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2014年12月 1日 (月)

医療を受けるにも患者の協力は必要です

どのように受け取るべきか微妙なニュースなのですが、先日こういう調査結果が出ていました。

救急外来での暴力、医師の4割、看護師の9割超が経験(2014年11月26日日経メディカル)

 救急外来において患者やその関係者から暴力を受けたことがある医療従事者は、6割近くにのぼることが報告された。医師では4割、看護師は9割以上が経験していた。大浜第一病院(那覇市)の大城淳氏らが自院の事態を明らかにし、第9回医療の質・安全学会(11月22~24日、千葉市開催)で発表した。

 医療スタッフへの暴言、暴力に対して大浜第一病院は、2012年6月に院内暴力対策委員会を設立、院内暴力対策マニュアルを作成し、「暴力対策ポスター」を院内に張るなど対策に取り組んできた。今回、大城氏らは、救急外来における患者の暴力の実態を把握するとともに、整備したマニュアルの評価と今後の課題を抽出するため職員に対するアンケート調査を実施した。
 同病院の救急外来は、日勤帯は必要時に各専門科が応援する前提で、救急科常勤医師2人体制で運営している。時間外は、内科系医師1人、外科系医師1人、研修医の計2~5人の体制だ。看護師については、日勤3人、準夜勤3人、深夜勤2人となっている。救急車搬送数は2000年以降、年間1800~2000件近くの実績がある。
 同科ではこれまで、発生時の連絡網を整備するなど科としての対策も実施してきた。また、院内暴力歴のある患者の救急搬送依頼に対して、院内暴力対策委員会の承認を前提に、搬送を断ることも可能としている。

 アンケートは第9回医療の質・安全学会での発表を目的に、救急外来で勤務する職員69人を対象に実施した。内訳は、医師が30人、事務職員が21人、看護師が18人だった。回答は医師27人、事務職員17人、看護師15人の計59人から得られ、回収率は85.6%だった。
 調査の結果、救急外来において患者や患者の関係者から暴力を受けた経験がある職員は、全体で57.6%だった。職種別に見ると、医師が44.4%、事務職員が47.1%、看護師が93.3%と、看護師が飛び抜けて多かった(図1)。男女別では、男性は58.1%、女性は57.1%だった。
 暴力の種類は、言葉による暴力が34件、身体的暴力が9件、セクシャルハラスメントが3件だった(複数回答)。
 暴力を受けてどのように感じたかの質問には、「怒り」との回答が17件、「怖い」が9件と多く、「仕事を辞めたくなった」も6件、「悲しい」も4件と続いた(複数回答)。
 一方、対策面では、「マニュアルに従い担当課または警察を呼んだ」が14件、「(暴力を)止めるように話した」が12件と多かった。「何もしなかった」も6件あった。そのほかでは、「上司に相談した」が4件、「同僚に話した」が3件だった。「傾聴した」の回答も1件あった(複数回答)。

 暴力を受けたことのある34人に対して、病院が整備したマニュアルについて尋ねているが、「有用であった」は47.1%にとどまっていた。この点について演者らは、今後の継続的な対策が必要と指摘している。
 アンケートでは、今後の必要な対策についても尋ねている。その結果、「さすまた」などの身を守る器具の用意、マニュアルの周知、男性職員の配置、警備の充実、防犯ベルや防犯カメラの整備などが挙がった。
 演者らは考察の中で、「暴力など一般社会で許されないことは病院内でも当然許されないとする断固とした意識を(医療従事者が)持つことが必要」と指摘している。また、6割近くが経験していた点については、救急外来では夜間に飲酒した患者が受診することが多いことも要因の1つと考察している。

それなりにきちんとした対策を取っている病院ではあるようで、常習者に対しては搬送拒否もあり得ると言うことですから客層がそれほど悪いわけではないと思うのですが、それにしても暴力を受けた経験のある救急担当医がわずか4割と言うのはキャリアの浅い医師も含まれているのか、単純に何を以て暴力と認識するかの定義の問題なのか微妙なところですよね。
興味深いのは職種によって暴力経験のある比率が大きく変わると言う点ですが、医療関係者の場合急性アル中なども含めて「患者は病気のせいで判っていないのだから」とついつい諦観しがちですけれども、患者の側ではきちんと相手を見て暴力に及んでいるのだろうとも思われる話で、この辺りは多くが男性で院内での権威的にも強い立場にある医師達がしばしば弱い立場のスタッフへの暴力を軽視しがちな理由でもありますよね。
昨今ではどこの業界でもモンスターとも言われる問題顧客の話題には事欠きませんが、先日おもしろいと思ったのは関西方面で元暴○団組員をタクシー乗務員として積極雇用する動きがあると言うニュースが出ていて、もちろん特定業界によるこの種の副業は昔からあったものですが、モンスター客何するものぞの強面ぶりがタクシー乗務員には向いている云々と妙に肯定的に報じられていると言う点です。
かつてであれば進歩的なメディアの方々から顧客の権利擁護の論陣を張られバッシングされていたかも知れないような状況であっても、少なくとも一部には顧客側の問題に対処するためにはこの程度は仕方がないと言う援護射撃が出ると言うのは世相の変化なのでしょうか、ともすれば応召義務があるから仕方ないとあきらめがちな医療従事者にとっても興味深い世論の変化だと思いますね。
例によっていささか前置きが長くなりましたけれども、先日各紙で報道されていたこちらのニュースを紹介してみましょう。

認知症の人、救急病院の94%「診療困難」 意思疎通できず (2014年11月27日日本経済新聞)

 認知症の人が急なけがや病気で搬送されて治療を受ける場合、全国アンケートに応じた救急病院の94%が対応は困難だと感じていることが27日、国立長寿医療研究センター(愛知県)などの調査で分かった。意思疎通が難しいことが主な理由で、診断に必要な病状の聞き取りや検査に支障が出ている可能性がある。
 認知症の人は記憶力や判断力が低下するため、こまやかな配慮が必要だが、介護の現場で「緊急やむを得ない場合」に限っている患者の身体拘束は78%の病院が実施していた。調査結果は29日から横浜市で開かれる日本認知症学会で発表する。

 2013年度に全国の救急病院3697カ所に調査票を送り、589カ所から有効回答を得た。このうち患者の入院や手術に対応できる2次救急病院は約60%だった。
 ほとんどの病院は認知症の人の診察や入院を受け入れているとしたが、「対応は困難だと感じることがある」が94%を占めた。理由(複数回答)は「転倒・転落の危険」が88%で最も多く、「意思疎通が困難」(85%)「検査・処置への協力が得られにくい」(82%)が続いた
 90%以上の病院が「患者の不安や混乱を取り除くよう努めている」としたが、認知症の対応マニュアルがあるのは16%にとどまった。患者の身体拘束の他に、薬物による鎮静は70%だった。

 調査の主任研究者で長寿医療研究センターの武田章敬在宅医療・地域連携診療部長は「認知症の人が安心して治療を受けるには、医療スタッフを増やしたり、かかりつけ医と連携を強化したりするなど、総合的な対策が必要だ」と話している。〔共同〕

認知症高齢者の場合症状訴えがはっきりしないことが多く、周囲に気付かれた時には思いがけない重症になっていたり、あるいは入院させたところ全く違う病気が見つかると言うことがままあって、リハビリ期間も含めて入院が長くなりがちであることもこのご時世に嫌われがちな理由でもありますが、国などもその点は認識していて急性期が受けた患者をスムーズに慢性期や療養に引き取るよう体制整備を急いでいますよね。
ただ例えば肺炎で入院してきた患者がおしめ交換で痛がるそぶりを見せる、調べて見たら脚が折れていたと言う場合にその受傷が入院後のことなのか、あるいは入院前のことなのかはっきりしない場合も多く、場合によってはそれが家族を巻き込んだ深刻なトラブルに発展することもあって、こうした騒動を経験したことのある医師の一部は認知症患者の診療そのものがトラウマ化してしまっているケースもあるようです。
そうであるからこそ最低限の処置だけを済ませた後は最短でリハビリ施設や慢性期に送ると言う救急病院の先生も少なからずなのでしょうが、慢性期の先生方にすれば入院時チェックで一通り調べてみると紹介状に書かれてもいない病気や異常があれやこれやで、一体救急の先生は何を診ていたんだ?!と言いたくなる場合もしばしばと言った弊害もあるでしょう。
この辺りは基本的には高齢者には調べれば調べるほど病気は山ほど出てくるものなのだと言うコンセンサスを家族との間で得られているかどうかも重要ですが、逆に言えば家族がしっかり判断できる状況であれば深刻な苦労も少ないと言うもので、特にこれからの時代注目すべきは身寄りもなく意志決定者が誰なのかもはっきりしない高齢者の救急問題ですよね。

この点で以前から一部方面で議論になっていることですが、身寄りのない高齢者の医療をどこまで行うべきかと言う問題と絡めて、意志疎通の出来ない相手に対して勝手に医療を行うことはインフォームドコンセント的にどうなのかと言う問題があるのではないかと言う意見があって、緊急避難の観点からも少なくとも明らかな救命救急の場においては一般論としても何ら問題ない行為だと思うのですが、直ちに緊急性がない場合はどうなのかです。
判断に迷う一例として独居高齢者が自宅で倒れているのが見つかった、単に脱水であったようで点滴で元気になったが念のため一通り調べているとどうやら癌があるようだと言う場合、一つには手術を行えば長期生存も期待出来るが本人は認知症で判断できず身よりもいないとなれば、リスクがある上に当面の緊急性がない行為を誰の判断で行うべきなのかと言う問題がありますよね。
無論そんな高齢者に癌の積極的治療をする必要などないと言う意見ももっともなんですが、別に癌でなくとも現時点ならばまあ一般的には許容範囲とされる程度のダメージで何とかなりそうな病気がある、そして放置しておくと近い将来大変面倒くさい状態になるのが明らかだと言う場合、単純にその患者の人生トータルでかけるべき医療の手間暇と言う観点からも、今それを放置するのがいいのかどうか迷う余地はありそうに思います。
この種のジレンマのもう少し身近な実例としてよく経験されるのが胃瘻の造設と言うもので、身よりもなく誰も決断できない高齢認知症患者に誰の責任でそれを行うべきなのか、あるいは行わないのが妥当なのか常に判断が難しいところですが、同意書を書く人がいないからと手術も受けられず日常的に誤嚥や肺炎に悩まされている方々も実際にいらっしゃるわけで、世話をする医療の側にとっても結局得なのか損なのかですよね。
ごく普通の判断力があればここで治療をしておいた方が得だと考えられるような場合、もちろん身よりもなく本人も判断できないのですからやっておいてもまあ悪いことはないのでしょうが、何であれリスクがゼロではない以上何かあればマスコミから「また医師の暴走か?!」などと言われかねず、今の時代の一般的な考え方からしてわざわざ余計なリスクを負いたがる「熱心な先生」もどんどん減ってきているのだろうなとは思います。

さらにややこしいのはきちんと診断をつけていけば実は認知症ではなく何らかの基礎疾患によって意志疎通が出来ないだけと言う場合もあって、本当に本人に判断できないのかどうかは完全に除外診断を済ませた場合でなければ言えない理屈なんですが、実際に臨床現場で全例そうした鑑別が出来ているかと言えばまあ無理だろうし、実際にそれをやれば査定ではばっさり切られ医療経済学的にも問題視されでしょう。
他方ではそうでなくとも今はインフォームドコンセントが医療の大前提となっていて、患者の同意が得られなければ救命救急を除いて何ら勝手なことはすべきではないし、仮に何かを行った場合それが妥当なものであっても民事賠償請求されるリスクは必ずあると考えるべきですが、単純に身寄りがいないから安心だとあなどっていると事後になって遠い親戚なるものが登場してくる可能性もあるわけです。
その意味では認知症患者の救急にも対応出来るようスタッフを増やしましょう、見守りも強化しましょうと言うのは確かにそれはそれで重要な話なんですが、あくまでも事態の一現象面に留まっている対策でもあって、本当の意味で認知症患者の診療を医療側も安心して行えるようにするにはもう少し違った側面にも注目していく必要があるんじゃないかなと言う気はするのですが、なかなか公の場で議論しにくい話でもありますよね。
医療行為におけるメリットと予想されるリスクとをその場限りではなく患者の全将来に渡って比較検討して、圧倒的にメリットが大きい場合には患者の同意がなくとも実施できるようにすると言ったコンセンサスがあれば便利な側面もあるのでしょうが、宗教的理由に基づく輸血拒否のケースを見るまでもなく、得てして非合理的とも言える判断を敢えてしがちなのが人間と言う対象の扱いの難しさなのだと思います。

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コメント

こっちがトレーニングして待ち構えてるときって来ないんだよね問題患者って。
彼らもやっぱり相手みて暴れてるってのはあるのかも知れない。

投稿: 肉体派 | 2014年12月 1日 (月) 08時40分

入院する必要もないのに押しつけてくる施設の職員が一番ムカつくわ

投稿: | 2014年12月 1日 (月) 10時10分

受ける側の心情的側面は別として何かあった場合のことを考えると、特に夜間休日において病院にリスクを押しつけるのも施設側視点でみれば当然のリスクマネージメントではあると思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年12月 1日 (月) 10時59分

原因ははっきりしませんが、私のいる病院で患者さんから身体的暴力を受けた事例をまとめると、事例の半分弱で特定の看護師が被害を受けています。
暴力をふるわれやすい何かがあるんだろうとは思うのですが「暴力をふるわれる側にも問題がある」とは口が裂けても言えないので対応に苦慮してます。

投稿: クマ | 2014年12月 1日 (月) 11時10分

元気な我々が話しててもイライラさせられる人っていますからね。
調子悪いときにあの調子で応対されたらキレたくもなるかもって納得はできます。
だからってほんとにキレちゃうことを擁護できるもんじゃないですけど。
自分的には自己防衛的必要に応じて相手をキレさせることもあるっちゃあるんですが。

投稿: ぽん太 | 2014年12月 1日 (月) 11時55分

>彼らもやっぱり相手みて暴れてるってのはあるのかも知れない。
>事例の半分弱で特定の看護師が被害を受けています。
弱点を衝く、という戦闘の原則にクレーマーさんが忠実なだけじゃないですかね。
問題があるとかないとかじゃなくて単純に弱点。
そう考えれば、対策として隠すか、鍛えるか、支援するか、すべきかと。

投稿: JSJ | 2014年12月 1日 (月) 12時33分

>暴力をふるわれやすい何かがあるんだろうとは思うのですが「暴力をふるわれる側にも問題がある」とは口が裂けても言えないので対応に苦慮してます。

何やらかしたんですかねえ…(困惑)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_kitakyushu_keichiku/article/117768

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年12月 1日 (月) 15時40分

こういうのもあるから怖い怖いw

「退屈しのぎに…」看護師の男、患者200人超殺害か
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000039675.html

投稿: | 2014年12月 1日 (月) 16時43分

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