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2014年12月26日 (金)

今度は千葉県に独創的な医学部が誕生?

先日は東北薬科大の医学部新設が認められたことにより、地域からの医師引き抜きがどうなのかと各方面から懸念がある中で、同大では教官公募について締め切り間際になって応募が殺到していると申し込み期間延長を決めたのだそうで、今後引き抜きによる地域医療に与える影響等も考慮しながら選考を進める予定だと言います。
ともかくも東北復興と言う旗印と同地域での医師不足解消と言う合わせ技でようやく久方ぶりの医学部新設が認められたと言う形なのですが、一つ出来れば二つ目、三つ目が出来てもおかしくないと言う理屈なのでしょうか、このところさらに新たな医学部新設の機運が盛り上がっているようですね。

医学部新設、特区の成田市分科会が初会合- 附属病院600床、病床規制の緩和要求(2014年12月17日CBニュース)

国際的な医療人材を育成するための医学部の新設などについて議論する、東京圏国家戦略特別区域会議の下に設けられた「成田市分科会」は17日、初会合を開いた。千葉県成田市の小泉一成市長や、成田市と連携して医学部新設を目指している国際医療福祉大の矢崎義雄総長らが出席。成田市は、医学部新設が認められた場合に600床規模の附属病院をつくるため、病床規制に関する医療法の特例を適用することなどを求めた。【丸山紀一朗】

東京圏の特区に指定されている成田市は、国際医療福祉大と協力し、国内外の医療需要に対応した国際的な医学部の新設や、国際空港の立地する同市にふさわしい国際水準の病院の設置などを盛り込んだ「国際医療学園都市構想」の実現を目指している。これらは、9日に決まった東京圏の第1弾の区域計画には入らなかったが、医学部新設について検討して結論を得ることは極めて重要で緊急性が高いとされ、同分科会を設置して議論することになっていた。

17日の初会合では、成田市が資料を提出し、国際医療学園都市構想の実現のために必要な規制緩和策を具体的に提示。医学部の新設を認めないとする文部科学省の告示による規制の緩和を求めたほか、同市のある二次医療圏の既存病床数が基準病床数に達しており、不足病床数がゼロであることを挙げ、東北地方の医学部新設での公募の事例などから、附属病院の600床規模の病床規制の緩和が必要だとした。

また同市は、この附属病院では国際的な医療サービスを提供することも必要だと指摘。そのため、現在は英・仏・シンガポールの3か国に限られている二国間協定に基づく日本国内での外国の医師免許を持つ人の診療業務を、他の国にも拡大した上で、それぞれの国籍の患者に対しての診療しか認められていない現状の規制を緩和し、母国だけでなく、日本を含むさまざまな国の人を診察できるようにすることを求めた。

この日の会合には、オブザーバーとして、文科省の高等教育局長や厚生労働省の医政局医事課長らが出席した。今後、成田市と国際医療福祉大は両省とも協議しながら、医学部新設の実現に向けての課題や解決策を整理する。次回の会合では、具体的な課題の解決策や、医学部新設に伴って生じる病床規制の緩和などについて話し合う。

成田市分科会、医学部新設に向け初会合(2014年12月19日日経メディカル)

 政府は12月17日、東京圏の国家戦略特区に指定されている千葉県成田市での医学部新設に関して議論する「成田市分科会」の初会合を開催した。同分科会には成田市市長の小泉一成氏、国際医療福祉大総長の矢崎義雄氏らが出席。医学部新設を目指す国際医療福祉大の新設構想「国際医療学園都市構想」が具体的に示された。

 国際医療福祉大は今回開催された成田市分科会で、医学部新設の具体的な構想を明らかにした。目的・目標として、「国際的医療人材の育成」を提示。医学部定員数140人のうち、20人を「特別国際枠」と設定し、東南アジアおよびアラブ諸国への海外研修を必修化する他、1~5年次まで毎年2~3週間程度、研修先の国の医療事情や文化を現地で調査、英語での報告会を実施することを示した。

 一般学生においても徹底した語学教育を実施する。英語による授業を積極的に導入し、英語による診療が可能なレベルまで教育。加えて、新興国の医療事業などを学ぶ国際医療保健学を3年間必修とする他、1カ月ほど東南アジア諸国などで研修を実施する。

 また、入試の時点で国際医療協力や地域医療貢献への志が高い学生を小論文や面接で選抜。世界医学教育連盟(WFME)の標準を超えた医学教育を行い、国際性に富んだカリキュラムを編成すると公表した。

 診療参加型臨床実習については、基礎臨床統合教育をコンセプトに2年間(80週)をあてる。また、外国人医師および北米などで臨床経験のある日本人医師を採用し、教育に参加させる他、世界最大級の医学教育シミュレーションセンターなども導入する。希望者に対しては海外での臨床実習が可能となる米国医師国家試験(USMLE)対策の特別授業を行い、第二外国語として国際社会で使用頻度の高い言語以外にもアジアやアラブ諸国の言語についても学習の機会を提供する。

 授業料は、私立の医学部で一番低い水準を設定。東南アジアなど海外からの留学生も受け入れる予定で、成績上位者や留学生については、授業料を減免する方針だ。

 成田市は同分科会にて、このような政府から示された「国内外の医療受給に対応した国際的な医学部」を新設するには、医学部新設の規制緩和が必要と主張。構想実現に向けて規制緩和を要望した。

 具体的には、(1)医学部新設の規制緩和、(2)成田市のある印旛保健医療圏には不足病床がないため、医学部新設に際して600床規模の附属病院を設置することに向けた病床規制に関する医療法の特例の適用、(3)外国人に対する医療サービス充実のため、二国間協定に基づく外国人医師の業務解禁、(4)EPA締結国、公文交換国以外の国についても、日本の看護師資格所有者に関しては「在留資格の認可」を認め、放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視機能訓練士、言語聴覚士などについても、「臨床修練期間の延長」を認める、(5)事業の実施区域に限定して、農地転用に係る許可権限の成田市長への移譲、農業振興地域整備計画を変更する際の協議の省略――などだ。
(略)
 この素案が示された後の記者会見で、内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域)の石破茂氏が「議論に長く時間を要しているので、いつまでも検討しているわけにはいかない」と発言。「成田では国際化が進んでいること、事業者(成田市)の話を聞くと医師不足を解消するものであること、医学部に入るに当たり極めて多くの資金を必要とすることを解消せねばならないなど、いろいろな観点から検討し、結論を出していかなければならないと思っている」と説明し、急速に議論が進みつつある

個人的には今さら国際化が~などと言われるとどうも眉に唾つけたくなる心境ではあるのですが、しかしこれだけ広範な省庁にまたがってのルール変更が必要になると言うのは実現性としてどうなのかで、一体誰がこういう夢見がちな計画を立てたのかと少しばかり不安視せざるを得ないですね。
ただ特区と言うものはその中でかなり好き勝手にやっていいと言う建前でやっている以上既存のルールに縛られるのもおかしな話ですし、だからこそ医学部を新たに作ってもいいと言う理屈にはなるのでしょうが、気になるのは既存の医学部とはかなりシステム的にもカリキュラム的にも異なったものになりそうだと言う点ですよね。
日本でも医療崩壊と言うことが盛んに言われた時期に「このままでは医療崩壊先進国同様、日本から海外に医師が逃散していく」と言う意見があった一方で、いや言葉の壁もあるからそんなに多くの医師流出が起こるとは思えないと言う意見もありましたが、今回医学教育レベルから外国語対応で国際化を目指すと言うのはまさしく国外逃亡仕様…もとい、国際的な活躍が期待される人材育成を行うと言うことでしょう。
興味深いのは千葉県はかねて日本でも医師不足が顕著な地域として知られていて、その医師不足地域にわざわざこんな地元定着率が低そうな医学部を新設する意図がどのあたりにあるのかと言う点なんですが、いずれにしても大学病院など医療インフラは整備されるはずですから、少なくとも現状より悪くなると言うことはないと言う計算なのでしょうか。
いずれにしても様々な意味で野心的な計画であるだけに各方面から反響もあろうかと思われるのですが、とりわけ一部医療系団体からは予想通り大変な反発の声が上がっているようです。

医学部新設、成田市構想に日医などが反対- 定員増、医師の質に疑義も(2014年12月24日CBニュース)

国家戦略特区に指定されている千葉県成田市が国際医療福祉大と連携して進めている医学部新設構想について、日本医師会(日医)と日本医学会、全国医学部長病院長会議は24日、合同記者会見を開き、人口の減少や、医学部の定員増によって毎年1000人以上の医師の就業が見込まれることなどを挙げ、「医学部新設に反対」との考えで足並みをそろえた。【新井哉】

会見で、日医の横倉義武会長は、2008年度から15年度までの入学定員の累計増員数が約1500人となっていることを踏まえ、「新設医学部の定員数を従来の100人とすると約15医学部分に相当する」と指摘。「医師数の絶対数の確保には一定のめどが付きつつある」とし、今後の環境変化や勤務医の負担軽減にも対応できるとの見通しを語った。

また、日本医学会の高久史麿会長も「質の悪い医師が増えてくるというのは、国民にとっては幸せではない」とし、増員によって医療の質が落ちることに懸念を示した。一方、今月18日に反対の姿勢を表明した全国医学部長病院長会議の甲能直幸副会長も「新設には膨大な費用がかかり、国民への負担が大きい。医療の現場に及ぼす混乱も予想される」と述べた。

成田市構想を痛烈批判、医学部長病院長会議- “国際”は「隠れみの」、対案準備も(2014年12月18日CBニュース)

全国医学部長病院長会議の荒川哲男会長(大阪市立大医学部長)らは18日に開いた記者会見で、国家戦略特区に指定されている千葉県成田市が国際医療福祉大と連携して進めている医学部新設構想を痛烈に批判した。同構想が国際的な医療人材の育成をうたっていることについて、定員140人のうち、国際性の高いカリキュラムを受講する「特別国際枠」は20人にとどまるとし、特別国際枠の構想を「隠れみの」として一般臨床医の育成を主目的にしていると批判。また、医師の地域・診療科偏在問題を解消するための「対案」を、日本医師会などと準備していることも明らかにした。【丸山紀一朗】

特区の医学部新設をめぐっては、東京圏の区域会議の下に設置された、成田市での新設を議論する分科会が17日に初会合を開いていた。全国医学部長病院長会議は、4月にも特区の医学部新設に反対する声明を発表。18日の会見では、改めて反対姿勢を示した。

政府は、特区の医学部には、「一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部等とは次元の異なる際立った特徴を有する」必要があるとしている。同会議は、成田市などはこれをクリアするために「国際的な医学部」を強調しているものの、すでに既存の医学部で国際化の取り組みはなされているなどと反論した。

会見に同席した小川彰顧問(岩手医科大理事長)は、成田市などの構想について、「本来は普通の医学部をつくりたいという意図があるが、“国際”を打ち出すことで、それを巧妙に隠している」と指摘。国際医療福祉大についても、「これまで何度も他の土地で新設構想を出しているが、そのたびに理念が異なり、ご都合主義だ」と一蹴した。さらに荒川会長は、「特区で一校でも医学部新設が認められると、他の特区からも新設の要求が出されて歯止めが利かなくなる」と危機感を示した。

まあそれが何であれ反対しない日医と言うのも想像が難しい気もしますが、基本的には先の東北での医学部新設に準じた批判に加えて国際化なる構想そのものへもあまり良い感情を抱いていない印象で、一般論として権力を握っている側は自分達の支配下にない者が増えて行く方向性での改革には反発する傾向があると言う捉え方も出来るのかも知れません。
ただ国際化を理由として医学部新設を推進すると言いながら、定員のうち国際化対応の枠はごくわずかであるのはおかしいと言うのは御指摘ごもっともと言うしかない話で、この辺りはやはり前述の医師不足地域であると言う実情を国際化対応で誤魔化しての医学部新設計画であるのは確かなんでしょうが、特区での医学部にはそれだけ特徴あるものでなければ認められないと言うルール上の制約があったと言うことですね。
そこで注目したいのは日医らがこの計画に対して「医師の地域・診療科偏在問題を解消するための」対案を用意すると言う点ですが、このような対案が「一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部等とは次元の異なる際立った特徴を有する」と言えるのかどうかと言えば、まあ普通に考えてまさしくそのような目的をまさに充足するためのものとしか受け取られようがないですよね。
深読みすれば日医としては特区という性質上認められない対案を用意することで「それなら既存の医学部で十分ですよね?」と言いたいのかも知れませんが、神奈川や千葉など医学部新設をもくろむ各地域にすればせっかく特区によって医学部新設の道が開けたように感じていたものを、余計な口出しをされても困ると言うのが正直なところなのかも知れません。

現状ですでに全国的な医学部増員の結果医師総数はかなり順調に増えてきていて、もちろんあり得ないような高齢の方々までも現役としてカウントしているのはおかしいとか、説明や書類作成など昔よりも医師の仕事自体が増えているのだから数は増えていく必要があると言った意見もあるでしょうが、現状路線のままでも少なくとも将来いずれかの時点では総数としての医師不足は解消されるだろうとは予想されているのが現状です。
ただ総数としてはそうでも地域間での偏在や診療科毎の過不足などが解消するかと言えばそうではなく、これも例の専門医制度改革や開業規制など様々な手段を絡めていずれ総数での議論から各診療科毎の議論に変わっていく時期が来ると思うのですが、この場合全国一律に同じ基準で規制しないとやれ既得権益だ、不公平だと新たなトラブルの原因にもなりかねないですよね。
そういう観点からするとあまり特殊なカリキュラムを組んでの医学教育と言うのも理念はともかく、規制をかける上では扱いが難しいところもあるのかなとも思うのですが、今回の場合千葉であれば様々なデータを駆使して東北以上に医師不足、医学部定員不足を主張するのは容易であっただろうところ、変に特区と絡めて独創的なことを言い出したが故に批判を受けているようなところもありそうです。
ただ記事からすると国の感触としても全く駄目と言うわけではなく、むしろ計画のありようによっては十分認めてもよさそうな雰囲気ではありますから、医学部新設については長年のタブーが実質解除されて今後はどこまで認めていくべきなのかと言う議論になっていきそうなんですが、そうした時代になれば乱立し過ぎた法科大学院などと同様いずれ今度はどこを潰すのかと言う議論も出てくることになるのでしょうか。

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コメント

どうせ千葉につくっても東京に流れるんじゃない

投稿: | 2014年12月26日 (金) 09時09分

医学部入学定員が増えた分、医師国試の受験者・合格者が増えるのか、その傾向が見えてくるのが来年の卒業生からですから、
その結果によっては、来春以降医学部新設熱がしぼむ可能性もあるかと。

投稿: JSJ | 2014年12月26日 (金) 09時36分

千葉 埼玉あたりはもう一つ医学部あってもいい気が
この2県で九州と人口同じくらいなのに医学部は3つしかないんですよね。


医師流出に関してはまず大丈夫でしょう。
ご覧の通り日本人は英語が本当に出来ないので受け入れてくれる所が無いと思います。
アメリカに隆昌留学するハードルの高さは有名ですし

投稿: | 2014年12月26日 (金) 09時40分

本気で国際貢献を目的にするならこれじゃちょっとお寒いですよねえ?
どうせこれだけ特例扱い求めるならシンプルに医学部つくらせてくれでよかったのに。
このあたりってたしか以前に救急医療が連鎖的に崩壊しかけた地域じゃなかったですか?
ER型の病院が必要だってことだけでもじゅうぶん筋は通りそうですけど。

投稿: ぽん太 | 2014年12月26日 (金) 09時53分

医学部新設もそうですが医療法人の理事長も医師以外が出来るようにするとか
日医が小便漏らしそうな提案ばっかですね。
自民党も既に日医なんか相手にしてないんでしょう。
一部の厚労族を除き

投稿: | 2014年12月26日 (金) 10時59分

日医が政策決定から全く外されるようになると、それはそれで現実感皆無の夢見がちなことばかりを言い出す危険性があるのかなとも危惧しています。

投稿: 管理人nobu | 2014年12月26日 (金) 11時05分

自治体が自分で金出して作るんだったらいくらでもだけど。。。。

投稿: | 2014年12月26日 (金) 17時52分

東京中心に大学附属病院が多いから、特殊な環境なのかも思った。
大学なら安心だというブランド信仰と大学は新薬を使うから魔法な奇跡を起こしてくれる伝説。
関東は内科だけが進化。関西と医療技術が10年ぐらい差がついている気がする。

投稿: | 2014年12月27日 (土) 03時48分

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