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2014年11月13日 (木)

そろそろ受験シーズンですが

近年人気が高まっていると言う話は聞いていましたが、大学全入時代などと言われる世の中にあって医学部人気はさらに高まっていると言う記事が出ていました。

医学部、志願14万人(2014年11月5日月刊私塾会)

文部科学省の学校基本調査によると、2010年度に約11万人だった国公私立大の医学科への志願者数は、14年度には14万人を超えた。少子化に伴う学生獲得競争が激しさを増す中、近年は多くの私立大が6年間で計数百万円の学費値下げに踏み切っている。削減や抑制が続いていた医学部の定員増加も人気に拍車をかける。地方での医師不足などを背景に国は08年度から定員増にかじを切り、15年度の総定員は過去最多の9134人となる見込み。16年春には1981年の琉球大以来となる医学部が東北医科薬科大に開設予定だ。

2015年度の入試からは理数系科目が新学習指導要領(新課程)対応になることから浪人には不利だと言う話があって、そのせいもあって旧課程最終年度となる今回は全般に安全志向が強いのだそうで、実際の出願者数はもう少し絞った数字になる可能性もありそうですが、興味深いのは定員増加に伴い国公立志願者も増えているのですが、ともかくも私学志願者が圧倒的に増えてきていると言う点ですよね。
その理由として記事にもあるような経済的要因も大きいのだと思いますが、特に学費問題に関しては昨今各種学生ローンも充実しており地域枠や自治体からの学費支援制度もあることに加え、一部には医師不足に悩む病院からの青田買いのような行為もあるやに聞きますから、将来も含めて「医学部はとりあえず合格さえしてしまえば何とかなる」と言うのもあながち間違いではなさそうにも思います。
ただ個別の大学で見ていきますと私学間でも大きく志望者を増やした大学もあればその逆もありと多種多様であるようで、慶応や慈恵と言った有名処があまり増減がないと言うのは何となく判る気がするのですが、必ずしも国試合格率とも相関しているようでもない辺り何の要素が関係しているのか、それこそ学費等の要因も関わってのことなのでしょうか(志願者急増の東海大などは近年学費値下げをしていますしね)。
国公立の場合施設等のキャパシティーの関係であまり学生が増えすぎても対応出来ない場合もままあるようですが、私学の場合はともかく大勢の学生を取って学費を得なければ大学も病院も回らないと言う事情がありますからいきおい入学は甘めに、そして進級は厳しめにと言う基準になるかとも思うのですが、そうした事情も考慮してか最近厚労省の方からこんな話も出ているそうです。

留年増加考慮して研修医枠設定へ、厚労省(2014年11月6日m3.com)

 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長:桐野高明・国立病院機構理事長)が11月5日に開かれ、2016年度の研修医の募集定員について議論した。医学部入学定員から算出している現行の研修医の募集定員について、留年者の増加などを指摘する声があり、医学部5年生の人数から計算する方針となった。研修希望者数に対する募集定員は、現在の約1.2倍から1.18倍に減らすことを目指し、今年度から始まり、地域で活用できなかった事例のあった「都道府県調整枠」は残すこととなった(『「大学で研修」低下の一途、2014年度マッチング最終結果』を参照)。

 2015年4月研修開始の2014年度マッチングでは、研修希望者数に対する研修募集枠を、医学部入学定員を基に、1.2倍になるように設定。定員増を踏まえて、都道府県が各病院に配分できる「都道府県調整枠」を振り分けた。
 結果として2つの問題が発生した。1つ目は、研修希望者数を9634人と見込んでいたが、実際は9206人となった点。和歌山県立医科大学理事長の岡村吉隆氏は、全国医学部長・病院長会議の調査結果を踏まえて「定員増で各大学での学生において質の低下が顕著。休学や退学も増えている」と原因を分析した。同会議の調査結果では、2012年度の1年生が2年にあがる際に700人以上留年する事態となっている(『医学生の学力低下が顕著、医学部定員増を機に』を参照)。
 2つ目の問題は、「都道府県調整枠」について、地方を中心に20の県で使いきれずに、上限の1万1583人に対して、実際の募集は361人減の1万1222人となった。結果として倍率は、1.219倍となった。
 これら2つの問題を踏まえて、厚労省は、今までの算定方法以外に、医学部5年生の数を基に定員を設定する方法を提案した。岩手医科大学理事長の小川彰氏は、留年が増えていることを踏まえて「入学定員を基にすれば、ずれが生じる」と同調し、目立った反対意見はなかった
(略)

受験生総数が減っていく中で医学部定員は増えているわけですから、ゆとりがどうこうと言わずともレベルが下がっていくのは当然ではあるのですが、ただ冒頭の記事にあるように医学部人気も高まりこの時代にあって例外的に競争率も高まっていることから、今まではさほどにレベル低下が留年や国利合格率と言った目に見える形では出ていなかったと言うことでしょうか。
しかし研修医定員を医学部入学定員から計算すると言うのも基本的に落第しないと言う前提での話で、こうして改めてその弊害が問われるとどうなのか?と思ってしまうのですが、昔であれば多少学力的に欠けるところはあっても割合になあなあで進級させていた大学も、近ごろでは明らかにこれはと言うケースでは容赦なく落とすようになってきていると言いますね。
今年初めの広大の神経解剖学でほぼ全学生が不合格になったと言う事件があり、結果として医学部の悪しき伝統だ、こんな輩が医師になっていいのかと世間から大いに批判とお叱りを受けたのも記憶に新しいところなんですが(ただしこれもどうやら、実際はかなり誤解もあったようです)、昔は現場に出れば休む間もなく一生勉強が続くのだ、だからせめて学生時代くらいは思い残すことのないよう遊んでおけと言う声もあったでしょう。
ただそれも学生の卒後教育はその大学や関連病院で責任を持って行われると言うストレート研修時代の暗黙の前提があっての話で、今のように全国どこの病院に出て行くことになるかも知れないと言う話になればやはり最低限の共通言語となる医学知識は必要なのだろうし、またそれを備えていない学生ばかりを送り出せば大学側の恥にもなりかねませんからいきおい学部教育も厳しくはなる理屈です。
無論学生にとっても同じ大学の先輩後輩関係の中でのぬるい選抜ではなく、全国他大学の学生との競争の中でマッチングを勝ち抜いていく必要があるのですから遊んでばかりもいられないのは当然なんですが、そうなりますと留年率が増えていると言うことが必ずしも学生のレベル低下を示すと言うわけでもなく、むしろ今の学生の方が昔よりよく勉強している人が多いと言う可能性もあると思いますね。
ともかくも最近大学の教員の先生達が昔のように臨床や研究の片手間に嫌々ながらと言う感じではなく、非常に真面目かつ熱心に学生教育をするようになっている様子なのはいいんですが、自分達の学生時代が暇で遊び歩いていたものだから今の学生も暇に違いない、だからもっと厳しくしても余力はあるはずだとばかりにムチを振るう一方だと、学生としては何とも哀しい気分になってしまうかも知れないなとは危惧しています。

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コメント

>今まではさほどにレベル低下が留年や国利合格率と言った目に見える形では出ていなかったと言うことでしょうか。
医学部入学定員の増加が始まったのが、今年卒業した人たちが入学した2008年からで、2007年比+168人でした。
以後2007年比で、2009年+861人、2010年+1221人、2011年+1298人、2012年+1366人、2013年1416人ですので、
医学部定員の”大幅”増加と言えるのは来年卒業する2009年入学組以降かと思われます。
(データはブログ「新小児科医のつぶやき」さんからの孫引きです)

投稿: JSJ | 2014年11月13日 (木) 08時38分

彼らが現場に出たころにも将来安泰の仕事だったらいいけどねw

投稿: aaa | 2014年11月13日 (木) 08時53分

非医ですが、自分たちの頃は確かに試験前しか勉強しなかったような・・・・。
全く勉強せずに、徹マン明けで暇だから試験受けたとかもあったし。
(まあ、今でも旧帝で一番緩いと言われてるけど)

今の学生さんは大変のようですね。
この前も思わず息子に、「試験前やあるまいし、なんで勉強してんねん?」と聞いてしまった。
同じ大学とは思えなかった。

投稿: hisa | 2014年11月13日 (木) 09時11分

我々も学生時代に親世代の先輩から「私達の頃は試験も楽だったのに今は大変になって」と言われてました。
入試はどうかわかりませんが進級は我々のころと比べても数段大変になってるみたいですね。
医学知識は増え続けるから勉強することも年々増えるのは当然っちゃ当然なんですけどね。

投稿: ぽん太 | 2014年11月13日 (木) 09時25分

レベル低下も、上の世代からそう言われなかった世代など、いないんじゃないのかと

投稿: | 2014年11月13日 (木) 10時10分

私学は学費と人気が相関関係ですね。
順天堂とか学費安くしたおかげでかなり人気が上がりました。
あとは立地でしょうか。

投稿: | 2014年11月13日 (木) 10時57分

そういえばアメリカは医師養成課程は4年ですが何で日本は6年も掛かるんですかね?
今はカリキュラム前倒しでパンキョーはそんなにやらず1年次から専門課程の授業が入ると聞きますが
それだけ前倒しして何で6年も掛かるんだろ?

投稿: | 2014年11月13日 (木) 11時04分

アメリカの場合は学士入学と言うことで日本の教養課程二年間を省いた形ですが、日本では現実的に一年目から医学教育が始まっていることを考えるとスケジュール的にかなり厳しいのかとも思います。
現状で日本の学士入学者に関しても特に最初の一、二年程度はやはりそれなりについていくのが大変だとも聞きますから、仮に今後メディカルスクールが成立したとしてカリキュラムがどうなるのかですね。

投稿: 管理人nobu | 2014年11月13日 (木) 11時49分

いまのところ医学部の学生さんが過労してダウンするほどの勉強量ではないのですか?
卒業後にそなえて今からハードワークになれさせると言う意味もあるのかなと思ってみたり。

投稿: てんてん | 2014年11月13日 (木) 12時11分

学生時代に講義は1コマ2単位なのに実習は1コマ1単位なのが不思議で調べたら
講義1時間につき自習2時間
実習2時間につき自習1時間
合計3時間の勉強時間で1単位って計算になってるんだそうで
その計算だと自習時間込みで学生は寝る時間もないはずですね

投稿: 玉木 | 2014年11月13日 (木) 12時52分

教育基本法が、
 教育を受けることは基本的人権
  から 
 教育は社会のためになる人材を作る
  に変わったから、なのかどうかはしらないが

 具体的にきっちり勉強させているか、監査は厳しくなってます。落ちこぼれ対策も重要な目玉でした。病院機能評価を思い浮かべていただけばよいかと。
 ばかばかしさを感じながらも、説明責任を果たせ とかといわれて、日々物的証拠の保全をしておりますよ。(誰に向けての説明責任なんだかw)
 
 面白ければ(面白いので)勉強する、じゃなくなって久しいような希ガス。

 社会に役立つ学問への道はIF、SI、競争的資金の獲得、特許取得だ、と称揚した結果がオボさんの大量生産。
 今般は学士力が、学部の社会に対する製造物責任なんですかね。
  

投稿: 感情的な医者 | 2014年11月13日 (木) 15時30分

追加
 初期研修も大学外の方が多くなったし
 学問やるにしても
「IF、SI、競争的資金の獲得、特許取得」に倦んだら
 立ち去ることができる、のが
 医学部のメリットだと思う。
 今のところ、だけれど。 

投稿: 感情的医者 | 2014年11月13日 (木) 15時58分

院生も医師免持ちと非医師では必死さが違いますな
学位取得が遅れれば人生狂うこともありますので

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年11月13日 (木) 20時36分

>学位取得が遅れれば人生狂うこともありますので
 免許取得が遅れれば人生狂うこともある。

 複数の地方自治体奨学金をあさった挙句退学して行方をくらませた話がありました。
 (私学は特に)ハイリスクハイwリターンの投資先、と認識されてるのでしょう。学生の適性とか勉強したいとかは、寄与率低そうです。(経済的にも、考え方も)博打のような進路選択で来ている学生が増えていると感じますよ。

投稿: 感情的医者 | 2014年11月14日 (金) 13時27分

医師国試の合格発表がありましたね。
受験総数9057人、合格者数8258人。

2009年入学者が現役受験者に当たるわけですが、
対2007年比で入学定員+861に対し、受験者総数+562、合格者総数+488
対2008年比で入学定員+693に対し、受験者総数+438、合格者総数+425

定員増の実があがっていると見るか、定員増は歩留まりが悪いと見るか、微妙ですな。

投稿: JSJ | 2015年3月19日 (木) 09時47分

合格率は上がっているようですからまだ数を絞りには来ていないようですが、しかし60歳で医師免許取得と言うのは何処を目指しているのかな?と素朴な疑問は抱くところです。

最高齢60歳男性…医師国家試験、合格率91%
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150318-OYT1T50134.html

投稿: 管理人nobu | 2015年3月19日 (木) 10時23分

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