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2014年10月27日 (月)

社会保障コストの削減策、相次いで検討中

世間では消費税再増税の是非が盛んに議論されているところですが、もともと財務省としては増税とセットで大胆な歳出削減を行い国民の理解を得ようと考えていたところ、増税だけが先に話が進んでやや予定が狂ったとも側聞するところですよね。
歳出削減と言えばかつて空気を読まない大胆な切り込みが期待された民主党政権が結局大きな成果を挙げ得ずに終わったのも、歳出の大きな部分を占める固定的コストである社会保障費の削減に誰しも及び腰だったからだとも言えますが、このところ消費税再増税議論と歩調を合わせるようにこの社会保障費削減に関連した話題が一気に噴出してきています。

後期高齢者医療の保険料 軽減特例廃止で一致 厚労省部会(2014年10月16日東京新聞)

 厚生労働省は十五日、社会保障審議会の部会を開き、七十五歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度で、低所得者らの保険料を軽減する特例の廃止案を示し、大筋で了承された。厚労省は二〇一六年度から段階的に廃止する方向で検討しているが、周知期間が短いなどの慎重論があるため、今回は時期を明示せず、今後の検討課題とした。廃止すれば低所得者らの負担増につながり、反発は避けられない

 部会では、委員から「急激な負担増とならないよう、慎重に対応する必要がある」などの意見が出た。しかし、特例の廃止そのものは「高齢者にも応分の負担を求めざるを得ない」との認識で一致した。

 同制度の保険料は、加入者全員が負担する部分と、年収で額が変わる部分からなる。低所得者は本来、負担部分が最大七割軽減される。だが、〇八年度に制度が始まって以来、負担をさらに和らげようと、夫婦世帯で夫の年金収入が年間百六十八万円以下の人などを対象に、九割を上限に軽減する特例が続いてきた

 九割軽減されている人は約三百十一万人、八割五分の軽減は約二百五十八万人。これら特例を廃止することで、政府は年間計約四百二十億円の歳出を抑制できると見込む。七十四歳まで夫に扶養されてきた妻ら約二百九十六万人が対象の特例も廃止する方針。すべて合わせると対象者は八百六十五万人で、抑制額は年間約八百十一億円となる。

介護報酬下げ議論=諮問会議で本格化 政府(2014年10月21日ウォールストリートジャーナル)

 政府は21日夕の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、2015年度予算編成時に改定する介護報酬の引き下げ議論を本格化させる。伊藤元重東大大学院教授ら民間議員が「(報酬)価格の妥当性を検証すべきだ」などと提案、財務省も職員の処遇改善分を除き6%の報酬減額を求める資料を提出する。

 介護報酬は、介護事業者が、サービス提供の対価として受け取るもので、国が一律に決める公定価格。施設費用など大半を占める「基本部分」と、職員の処遇改善に充てる「加算部分」がある。下げれば、税や保険料、利用者の自己負担は軽くなるが、事業者にとっては収入が減り、経営圧迫要因となる。

 財務省はこの日の会合で、内部留保が積み上がっている介護事業者の経営状況を紹介。その上で基本部分の平均6%をカットしても内部留保が減るだけで人件費削減にはつながらず、「支出にも基本的に影響を与えるものではない」とし、事業者の経営には影響しないと訴える。 

生活保護者に後発薬…「医療扶助費」圧縮へ(2014年10月24日読売新聞)

 財務省は、生活保護受給者の医療に充てる「医療扶助費」を2015年度予算編成で見直し、処方する薬を価格の安い後発医薬品(ジェネリック)に切り替えることで約500億円の圧縮を図る方針を固めた。

 27日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で見直し案を示し、厚生労働省との折衝に入る。

 生活が困窮している人に支給する生活保護費は12年度で約3・6兆円に上り、受給者は最多の約216万人(昨年10月末時点)に達している。受給者の医療にかかる費用は公費である医療扶助費で全額負担される。12年度は1・7兆円で、生活保護費の約半分を占めた。

 後発医薬品は、特許切れの医薬品と成分や安全性が同等で、値段が安いのが特徴だ。現在、医療扶助の対象では48%しか使われていないが、財務省は全て後発医薬品に切り替えることで、医薬品にかかる費用を920億円から420億円程度に圧縮できると試算している。

特養ホームの相部屋、利用者全額1.5万円負担に 厚労省検討(2014年10月25日日本経済新聞)

 厚生労働省は特別養護老人ホーム(特養)で複数人が入る相部屋の費用を利用者の全額負担とする検討に入った。現行は1割負担の介護保険で賄うが、保険から外し給付を抑える。来年4月の実施を目指す。金額は月1万5千円とする案が軸だ。

 特養ホームに入る52万人の6割が相部屋だが、その大半を占める低所得者には費用相当を補助し影響を抑える

保険料、市町村ごとの努力で差 国保の都道府県移管で厚労省(2014年10月25日47ニュース)

 厚生労働省は24日、市町村が運営する国民健康保険(国保)を都道府県単位に移管した後も一律の保険料とせず、市町村ごとの保険料納付率や医療費抑制の取り組みを保険料に反映させる検討に入った。納付率の向上や医療費抑制に努めれば、保険料率を下げられる仕組みとし、市町村に積極的な役割を促す狙いがある。

 29日の社会保障審議会の部会に案を提示する。国は、高齢化が進み、慢性的な赤字構造を抱える国保の財政基盤を立て直すため、国保を都道府県単位に移す方針で、来年の通常国会に関連法案の提出を目指している。

特に最後の保険料のニュースなどはやや間接的で判りにくい話ではないかと思いますが、記事にもあるように財政的にも厳しい状況にある国保は今後市町村から都道府県単位へと規模拡大して基盤を強化することとも関連して、今年の夏に政府筋から今後は各都道府県に年間の医療・介護支出の目標額を設定させると言う話が出ていることは注目されますよね。
もちろん「当面は」あくまでも目標額であって達成を義務化したりペナルティーを与えたりはしないと言うことなんですが、そのコストを全国一律に負担するのではなく保険者である都道府県ごとに支出額に応じて設定させると言うことになれば、当然ながら各都道府県の住民とすれば「隣の県と比べてなぜ我が県はこんなに保険料が高いんだ。無駄遣いしているんじゃないか」と言いたくもなるでしょう。
一方で住民が国保の受益者でもあると言うことを考えるとこうした声が住民自身から上がることは為政者としてはウェルカムな側面もあると言えそうなんですが、国保加入者と言えば高齢者などいわゆる社会的弱者が多いと言うことから負担できる金額にも自ずから上限があるはずで、自治体としてはどうやって保険料を抑えるか、すなわちどうやって受益者にサービス抑制を受容させるかがキモと言うことにもなりそうです。
そのいわゆる社会的弱者に対する給付と負担のバランス改善が一連の話のキーワードであると言えますが、長年国民全般の低所得化が進み、とりわけ社会保障費増大に伴って年々負担強化を強いられてきた現役世代がワープア化とも言われる厳しい経済状況にある中で、相対的に高齢者や生保受給者と言った方々が弱者と言うよりもむしろ強者になってきているとは言われるところですよね。
現実的にこれ以上現役世代に偏重した負担増加を強いることは無理があるのであれば、少なくとも出せる方々には高齢者だろうが何だろうが出して頂くものは頂戴するのが筋であろうし、特にそれが特定年代だけをターゲットにした特例的な負担軽減策だと言うのであれば特権と言うものに対する忌避感が強まってきている国民感情を見ても、やはり受け入れることは困難になってきたとは言えそうです。
各種国民調査の結果を見ても現代日本では高齢者こそが最も大きな資産を抱えた富裕世代であり、なおかつ今のところ年金等もきっちり支払いが受けられているとなれば払えるものは払ってもらって何が悪いんだ?と言う声に反論するのはなかなか難しいところで、このあたりはむしろ選挙対策云々も含めて今まで高齢者問題を何かと先送りにしてきた政治の側が問題をこじらせた側面もあるかも知れません。

一連の話の中でもう一つ注目すべきなのが自己負担の強化と言うことがしばしば言われていることで、以前から経済界からは保健医療において一定金額までは保険から支払うのではなく全額自費で支払ってもらうと言う免責制度を取り入れるべきだと言う要望があったわけですが、紹介状なしで大病院を受診すれば一定額の自己負担金を取ると言った話と同様、公的負担軽減と同時に受診抑制を期待した話と言えます。
もともと社会的弱者に優しい大手マスコミにおいてすら高齢者による病院待合のサロン化を非難する論調があった、一方で一部医療系団体などは早期発見早期治療が重症化を防ぐ、患者の自己決定権を損なう云々と様々な理由で受診抑制策には反対してきた、そしてまた他方では多忙な基幹病院勤務医を中心に幾ら何でも受診抑制をしなければもう現場は保たないと言う危惧の声もあったわけです。
それぞれが各自の立場に立って考えればごく当たり前の考え方をした結果こうした相反する結論に至っているわけですが、国としては不足しがちな医師が激務を極める現場から逃げ出していくことはあまりウェルカムではないだろうと考えると、外来患者数の多寡で収入が決まる開業医優位の制度は無駄な受診を抑制する立場からも避けたいのだろうとは思います。
この点で注目されているのが年々増える一方の生保受診者の医療費問題でもあるのですが、医療費全て無料と言う現状が過剰受診を生んでいると言う観点から一定額の自己負担をさせるべきだと言う声はかねてある一方、ごく一部に生保受給患者の存在によって経営を維持している医療機関も存在していることはまたこれはこれで問題でしょうね。
いずれにしてもこれら全てがその通り実現すると言うものでもなく、各方面に話を遠し議論を進めている間に妥協や骨抜きを強いられる部分も多々あるのでしょうが、とりわけ近い将来選挙ともなった場合には有権者に対する配慮から先送りと称して再び有耶無耶になされるかも知れずですから、財務省あたりにすれば遅くとも今年度中には話を詰めておきたいところでしょう。
ただもちろん負担増は本当に窮迫した方々がどうにも行き場がないと言うことになった場合のセーフティネットの存在が大前提になるのは当然で、例えば食料品等の現物支給などとりあえず生きて喰っていけると言う部分をどう担保していくかも問われることになりそうですね。

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コメント

次の選挙が楽しみだなw

投稿: aaa | 2014年10月27日 (月) 08時55分

世論調査を見る限りでは社会保障コストの負担のあり方については意外に世代間の意見の格差は少ないようですから、政治家の先生方が危惧するほどには国民は既得権益に執着していないのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2014年10月27日 (月) 10時39分

社会保障コストの削減もある程度はやむなしと思います。
が、社会保障コストをまかなうために消費税を増やしたような気が・・・

投稿: クマ | 2014年10月27日 (月) 11時54分

これだけやった上で社会保障以外に大盤振る舞いしちゃったりして。
とりあえずは議員の人たちの反応を見極めたいですね。

投稿: てんてん | 2014年10月27日 (月) 12時24分

衆議院議員、桜内文城氏は以前、仲間内の国会議員からこんな話を聞いた。大阪のとある街で子供たちに「将来、何になりたいか」と聞いたところ、返ってきた答えは「生活保護!」だったという。
http://www.sankei.com/smp/etc/news/141027/etc1410270001-s.html

投稿: | 2014年10月28日 (火) 16時04分

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