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2014年10月20日 (月)

地方の学生はもはやおちおち大学にも行けない?

そろそろ進学問題で頭を悩ます時期だと思うのですが、先日出ていたこちらの記事を御覧になったでしょうか?

大学進学率の地域差、20年で2倍 大都市集中で二極化(2014年10月14日朝日新聞)

 大都市と地方で高校生の大学進学率の差が広がっている。今春の文部科学省の調査から朝日新聞が算出すると、都道府県別で最上位と最下位の差は40ポイント。20年で2倍になった。家計状況と大学の都市集中が主因とみられる。住む場所の違いで高校生の進路が狭まりかねず、経済支援の充実などを求める意見がある。

    家計に負担、遠い大学 地方の生徒「本当は行きたい…」

 文科省の学校基本調査(速報値)から、4年制大学に進んだ高卒生の割合を、高校がある都道府県別に算出した。今春は全国で110万1543人が高校(全日・定時・通信制と中等教育学校)を卒業。大学には浪人生を含む59万3596人が入学(帰国子女など除く)。進学率は53・9%だった。

 都道府県別では東京の72・5%が最高で、次いで京都(65・4%)、神奈川(64・3%)、兵庫(61・7%)など。最低は鹿児島の32・1%で、低い順に岩手(38・4%)、青森(38・6%)など。40%未満は5県だった。

 大都市圏では愛知と大阪が58・1%、福岡52・8%などだった。

 進学率は20年前に比べて全都道府県で上昇し、全国平均も32・8%から21・1ポイント伸びた。一方、都道府県別の最大差は広がり、1994年の19・4ポイント(東京=40・8%と沖縄=21・4%)の約2倍になった。

 拡大の一因は大都市圏での進学率の急上昇。大学の集中が進み、20年間で東京は32ポイント、京都は27ポイント、神奈川は25ポイント伸びた。今春は南関東と京阪神の全7都府県が上位1~10位に入り、2大都市圏の高い進学率が目立つ

 下位地域は伸びが鈍く、20年間で鹿児島8ポイント、岩手16ポイント、青森17ポイントだった。下位には従来、北海道・東北・九州の道県が並ぶ。上下位地域の固定化と差の拡大で、二極化が進んでいる形だ。

 進学率が伸び悩む地域には、県民所得の低い地域も多い。都市部の大学を選ぶ際に、下宿代などがネックとなるケースもある。

 「大学進学の機会」の著書がある小林雅之・東京大教授(教育社会学)は「選択は個人の自由だが、能力や意欲のある若者の進路が居住地の環境で限られるのは社会的損失だ。大学整備は専ら私学に依拠し、大都市集中につながった。その結果、私学の半数近くが定員割れで苦しむ一方、地方では多くの高校生が望んでも進学できないという矛盾も生じている。家計負担軽減には給付型奨学金の充実が急務。地方の短大や専門学校の活用も有効だ」と話す。(岡雄一郎)

家計に負担、遠い大学 地方の生徒「本当は行きたい…」(2014年10月15日朝日新聞)

 地域によって広がる大学進学率の差は、能力があるのに進学できないという状況を生んでいる。大学の少ない地域から、大都市圏の大学をめざす高校生を持つ家庭には下宿代などの経済負担がのしかかる

 「本当は大学に行きたいんだけど、親から言われたんだよね」。青森県立の高校で進路指導を担当する50代の男性教諭は今春、3年生の女子生徒が冗談めかした言葉に、切なくなった。提出された進路調査の第1志望欄には「公務員」。国立大も狙える学力だが、重い費用負担が理由だ。大学生の兄がおり、「妹の学費まで賄えないのだろう」と推し量った。

 例年、約300人の3年生全員が進学を志望するが、今年は就職希望者が約20人。同僚と「経済的な理由だろう」と話した。かつて成績上位の生徒に東北大(仙台市)を勧めたら、生徒の親から「金がかかる。余計なこと言わないで」と怒られたこともあった。

 隣の秋田県。小中学生の全国学力調査で上位の常連だが、高校生の大学進学率は42%で全国平均(54%)を下回る。「経済状況もあり、単純に『学力調査=進学率』とはいかない」と県教育委員会の担当者は言う。

 「進学の機運を高めて、頑張る高校生を応援しよう」と県教委は2010年、東大など難関大学の現役合格者数を数値目標に掲げた県高校総合整備計画を策定。希望する高校生向けに予備校講師による「ハイレベル講座」を開くなどの支援に取り組んでいる。

以前から都会に比べて田舎の学生が教育環境で劣るのではないか?と言う指摘は少なからずあって、単純に予備校や進学塾の類は田舎にはあまりなくて街中の方が多いものですし、学生数の多い都市部の方が競争も激しくなって進学校のレベルも上がりやすいだろうと言う想像は出来るのですが、大学進学率にして2倍の差があると言われると意外と大きなものなんだなと言う印象もあるでしょうか。
ただ今回の朝日の記事はその理由として家庭の経済事情を取り上げていて、朝日らしく例によって一部の例を取り上げて進学に伴う経済的負担が進路選択の範囲を狭めていると言う話に持って行っているところが目についたのですけれども、注目いただきたいのは進学率の高い地域が太平洋ベルトと言われる人口集中地帯ほど高く、そこから離れるほど低くなると言う非常に判りやすい状態であることです。
今どき大学と言うものは田舎であってもどこにでも整備されているもので、むしろ地方の小規模大学の方が学生を集めるのに四苦八苦で定員割れを起こしかねない状況にある一方で大都市圏の大学は学生人気が高いと言いますから、「東京の大学に行きたい」などと言う大都市志望がないのであれば地元で家から安く通える大学は幾らでも見つけられそうな気がします。
いわゆる最難関大学がそろって大都市部にあることは周知の事実ですから、各県一つは置かれている地方国立大レベルよりも上のレベルを目指す一部学生にとっては確かに遠距離進学の問題も大きいのだと思いますが、もともとそうした高学力の学生はせいぜい上位数%以下であり、そのレベルであれば最低でも無利子奨学金なども十分狙えるんじゃないかと思うのですけれどもね。

アメリカなどでは家庭の経済格差も背景にありますが大学は自分で稼いだ金で入るものと言う考えが当たり前に受け入れられていて、義務教育を終わった後でまずは仕事をし学費を稼いでから進学するのは珍しくないし、プロスポーツの選手が引退後に進学して別な業界に転身すると言った話も日本よりはるかに多い、そして軍隊などでは進学面での支援も一つのインセンティブとして活用されているとも聞きます。
逆に日本や近隣の東アジア諸国では進学コストは親が負担するのが一般的な傾向で、特に中国などでは一人っ子政策で元々が過保護気味であることに加えて将来的に一人の子が二人の親を養うわけですから、子供の教育とは将来自分の老後に跳ね返ってくる直接的な投資であると言う考え方の親も多いそうです。
ただ高等教育に関しては世界的には公的負担主体で行っている国々も多いようで、将来の国を支える知的エリートなのだから当然公的に支援を行うべきと言う考え方も理解出来る一方で、大学全入時代などと言う言葉も登場してきている現代日本の大学進学の状況を見ると、もはや学士様ともてはやされた往時のような知的エリートと言う表現が当てはまるのかどうか微妙な感じですよね。
あたら優秀な人材が経済的理由で進学出来ないとなれば社会にとっても損失だろうし、国や大学が望むような優秀な学生には授業料免除や奨学金など様々な支援策も講じやすいのでしょうが、正直さして優秀でもなければ勉学に熱意があるわけでもない学生がお金がないから進学出来ない、国民挙げて支援しなければと言われても「はあ、まあいいんじゃないですかそれはそれで」と言いたくなる人もいるでしょう。
その背景事情としてやる気も能力もなかろうが取りあえず大学の名前さえあればその後の人生に有利だと言う日本の社会事情があるのだとしたら、誰でも望めばお金を気にせず大学に行けるようになる経済的環境を整えることが本当の解決策なのかどうかですが、現実的に経済的問題の方がよほど解決がたやすいと言うのも確かなんですよね。

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コメント

せめて国立大は無償にしてもいいと思います
ちょうど各都道府県にありますし
国立と私立の格差解消の美名の元で国立の学費が上昇って
そりゃないでしょう

投稿: | 2014年10月20日 (月) 08時10分

昔は「貧乏人は国立に行け」って言われてたのにね

投稿: 鎌田 | 2014年10月20日 (月) 10時04分

ただ大学全入時代にあって国立大学にあってもレベル低下が起きかねないこと、そして財政的な面での実現性も考えますと、優秀者への学費免除等の方がやりやすいかも知れません。
奨学金とは名ばかりの学生ローンに依存するしかない状況は望ましくはないので、努力し成果を上げた人には十分支援をしていく態勢を整えるべきかなと思いますが、こういうことも平等に反すると言われるでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2014年10月20日 (月) 11時10分

ちょうど2年おきに倍になってたころで、兄貴なんか年間36,000円だった。
入学3年違いでこっちは年間144,000円。
浪人したせいで2倍払わなあかんようになったと親からボロカス言われたなぁ。
(4倍勉強せぇとも言われた。)
うちの息子が今年間535,800円。どこまで騰がるねん。
優秀な貧乏学生であっても、国公立すら行けなくなる・・・・。(免除制度はあるけれど)

投稿: hisa | 2014年10月20日 (月) 15時28分

欧州大陸の国々は大学の90%以上が国公立ですが、
国立大の授業料が無償ないし低額です。
無料なのはフランス、ドイツ(州立)、北欧4か国、など。
英国のスコットランドもスコットランド地域出身者は無料です。
ベルギー、イタリア、スペインなども年間授業料は10万円未満。
財源は高い税金。

投稿: physician | 2014年10月20日 (月) 15時31分

私立への助成金を廃止して国立へつぎ込んでください

投稿: | 2014年10月20日 (月) 16時14分

バカ大学生が合コンしに大学通うのに誰が金出すか?って話でしょ
親以外に学費負担させたいなら見返りに何を差し出せるのか示すべき

投稿: | 2014年10月20日 (月) 16時15分

普通の人が勉強して大学に通い、知識や技術を取得して、
専門職として社会に貢献すれば、安い学費で学ばせて貰った恩義は返せます。
大学生の数が多すぎて、かつ全入ですから、基礎学力もないまま大学に入れてしまう。
米国と欧州大陸は大学と大学生への公的補助が間反対。
日本はその中間くらい。

投稿: physician | 2014年10月20日 (月) 16時58分

ドイツ政府が奨学金大幅増
連邦政府が全額負担
16年秋から
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-16/2014101606_01_1.html

だそうです

投稿: | 2014年10月21日 (火) 09時29分

大学に行くのが難しくなって、
地元から出たこともなく親元を離れたこともない視野の狭い人間が増えると、
日本のレベルが下がる気がするな・・・

投稿: | 2014年10月21日 (火) 09時39分

それがいわゆるマイルドヤンキーですな
あれって文字通りアメちゃんの田舎者にも通じるイメージだけど

投稿: | 2014年10月21日 (火) 10時17分

地方は低賃金だから大学進学のお金がない、ではないとおもいます。地方国立大学に進学して塾講師バイトしていましたが(教育県と自負する中部の大学進学率低位県)、そもそも、親に子供をしっかり教育するという概念がありませんでした。

学問・教育の重要性のわかっていない人間が低賃金に甘んじるのは必然ですし、そのような親に育てられたら再生産になるのもまた必然でしょう。
アカピですから、収入格差の話にしたいんでしょうが、収入格差ではなく「親の知恵の格差」が本態と考えます。
美人だけの奥さんをもらった開業医が息子の教育に失敗、なんて話は掃いて捨てるほどあります。

投稿: おちゃ | 2014年10月21日 (火) 11時40分

その教育県の者ですが、大学に行って他県出身者と交流して、都会者は小中高から学習塾漬けになって進学してんだと、何だか呆れたことを思い出す
まあその甲斐あっての、同期の8割方は東京名古屋京阪神広島福岡の都会育ちで、いいとこの子が多いんだなあと思ったものですが
そういうの、教育への熱意って言うんですかね
大学から親に成績表送らせるなんてのは、塾に行かせて手取り足取りやらせてるモンスター親のすることだったりしないのかなーとちょっと思う

投稿: | 2014年10月21日 (火) 13時14分

塾に通わせる、通わせないではなく、基本的な親御さんの学問や教育への姿勢の問題です。
家で蛍の光でかじりついてでも勉強させているのなら別ですが、そんな方が多かったですか?ご近所。

都会でも塾にかよわなくても上位大学に入れる真のエリートも当然散見されますが、一方で引き上げれば上位に上がれる層のほうが圧倒的に多数というのも事実ですよね。日本で惚けたことを言っても、海外との勝負では「塾に通ってまで大学に...」なんて平和ぼけしたことを言っても仕方がありません。勉強できることが至上の喜び、機会さえあれば死にものぐるい(そうしないと底辺生活から這い上がれない)というのがグローバルスタンダードなわけで。

投稿: | 2014年10月21日 (火) 14時23分

そういや東大行く家庭は金持ちの子弟が多いって定期的に記事になるよね
教育の沙汰も金次第なのか!って妙に否定的に取り上げられてるけど
そういう家庭って親もいい大学出ていいとこ就職してるだけなんだよね

投稿: | 2014年10月21日 (火) 14時56分

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