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2014年11月15日 (土)

多浪は人生のハイリスク?

何故かこのところ教育関係の話題ばかりが続いているのですが、先日予備校内で生徒同士による刺傷事件が発生したことが報じられていて、特にその容疑者のバックグランウドが注目されています。

代ゼミ生刺した30歳生徒逮捕…「目が合った」(2014年11月12日読売新聞)

 北九州市小倉北区の予備校「代々木ゼミナール小倉校」で男子生徒(19)が刺されて重傷を負った事件で、福岡県警小倉北署は12日、同校生徒の同市八幡西区則松、中島政夫容疑者(30)を殺人未遂と銃刀法違反の疑いで逮捕した。

 同署の発表などによると、中島容疑者は11日午前11時55分頃、同校の4階自習室で、男子生徒の胸など数か所を包丁で刺し、殺害しようとした疑い。生徒は全治約3か月の重傷。中島容疑者も左手にけがをした。

 中島容疑者は犯行直後に近くの交番に出頭。「刺したのは間違いないが、殺すつもりはなかった」と供述し、動機については「目が合い、(相手が)にらんできたので刺した」などと説明しているという。

代ゼミ殺人未遂 逮捕の男、FNNの取材に「我の人生 後悔なし」(2014年11月12日FNNニュース)

福岡・北九州市の代々木ゼミナールで11日、男子生徒を刺した30歳の予備校生の男が逮捕された。その男は2014年8月、FNNの取材に答えていたことがわかった。
「やっぱり元気とやる気がナンバーワンだと思います。宮本武蔵の言葉にあるように、『我の人生 後悔なし』。以上です」などと、カメラ目線で自信満々に語るのは、中島政夫容疑者(30)。
2014年8月、中島容疑者は、代々木ゼミナールが全国に27ある拠点のうち、20カ所を来春、閉鎖することを受け、FNNの取材に答えていた。
中島容疑者は11日、北九州市小倉北区にある代々木ゼミナールで、19歳の男子予備校生の左胸などを包丁で刺し、殺害しようとした殺人未遂などの疑いが持たれている。
中島容疑者は、調べに対し、「にらまれて口論になった。殺すつもりはなかった」などと話しているという。

中島容疑者は以前、予備校での生活について、「(小倉校が、2014年3月に閉鎖されるが?)知らなかったです。(それを聞いてどうですか?)僕は、たばこをずっと名古屋で吸っていたんですよ。地元でもやんちゃで。でも、こっちに来たら、先生が僕と面と向かって話してくれて、たばこもやめられて。髪もずっとキンキラキンだったんですよ。でも、髪を黒髪にして、初めて自分と向き合って素直になれたので。すごく僕、感謝しています」と話していた。
予備校への感謝の気持ちを語っていた中島容疑者。
さらに、受験への意気込みを語っていた。
中島容疑者は「志望校は早稲田です。本当に何にもわからなくて、アルファベットもわからないんですけど、一緒になって教えてくれて、辞書を買ったり、参考書を買ったり、参考書を教えてもらったり。授業中の黒板でも、熱意が伝わってくるんです。ことしは必ず大学受験を成功させます」と話していた。
調べによると、中島容疑者は、1〜2週間ほど前に、被害者とは、別の生徒とトラブルになっていて、被害者がその仲裁に入っていたことがわかっている。
警察は、中島容疑者から事情を聴き、くわしい動機などを調べている。 (テレビ西日本)

ほとんどが10代の学生達の中にあって一回りも歳が違えば色々と難しい状況であったことは想像に難くないところで、以前から周囲とトラブルがあったようにも報じられていること、わざわざ刃物を持ち込んでいることから根深い感情的問題なのかとも感じるのですが、ともかくもこの事件ではやはり容疑者の30歳の予備校生と言う状況が目を引きますよね。
事件が報じられた当初はさすがに12浪はないだろう、社会人なりを経験してからの再受験ではないか?と言う声もあったものが、どうやらずっと浪人生活だったらしいと知れるとそれなら医学部狙いか?と言う意見が主導的となり、最終的に早稲田志望と明らかになった時点で皆が皆「12浪もする意味があるのか?」と不思議がっているのが非常に興味深いように思います。
ご存知のように医学部と言うところはとりあえず医師免許さえ取ってしまえばそれなりに喰っていける道は確保出来るものだし、一般企業などと比べれば年齢による就職就労条件の悪化も(全く無いとは言わないまでも)かなり恵まれている方だと思いますから、実際に昔から一定数社会人入学、学士入学と言う方々はいたことに加えて、近年ではむしろ制度的にそれら別ルートでの入学を奨励している気配もありますよね。
その理由として「受験勉強しか知らない学生よりも、社会の中で経験を積んだ人の方がよい医者になれる」と言う奇妙な信仰めいた考え方があるようで、その説の是非についてはこの場で議論するところではありませんけれども、ともかくも例え多浪をしてでも医学部であれば様々な意味で元は取れる可能性がある、逆に言えば他学部であればあまり多浪の意味はないのでは?と言う考え方が主流なんだと思います。
一般論として浪人と言う行為は進学においてより上級の学校に合格する可能性が上がると言う利益がある一方、特に多浪をすることで年齢が上がりその後の就職等で不利になったり生涯賃金が下がったりすると言う不利益もあるはずですが、昨今では浪人というものへの考え方も次第に変わってきているようだと言う記事を紹介してみましょう。

大学全入、予備校危機の時代にこそ問い直す!「浪人力」は社会に出てから本当に役に立つか (2014年11月14日ダイヤモンドオンライン)より抜粋

(略)
何回も受験浪人をして、晴れて念願の難関大学に合格――。そんな時代は、懐かしいものとなった。
 1940年代後半、1970年代前半生まれのベビーブーマーたちが一斉に「大学受験適齢期」となり、有名大学の狭き門を狙って日夜勉学に凌ぎを削った時代、メディアはそれを「受験戦争」と呼んだ。
(略)
 しかし、今や大学受験をめぐる世相は一変している。「大学全入時代」と言われるようになって久しい。その理由には、少子化により学生の母数が減ってきたこと、AO入試や推薦枠の普及によって大学入学へのハードルが下がったこと、長引くデフレ不況を理由に、金をかけてまで浪人になることを選ばず、中堅以下の大学に現役で入ることを選ぶ学生が増えてきたことなどがある。若い時代に受験浪人を経験した人たちは、こうした世相を寂しく思っているかもしれない。

 それでは今の時代において、若者が「浪人」という選択肢を選ぶことは誤りなのだろうか。また若者にとって、「浪人」という選択肢を忌避することは、後の人生において全てプラスになるのものなのか。大学全入時代だからこそ、改めて「浪人」の社会的価値を考えてみよう。
(略)
 文科省の『学校基本調査』によると、高等学校卒業生の大学への入学率は、2004年(平成16年)には123万5482人中45万9456人(37.2%)だったものが、2013(平成25)年には109万1614人中51万7416人(47.4%)と、約10年で10%近く上昇している。

 また、「大学(学部)への入学志願者数」を年次別に見ると、平成16年には18.7%いた浪人生が、平成25年には11.5%にまで減った。ちなみに20年前にあたる平成5年では29.9%が浪人していたので、この20年間で浪人生は約18.5%減ったことになる。
(略)
 では、「浪人は不要な時間」と見なされるようになった理由は、前述した少子化、大学のハードル低下、不況といった理由だけなのか。大学イノベーション研究所所長で、大学研究家の山内太地氏は、現在の学生のトレンドについて、次のように語る。

「浪人して偏差値の高い名門大学に入ることと、現役で中堅以下の大学に入ることのどちらに価値があるかは、生き方が多様化した現代においては、一方的に決めつけることはできません。昔よりも選択肢が広がっているため、高校生にも進路を選ぶ自由ができました。しかしその結果、多くの学生が『将来的な価値』よりも『短期的な楽しさ』を選んでいるのは、事実だと思います。『将来的に楽をしたいから、今頑張る』という発想は、ほとんどの学生が持てていないのだと思います」
(略)
 とりあえず現役で中堅クラスの大学に入学し、そこから1年勉強して偏差値の高い大学へ転校するという学生が増えているのです。これも『浪人』という響きに否定的なイメージを持っているからこそ、起きる事象ではないでしょうか」(山内氏)
 20年前と比較すると、今の学生は「浪人することは辛くて恥ずかしいものだ」という認識が、強すぎるのかもしれない。
(略)
 景気回復への見通しが相変わらず不透明なためか、日本の就職率はまだ十分改善されておらず、大手企業は表向きには言わないまでも、相変わらず偏差値の高い有名大学を中心に採用を行う方針をとっているケースも多く見える。
中堅レベルの大学卒の学生が運良く目当ての企業に入社できたとしても、なかなか出世コースに乗れないまま働き続ける可能性もある。これほどまでに偏差値が就職活動に影響を与える理由について、山内氏は次のように指摘する。
「採用活動で偏差値を1つの基準軸として見ているのは、『大学受験のときにどれほどの問題解決能力を発揮したか』という軸で学生を見たいからです。どの企業も、学生には現状を打開できる問題解決能力を求めています。それを証明するには、『偏差値の高い大学の入試を突破した』という実績が一番わかりやすいため、偏差値という指標がまだ就職活動に大きく影響しているのだと思います」
(略)

まあしかしせっかくいい大学に合格しても昨今しばしば聞くように就職浪人では意味がないような気もしないでもないのですが、1浪、2浪程度までで明らかにネームバリューのある難関大学に合格出来ると言うのであればそれはそれで浪人の利益があるのだろうし、多浪してもさしたる有名大学に入れないと言うのであれば浪人する意味は乏しい、それではその見切り線をどの辺りに置くべきなのかですよね。
ちなみに記事にもあるように大学進学における浪人率は一貫して低下を続けていて、受験人口がピークだった92年の35%から今や12%にまで低下したそうですが、興味深いのは東大京大と言った難関大学では浪人率が一向に減っていないこと、そして医学部などもそれに輪をかけて浪人比率が高く、一部私大などは大部分が浪人で占められている(かつ多浪が多い)と言うことでしょうか。
要するに医学部や難関大学であれば多少の浪人をしてでもその後の進路選択でのメリットが上回ると言うことを当の学生自身も理解し受験行動に反映させていると言えますが、それ以外の大学であれば多浪してまで固執するよりは適当に折り合いを付けた方が「より問題解決能力が高い」と見なされる可能性があり就職にも有利なのかと言う話ですよね。
記事の方はそうした合理主義ばかりではなく、浪人生活には浪人生活なりの人生の肥やしとなるものもあるはずで、そうした受験行動の多様性を認める社会が望ましいと締めくくっていますけれども、一昔前と違って親のスネも囓り甲斐がなくなってきている今の時代、現実的にそこまでモラトリアム期間を堪能できる学生がどれほどいるのか?と言う疑問は感じるでしょうか。
就職難が言われる時代にあって就職活動に失敗し続ける方々からは「世の中の誰からも必要とされていない気がする」と言う嘆きの声も上がっていて、ひいてはそれが就労意欲を失わせ引きこもりやニートの増加や生活保護受給者数増大と言った社会問題にもつながると問題視されますが、進学浪人もこじらせると同様のリスクを持っていると考えると受験生がリスク回避に走るのも妥当な選択ではあると思います。

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コメント

一年間受験勉強に集中したら受験力は向上しそうな感じがするので一浪までは理解できるのですが
二浪以上しても受験力はさらに向上するものなのでしょうか。

投稿: JSJ | 2014年11月15日 (土) 08時39分

同期は現役、一浪、二浪がほぼ同数ずつで三浪以上はほとんどいなかった
脳力の劣化やモチベ維持の難しさ考えても二浪が限界かなって気がする

投稿: ひさびさに本田△ | 2014年11月15日 (土) 08時47分

こいつキモいわw

「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹氏(67)が16日、自身のブログを更新。
鹿児島県伊佐市が県立大口高校から難関大学へ進学した生徒に100万円支給するという報道に物申した。

 鹿児島県の進学指導重点支援校に指定されている大口高校から、東大や京大、九州大などの国立大や、
早大、慶大などの難関私立大に合格した場合は伊佐市が100万円を支給するとした方針が13日に報じられた。
この報道を受け尾木ママは「なんてあさましい高校?反教育の極みだ!!教養も良識のかけらもない」と憤慨。

 難関大への合格実績を上げるための“ニンジン作戦”を「教育犯罪」と弾劾し、
「違法じゃないけど尾木ママ吐き気がします!!学校という名の風上にも置けない。
その反教育犯罪の内容語る気にもなりません…。激怒通り越して悲しいです!(--;)」と呆れ返った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141116-00000138-spnannex-ent

投稿: | 2014年11月18日 (火) 22時43分

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