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2014年11月18日 (火)

トータルでの損得勘定の難しさ

本日の本題に入る前に、最近自転車が歩道ではなく車道を走ると言うことになり、各地でその徹底が図られている最中ですけれども、自転車乗りの目線からするとより速度差が大きく運動エネルギーも圧倒的な自動車の横を並走すると言うのは正直怖いと言うところもあって、例えば先日はこんな記事が報じられています。

清須市・男性がひき逃げされ重傷(2014年11月10日東海テレビニュース)

10日朝早く、愛知県清須市の国道22号で自転車の男性がひき逃げされ重傷。愛知県警は大型トラックの男性運転手から現在、事情を聞いている。

10日午前4時45分ごろ、清須市阿原の国道22号線で30歳代位の男性と自転車が倒れているのを通行人が見つけ110番通報した。男性は右腕を骨折し頭を強く打つ重傷ですが意識はあるという。
愛知県警はおよそ1時間後に通報してきた大型トラックの40代の男性運転手から事情を聴いていて、「放置された自転車に当たったかもしれない」と話していることから容疑が固まり次第、ひき逃げなどの疑いで逮捕する方針。
自転車の男性は片側3車線の直線道路の歩道寄りで倒れていたということで愛知県警は事故の原因を調べている。

事故の原因もはっきりしない段階ながら早朝に三車線の国道と言うだけでもどのような道路状況かは想像出来ますが、試みにグーグルマップで表示してみますとちょっと自転車で走るには怖いような環境で、並走する立派な歩道もあるようですからそちらを走っていればお互い安全に走行出来そうには思うのですけれども、現行のルールではこういう場合も車道を走らなければならないと言うことではありますよね。
このところ福島青森などでも相次いで車道を走る自転車に車が接触し大怪我をすると言う事故が報じられていて、いずれも共通するのは自動車の速度が乗る直線区間であり接触したのが大型車両と言う特徴があるのですが、本来直線区間と言うものは見通しが良く事故の確率が下がると思いがちですが、自転車のすぐ脇を大型車両が高速で走り抜けようとすればまあ普通は煽られて怖い思いをすることになりますよね。
こうなるとまたぞろ「車道を走らせるとかえって危ない」と言う声も強まりそうなんですが、ただ車に対しては弱い被害者の立場になりがちな自転車であっても、ひとたび歩道を走れば歩行者にとっては危険な加害者にもなると言う理屈で、自転車走行帯の整備など物理的環境が整っていない状況ではやはり誰かが危ない橋を渡らないではいられないようです。
単純に走行可、走行不可と言う二択ではなくて、速度規制込みで例えば何キロ以下なら歩道走行可、それ以上は車道を走れと言ったやり方が全体的な重大事故のリスクに関しては一番減らせるのかも知れないとも思うのですが、こうした速度規制が元々定速走行をしているわけでもない自転車にどの程度有効かと考えると、現実的にはなかなか運用は難しいものがありそうですね。

いささか余談が長くなりましたけれども、世の中あちら立てればこちら立たずと言うことはどこにでも当たり前にあることで、しかもそれが一歩間違えば誰かの生命にも関わるともなればさじ加減に頭を悩ませることも多いのは当然ですけれども、先日以来世界中を賑わしているエボラ問題なども個人の権利と、集団の防衛と言うことのバランス取りが非常に難しい問題であることはすでにお伝えしてきたところですよね。
アメリカなどに比べると比較的緩いと言いますか、患者の自己申告と自主的協力を前提にした性善説的対応を取っている日本においてもその問題が指摘される部分が多々あって、特に疾患に対して素人である一般人に判断を委ねる部分が多いと言うのは防疫上非常に不安を感じさせるところではあり、実際にトラブルにも発展していることから「もはや性善説的対応は限界」と言う声が出ています。
先日は埼玉で自分はエボラかも知れないと言う「偽通報」があり大騒ぎになったと言うニュースが出ていましたが、意図的な誤報の類はもちろん許容されるものではありませんけれども、それではどこから疑い例として厳重な対応をすべきなのかと言うことは、エボラ疑い症例に関しては一般患者とは全く別ルートで対応すると言う大方針が打ち出されているだけに非常に重要なポイントになってくるはずです。
ちなみにエボラ疑い症例に関しては保健所が対応し救急隊は関わらないと言うことになったわけですが、一方で救急隊と言えば呼ばれれば取りあえず出動せざるを得ないと言う立場から現状でもコンビニ的過剰利用の問題が指摘されてきたほどで、消防庁としてもこの辺りの対応の線引きにはなかなか苦慮しているようです。

エボラ熱疑いの搬送要請に救急車出動させず-消防庁が決定、自宅待機の措置も(2014年11月14日CBニュース)

 エボラ出血熱の疑いのある患者から救急搬送の要請があった場合、救急車を出動させず、保健所に対応を任せる方針を総務省消防庁が決めたことが14日、分かった。発熱の症状を訴え、リベリアなど3か国への渡航歴がある疑似症患者が対象。出動後、現場で渡航歴などが判明した場合は自宅待機を要請し、その場では搬送しないという。ただ、本人からの申告がなければ、救急隊員らが感染する恐れもあるため、消防庁は「すべての傷病者に対して、標準感染予防策を徹底する」としている。【新井哉】

 消防庁が全国の消防機関に対して求める標準感染予防策は、手袋やマスク・ゴーグル、ガウンなどの着用が基本となっており、エボラ出血熱を含む一類感染症などに適用される。救急隊員らの2次感染を防ぐ観点から、消防庁は今後、全国の消防機関に対し、防護具などの装備が整っているかどうかの調査を行うなど標準感染予防策の徹底を図る方針だ。

 また、消防庁は、救急要請時に発熱の症状を訴えた人には、ギニアやリベリア、シエラレオネへの渡航歴の有無を確認することも要望。過去1か月以内の渡航歴があることが判明した場合には、「本人に自宅待機を要請するとともに、直ちに保健所に連絡し、対応を保健所へ引き継ぐ」としている。救急要請時に渡航歴の確認ができない場合でも、現場到着時に発熱の症状や渡航歴の確認ができれば、自宅待機など同様の措置を取るという。

 消防庁はこのほか、傷病者を搬送した後、その傷病者がエボラ出血熱に感染していたといった事態も想定し、対応に当たった救急隊員の健康管理の必要性や救急車の消毒を徹底することも挙げている。

 ただ、エボラ出血熱をはじめとする一類感染症などについては、本来は都道府県が患者の移送を担当するため、救急医療関係者からは「消防機関の救急車による搬送を検討する必要はないのではないか」との意見が出ている。

 標準感染予防策についても、「ゴーグルが曇るなど活動に支障が出るケースもあるため、現場での徹底は難しい」、「地方の消防機関では感染症対応の装備を十分持っていない」などと消防庁の方針を疑問視する声も上がっている。

 エボラ出血熱の疑似症患者をめぐっては、東京都の感染症対応の救急車が7日、リベリアに渡航歴のあった疑似症患者を特定感染症指定医療機関の国立国際医療研究センターまで搬送。また、11日に都立墨東病院で行われたエボラ出血熱を想定した訓練でも、救急車による搬送を実施した。いずれも救急隊員らが防護具を着用していた。

まあ本来のルールはともかくとして現実的に救急車で運ぶことも十分考えられそうなのですから、対処法についてはあらかじめ決めておいていいのだろうとは思うのですが、しかしこうなると都道府県にきちんとした対処能力があるかどうかも気になりますよね。
ともあれ、感染症に関しては一般に感染症患者かどうかはっきりしない場合はそうであると言う前提で行動すべきだと言う考え方がありますが、特にこれからの季節には発熱患者の救急搬送要請がどれだけあるのかを考えると現実的に全例エボラと想定しての対応は不可能であり、エボラが疑われる場合には全てお断りすると言うルールは現場にとっては必要なものであると思います。
ただ理念はそれとして現実的にどこから疑い症例として扱うかが難しいところで、高熱で意識朦朧として受け答えも満足に出来ないと言う状況でどこまで渡航歴を確認出来るのかと言ったケースはもちろん、本人がエボラなどであるはずがない、どうしても救急車で運んでもらいたいとゴネる、最悪渡航歴を隠すと言った場合も十分ありそうで、原則通りの対応を貫こうとするほど現場の違ったストレスも増えそうな気もしますね。
現実的にも救急車を呼ぶくらいですからしんどい状況の患者がほとんどなんだと思いますが、こうした業務に慣れていないだろう保健所なり都道府県なりがどれだけ迅速に行動出来るかと考えると、余計に待たされることになるだろう患者の立場とすれば勘弁してくれと言うのも正直な気持ちだろうとは思います。

この種の作業は「これこれの場合は一切駄目」と言う基準をはっきりと上が打ち出してくれ、現場はただ機械的にその基準に照らして判断するだけにしてくれた方が一番楽は楽なのでしょうが、何につけても不確実な医療と言うものの性質を考えるまでもなく、冒頭の自転車走行規制の話に戻って考えてみても、運用管理が楽であることがすなわち国民トータルでの利益を最大化するわけでもないのが難しいところです。
ちょうど先日厚労省の検討会で例の事故調ガイドラインについて初会合が開かれたそうですが、こちらでも第三者機関に報告すべき「予期しない死亡」と言う場合の予期しないとはどのようなものを言うのかと言った条文解釈で議論が膠着し、推進派の方々にとってはずいぶんと歯がゆい展開だろうと想像するのですが、現場からすれば文言の解釈一つで大きな運命の分かれ道なのですから当然と言えば当然だと言えますよね。
この点で浜松医大の大磯教授が届け出対象をどうするかと言う入り口の議論よりも、先に報告書の扱いなど出口での非懲罰性を保証し現場を安心させる方がいいのではないか?と主張したのはもっともだと思うのですが、エボラの場合その出口の方がこれと言って確定された正しい道筋がないのが問題なのであって、診断さえつけばきちんと治療法は確立されている病気とは違う難しさでしょう。
ただエボラの治療法開発が進んでこなかったのも第三世界のローカルな疾患という対岸の火事で済んでいたが故だと言う説もありますから、自転車事故が多発したり事故調が法制化されたりしてからようやく当事者も危機感を持って具体的な議論が進むようになった経緯を考えても、一連のエボラ騒動も人類全体の利益と言う観点からは未だ評価が難しいところもあるのかも知れませんね。

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コメント

深夜の三車線道路の外側車線にトラックが路駐してて何度死にそうになったことか。
停めるなら停めるでせめてライトくらいつけといてもらいたいです。

投稿: ぽん太 | 2014年11月18日 (火) 09時21分

そもそも一般道では、交通の流れを阻害するという点で原付でさえ危ない。
危ないというのは原付のほうというより、いつ加害者にされるかという車側という意味であり、
はっきりいって原付は廃止して欲しいと思う。
最近、もっとたちが悪いのが、自転車特にロードタイプ。
車道を走る場合、原付と同じで危なっかしいのだが、さらにふらつくし、信号無視とか交通法規を
守る気はさらさらないという点が、もっとひどい。

最近はロードタイプの自転車が関係する事故とかがあっても、大抵自転車側が悪いんだろうなあ
としか思えない。

投稿: | 2014年11月18日 (火) 09時50分

つかチャリと車の事故って昔から普通でしょ
単に報道が増えただけじゃないの?

投稿: | 2014年11月18日 (火) 10時10分

そもそも歩道での自転車の扱いは「徐行」であって「走行」ではありません。
徐行とは時速8キロ程度との事なので,早歩きよりもちょっと早いくらいの速度。果たしてそれを守られている方がどれだけいるかどうか……?

かといって車道に出たら危なくってとても走れたもんじゃない,というのも事実。
自転車を孫っ子扱いしてろくな対策を取ってこなかったツケが回ってきているとしか思えません。

投稿: | 2014年11月18日 (火) 11時08分

報道が増えているにしてもそれだけ自転車vs自動車の事故が注目されていると言う事ではあるので、車道走行義務化で事故や死傷者件数がトータルでどうなったかは検証すべきでしょうね。
自転車もあまり速度を出さなければ歩行者とぶつかっても大事にはならないし、速度差の大きいvs自動車事故の方がずっと重大化しやすいと思うのですが、ただ件数としてはvs歩行者の方が多いだろうとは思います。
物理的隔離策として昔ながらの狭い道路まで自転車走行帯を調えるのは不可能ではあるので、当面特に走行速度の高い幹線道路について取り急ぎ対策を講じていただきたいところです。

投稿: 管理人nobu | 2014年11月18日 (火) 11時33分

10月上旬、千葉県八街市内の国道409号で発生した死亡ひき逃げ事件について、千葉県警は19日、市川市内に在住する18歳の
少年を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死)や道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕した。

千葉県警・佐倉署によると、問題の事故は2014年10月5日の午前5時30分ごろ発生している。八街市八街ほ付近の国道409号
(片側1車線の直線区間)で、道路左側の路肩を走行していた自転車に対し、後ろから進行してきた車両が追突。自転車に
乗っていた58歳の男性が頭部強打で死亡した。車両は逃走したことから、警察は死亡ひき逃げ事件として捜査を開始。
同日午後に「事故を起こしたが、怖くなって逃げてしまった」と通報してきた18歳の少年から任意で事情を聞いてきた。

少年の母親が所有するクルマには衝突痕があり、現場で採取された容疑車両のものとみられる破片とクルマの破損部位が一致した
ことから、警察では事故当時にこのクルマを運転していた少年が容疑に関与したと判断。19日にひき逃げ容疑で逮捕している。

http://response.jp/article/2014/11/24/238113.html

投稿: | 2014年11月25日 (火) 14時49分

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