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2014年10月14日 (火)

いよいよあの手この手で社会保障費削減が本格化

久しく以前から社会保障関連の予算拡大が続き対策の必要性が言われる中で、先日来相次いでこういうニュースが出てきています。

財務省、介護報酬下げ要請 現場の処遇改善除き6%(2014年10月7日日本経済新聞)

 財務省は2015年度の予算折衝で介護サービス事業者が受け取る介護報酬を引き下げるように厚生労働省に要請する。社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームが高い利益率を上げていることなどを背景に、報酬の引き下げは可能と判断した。介護の現場は人手不足が深刻で処遇改善への加算は拡充するが、それ以外では平均で6%のマイナス改定を求める。

 8日に開く財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で財務省案を提示する。今年末にかけての来年度予算の編成過程で厚労省に引き下げを求める。介護報酬は介護事業者がサービス提供の対価として受け取るもので、国が一律に決める公定価格となる。マイナス改定になれば06年度以来、9年ぶりとなる。

 厚労省が3日に発表した今年3月時点の介護事業者の経営実態調査で、特養ホームが8.7%と高い利益率を上げていることなどが分かった。特養ホームには毎年生じる黒字をため込んだ「内部留保」が総額で2兆円あるとの指摘がある。財務省は多額の内部留保の活用をかねて求めている。

 塩崎恭久厚労相は7日の閣議後の記者会見で、財務省の提案について「真剣に受け止めないといけない」と述べた。介護報酬の引き下げは利用する人の負担軽減につながる一方で、事業者の利益が減ることにもつながりうる。このため厚労相は「国民負担も考え、介護に携わる人たちの満足度も考えないといけない」と指摘した。

財務省、介護保険の利用者負担の更なる引き上げを提言(2014年10月9日官庁通信社)

財務省は8日の「財政制度等審議会」で、介護保険サービスの利用者に支払いを求める自己負担について、更なる引き上げを検討すべきだと提言した。医療では最大で3割の負担を求めていることや、保険料の増大が続いていることなどを念頭に、「負担の公平性を確保する観点から、自己負担の更なる見直しが必要」と主張している。

審議会の吉川洋会長(東大大学院教授)は会合後に会見し、こうした提案に賛同する声は多かったと説明。委員からは、「現行の1割は低すぎる」「要介護度の低い利用者は大幅に上げるべき」といった声も出たという。

介護保険サービスの自己負担は1割が原則。厚労省は来年度から、それなりに所得の高い高齢者に限って2割に上げることにしたが、対象者は65歳以上の約20%に限定している。財務省はこの対象の拡大を求め、負担割合の再考も促した形だ。

ただし、利用者団体をはじめとする介護関係者の間では、自己負担の引き上げに慎重な意見が根強い。年金の給付額が徐々に減っていき、消費税などの負担が段階的に増えていく今後を見据え、サービスを使えなくなる人が増えると反論しているのだ。慎重論のなかには、「介護は利用期間が長くなるため、医療保険と単純に比べるのは乱暴」といった指摘もある。

一方で、来年度以降の自己負担の水準を議論していた当時の審議会では、より多くの人を2割に上げるよう求める声も出ていた。2018年度を見据えた今後の制度改革の議論では、このテーマが再び焦点として注目を集めそうだ。

財務省はこのほか、来年度から始まる要支援者向けのサービスの改革について、訪問介護とデイサービス以外も地域支援事業に移すよう求めた。また、掃除や洗濯、調理といった訪問介護の生活援助を中心に、軽度者の給付範囲を見直すよう改めて訴えている。

社会保障費もこれだけ増大してくると財政改革の途上にあって聖域化していられないのも当然ですが、とりわけ出費の最大要因である医療・介護領域は削り甲斐もあろうと言うものでしょう、今まではどちらかと言えば医師の裁量の範囲が大きい医療の方面でもっぱら抑制をかけてきた印象でしたが、介護領域においても聖域無き支出削減のムチが振るわれていくことになるのでしょうか。
医療の場合は高齢者医療費の削減と言うことが特に終末期医療と絡んで近年議論されていて、少なくとも完治が望めない高齢者に無条件で若年者と同様の濃厚医療をすることには否定的な状況になってきていますが、いわばオプションのサービスである医療と違って介護は日々の生活そのものであるとも言え、最低限の介護を生涯にわたって万人に提供すると言う最低線は譲れないとも言えます。
この点でコスト削減にも限度があるでしょうし、ちょうど先日も低賃金過ぎて家のローンも組めないと嘆く介護業界の中の人の実態が記事に取り上げられていたのを拝見しましたが、前述の記事においても介護スタッフの報酬は削減対象としないようにも読めるのはそうした状況にも配慮してのことなのでしょうが、単純に考えて事業所の収入が減って経営が厳しくなればスタッフだけ給料そのままと言うことも考えにくいですよね。
そしてもう一点、介護における自己負担が増え経営も厳しくなっていくと言うことは、現状でも受け入れが遅れがちな医療から介護への引き渡しがますます困難なものとなっていく要因にもなり得る理屈ですが、この方面の影響を緩和するために「それじゃ高齢者医療費もセットで引き上げましょう」と言う話にでもなるのかどうかには要注目ですよね。

もちろん介護においてすらこれだけコスト削減要求が厳しくなっているのですから、まして医療においてそれが行われないはずはないのですが、この点で医療はその内容を規定する医師の裁量権が大きいこと、そして多くの国民から救急医療など医療サービスの提供水準がこれ以上下がってもらっては困ると言う要求も強いと言う点で、単純な削減ではなく無駄を省き効率化を図っていく必要がありそうです。
医師の裁量権との絡みで言えばそれが例えば医療の標準化と言うことであって、各種の標準治療をガイドラインと言う形で示されれば幾ら学会が「これは医師の裁量権を侵害するものではない」と言ったところで、万一裁判にでもなれば裁判所はガイドラインから外れているから駄目だなどと言い出しかねない以上、好き放題勝手放題な治療はなかなかやりにくくはなってきたとは言えますよね。
一方でPTC薬の拡大や風邪薬など一部の薬を保険収載から外そうと言う動きもあって、これは保険で治療していたものを保険外に持っていくと言うやり方ですけれども、「そんなことをして万一患者がひどいことになったらどうするんだ」と言う批判の声もある一方で、特に多忙な医療現場にとっては多少なりとも労働環境改善にも貢献するんじゃないかと言う期待もあるわけです。
そしてまた、医療そのものの必要性を軽減するために健康寿命延長だ、メタボ健診による疾患予防だと様々な努力も重ねられているわけですが、ただメタボ健診なども企業にとっては努力義務であっても肝心の個人に対して何らモチベーションとなり得ない欠点に気がついたのでしょう、この方面でもようやくこんな話が出てきたと言います。

“メタボ改善なら保険料減額” 厚労省検討(2014年10月12日NHK)

厚生労働省は、増え続ける医療費を抑制するため、中高年に生活習慣病の予防に取り組んでもらおうと、メタボリックシンドロームに該当する人の血圧や血糖値などが改善した場合、医療保険の保険料を減額する制度の導入を検討しています。

昨年度・平成25年度に、歯科を除く病院や診療所に支払われた診療費の総額は概算で29兆4000億円に上っており、このうち脳卒中や糖尿病などの生活習慣病がおよそ3割を占めています。
こうしたなか、厚生労働省は、医療費の抑制策の1つとして、中高年に生活習慣病の予防に取り組んでもらうための制度の導入を検討しています。
具体的には、内臓に脂肪がついて病気になる危険性が高まるメタボリックシンドロームに該当する人が健康診断で血圧や血糖値などが改善した場合、医療保険の保険料を減額するとしています。
また、メタボリックシンドロームに該当しない人についても、血圧などの数値が正常のレベルで維持され続けている場合、優遇措置を講じたい考えです。
厚生労働省は、社会保障審議会の部会で制度の詳細を議論し、来年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています。

まさにかつて麻生さんが口に出して一部の方々からバッシングされた話そのままじゃないか、と言うことなんですが、当然ながらアメリカなどにおいて有病者が保険料が高騰して加入することも出来ず無保険になる、そして医療費が払えずますます不健康になっていくと言う悪循環を例に出して批判する人も多そうな話です。
ただ日本の場合民間保険であるアメリカ方式と異なって公的な皆保険制度ですから、もともと負担する保険料に上限がある上に有病者だからと加入を拒否される、あるいは法外な保険料を要求されると言うことはなく皆共通の費用で負担あって、ただその中から特にがんばって健康改善を達成した方々には優遇措置を講じましょうと言う話ですよね。
もちろん保険の仕組みを考えるならば、こうして一部の方々が優遇された分は回り回って最終的にはその他の方々の負担増として還元されていくはずですけれども、どこからボーナスを支給するかは幾らでも裁量の余地がある以上、例えば全体の1割2割と言った少数の方々だけがようやく達成出来るような高い水準の基準値を設定しておけばそもそも大したコスト増加にはならないのかも知れません。

こうして厚労省が筋道を立てて話を出してくると別にどこからも突っ込まれる余地のなさそうな当たり前の話に見えるだけに、かつて麻生発言を叩いていた方々がどういう態度を示すのかと言うこともなかなか興味深いのですけれども、「医療費負担ゼロの生保患者が一番いい医療を受けられる」などと言われるように、日本の医療システムは平等性を最優先するあまりしばしば逆差別的に感じられる部分もあったのは事実ですよね。
余分にお金を出してでも望み通りの医療を受けたいと言う方々に対しては近年徐々に混合診療の実質的な解禁が進んできたところですが、逆にとことん医療費負担を減らしたいと言う方々にとっては「病気になってもどうせ病院になど行かないのに、高い保険料ばかり払わされて馬鹿馬鹿しい」と保険料未納の動きすらあるとも言いますが、当然ながらそうした方々が増えるほど保健医療制度そのものも怪しくなってきます。
何でもかんでもとりあえず病院に行って高い検査をバンバン受け、飲まない薬をどっさりもらって「元を取った」と喜んでいる人も中にはいると言うくらいで、無駄な医療費を使わないことへのインセンティブが何かしらあってしかるべきだと言う意見も根強くある一方で、そんなことを制度化すれば医療が必要なのに我慢してしまう人が増えるじゃないかと懸念する反対論もあります。
そういう意味で本当の病気に関してはいささか扱いが難しいところもあるのですが、そもそもその必要性自体も未だに賛否両論あるメタボ対策がインセンティブ付与の第一歩になると言うのであればさしたる副作用もないのだろうし、健診など面倒くさいと言うばかりで病識に乏しい世のお父さん達に対しての啓蒙的効果も期待出来ると、一石二鳥も三鳥もあるよいアイデアであるかも知れません。

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コメント

金がある人間には出してもらわない理由はないわなw

投稿: aaa | 2014年10月14日 (火) 08時45分

職場健診でひっかかったから仕方なく病院に来るだけの人って多いですからね。
少しでも真剣に健康を考えるようになればいいんですけど。

投稿: ぽん太 | 2014年10月14日 (火) 09時13分

集約化は必然の流れですが自治体やら中小病院経営者が反対して中々進みませんね。
別法人ごとの統合も必要でしょう

投稿: | 2014年10月14日 (火) 10時26分

おっしゃる通りで、がんばった人へのインセンティブ付加にしても集約化にしてもどの程度までと言う部分の議論は残るにしろ、基本的にはその方向で話を進めた方がうまく行きそうなアイデアではあるわけです。
財政や経営的な判断からそれは無理だと言うのであればまだしも話は判るのですが、一応医学もサイエンスの一端に連なる領域なのですから理屈に合う話なら積極的に推進に回るのが基本ではないかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2014年10月14日 (火) 10時35分

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