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2014年10月29日 (水)

地方と言う言葉に込められた複数の意味づけ

昨今の政治的キーワードとして地方創生なる言葉がしばしば取り上げられているようですけれども、財源等も含めた地方への権限委譲と言うことは長年徐々に行われてきた政策である一方で、相変わらず人口動態的には大都市部への人口集中と地方の人口減少と言う大傾向は変わる気配がないようです。
地方から見れば税収も何も自治体主導でやってくださいと権限を委譲されたはいいが、その税金を負担してくれる地元住民が減る一方では何の事やらと言う話なんですが、国民意識としては必ずしも地方移住は不可だと言うわけでもない一方で、その実際においてはなかなかに難しい問題もあるようだと言う記事が出ていました。

「地方移住してもよい」20~40代で過半数 内閣府調査(2014年10月18日日本経済新聞)

 内閣府は18日、人口や経済社会など日本の将来像に関する世論調査の結果をまとめた。都市に住む人に地方に移住してもよいと思うか聞いたところ、「思う」「どちらかといえば思う」の合計が20~40歳代でそれぞれ半数を超えた。地方移住は政府が進める地方創生の柱の一つで、若い世代の前向きな意向をどう生かすかが重要になりそうだ。

 地方移住に肯定的な人は20代で52.3%、30代が57.6%、40代が51.2%。50代以上は3割前後で、全体では39.7%だった。移住してもよいと答えた人に移住の条件を複数回答で尋ねたところ「教育、医療・福祉などの利便性が高い」が51.1%で最も多く、「居住に必要な家屋や土地が安く得られる」が48.9%で続いた

 地方創生で進める地域の中心部に居住地を集約する考え方については「反対」「どちらかといえば反対」が64.0%を占めた。病院や公共施設が中心部に集められた場合に、中心部への移住を考えるかとの質問には「考える」「どちらかといえば考える」が48.8%、「考えない」「どちらかといえば考えない」も48.0%と拮抗した。

 調査は8月に全国の成人男女3千人を対象に実施。有効回答率は60.9%だった。

“田舎暮らし移住”が急増中 でも「たった半年で飽きてしまって」という場合も(2014年10月17日週刊朝日)

 定年したら自然豊かな田舎へ移り住んで、のんびりと暮らしたい──。そう考える中高年夫婦は増えている。内閣府の調査でも農山漁村への定住を望む60代以上の割合は、2005年に比べて倍近くに達している。
 地方への移住希望者を支援する認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)によると、13年度の問い合わせ件数は1万件を超す。ちなみにその5年前は3千件程度だった。副事務局長の嵩(かさみ)和雄さんが言う。
「東日本大震災を機に、田舎でのスローライフを考え始めた人は多いです。定年後や、その少し前から生き方を模索し始める50、60代にも根強い人気がある」
 センターは、全国の自治体などから集めた情報を提供するほか、移住した人を招いてセミナーを開いたり個別相談に応じたりする。初めて相談にやってくる人の大半は「なんとなく田舎暮らしに憧れて」と漠然としたイメージしか持っていない。このため聞き取りを進めながら、(1)気候の好み(2)目的(3)移動手段はマイカーか公共交通機関か(4)費用などを把握し、自治体の担当者につなぐのだという。その上でピンとくる場所があったとき、嵩さんが強調するのは「現地には何度か足を運ぶこと」だ。
「普段の生活では車を使うつもりでも、使えなくなったときに慌てないよう、一度は公共交通機関で行ってみてほしい。気候が厳しい季節にもあえて訪問する必要があるんです」
 つまり夢を実現させるためには、入念な準備が欠かせないのだ。茨城県笠間市に住む中野さん夫妻も定年前から通い詰め、短期滞在で農作業を基礎から学び、親しくなった地域住民のおかげでなじむことができた。生活基盤を築くまでに、かなりの時間を費やしている。こうした“手間”に、嵩さんもうなずく。
「皆さん、『空き家なら簡単に借りられるはず』と考えがちですが、実は地元の所有者は案外貸したがらない。簡単には信用できないというのが、大きな理由のようです。地元の風習や地域の人との関係は暮らさないとわかりづらい

 頭の中で思い描いていた光景と自分たちの生活スタイルのギャップを痛感
した夫婦もいる。静岡県下田市在住の井田一久さん(66)と真知子さん(55)夫妻だ。伊豆の海を一望できる高台の中古住宅に移住して10年目を迎える。
 もともと一久さんは建築士の資格を持ち、サラリーマンを経て独立、神奈川県相模原市で設計事務所を開業した。2人の子どもたちの教育が一段落した50代で自宅を売却、妻の親戚がいるこの地へ。夏は東京より気温が5度も低く、クーラーいらず。海の青さや星の美しさにも魅せられた。
「当初は夫婦で家庭菜園や釣りを楽しんでいました。でも、たった半年で飽きてしまって(笑)。絵を描くつもりで庭に建てたアトリエも使わないまま。退屈に耐えかね、ハローワークに行ったんです」(一久さん)
 すると地元建設会社から半年間の現場監督を頼まれた。その縁で設計の仕事を再開することに。06年には、自分たちのような移住希望者の力になろうとNPO法人を設立し、相談やイベントの開催、地元の人や役場との連絡役をこなしている。真知子さんも設計の仕事を手伝いつつガーデニングや地元サークルで卓球、俳句などを楽しむ。
憧れだけでは時間を持て余すし、家を処分してしまえば戻れない。そうした自分たちの失敗から言えるのは、『目的を明確にする』と『賃貸で様子見を』でしょうか」(同)

まあしかし田舎暮らしは自然が豊かと言うステレオタイプな捉え方もどうかと思うんですが、自然と言うものは除草防虫などのメンテナンスなしには草生え放題虫も害獣も入り放題なのであって、時折聞くことですがきっちり管理され快適に調整された人工環境を自然豊かな田舎の光景だと思い込んでいると早々に幻滅して撤退することになってしまいますよね。
とは言え地方と言っても県庁所在地や中核市クラスの地方都市であれば別に日常生活において何ら不自由はないと思われますから、単純に地方移住と言うことといわゆる田舎暮らしとを混同して語るべきではないはずですし、都道府県レベルで考えると今後国保財源なども県単位になるわけですから、別に過疎地域でなくてもまずは県内への人口流入を増やすことの方が重要である場合が多いのではないかと思います。
ただここで注目頂きたいのは国の言う地方創生と言う言葉には実は地方においても人口やインフラの中心部への集積、いわば一局集中化を推進すると言う考え方が含まれていることで、近年注目されているコンパクトシティーなどを見ても判るように効率的にはこの方がよほどいいのは確かなのでしょうが、言ってみれば地方においてもミニ都会を作るだけと言うことにもつながりかねませんよね。
そして地方と言った場合にそうしたミニ都会のイメージで語る人と言うのはあまり多くはないはずで、のんびり地方暮らしをしたいと言う人たちの言う地方とはまずは田舎であると考えておいて間違いなさそうなんですが、この場合も田舎時間でのんびり出来るのはいいがインフラに関しては都市部よりも劣ることを我慢出来るのかどうかが一つのカギとなりそうです。

その点で興味深いのが国の調査結果においては地方移住の条件として「教育、医療・福祉などの利便性が高い」ことが挙げられ、さらには「居住に必要な家屋や土地が安く得られる」と続いていると言うのですから、それは生活コストが安くてインフラも充実している夢のような土地があるなら誰だって移住したくなるわ!と言う当たり前の話ですよね。
アメリカなどは自己責任を最重視するお国柄なのか、田舎暮らしは不便で当たり前、それを承知の上で田舎に住んでいるんだから自分で何とかしろが当たり前に通用するようですが、日本では例えば郡部に住む人間は心筋梗塞で倒れてから治療を受けるまで○時間かかると言われればそれは大変だ、都市部と変わらないよう環境整備をしなければ、と考えがちです。
財源の地方委譲と言うことを肯定的に考えるならば、例えば「うちは税金安いですよ」と言った事も一つの大きな移住誘致のアドバンテージになり得るはずですが、そこまで大胆な税体系の改革を断行できる首長がいるかどうかも微妙ですし、どうしてもお金が使えない分切り捨てるものも出てくることを住民が納得出来るかどうかです。
先日は堀江貴文氏がこの地方創生と言う考え方に対して「地方優位の選挙制度の弊害」「地方へのバラマキは自殺行為」と散々な言いようだったのですが、「「田舎は不便で当たり前」という、当たり前の感覚を持たなければならない」と言うのはまさにその通りで、全国どこでも都会と同じ方向性のミニ東京化を目指す限りは当然ながら規模の優位性で更なる人口集中が続く理屈でしょう。
もちろん地方都市であっても都会とさしたる差のない暮らしが出来ますよと言う言い方の方が地方移住の間口が拡がるのは当然で、地方でも都市部では当面そういう方向で移住者を募るのは決して間違いではないでしょうけれども、田舎暮らしも考えていると言う人達を本当の田舎に呼び込みたいなら、インフラの未整備や地縁血縁等のしがらみも含めたネガティブな面もきちんと伝えておかないとフェアではないでしょうね。

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コメント

田舎の閉鎖性って中に入ってたらそんなには感じないんだけどね。
でもネットじゃときどき地元をDQNの巣窟みたいに書かれててへこむんだなこれが。

投稿: わりと田舎の人ですが | 2014年10月29日 (水) 08時56分

「地方」てどこを指しているのかよくわからないです。
関東地方、中部地方、関西地方といえば、地理的くくりの意味だし、
都市部じゃないところを指すのかといえば、地方都市ってなに?となります。

地方創生の地方って「政令指定都市を除くすべてのところ」なんですかね?

投稿: | 2014年10月29日 (水) 09時33分

地方創生という言葉における地方の位置づけに関しては、もともと自治体の過半数が消滅すると言う話から来ていることから、人口減少を来している全ての自治体が地方に含まれるものと解釈出来るのかなと思っています。
ただ都市部への人口集中自体は日本だけではない世界中当たり前の現象ですから、結局のところ人口減少した地域をどう扱うか、もっと言えば赤字覚悟で他地域並みの公的インフラを維持すべきかどうかが鍵になりそうですね。
ただ税金や保険料の負担が同じで格差をつけないままなら還元も同じだけしてもらって当然と言う考え方はあるでしょうから、今後は地域毎に負担と還元とのバランスが個別に問われるべきなのかも知れません。
田舎では一番判りやすいのは先日紹介したように道路や電気等は基幹部分だけは公費で整備して、そこから先は各人が自己責任で必要なだけつなげてくださいと言うやり方なのかなとも思います。
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7287.html

投稿: 管理人nobu | 2014年10月29日 (水) 10時06分

ちなみに都市では、どんどん都市住民仲間が増えたほうがインフラはより一層充実し、特にデメリットというほどのことは見当たらんのでしょうか?

投稿: | 2014年10月29日 (水) 10時52分

>ちなみに都市では、どんどん都市住民仲間が増えたほうがインフラはより一層充実し、特にデメリットというほどのことは見当たらんのでしょうか?

私見ですが人口100万以上の人口集積はかえっていろいろ無駄が多いような。
地方ならたいていのものが一通りそろう40~60万規模都市の郊外がいちばん住みやすいです。
あとは街中と郊外をスムーズにつなぐ交通手段をしっかり整備してもらえばうれしいな。

投稿: 辰 | 2014年10月29日 (水) 11時56分

人口減少局面で田舎までインフラ整備しろは無理だし
ただのわがままですね。
日本人って感情的で競争は本当に嫌いですよね。

投稿: | 2014年10月29日 (水) 13時03分

日本のGDPの7割が第3次産業な時点で地方に将来性は無いでしょうね。
東京1極が嫌なら3大都市圏か7大都市圏への集積しか無いでしょう
規模の利益が働くので集積してる方が有利ですし

投稿: | 2014年10月29日 (水) 13時06分

>私見ですが人口100万以上の人口集積はかえっていろいろ無駄が多いような。
>地方ならたいていのものが一通りそろう40~60万規模都市の郊外がいちばん住みやすいです。

東京は、実はそんな都市なんですよね。何でもそろう拠点が複数散在していて、東京と一口に言っても、その拠点内でおおむね生活している(直径10kmの山手線でいえば、1/4~1/6くらいの範囲)。しかも、40〜60万規模では絶対不可能な「希少性のある店」も、豊富な教育拠点も、どこかに必ずある。

中途半端に集中している地方中核都市より住みやすいわけで、地方の地方にすんでいる人は、地方中核をとばして東京へというのも当然と考えます。

投稿: おちゃ | 2014年10月29日 (水) 18時06分

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