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2014年11月 5日 (水)

現実となった11月1日の予告

すでに各種媒体によって報じられている通り、先日から各方面の注目を集めていた一人の女性の決断が、ついに予定通り実現したと言うニュースが世界を駆け巡っています。

尊厳死予告の米女性が命絶つ 「さようなら、世界」(2014年11月3日AFP)

【11月3日 AFP】(一部更新)末期の脳腫瘍を患いインターネット上で尊厳死を予告する動画を公開して話題を呼んでいた米国人女性、ブリタニー・メイナード(Brittany Maynard)さん(29)が、自らの命を絶ったことが分かった。

 メイナードさんはソーシャルメディアに「さようなら、親愛なる全ての友人たちと愛する家族のみんな。今日、私は尊厳死を選びます。この恐ろしい末期の脳腫瘍は、私からたくさんのものを奪っていきました。(尊厳死を選ばなければ)さらに多くのものが奪われてしまったことでしょう」「この世界は美しい場所です。旅は、私にとって最も偉大な教師でした。最も偉大な支援者は、近しい友人や仲間たちです。こうしてメッセージを書く間にも、私のベッドのそばで応援してくれています。さようなら、世界。良いエネルギーを広めてください。次へつなげましょう」とのメッセージを投稿した。

 メイナードさんを支援してきた尊厳死支援団体「コンパッション・アンド・チョイセズ(Compassion & Choices)」のショーン・クロウリー(Sean Crowley)氏によると、メイナードさんは11月1日、自宅で安らかに息を引き取ったという。

 結婚して間もない頃に激しい頭痛に襲われるようになったメイナードさんは、今年1月に余命6か月の宣告を受け、侵攻性のがんで苦痛を伴う死になると告げられた。その後、米国内で「死ぬ権利」が認められている数少ない州の一つ、オレゴン(Oregon)州に夫と共に移り住むと、先月に自らの命を絶つと宣言する動画を公開。これが何百万人ものネットユーザーに視聴され、話題となっていた。

「余命半年」の米女性が安楽死 是非を巡って議論(2014年11月4日テレ朝ニュース)

 アメリカで安楽死すると宣言していた29歳の女性が、予告通り1日に薬を飲んで死亡し、安楽死の是非を巡って議論が沸き起こっています。

 アメリカ市民:「惨めさと痛みしか残らないのであれば、自分の命を絶つことは人間らしいことだ」「人は自殺するべきではない。その時が来たら、神様が連れていってくれる
 ブリタニー・メイナードさんは末期の脳腫瘍(のうしゅよう)で4月に余命半年と告知され、1日に安楽死するとネットで予告していました。アメリカの主要メディアやネット上では、メイナードさんの安楽死の是非が論じられています。安楽死をもっと認めるべきだといった意見の一方、自殺とも捉えられる行為に否定的な考えも出ています。アメリカ最大規模のカトリック系宗教団体の幹部はツイッター上で、「自ら命を絶ったことを非常に悲しく思う。彼女と同じような選択をする人が増えるのが心配」と懸念を示しています。

まずは亡くなられたメイナードさんのご冥福を祈りたいと思いますが、後述するように彼女にとって死は必然であって安楽死実施の有無に関わらず決して避けられないものであり、ただその時期を幾らかなりとも早いか遅いかを選択する自由だけがあったと言う点は強調しておくべきだと思います。
安楽死推進派の団体が彼女のインタビューを動画サイトで公開したことで一気に話が広まったと言うこの一件、昨年結婚したばかりの若い女性が不治の病を宣告されたと言う点、そしてたびたび襲う耐え難い頭痛等の症状から解放される手段が他にないらしいと言う点などから、安楽死容認派にとっては「これが認められない方が非人道的だ」と言いたくなるケースではあったのかなと言う気もします。
一部報道によれば最近比較的に調子が良いこともあり実施を先送りにするかのような言葉もあったと言うことで、結果として予定通りの決行となったことは少し予想外と言っていいのかも知れませんが、いずれにしても安楽死を合法化している州に移住し夫の誕生日を共に祝ってから決行すると宣言していたそうですから、一事の気の迷いや思いつきではなく遅かれ早かれ実施はされることは確実だったように思います。

「こんな極めて個人的な話を全世界に公開して何がしたいんだ?」と言う批判的な声もあるようなんですが、そもそもの彼女の目的の一つが安楽死の合法化を推進することであったと言いますから、同じ悩みを抱える後進にとってはこうした選択枝が実際にあることを公にしてくれると言うことは意味があることなのでしょうし、これを受けて今後同種のケースが増えていくのかどうかなど社会的影響がどの程度出てくるのかです。
もちろん記事にもあるように宗教的見地からいかなる理由であれ自殺は認められないと言う立場もあって、宗教戦争めいた各地の紛争を思うとそもそも宗教がそれを信仰する立場にない人間にどこまで関与すべきなのかと言う議論もあるでしょうが、自由の尊重を標榜する国だけに他人の自由を尊重することもまた求められるようには思いますね。
ちなみにアメリカでは末期患者の安楽死に7割が賛成していると言う調査結果があるのだそうで、今回の経緯からしても容認派が多数に登っているらしいのは想像の範囲内なのですが、それでも「自分は受け入れない」と言う声も少なからずあることを考えるとやはり結局は各人の思想信条の問題と言うのでしょうか、万人に共通するコンセンサスを形成することも難しいし無理にその必要があるわけでもないのかなと言う気もします。

尊厳死を実行した米国人女性に反応さまざま「勇敢だ」「ありがとう」「神様から授かった体なのに」―米国ネット(2014年11月4日レコードチャイナ)

2014年11月3日、米国で尊厳死を予告していた脳腫瘍患者の女性が自殺したことが報道され、米国人からさまざまなコメントが寄せられている。
1月に末期の脳腫瘍と診断され、4月に余命半年と宣告されたブリタニー・メイナードさんは、当時住んでいたカリフォルニア州から、尊厳死が認められているオレゴン州へ夫ら家族とともに移り住んだ。メイナードさんはソーシャルメディアを通じて、11月1日に医師による処方薬で命を絶つと宣言しており、全米で議論が起こっていたが、1日、予告どおりに薬を服用し、息を引き取った。この報道は全米で高い注目を集めており、ネットユーザーがさまざまなコメントを書き込んでいる。

「ブリタニー・メイナードさん。あなたは選択の自由のパイオニアだ」
「これは彼女の人生、彼女の体、彼女の選択の問題だ。もし自分の宗教の教えに反するのなら、その人はこういう選択をしなければいい。他人を自分の信条に従わせようとするべきではないと思う」
「私たちは動物を安楽死させている。でもおかしなことに、同じことを人間に行うのは適切ではないと考えている人が多い。23年前、親友ががんで生涯を閉じた。8カ月間、普通の男性だった彼がまったく別人のように変わっていくのを見ていた。そんな風に生涯を閉じるなんて、あまりにつらい。誰にもそんな目にあってほしくないと思う。ブリタニーに神の祝福がありますように」
「勇敢なブリタニー、安らかに眠ってください」
「おやすみ、ブリタニー。とても個人的な、勇気ある行動を私たちと分かち合ってくれてありがとう
彼女にとってよかったと思う。とてもとても悲しい話だけれど、それでも彼女にとってはよかったんだと思う。彼女のお母さんと夫はこれから長い間泣くことになるだろうけれど、彼女はすばらしい人だ」
「彼女が自分の選択を公にしたことで、ほかの州も変わればいいと思う」
「なぜ、彼女の体は彼女のものと考えられるんだ?私の体は私のものではない。神様が私に大事にするようにと授けてくださったものだ
彼女と同じ州に住んでいなくてよかった」(翻訳・編集/Yasuda)

ひるがえって本邦では一部医師らから「癌と戦うな」と言うキャッチーなコピーでの働きかけが相応に社会的影響力を発揮しているようで、この10日発売の漫画週刊誌にも何やらその広報活動めいた新連載が始まると早くも一部方面では話題騒然と言う状況なのですが、注意いただきたいのは今回の件の主役であるメイナードさんに関しては「癌と闘わなかった」わけでは全く無いと言うことです。
それどころか実際には「自殺願望はありません」「(癌が治る薬が)あれば、ずっと前に飲んでいます。わたしは死にたくありません」と明言している、しかしそうではあってもどうしても避けがたい死という現実を前にした結果「わたしはもうすぐ死にます。だとしたら、自分の思う通りに死にたい」のだと語っていると言う点で、あくまでも病気と真っ正面から向き合った結果の選択であると言う点は記憶すべきだと思いますね。
いずれにしてもこれだけの議論になっていると言うその一点を取ってもメイナードさんの死が全く無意味なものには終わらなかったとは言えると思いますが、日本がこうした実施の段階に至るまでにはまだまだ遠い道のりが必要そうだと言う現実を考えると、いずれどこかで海外渡航による日本人の安楽死と言うことがまず騒がれる未来が来るのでしょうか。

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コメント

死ぬのが確定してんならわざわざ苦しんで死にたくはない罠

投稿: | 2014年11月 5日 (水) 07時45分

症状コントロールの努力をどこまでしたのか、とか、本当に症状コントロールは不可能だったのか、とか
(単にヤブ医者に当たっただけ、という可能性もあるわけで)
病状に関する情報がないと何とも言えませんな。

それはそれとして、安楽死というのは感動的な話でもなんでもなくて
法的には、死ぬ薬を処方した医師が自殺幇助に問われない、とか
安楽死を実行した人に対して医師が救命の努力をしなくても業務上過失致死に問われない、
というだけのことだと思うのですが。

投稿: JSJ | 2014年11月 5日 (水) 08時30分

動けなくなってから他人に安楽死か生かしとくかを決められるのはまっぴら

投稿: | 2014年11月 5日 (水) 09時27分

この決定が完全に自由な意志の元に行われたものであるのが大前提。
その上で究極の選択を強いられた本人家族の無念に対してお悔やみ申し上げます。

>法的には、死ぬ薬を処方した医師が自殺幇助に問われない、とか
>安楽死を実行した人に対して医師が救命の努力をしなくても業務上過失致死に問われない、
>というだけのことだと思うのですが。

誰でも手軽に手に入るもので楽に死ねるなら話がずっと簡単だったかもですね。

投稿: ぽん太 | 2014年11月 5日 (水) 09時43分

安楽死をする(させる)にしても誰が主体になって実施するかと言うことはしばしば問題になるところですが、その点では全自動安楽死装置と言うものは画期的かつ必然的な発明だったのかなとも思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年11月 5日 (水) 10時25分

日本では現状、自殺を図った人を見つけたときに死ぬにまかせれば一般人であっても、刑法217条「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、1年以下の懲役に処する。」〜219条「前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」あたりで処罰されることになるかと思います。
だから全自動安楽死装置はあれば便利、程度の役にしか立たないのではないでしょうか。

自殺自体が道徳的(宗教的)に非難の対象となる欧米社会であればこそ、「ブリタニーさんの決意」自体が問題になりますが、
自殺が絶対の禁忌ではない日本では、自殺にまつわる問題はより大きく「周囲の対応」の問題になるのではないかと思われます。

投稿: JSJ | 2014年11月 5日 (水) 12時38分

「神に対する罪」のバチカンを批判 米尊厳死女性の母親が反論
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141119-00000602-san-n_ame
産経新聞 11月19日(水)20時39分配信

 【ロサンゼルス=中村将】尊厳死が合法化されている米西部オレゴン州で今月1日、末期の脳腫瘍を患っていたブリタニー・メイナードさん=当時(29)=が投薬によって死亡したことに関連し、母親のデビー・ジーグラーさんが娘の死を批判したローマ法王庁(バチカン)に反論したことが分かった。

 バチカン側はメイナードさんの死後、「尊厳というのは人生を終わらせることではない。安楽死は神と創造に対する罪である。非難すべきことである」とするメッセージを発していた。

 これに対し、ジーグラーさんは、尊厳死を支援する米団体のホームページで「29歳の娘に肉体的、精神的に襲いかかる激しい痛みを知らない、大陸を隔てた見知らぬ人に非難されることではない」とし、「この批判は、ほほを平手打ちされる以上のこと」と家族の気持ちを記した。

投稿: | 2014年11月20日 (木) 11時53分

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