのか?国は抗議すべきではないか?とまあ多くの人々は面白い気分にはならないでしょう。
ちなみに沖縄などで米軍兵士が犯罪行為を犯した場合に、日本で裁判をして罪を償わせるべきだと言う世論に対して米国内では未だに根強い反対論があるのも、日本ではひとたび起訴されればまず確実に有罪になるとんでもない国だと言う誤解?が流布しているのも一因だと言いますが、この辺りは司法制度による違いもあるとは言え、これまた逆の立場になれば現地での裁判の公平性に疑問を抱く心理は理解出来ます。

いささか脱線しましたけれども、ともかくもこうした状況に関しては所轄官庁である法務省が責任を持つべきなのは当然だし、同省とすれば常勤医がいれば何も問題なかったのだと言いたくなる事情もまあ理解は出来ることなのですが、これも刑務所における常勤医確保の問題と同様に世間的にも決して余ってはいない医師と言うものを、言ってみれば犯罪者にだけ手厚く遇するのは何事かと言う庶民感情もありそうです。
今回の事件を見ていて非常勤医がいない時間帯であったにも関わらず外部の医師にも相談しておらず、また16日の訴えに対して診察が27日になっているなど何かと施設内での態勢に問題がありそうなのは確かなんですが、この種の施設であれば何事も大げさに言い立てる人も一定数いるでしょうから、職員としては詐病も含めて全部まともに取り合っていては仕事にならないと言う考えもあったのかも知れません。
また外部の医師にと言いますがそのコストは誰が負担すべきなのか、また近隣医療機関を受診するとなれば付き添い職員が必要でこれまたたびたびのことでは仕事にならないだろうとなれば、やはり施設側の要望としても常勤医がいてくれればと言うことなのでしょうが、一方で医療特に医師の側の立場から見ればこういう(言ってみれば何ら勤務にメリットのない)職場にはなかなか求職者は出て来ないんじゃないかと言う気はします。
それぞれの立場からの考え方が別れている中で最終的にどの立場に立って決着がつくのかですけれども、法務省にしろ入管にしろ基本的に医療との間に伝手はないのですから、変に常勤を囲い込もうだとか特別なことを考えるよりは近隣医療機関と連絡を密にして、一般の大規模入居施設などと全く同様に地域医療連携の中で動く方が話も早いし混乱も少ないように思いますがどうでしょうね。

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コメント

強制退去該当者なのだから、カメルーンならカメルーン、イランならイランの
大使館付きの医官に診て貰えばイイじゃないですか、
大使館が東京にあって そんな遠くじゃ診れないってんなら
それこそ僻地医療用のWeb診察システムを使ってですなあ …じゃダメ?

投稿: | 2014年12月18日 (木) 08時20分

難民申請をした方々もいる場所ですから、母国?の大使館の医官の診察を受けさせるほうが人権上問題がありそうな気がします。

投稿: クマ | 2014年12月18日 (木) 09時08分

素朴な疑問としてこれ言葉の問題は大丈夫なんですかね?
難民が日本語や英語しゃべるとは思えないしマイナー民族もいるだろうし。
言葉が通じなくて症状伝えられない人もいるんじゃないかしら。

投稿: ぽん太 | 2014年12月18日 (木) 09時21分

>日本ではひとたび起訴されればまず確実に有罪になるとんでもない国だ
http://blog-imgs-37.fc2.com/a/b/c/abc60w/20110416165425806.jpg
日本の無罪率を見るとあながち間違いでも無いですね。
日本の場合は検察に権力が集中していて起訴するかしないかも検察の判断なので
検察が無罪になりそうな犯罪は起訴しなかったりするのが原因ですが

投稿: | 2014年12月18日 (木) 09時22分

司法制度の違いと言えば今ちょうどサッカー代表監督がスペインで八百長試合に関わったのでは?と刑事告発された件が報道されていて、日本ではもう解任が確定的のように言われているようです。
ただ向こうでは検察が告発を受けて初めて捜査し始めるシステムであるためとりあえず関係者全員に網をかけたと言う状況だそうで、現地と日本で受け止め方に全く違いがあるとも言いますね。
どんな制度がいいのかは歴史的経緯もあって何とも言えませんが、日本のシステムですと検察が判断の大きな部分を握っていて裁判が形骸化するのでは?と言う印象は持たれやすいかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2014年12月18日 (木) 10時29分

なんでさっさと送り返さんのかな?

投稿: | 2014年12月18日 (木) 12時14分

東日本入国管理センターは、ここ1年で4人殺しているのだそうです。
毎年誰かが死ぬのは偶然ですかね。いびり殺しているのではないのかな。
成田空港では、数人で抑え込んで窒息死させたそうです。
外国人をいじめるのは楽しいと、いった担当者もいるようです。
どのような犯罪者にであれ、こんなことをして、日本は大丈夫なのか心配です。
東日本入国管理センターの方に聞いてみたい。
間接的でも人を殺した後、どんな気分?
家に帰って、家族と楽しく、笑いながら食事ができるの?
殺さなくてもいいでしょ!即刻強制送還すればいいでしょ!

投稿: | 2015年10月25日 (日) 22時42分

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