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2014年12月31日 (水)

今年最後にドクターカーの話題を

本日は今年最後の一日と言うことになりますけれども、この時期何かと気ぜわしいせいかやたらと救急車のサイレンが目立つようにも思うのですが、先日報じられたところでは救急の通報から病院に収容されるまでの時間が過去最長記録を更新したと言いますから、やはり救急崩壊の危機だ、適性利用をなどと言われただけのことはあると言うべきなのでしょうか。
ただ搬送件数が増えている割には重症患者は実はむしろ減っている、そして中等症から軽症の患者が増えたことが件数を押し上げているのだそうで、一方では管外搬送の増加が搬送時間を延ばしていると言う話と合わせて、様々な現場の事情が透けて見えるように思います。
そんな中で先日ドクターカーに関する記事が相次いで出ていたので紹介してみたいと思いますが、これまた搬送時間が延びたことに対する一つの解決策でもあって、医療と救急隊との緊密な連携が必須であることは言うまでもありませんね。

医師の救急現場出動増加、10年前の5倍に- 13年の消防庁統計、病院に救急隊派遣も(2014年12月22日CBニュース)

医師が救急現場に出動したケースが、昨年は前年に比べて17%増の2万6661件あったことが、総務省消防庁の統計で明らかになった。10年前の約5倍に増えており、消防庁は「ドクターヘリやドクターカーが増えたことが背景にあると考えられる」としている。【新井哉】

ドクターカーやドクターヘリの普及に伴い、救急現場で医師が医療行為などを行う事例が年々増えつつある。救急救命士らへの指示も行われており、消防庁は「傷病者が重篤な状態や救出困難な状況の場合、医師による現場における医療行為や医師の指示のもとに救急活動を行うことがある」と説明する。

特に2001年4月に国内で初めて導入されたドクターヘリは、国の支援などを受け、配備する自治体が急増。現在全国36道府県で計43機となっている。こうした状況を受け、04年に5342件だった医師出動件数は、昨年までの10年間で5倍近く増えたという。

また、ここ数年は、救急車と救急救命士を含む救急隊員を医療機関に派遣する「派遣型救急ワークステーション」を導入する動きが広がり、医師が救急車に同乗して現場に出動する機会も増えている

昨年4月から派遣型救急ワークステーションの運用を始めた神奈川県厚木市は「救急現場で救急隊員が医師から直接指導を受けながら迅速、的確な救命措置を行える」と説明。今月から運用を開始した滋賀県の大津市消防局も「救急救命士の病院実習時間数が飛躍的に増加し、救急隊の資質向上につながる」と期待している。

医師のみならず救命救急隊のスキル向上にも非常に役立っているようだと言う点に留意いただきたいと思いますが、しかし救急出動のうち重症者の割合が約1割の60万件程度と言いますから、出動が急増したと言ってもまだまだ潜在的な需要は大きいんだろうなとは思える話です。
このドクターカーやドクターヘリと言うもの、医師の間でも評価する声も多い一方で必ずしも肯定的でないと言う意見もあるように思うのですが、特に救命救急を専門にしている先生方にとっては今まで病院で患者を待つだけであったなら救えなかっただろう命を、自分が現場に出かけて行くことで救える可能性が出てくると言う点で非常にやり甲斐があるだろうことは理解出来るところですよね。
ただドクターカーが出動している間は医師一人が患者一人にかかり切りになっているわけですから、特に医療リソースが限られている場合には下手をすると一人を助けたが他の数人は…と言うことにもなりかねずで、結局のところはどのような症例に対して出動していくべきなのかと言う点が有効性を左右する重要なポイントになると言えます。
各地でドクターカーが運用され、それぞれの基準に従って出動をこなし高い成果を挙げていると言う地域もあれば、準備は調えたけれどももう少し活用できていないような?と言う地域もある中で、先日こういう話が出ていたことを紹介してみましょう。

ドクターカー出動、統一基準で運用開始- 東京の協議会が策定、厚労省も情報収集(2014年12月27日CBニュース)

ドクターカーを持つ東京都内の医療機関の救急医らで構成された「東京ドクターカー運用協議会」が、これまで病院ごとに違っていた出動基準を統一し、新たな基準で運用を始めたことが27日までに分かった。同協議会会長の大友康浩・東京医科歯科大大学院教授は「今後、患者の症例のデータを集め、ドクターカーの有用性を示したい」としている。都道府県レベルでの症例集積などを目的とした統一基準の策定は東京以外では例がなく、他の自治体や病院間で基準を策定する際のモデルケースになりそうだ。【新井哉】

都内には、医師らが車に乗って駆け付けるドクターカーを持つ病院が4か所ある。しかし、運用や患者の症例記載の方法などについては、これまで統一された基準はなく、東京消防庁との連携や患者の症例集積・分析を進める観点から、出動基準などを統一することが求められていた。

大友教授や日本医科大付属病院救命救急科の布施明准教授らは、こうした問題点の解消やドクターカーの有用性などの検証のため、今年2月に同協議会を立ち上げ、ドクターカーを持つ病院の医師らが運用方法や患者症例の記載方法などについて議論や検討を進めてきた。

同協議会は東京消防庁と協議の上、今年9月中旬から統一された出動基準による運用を始めた。具体的には、119番通報で心肺停止や心肺停止寸前を疑う「キーワード」を聴取できた場合、「救急隊の出場と並行し、ドクターカーの出動を要請する」とした。

一方、高所からの転落や交通事故、銃創・刺創などでDMAT(災害派遣医療チーム)出動の適応があった場合は「DMATを優先させる」とした。同協議会事務局の布施准教授は「今後、症例登録システムでデータを集積し、ドクターカー運用体制の発展に貢献していきたい」と話している。

ドクターカーの運用をめぐっては、厚生労働省の検討会が今年2月に公表した報告書で、「一刻も早く医師による診療を開始する目的はドクターヘリと同様」として、効果や役割などを検証し、必要に応じて支援を検討する必要性を指摘。厚労省もドクターカーの運用方法などについて情報収集を進めており、今後、全国的な統一基準の策定や症例集積の体制構築に向けた動きが加速しそうだ。

即座に対応しなければ救命率に大きな差が出ると言うケースでドクターカーが有効であるだろうことは容易に想像出来るのですが、問題の一つとしてそうした症例をどうやって確実に拾い上げるのかで、119番のファーストコールを受けるのが消防救急である以上まずはそちらが判断しなければならない理屈なんですが、実際には彼らの医学的判断が必ずしも正しいと医療現場からは評価されていない現実があります。
欧米並みの成果を挙げていると言う千葉県船橋市のケースですと119番が入ると同時に司令センター要員が基準に従ってドクターカー出動の可否を判断するそうですが、先に現場に到着した救急隊が後続するドクターカーと連絡を取り合いながら可能な処置は開始すると言いますから、今後はドクター到着以前に救命救急士が可能な処置の範囲を広げるべきかの議論もあり得るでしょう。
ドクターカーがせいぜい数分遅れで到着するのであれば、せいぜいルート確保をしている時間しかないはずだし、気道確保にしてもとりあえずバッグ換気をしてドクター到着後に挿管でいいじゃないかと言う意見もあるでしょうが、ドクターカーの数が限られている以上必ずしも望む通りのタイミングで医師が来るとは限らないだろうし、そもそも出動無用と判断したケースであっても行ってみると話が違っていたと言う例もあるはずですよね。
気管内挿管など救命救急士の処置をどこまで認めるかについては例によって日医等を始めとする根強い反対意見がありますが、手技的な部分に関しては病院等で研修をすることである程度補えるとして、判断の部分に関して不安が残ると言うのであればモバイル機材を介しての遠隔診療に基づく指示出しなど、技術的進歩によっていずれ補いがついてくる可能性もあるかも知れません。

ちなみにこのところ首都圏では広域医療連携と言うことが推進されているようで、先日は妊婦や新生児に関して東京都が周辺県と自治体の壁を越えた搬送態勢を取ることを検討していると言うニュースが出ていましたが、これも統一的ルールに基づいて運用するのでなければ公平平等な運用は望めませんし、下手をすると一方的に送りつけられるばかりの側がいずれ不平不満を募らせると言うことにもなりかねませんよね。
ともかくも制度を調え始めてみたことが果たして有効であったのかどうかと言う検証は必要であり、その結果さらにこうすればもっと有効になると考えられる点は次のステップにおいて試みていけばよい話なんですが、そのためにもまずはデータの収集と解析が必要ですから、今後東京都の打ち出してくるだろうデータには大いに期待するところです。
その結果例えば日本のような人口稠密な国ではドクターカー運用よりも病院受け入れ先決定までの時間短縮等、より有効な方法論があると言ったことが明らかになってくるのかも知れずですが、ともかくも全体として使えるお金や資源が限られてきている中で、あれもこれも良さそうだからやってみようと行き当たりばったりなことをしていたのでは無駄が多すぎますから、ネガティブデータもそれはそれで貴重な改善のための判断材料ですよね。
しかしドクターカーをせっかく導入しながら廃止するに至った自治体と言うのも一定数あって、その理由としてやはりコスト面が大きいと言うことですが、この場合「人の命は地球よりも重い」式の考え方をしてしまうと一人でも助けられた人がいれば価値は無限大と言うことになってしまいますから、やはりこうした有効性の評価を行う場合に人の価値はどれほどか?と言う考え方も必要になってくるのでしょうか。

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