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2014年11月 7日 (金)

高齢者はなぜ気軽に病院にかかるのか?

先日から一部方面で話題になっているのですが、こういう話をご存知でしょうか?

モスバーガー 高齢店員「モスジーバー」積極採用して好影響(2014年11月2日NEWSポストセブン)

 東京・五反田。午後9時を過ぎた頃、勤めを終えたサラリーマンや若者で溢れるファストフード店「モスバーガー」の店内の光景はちょっと変わっている。接客係も厨房係も、ファストフード店にしては年齢層が高い。初老の従業員たちが緑色の制服に身を包み、忙しそうに働いているのである。
「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか」
 孫のような年齢の客に物腰柔らかな口調で応対する。モスバーガー五反田東口店では、在籍するアルバイトの2割、約10人が60歳以上だ。彼らは、親しみを込めて「モスジーバー」と呼ばれる。比較的時間の余裕があるため、早朝・深夜にシフトを組むケースが多いという。

 食品メーカーで働いていた中村和夫さん(62)もその1人だ。在職中からモスバーガーでダブルワークを始め、現在は週5回、午後11時から翌朝5時まで、接客や閉店後の店舗、調理機材の清掃点検などを任されている
「3階まで商品を階段で運ぶので運動にもなります(笑い)。私たちが裏方としてメンテナンスすることで、お店の営業の支えになっているという存在感を持てることが、やりがいになっています」(中村さん)
 時給は公表していないが、深夜割り増しを含めて月収は約20万円だという。客の反応は上々だ。同店をよく利用する30代のOLはこう語る。
「おじいちゃんやおばあちゃんの笑顔は、マニュアルにはない温かみが感じられて和みます。自分の親くらいの人が明るく頑張って働いている姿を見ると、なんだか励まされているように感じる。若い私も頑張らなきゃと思えるんです」

 日本の65歳以上の人口は、昨年9月時点で3186万人。総人口の25%を占め、今や4人に1人が65歳以上という時代になった。だが彼らは、一昔前の“年寄り”とは違う。介護なしで元気に生活できる「平均健康寿命」は男性70.42歳、女性73.62歳と伸びており、「体も元気でまだまだ働きたい」という気持ちを持つ人が多い。中村さんのように、最近は定年後の生きがいや経済的理由から、生涯現役を希望する高齢者が増加している。
 一方、採用する企業側もそうしたリタイア世代の登用に積極的になっている。高齢者に仕事を斡旋するシルバー人材センターでは、民間企業からマンション清掃や警備員など求人の問い合わせが増え、受諾件数が10年で1.12倍に伸びているという。総務省の労働力調査(2013年)によれば、就労する65歳以上は636万人で過去最高。うちアルバイトや派遣などの非正規雇用は203万人を占めている。
 背景にあるのは、少子化による労働力不足だ。2014年度の経済財政白書によれば、労働力人口はピークの6793万人(1998年)から2013年は6577万人に減少、女性や高齢者の雇用を促進しなければ、2030年にはさらに約900万人減ると予測されている。

 モスバーガーも当初、高齢者のスタッフを雇用したのは「人手不足から」(広報担当者)で、積極的に高齢者の働き手を求めたわけではなかったという。しかし、雇用してみると、予期せぬ嬉しい“副産物”があった。
「高齢者の方々は無遅刻無欠勤で非常に真面目に働いてくれる。それにお客様の反応も良かった。弊社は若い世代が中心の客層でしたが、同世代の方が働く姿に安心感があるためか、高齢者のお客様が増えるという相乗効果もありました」(同前)
 同じファストフード業界では日本マクドナルドも60歳以上を「シニアクルー」として採用している。

こういう話が出てきて「そう言えばこの前モスに行ったらやたらお年寄りが多かった」と言う経験談も多数出ていて、興味深いのはそのほとんどが非常に好意的に受け止める声ばかりで昔懐かしい近所の駄菓子屋だとか定食屋のノリなんだろうか?とも思うのですが、高齢者雇用の促進と言いますと今の時代「高給取りの年寄りばかりいつまでも雇っているから若者の給料が上がらないんだ!」とおしかりを受けることも多いですよね。
しかし記事にも書かれているように継続雇用と言うわけではなく相応の給与待遇による新規雇用であり、また何より若者を雇いたくても来てくれないと言う状況での話ですから求人の食い合いになる恐れもないはずで、昨今飲食店業界は人手不足でアルバイトの時給が高騰していると言うように供給が追いつかない市場を中心に競合しない分野も結構あるんじゃないかと言う気はします。
一方で聞くところでは特定店舗に集中配置されていることからもお判りのように、この高齢者スタッフは必ずしも現地採用と言うわけではなく本部がしっかり指導と教育を行った上で店舗に配属すると言う特殊な雇用形態であるそうで、そうした教育機会上有利な立場にあることからも一般のアルバイト店員とは接遇の質も違うのは当たり前だと言う考え方もあるようです。
この辺りは今後教育を行う側も経験値を蓄積することで次第に教育課程を短縮することも出来るようになると思いますが、本来的には年齢年代に関わらず同じ業務を行うなら同じように教育される権利があるべきなのだろうし、一般に物覚えが悪いと言われる高齢者に対して十分な教育が出来るようになれば若年者に対してはもっと完全な教育が出来るようにも思いますね。

ともかくも自活してくれる高齢者が増えることは様々な意味で社会的にも大変にありがたいことですし、年金支給年齢切り上げとセットで就労期間の延長が図られる中で誰にとっても望ましいセカンドキャリアを探っていくことが非常に重要になるはずですが、一方で今のところ社会保障制度の中では高齢者=特別に保護される立場であると言う構図は厳然と存在しているとは言えます。
とりわけ社会保障費全般に大胆な斬り込みが図られている中で、このところ何かと目の敵にされやすいのが高齢者の医療費問題で、もちろん母数としての高齢者が増えているのですから総額として医療費が増えていくのは当然なのですが、長年続いてきた医療費自己負担分の優遇措置が相次いで見直されつつあるようには感じますよね。
その背景には社会全体の定収入化・ワープア化が完全に定着し高齢者=経済的弱者とは必ずしも言えなくなっていること、そして何であれ特定の個人や集団に限定された特権と言うものを忌避するようになった世論の動向など様々な事情があるように思いますが、高齢者医療費の推移と言うものを考える上で先日興味深い記事が出ていたので一部なりと紹介してみましょう。

高齢者医療費の激増は、低すぎる自己負担率が原因?(2014年11月6日ダイヤモンドオンライン)より抜粋

(略)
図表4に見るように、医療費のうち、高齢者の医療費が3分の1程度と、大きな比重を占めている。しかも、伸び率も高い
 高齢者は医療機関にかかる頻度が一般よりも高く、入院日数が長い。だから、医療費が高くなるのは、当然のことだ。
 厚生労働省の推計によれば、2025年には老人医療費は、国民医療費の約6割に達すると見込まれている。
 しかし、高齢者の受診率は、もともとこのように高かったのではなかった

 図表5で明瞭に分かるように、入院でも外来でも、65歳以上の受診率は、1960年においては他の年齢層とほぼ同一であった。ところが、60年代に急上昇し、他の年齢層の4倍から6倍というかけ離れて高い受療率になったのだ。これは、老人医療の無料化がなされたことの影響が大きい。
 それまでは、高齢者でも、国民健康保険加入者の医療費自己負担割合は3割、扶養家族の自己負担割合は5割だった。
 ところが、69年に東京都と秋田県で老人医療自己負担の無料化を行ない、それが他の自治体にも拡がっていた。
 田中角栄内閣が73年を福祉元年と位置づけ、社会保障の大幅な拡充を図ったが、その一環として73年施行の老人福祉法により、老人医療を全額公費負担とし、自己負担をゼロとした。石油ショック直前の当時は、税収が増加しており、将来を考えない人気取りによって、制度の基本設計を誤ったのである。

 しかし、これによって高齢者の受診率が急上昇し、病院のサロン化や過剰診療が問題となった。また、要介護者の入院の増加などで多くの人が病院を占拠する結果、本当に入院を必要とする人が入院できなくなるような事態も生じた。
 さらに、医療費が急増し、国民健康保険の財政悪化が問題となった
 73年においては、国民医療費3兆9496億円、老人医療費4289億円で、老人医療費が国民医療費に占める割合が10.8%だった。ところが、74年度には、老人医療費は前年度比55%増の6652億円となった。
 83年度には、国民医療費14兆5438億円、老人医療費3兆3185億円で、老人医療費が国民医療費に占める割合が22.8%となった。10年で国民医療費に占める老人医療費の比率が2倍になったわけだ。

 これに対してさまざまな措置が取られた。
 82年に制定されて83年に施行された老人保健法により、老人保健制度は市町村の事業とされ、その原資は、政府および市町村が3割、各保険者からの基金供出金が7割で負担することとなった。また、受給者本人にも自己負担が設けられた(外来1ヵ月400円、入院1日300円)。
 ところが高齢者医療費は伸び続け、政府は数年おきに自己負担上限額の引き上げを行なわざるをえなくなった。2002年には、老人医療自己負担を1割の定率とすることとなった。
 それでも、現役世代の拠出金は増え続けた。このため、費用が際限なく現役世代に回されるとし、1999年に老人保健拠出金不払い運動に発展した。
 そこで、2006年6月、法律名を従来の「老人保健法」から「高齢者の医療の確保に関する法律」に変更、制度名を「老人保健制度」から「後期高齢者医療制度」に改め、08年に後期高齢者医療制度が発足した。
(略)

ちなみに保険種別による自己負担の歴史的推移に関してはこちらを参照いただきたいのですが、今回の記事のグラフから見る限りでは入院では90年頃、外来でも96年頃を境に高齢者の受診率が減少傾向に転じていて、60年代以降一貫してその他の年代の受診率に大きな変動がないことと比較すると確かに医療費自己負担の増減が受診率に大きな影響を及ぼすのか?とも思える話です。
ただ現役世代もサラリーマンなどは1割から2割、そして3割と段階的に自己負担率が変化しているにも関わらずほとんど受診率に動きがないように見えるのは、もともと病気であるかどうかよりも仕事等の制約によって受診するかどうかを決める場合が多かったと言うことなのだとすると、仮に高齢者全員を3割負担にしたところで彼らが日々暇である限りは受診が極端に減ることはないのでは?と言う予測も成立しそうです。
高齢者もどんどん働かせていこう、社会保障の消費者から支える側に回ってもらおうと言う発想で定年の延長や高齢者雇用の促進等様々な施策も取り入れられていますが、高齢者が気軽に病院に受診出来ないほど忙しく働くようになることが一番の受診抑制策になるのだとすれば、「無遅刻無欠勤で非常に真面目」な高齢者の雇用促進策は二重の意味で益があることと言えるかも知れませんね。

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コメント

ばかばかしい
半世紀前の医療でいいってんなら好きにすればいいよ

投稿: | 2014年11月 7日 (金) 09時33分

田中角栄って結構後世に問題残すような事ばかりやってるな
都会から地方への分配だとか年金の増額とか

投稿: | 2014年11月 7日 (金) 09時57分

当時は経済成長が続いてた時代で社会保障充実は間違いではなかった気がします。
ただ経済成長が続かなければ持続できない制度になってるのが問題でしょう。

投稿: ぽん太 | 2014年11月 7日 (金) 10時09分

自己負担増加への舵取りが受診抑制、給付抑制を目的にしていることは明白ですが、それがどの程度有効なのかと言うことは今後の検証が必要だと思います。
アメリカにおいては共和党が両院を抑えましたが、公約として掲げるオバマケア撤廃がどのような形で決着するのかも注目したいですね。

投稿: 管理人nobu | 2014年11月 7日 (金) 11時44分

これだけ国民医療費が逼迫しているというのに、
いまだに10~15種類もの意味不明なクスリを平気で処方されている高齢者がゴロゴロいるのはどうしたもんでしょうか?
高齢者への不必要で過剰なクスリや病院での高額医療を制限すべき大ナタを振るう時期だと思いますが。
多剤大量処方や過剰濃厚治療はすべて保険請求を断固棄却すればいい。あるいは保険診療として認めず自己負担にする。
そうすれば自然になくなるはず。そういう意味でも混合診療の導入が望まれたはずなのに... 世の中はすべてカネ次第。

投稿: 悲観主義者 | 2014年11月 8日 (土) 17時16分

>いまだに10~15種類もの意味不明なクスリを平気で処方されている高齢者

基本薬ってのは必要だから処方されてるんであってですね…。まあ中毒疹とかで、「薬剤性は完全否定出来ません」ってコメント出すとばっさり切られたりってのがないではないですがががw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年11月10日 (月) 11時22分

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