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2014年12月 4日 (木)

それは新たな雇用差別?

好景気とまでは言わないのでしょうが、このところ実感的に求人が活発化しているようには思われるところで、話に聞くところでは仕事はあるのに人手不足で十分こなせないと言う業界・企業も少なくないのだそうですが、今ひとつ経済成長と言う形で数字に表れてこないのもその辺りのミスマッチが大きいと言うことなのかも知れませんね。
資格職で供給が限られている上に需要はいくらでもあるにも関わらず国策的に抑制されていると言う医療業界ではこの辺りが昔から不自然なことになっていて、単純に経済原理や自由競争で労働市場が動いていない状況こそがむしろ当たり前になっていますけれども、このところ世間においても人材雇用に関して奇妙な恣意的状況が発生している?と言う記事が出ていました。

障害者求人が急増のナゼ(2014年11月27日日経ビジネス)

(略)
精神障害者が急増中

 厚生労働省の障害者白書によれば、国内の障害者の数は約744万人(2013年、推計値)。国民のおよそ6%に当たる。内訳は身体障害者が366万人で知的障害者が55万人、精神障害者が323万人だ。精神障害者はここ10年で約1.6倍と急増している。
 一方、民間企業に雇用される障害者の数は43万1000人(厚生労働省調べ。2014年の公表値。※障害者の数は重度の知的・身体障害者はダブルカウント。身体・知的・精神障害者のうち、短時間労働者は0.5人でカウント)。10年で17万人以上、実に67%増えているが、その数値はあまりにも小さい
 国も雇用対策を打ち出した。昨年4月の法定雇用率の引き上げがそれだ。事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある(障害者雇用率制度)。この法定雇用率が昨年4月に1.8%から2.0%へと引き上げられた(法改正前は従業員56人以上の企業。改正後は同50人以上)。
 法定雇用率を下回れば是正勧告があり、それでも改善が見られない場合は公表される。企業は従業員数に応じて障害者を多く採用しなければならなくなったのだ。
 障害者の雇用促進と継続は、重要な課題だ。しかし、利益の拡大を追求する企業にとって、障害者雇用は“ボランティア”というわけにはいかない。より戦力となる人材を求めて、新卒や中途採用市場が過熱している。
 ハローワークを通じた企業の求人は2003年に8万8000人程度だったが、10年で約2.4倍の17万人に上昇。有能な人材の争奪戦も繰り広げられているという。

身体障害者に雇用が集中

 民間企業で働く約41万人の障害者のうち、4人に3人は身体障害者だ。企業からのニーズが高いのは身体障害者だという。体が不自由な中でも、こなせる仕事の幅が広い点で企業が積極的に採用しているという。
 一方、ニーズの高さから新規での身体障害者の採用は難しく、企業は知的障害者や精神障害者へと採用の幅を広げている。精神障害者の雇用が法定雇用率にカウントされるようになったのは2006年。当時は2000人程度だったが、2013年には2万2000人へと増えている
 ハローワークにおける障害者の雇用件数では、これまで最多だった身体障害者の就職件数を精神障害者が抜いた。人材紹介会社のインテリジェンスの子会社で、障害者雇用の紹介業を営むフロンティアチャレンジの大濱徹・人材紹介事業部ゼネラルマネジャーは次のように予測する。「今後は就職件数の差が拡大して2019年には精神障害者が7万9000件と、3万5000件の身体障害者の倍以上になる」。国は2018年4月から精神障害者の雇用義務付けを決定している。
 精神障害者や知的障害者をいかにして戦力化するか。東京海上ビジネスサポートの桜井さんは、「適性に合った仕事を見つけることで十分対応可能だ」と語る。
 コミュニケーションを得意としない人には情報処理の仕事を任せる。多動性障害など、じっとしているのが困難な人には社内を循環して資源ごみを回収する仕事を担ってもらうなど、現場での創意工夫が雇用の継続につながっている。
(略)
 学校教育の考え方も変わってきている。東京都は、従来の特別支援学校とは異なる、新たな学校を設置している。東京都特別支援教育推進計画に基づき、生徒全員の就職を目指す障害者向けの新たな学校だ。
 その1つが2008年に開校した永福学園(杉並区)だ。同校は、専門教科として「流通サービス系列」や「家政系列」を置く。流通サービス系では商品の入出荷や在庫管理などを学ぶロジスティクスコースや専用機材を使う清掃を学ぶビルクリーニングコースがあり、家政系列ではカフェやレストランでの接客や調理を学ぶ食品コースにホームヘルパーなどの資格を取得する福祉コースがある。1年生の時にすべてのコースを体験し、2年生に進級した際に自分に合ったコースを選択して学ぶ仕組みだ。
 ほかにも、情報処理を学べるなど豊富な学習プランを用意し、就職を意識した学校になっており、今春卒業した学生の就職率は96%(4月末現在)。ほぼ全員の就職が決まっている。
 企業もこうした学校に協力し、教育資材を提供したり、市民講座として授業を実施したりする。これはCSR(企業の社会的責任)という観点からの行動だけでなく、講座を開くことで有能な生徒を早期に見つけて採用につなげる目的もあるという。
(略)

人間誰しもこなせる仕事の一つ二つはあると言うもので、基本的には政策的誘導がうまくいったと言う好ましい話ではないかと思うのですが、しかし昨今ではブラック紛いの企業に勤めて心身を壊し就労もままならなくなったと言う話もしばしば聞くところですが、そうした方々からすれば「自分達にもこれくらいの手厚い配慮があれば…」とやや苦い思いを抱くものなのかも知れません。
特にここで興味深いのが比較的条件が良い身体障害者に関してはほぼ供給が頭打ちになってきている、その結果法定雇用率引き上げに対応するためこれまで雇用上不利だった知的障害者や精神障害者の需要が急増している点で、全体からすればまだまだ少ないのも事実なんですが、7年やそこらで雇用数が11倍にも増えたと言うのは大変な勢いですよね。
ただここで気になるのがこうして精神障害者が雇用において非常に有利だと言う話になると、前述のような就労に失敗した方々の敗者復活戦枠になると言うのであればまだしもなんですが、昨今一部に犯罪行為を犯す前にまず精神科にかかっておけ、などと言うような良からぬ風潮もあるようですから、詐病的なことをする方々が出て来ないのかですよね。
難しいのは企業側にとってみれば一つには法定の障害者雇用枠が埋まることが大前提で、その上で戦力として使えるなら言うことはないと言う話なんですが、健常者が詐病することで障害者として雇用されるなら企業と被雇用者双方にとってwin-winの関係にもなり得ると言う点ではないかと思います。
それでもまだそうした議論が成立するだけマシなのだ、生まれついての障害者にはそんな選択肢もないと言う意見もあるでしょうが、近ごろでは何事にも特権扱いと言うことが忌避される世相を反映してのことでしょうか、この生まれついての仕方ない属性による就職差別は問題だと言う声もあるようなんですね。

名古屋市採用試験は「女性優遇ではないか」 疑惑の原因は二次試験の面接にある?(2014年12月2日J-CASTニュース)

安倍晋三内閣がアベノミクスの成長戦略のひとつに掲げる「女性の活躍推進」の後押しもあって、女性の積極登用が進んでいる。そうした中、自治体の職員採用試験で「女性が優遇されているのではないか」との声が出てきた。
「行き過ぎた」女性の採用で、男性の就職機会が奪われているというのだ。

名古屋市の職員採用試験の結果を見て「あぜん」・・・

2014年度に行われた名古屋市の職員採用試験は「女性優遇ではないか」――。12月1日付の朝日新聞(8面「Opinion」欄)に、こんな声が寄せられた。
名古屋市の職員採用試験は、第1類免許資格職の事務系(行政一般、法律、経済、福祉の4区分)に、男性1196人、女性635人が受験した。1次試験の合格率は男性39%、女性37%。ところが、2次試験のそれは男性が36%だったのに対して女性は65%とハネ上がり、最終的な合格者は男性168人、女性155人と拮抗した。
この結果に、投稿者は「あぜんとしてしまった」といい、「人為的な性差別が行われたと推認せざるを得ないのではないか」との疑問を投げかけた。
「ほかに能力の高い男性がいるのに、女性が優先的に採用・登用されたとすれば、これは男性差別にとどまらず、能力主義の否定でもあり、大問題であると思う」とも述べている。
名古屋市は「性別への配慮はありません」(人事委員会)と言い切る。「合否の判定時には(担当者は)性別などのデータはもっていません」と説明。男女の差がなかったのは、あくまで「結果」という。
市によると、「特別な取り組みをしているようなことはありませんが、ここ数年、女性の採用比率が上がっているのは事実です」と話す。ただ、採用試験では「そういった(女性を優遇するような)判断はなく、採点で上から順番に採用していった結果です」と、恣意的なことはないと強調する。

じつは「女性優遇」について、自治体の職員採用試験への不信感は、2013年10月に大阪府の「府民の声」にも寄せられていた。
そこでは、「大阪府職員採用試験の男女合格率の男女差は、『雇用機会均等』の趣旨から逸脱した、過度な『女性優遇』=『男女差別』であり、看過し得ない状況にある」と指摘。「『人物重視』で選考をした結果ということだが、男性は人物面で女性に数倍も劣るのか。あるいは女性を優先採用して当然と考えているのであれば、その旨を根拠とともに、募集要項に記載すべきでないか。仮に女性優遇方針がないのに選考基準でこのような歪んだ格差が生じるのであれば、選考基準に問題があるのではないか」と厳しく質しており、「直ちに是正すべき」としていた。
「合否の結果から、そういった疑念をもつ人もいるかも」
こうした「府民の声」に、大阪府は「女性が多いことは認識しています」としながらも、「あくまで試験の結果ですし、性別で合否を判断することはありません。(府民の声は)ご意見として、うかがっています」(人事委員会)と話している。
「男性への不利益は、公平性の観点から断じてありません。合否の結果だけを見ると、そういった疑念をもつ人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません」と、「女性優遇」については繰り返し否定する。
(略)

結果的に採用比率が半々であれば平等なのではないか?と言う意見もあるでしょうが、もともとの応募者数が倍ほども違うのですから競争率は大きく違うはずで、それほど男女の能力差があったのか?と疑問の余地は残りそうですよね。
この種の採用試験における公平性担保と言うものが昔から議論されていて、そもそも出身校や履歴など個人情報を問うのも差別につながるから廃止すべきだと言う声もあるようなんですが、それでも一次のペーパー試験だけの結果であれば男女均等であると言うのは、そうした性差を抜きに公平に判断しているのか?と肯定的に評価したくなる話でもありますよね。
一方で二次試験が面接であると言うことが話をややこしくしていると思うのですが、もちろん目で見て声を聞けば男か女かは明らかに判断出来るのですからどうしてもそこに性差のバイアスが入り込むのは避けられない、そして昨今お役所と言ってもやはりソフトな接遇が重視される時代ですから、まあむさ苦しい野郎よりはうら若い女性の方が高評価にはなるのか?と言う解釈は出来るのでしょうか(それはそれで容姿差別と言われそうですが)。
雇用機会の平等と言うことがうたわる時代になり、実際には明らかにこの職種にはこういう人が向いていると言う現場の都合とのミスマッチが発生するようにもなっていて、そうした場合に表向きは条件を付けずに募集をかけておいて公平平等な選考の結果こうなりましたと偏った選考をすることはままあるそうですが、ただ正直役所の仕事にそこまで男女間での使い勝手の違いがあるのかどうかと言う疑問もありますよね。
この辺りはもちろん政府の方針に従って女性雇用を増やすと言う現場判断も反映されているはずなんですが、それでは今までどれだけ女性採用を渋って来たんだよと突っ込みが入る余地はあるだろうし、こうまで露骨な数字合わせに走っては後で困ることはないのか?と心配になるのですけれども、強いて言えば恣意的選択の結果として男でも女でもどっちでも使い勝手は変わらないと証明されれば長期的には本当の男女平等につながるかも知れません。

ところで女性の雇用と言う点ではもう一点、役所に限らず結婚や妊娠に伴う扱いをどうするかと言う問題があって、一部企業などでは女は若いうちしか価値がないとばかりに寿退社が実質強要されていたり、役場での雇用自体が特権とも言える田舎の自治体などでは夫婦そろって公務員と言う家庭は結婚妊娠を機に妻は退職し、後進に特権を譲渡するのが当然だと言う風潮もあるやに聞きます。
名古屋や大阪のような大都会でさすがにそこまで小さなことは言わないのでしょうが、医師のような万年求人超過の超売り手市場においてもある程度の年代以降は女性の離職率がどうしても高くなっていく傾向にあるわけですから、年功序列傾向の強い公務員ともなれば女性をどんどん増やし自然離職者が増えて行ってくれた方が財政上は好都合だと言う判断もあるのかも知れませんね。
この妊娠出産という生物学的な問題に関してはどうしても男女の根本的な差異として考えないではいられませんけれども、先日も派遣から正社員になって半年で妊娠したと言う女性の相談に対して「無責任」「迷惑」等々かなり厳しいコメントがついたと言う記事が出ていて、総じて妊娠するなら時期を選ぶ(先延ばしにする)べきだと言う意見が非常に多かったそうです。
批判の根拠として妊娠は計画的にコントロール出来るはず、だから不都合な時に妊娠するのは避けるべきだと言うことなのでしょうが、少子化進行だとか高齢妊娠のリスクと言った問題は抜きにしても、キャリアを積んで専門性の高い仕事や責任ある地位についてから職場離脱されるよりは、誰でも代わりが務まる若輩者の時期の方に抜けてもらった方が男女関わりなく本来周囲の迷惑は少ないはずなんですよね。
先日紹介いただいた「スタバ店内で女性がやむなく授乳を始めたところ…」と言うなかなかにケッサクな記事においても、圧倒的に女性からの批判が目立っていたと言うのが面白いなと思ったのですが、冷静になって考えるとむしろ自分にとっても損になりかねない話を他人に強いてしまいがちな人間の傾向と言うものに関しても、この種の話題は考えさせる部分が少なからずあるようにも思います。

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コメント

>2次試験のそれは男性が36%だったのに対して女性は65%とハネ上がり、最終的な合格者は男性168人、女性155人と拮抗した。

無理な結果平等主義はよくない

『女性登用先進国ノルウェーが払った代償 業績悪化&上場廃止企業続出、モラル低下横行』
http://biz-journal.jp/2014/09/post_5954.html

投稿: | 2014年12月 4日 (木) 09時01分


>総じて妊娠するなら時期を選ぶ(先延ばしにする)べきだと

これがいつも不思議なんですよね。

>誰でも代わりが務まる若輩者の時期の方に抜けてもらった方が

どうしてこういう発想が出来ないのでしょうか?
早め、若い内が全てに楽なんですがねぇ。
給料が安くても何とかなるもんだと、高専卒で20過ぎで結婚、子供を作った
先輩は言っていました。

結局今の女性は、若い内は遊びまくり30過ぎにやっと結婚できたと思ったら、それなりの責任があるから
なかなか子供を作れない。遅らせると不妊で余計出来にくい。
すべて自らが悪循環を招いていると思うんですが。
どういう対策を採ろうと、解決出来ません。女性自身意識を変えてもらわないと仕方がない。

投稿: | 2014年12月 4日 (木) 09時42分

企業が雇用を最小限に絞ってきつい仕事をやらせてるのも悪いのでは?
責任感があって仕事もできる優秀な人ほど子孫を残せない世の中になってる気が

投稿: 荒木 | 2014年12月 4日 (木) 09時52分

>ノルウェーが払った代償 業績悪化&上場廃止企業続出、モラル低下横行

 株式投資家のための業績と国民の幸福度は別、と割りきるべきなんでしょうな。 わたみ や すきや、 社畜や医畜を成立させてしまうような ビジネスモラルwwは 崩れたほうが良いかもね。 ノルウェー国民はアノニマス1よりはよほど賢いと思うよ。

 人前で授乳に眉をひそめる、のは、乳母を雇える御貴族様のモラル、と聞いたことがある。同性のそういう行為に眉をひそめてみせる女性は 自らのセレブ志向w(玉の輿狙い)に気づいたうえで、処世としてやってるという自覚を持ってほしいね。自覚なしにやってる連中を見ると笑える。

投稿: アノニマス2 | 2014年12月 4日 (木) 10時50分

まあしかし実際問題として公共の場でいきなり始められると良い悪いは別として目のやり場に困ると言うのも確かで、ある程度周囲にも配慮いただければ幸いではありますよね。>授乳

投稿: 管理人nobu | 2014年12月 4日 (木) 11時17分

このママさんは、公然と授乳を行う事で
不快に思う人間が一定数居るであろう事が想像できない人だった と
それだけの話なのでは?
元記事では見咎めた別の女性が
>大声でわめいたとか。
と書いていますが、文脈からすればこれは
ママさんの主観にすぎない話ですしね。
人間って後ろめたい気持ちの時は、チラっと見られただけでも
「睨まれた!」とかって気になるものでは有りませんか?

投稿: | 2014年12月 5日 (金) 08時31分

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