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2014年12月16日 (火)

介護と言うものに関わる問題

本日の本題に入る前に、先日こういう事件が報じられたのを御覧になりましたでしょうか。

「介護に疲れた」 72歳母親が長男の首絞める(2014年12月13日TBS)

 東京・東大和市で54歳の寝たきりの長男の首を絞めて殺害しようとしたとして、72歳の母親が警視庁に逮捕されました。長男は、その後死亡しました。

 殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されたのは、東大和市の無職・池田敬子容疑者(72)です。池田容疑者は12日午後11時ごろ、自宅で寝ていた長男で無職の英明さん(54)の首をスカーフで絞めて、殺害しようとした疑いが持たれています。英明さんは搬送先の病院で、まもなく死亡が確認されました。

 警視庁によりますと、池田容疑者はこの家で英明さんと2人で暮らしていて、英明さんが3年前に脳出血で寝たきりの状態になってからは、池田容疑者が介護をしていたということです。

 取り調べに対し池田容疑者は「介護に疲れた」と供述していて、警視庁は容疑を殺人に切り替え、事件に至ったいきさつを詳しく調べています。

以前にも100歳の実父を70台の娘が殺害すると言う悲劇的な事件があったことをお伝えしたことがありますが、日頃から身近で親しく介護をやっていた親族の方々ほどこういう結果になりがちであると言うことが極めて悲劇的であって、ともかくも追い詰められる前に各種の社会的サービスを利用していただくよう願いたいですよね。
ただ昨今話題の中高年ニート問題でもそうですが、社会保障のシステムが長年高齢者に偏って手厚く構築されてきた傾向があることは否めないところで、心身に重い障害があるような方々でも65歳以上であれば当たり前に医療・介護のおきまりのルートに乗って対応が出来る一方で、未だ若年の方々を老親が世話をすると言う構図は当事者に非常に大きな負担がかかりがちではあると感じます。
若年から寝たきりの方々などは当面病院で面倒を見るしかないと言うケースも多いと思いますが、病院側としても長期入院が確定している患者など診療報酬の仕組み上儲けにならないだけでなく平均在院日数を引き上げるばかりで、その結果ババ抜きのババのようにあちらこちらの病院を転々としている方々もいらっしゃると言うのは決して多数派ではなにしろ、憂慮すべきことではあるのでしょうね。
ひと頃に比べるとこの種の事件報道が減っているのが単なる世間の関心の低下ではなく、実数として減っているのであればと願うばかりなんですが、それはさておき本日の本題としてこれまた介護の深刻な問題とも関連する話なんですが、先日報じられたこちらの記事を紹介してみましょう。

ショートステイ拡大 15年度から厚労省、居室以外容認も(2014年12月12日中国新聞)

 厚生労働省は、自宅で暮らす高齢者が短期間入所し介護や看護を受ける 「ショートステイ」の受け入れを2015年度から拡大させる。緊急時には専用 の居室以外の静養室を使えるようにするほか、介護付き有料老人ホームの空き部 屋もショートステイに使用しやすいよう規制緩和する。特別養護老人ホームを希 望しても入れない要介護の待機者が約52万人に上ることから受け皿機能を強める。

 厚労省によると、ショートステイ施設は全国に9千超ある。今回の見直しで は、体調を崩した入所者用に設置されている静養室での寝泊まりを認める方針 だ。サービスの利用計画を作成し、本人や支える家族の状況を理解しているケア マネジャーが「緊急でやむを得ない」と判断することを条件とする。家族の病気 や、通夜、葬儀への参列といった場合を想定する。

 日本介護支援専門員協会がケアマネジャーに対して行った調査によると、 ショートステイの受け入れを断られた理由は「空床(ベッド)がない」が多く、 緊急時の受け入れを要望するケアマネジャーが8割に上った。厚労省は、全国に4千超ある介護付き有料老人ホームや介護型ケアハウスなど の空き部屋での受け入れも進める。現状では(1)開設後3年経過(2)入居率80%以 上―などの要件があるが、それぞれ緩和、撤廃する。

 特養の待機者の中には、30日以内が原則のショートステイをやむを得ず1年以 上利用する人もおり、部屋が空きにくい実態がある。厚労省は、ショートステイ を利用しやすくすると同時に、高齢者ができるだけ在宅生活を続けられるよう訪 問介護などのサービスを充実させる方針だ。

お上のなさることと言えばとかく杓子定規で融通が利かないと見なされがちな中で、こういう話が出てくると言うのはそれだけ介護の需給バランスが崩壊していると言うことでもあるのでしょうが、数年前に救急医療崩壊が叫ばれ「救急車たらい回し」などとマスコミが盛んに喧伝していた頃に、「ベッドがないなら廊下でだって治療は出来るだろう!」と言うFAQ的な意見があったことは記憶に新しいところかと思います。
もちろん「空きベッドがないから救急車受けられません」と言う場合のベッドと言うのは物理的にベッドがあるかないかと言う話ではなく、新たな患者対応に割けるリソースが足りていないと言う意味であるわけですからスペースだけ融通しても仕方がないところなんですが、介護の場合ショートステイ利用者は基本的には自宅で暮らせるくらいですからさほどに深刻な状況ではなく、リソース面での負担は少ないと言う予想は出来ますよね。
ただそれも当然ながら相対的な話であって定員以上の入居者を引き受ける、それも顔を知らない新しい相手ともなれば確実に業務負担は増えるはずで、特に気になるのがこうして定数以上を引き受けたところで他の入居者に何かあった場合、「決められた定数を無視していたから事故が起こったのだ!」と言う批判の余地は必ずあると言うことです。
別に事故が起こらずとも正規入居者はこれこれの定数にこれだけの設備スタッフを用意しますと言う条件に同意して入居の契約をしているわけで、それを無視されると言うのは席を予約してレストランに入ったのに勝手に相席にされたような状況を想像してもおもしろくはないだろうなと思うのですが、余計なトラブルを招かないように利用者や家族とはよくよく意志疎通をしながら話を進めるべきなんでしょうね。

各種介護施設が軒並み入居待ちの行列状態と言った有様で、こうなりますとひとたび入居に成功した場合にそれがある種の特権・既得権益になっていると言う状況も見られるようなんですが、例えば施設入居者が肺炎なりで入院した場合に施設側とすれば空きベッドを持つ形になるのですから、いきなり契約解除とまでは言わないにせよ(そういう施設もあるそうですが)ショートステイ等で有効活用はしたいはずですよね。
その状況で病院から退院許可が出たとして、ショートステイの平均利用日数が1週間程度だと言いますから普通はいつ頃退院できますと連絡を受けてまあせいぜい数日の調整で戻ってこれるはずなんですが、中には記事にもあるように様々な事情から全くショートではないステイになってしまう方もいらっしゃると言うもので、そうなりますと病院から患者を引き取るベッドがないと言うことにもなりかねません。
この辺りはリソースを常時100%有効活用しようとすることの副作用でもあって、施設側とすれば施設利用率を上げて経営を頑張っていると言う話ですけれども、いきなり見ず知らずの患者を送りつけられた上に治療が済んでも引き取ることさえ拒否されると言うのでは病院側としても立つ瀬がなさ過ぎると言うもので、あまりにこうしたケースが目立つ施設などは周囲の病院からも警戒され入院拒否と言う事もあるようです。
何ら罪のない施設利用者としては全くいい迷惑なんですが、病院にしろ限られたリソースで最大限地域の病人を何とかしようと努力していると言う点では全く同じ話なんですから、医療と介護どちらかばかりが強引に我意を押し通して仲違いし連携がうまくいかなくなると言ったことのないよう、密接な善隣的関係を構築すべく双方が協力していく必要があるようには思いますね。

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コメント

日本は寝たきり老人が多すぎる

投稿: | 2014年12月16日 (火) 08時54分

自分の人生も先が見える年代でまだまだ若い要介護者がいるってのはきついんだろうなあ…
亡くなった息子さんのご冥福を祈ります。

投稿: ぽん太 | 2014年12月16日 (火) 09時11分

今後日本において寝たきり高齢者の平均余命がどうなっていくかにも要注目なんですが、少子化が定着すると意志決定者不在の高齢者が今後ますます増えていくことになりそうで大変ではありますね。

投稿: 管理人nobu | 2014年12月16日 (火) 11時25分

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