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2014年10月 1日 (水)

専門職におけるプロフェッショナリズム

こういうことはあまりあって欲しくはないことですが、本日まずは医療現場における暴力行為の報道が続いたので紹介してみましょう。

「待ち時間長い」家裁事務官が看護師殴った疑い(2014年9月26日読売新聞)

 病院で看護師を殴ったとして、警視庁愛宕署が東京家裁事務官の男(56)から暴行容疑で任意の事情聴取をしていることが捜査関係者への取材でわかった。

 事務官は事実関係を認めており、同署は同容疑で書類送検する方針。

 捜査関係者によると、事務官は24日午前、東京都港区の東京慈恵会医科大付属病院で、近くを通った女性看護師の顔を殴った疑い。事務官は診察のため病院を訪れており、調べに「待ち時間が長くて腹が立った」と供述している。

看護師が患者暴行「早く死ね」 岩沼の病院(2014年9月26日河北新報)

 岩沼市の総合南東北病院(松島忠夫院長)で、30代の女性看護師が入院患者に暴行していたことが25日、分かった。現場にいた目撃者によると、看護師は患者に対して「早く死ね」などの暴言も吐いたという。病院は患者の家族らに謝罪し、看護師を停職3日間の懲戒処分にした。
 関係者によると、暴行があったのは6月中旬の未明。70代の男性患者が看護師に病室で顔を殴られ、左頬付近が腫れた。男性は直前に病室を出て廊下を徘徊(はいかい)していて、看護師に病室に連れ戻された。
 同室だった患者は「無理やりベッドに寝かせられたのか、男性は『痛い、痛い』と声を上げていた」と話す。看護師は男性の汚物処理後、寝ている男性の顔を殴り、「早く死ね、じじい」と言って立ち去ったという。
 病院は男性の頬に湿布を貼る治療をした。看護師は聞き取りに対し「男性の体が腹に当たり、とっさに手を上げてしまった」と釈明。暴言はなかったと病院は認識しており、看護師にも確認していないという。
 病院は「理由はどうあれ、あってはならないことで申し訳ない。再発防止のため職員の指導・教育を徹底したい」と話している。

まあしかし家裁事務官と言えば医療事務に相当する役職なんだそうで、普通の人以上に社会的トラブルにタッチする機会も多いでしょうに何を思ったのかですが、過去にもこの種の窓口トラブルは各地で報道されているところで、岩手県議が起こした炎上騒動では最終的に同県議の不可解な死と言う結果に終わったのも記憶に新しいだけに、看護師を殴っても待ち時間は改善しないと言うくらいの分別はあって欲しかったですかね。
岩沼市のケースでは暴言はなかったと言うなど今ひとつ事実関係がはっきりしないのですが、ネットで見ていて面白いなと思ったのは「なんでこんな酷いことをと言う人は一度介護を経験してみればいい」と言うもっともな意見もあり、他方「介護経験があれば痴呆老人殴ったり叱ったりしても無意味ってわかるだろ」と言うこれまたもっともな意見もあって、まあ気持ちは判らないでもないにせよそこはそれ、仕事でやっていることですからね。
いずれも職業的立場上求められる態度と言う点で見るといささか抜かりがあったと言う捉え方も出来るのかなと思うのですが、もちろん「一患者として病院に来ているのに職業など関係ない」と言う意見も正論ではある一方で、おそらく病院に限らずトラブルを頻発する職業・地位の方々と言うのは何となくありそうだと言う経験則は、多くの接客を伴う職業の方々がお持ちなのではないかとは思います。
ちなみに近年いわゆるモンスター顧客の類が社会的にもクローズアップされている中で、特に老後を迎えつつある団塊世代など年配層の暴走が目に余ると注目もされているそうですが、右肩上がりの社会の中で働いた分それなりに評価されると言う成功体験ばかり積み重ねてきた年配層の方々には、うまくいかないこと=当事者の努力や誠意の欠如と言う考え方に直結しやすい傾向があるのでは?と言う指摘もあるようですね。
いずれにしてもほとんどの人間はわざわざ悪くしてやろうと思ってやっているわけではないでしょうから、窓口業務にしろ夜間の看護・介護体制にしろ改善すべき点があるのであればシステム的に改善を図った方がスタッフ、利用者双方にとってストレスの少ない環境に結びつくのだと思いますけれども、この業務改善と言う点に関して先日少しばかり気になる記事を見つけたので紹介してみましょう。

疑義照会するとクビ?!(2014年9月29日日経ドラッグインフォーメーション)

 先日、ある大学の先生とお話する機会がありました。同級生の薬剤師が保険薬局で管理薬剤師をしていたが、処方医に疑義照会をしたら、しばらくして管理薬剤師をクビになって、他店に配置換えになったというのです。また、先生の大学の薬学生が、薬局実務実習先で、指導薬剤師に「疑義照会……。まぁ、まず聞き入れてもらえませんから」と諭された(?)そうです。
 話す先生も、聞く私も、複雑な苦笑いを交わし合うしかありませんでした。

 そもそも、疑義照会は、薬剤師法第24条で「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを公布した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」とされている、薬剤師にとっては必須の事項です。薬学教育でも「処方に疑義があれば、きちんと疑義照会をしなければいけません」と教えています。
 疑義照会が「ただ確かめるだけ(=医学的に正しい処方に変えなさいというものではない)」と受け取られること、医師に疑義照会への対応を義務付けた法律がないということもあるのかも知れませんが、疑義照会がスムーズに流れない場面は少なくありません

 随分、昔の話かと思っていても、現実問題として「薬剤師ごときが医師の処方に口を出すな」とか、「患者の個人情報について、薬剤師に伝えるわけにはいかない」といった医師や医療機関の対応は、まだまだ珍しくないのが現実です。
(略)
 外来診療で疑義照会が来るのは、その患者さんのことは(いい意味で)忘れて、目の前の別の患者さんに没頭しているタイミングです。目の前の患者さんのことを考えれば、それを中断して先ほどの処方のことに対応するのは避けたいと思うのは当然です。既に自分は、その患者さんの治療について決断をして、責任を取るつもりになっているわけですから、なおさらです。

 私は、薬剤師が処方箋を受けて動くだけでなく、薬を交付した後にも動く必要があると思っています。調剤した薬剤を服用して、その患者さんがどうなったかを、薬剤師自身が電話などで確かめて、次回診察時に、薬剤師の“見立て”を医師に伝えることができるようにしたらどうでしょう。そうすると、医師は決断する前ですから、きっと薬剤師の考え方を参考にしたり、意見を取り入れたりしやすいと思います。病院で、外来化学療法の薬剤師外来が医師の診察前に設定されるケースが増えてきているのも、このような意味合いがあるからだと思います。また在宅業務で薬剤師が往診に同行するケースなども、これに該当します。
 課題は色々とありますが、薬剤師が、調剤した薬がどうなっているかを自分自身で確かめるようになれば、きっと解決の糸口が見つかるのではないでしょうか。

薬剤師に限らず看護師等も含めていわゆる確認の電話の類と言うものは忙しい臨床医にとっては少なからず鬱陶しいもので、それは字が汚くて読めないだとかとても普通では考えられない指示であるとか時に問い合わせと確認の必要性があるのは理解出来るし、また事故のリスクを減らすためにもお互い気軽に確認出来る状況にしておくべきだと言うのは判るのですが、そうは言ってもいつも笑顔で受けられる場合ばかりでもないですよね。
何をどう問題だと感じて何が確認したいのだと言う目的意識が明快ならばよいのですが、指示の内容をただ読み上げるだけで「と言う指示ですよね?」と言われるだけでは何が聞きたいのかさっぱりですし、多忙な業務の真っ最中や深夜早朝にこの種の問い合わせを頻発されたのではさすがにいつも平常心ともいかず、結果として「あの先生は怖いから確認はやめとこう」と言う風潮が蔓延すると後日思わぬ事故の原因ともなるわけです。
ここでは「調剤した薬剤を服用して、その患者さんがどうなったかを、薬剤師自身が電話などで確かめて、次回診察時に、薬剤師の“見立て”を医師に伝えることができるようにしたらどうでしょう。」と言うサジェストがなされていて、これまた「診断治療は医師の専権事項だ」などと言い出す先生もいらっしゃるかと思いますけれども、やはりどの職種であっても医療に従事する専門職である以上は治療の全体像をトータルに捉えて考える必要はあると思いますね。

胃癌検診などでもよく行われる胃透視(いわゆるバリウムですね)と言う検査がありますが、手技的な部分に関しては数をこなしている人間がうまいのが当たり前ですからそこらの医師よりもレントゲン技師の方がよほど上手だったりする、そして小さな小さなポリープも当てものよろしく見つけてくるのですけれども、所見をつける医者の方ではその多くは胃癌リスクと言う点ではさしたる重要性のないものだと判断しているかも知れません。
一見同じような病変でも写真から読み取れる様々な情報から精密検査に回すべきか経過観察でいいのか判断されるもので、逆に言えば見つけた病変に対して適切な判断を行っているかどうかで写真の撮り方も変わってくるはずですが、ではどうやってそれらの判断を行うかと言えば精密検査をした結果どうだったかと言う「正解」との突き合わせが非常に大きな意味を持ってくるはずですよね。
医師の場合は検診で引っかかった症例にカメラを行う、場合によってはさらに病理検査にも回し診断と照らし合わせると言う一連の行為の繰り返しが診断力を高め、そのフィードバックが胃透視での診断力も高めていくわけですが、技師にしても自分が拾った所見が結局何であったか興味を持ってしかるべきだし、検査精度維持のためには施設としてもその部分に関する教育機会は与えるべきではないかと言う気がします。
疑義紹介の類も電話の相手が何をどの程度考えて連絡して来たのかは聞いていれば概ね判るのだろうし、きちんと根拠や考え方の筋道もあっての疑問や疑義に残念なあしらいをすると言うのでは医師の側に問題があると言うしかないですが、そのためにもまずは専門職として相手にリスペクトされるだけの知識は身につけておく必要があって、医薬分業と言う制度はその教育機会と言う点ではいささか不利なのかも知れないですね。

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コメント

baka医者もbaka薬剤師もイラネ

投稿: | 2014年10月 1日 (水) 09時14分

皆さん病理か放射線科へどうぞ
DQN患者に付き合わなくていいからストレスフリーですよ

投稿: うんちぶりぶり | 2014年10月 1日 (水) 10時13分

そうすると精神科の先生が一番悲惨?

投稿: たまごん | 2014年10月 1日 (水) 10時30分

精神科の場合患者側要因もさることながら、日頃スピード感ある診療に慣れた他科医師には別な意味でもストレスが溜まりそうに思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年10月 1日 (水) 11時01分

人あしらいは医師にとってかなり必須のスキルですな
患者にとっても医師は見た目が9割なので

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年10月 1日 (水) 17時08分

精神科に通院される患者さんもいろいろですが、基本的に統合失調症の患者さんは癒やし系です。

待ち時間については職員の些細な言動が体感的な待ち時間に影響を与えますので、
患者さんをお客様扱いしろとは言いませんが、トラブルを回避するためにも最低限の接遇を知っておいた方がよいと思われます。

投稿: クマ | 2014年10月 1日 (水) 18時15分

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