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2014年10月 2日 (木)

いじめ事件に関連して各地で訴訟相次ぐ

自衛隊と言えば何しろああいう非常事態に活動する組織だけに規律にも厳しいんだろうというイメージがありますが、それが行き過ぎてと言うことなのかこのところ内部でのいじめの報道が相次いでいて、例えば先日は幹部養成を行う防衛大学でこんな馬鹿げた事件があったと報じられています。

防大生、いじめで同級生を刑事告訴 「いじめは修行」体毛に火、集団暴力、性的暴行…(2014年8月12日Business Journal)

 幹部自衛官を養成する防衛大学校(以下、防大と略)で、2学年の男子学生が校内でいじめを受けストレス障害になったとして、上級生や同級生8人を横浜地方検察庁横須賀支部に傷害と強要容疑で7日、刑事告訴した。
 昨年6月、当時1学年だった男子学生が、上級生に服を脱がされて体毛に火をつけられ、腹部に全治3週間のやけどを負ったほか、今年5月、地元に帰省した際に休暇届を出すのが遅れたことを理由に、上級生や同級生から殴られるなどした。さらに6月には、同級生から男子学生本人の顔写真を黒縁で囲み遺影のようにして、無料通話アプリLINE上にアップされた。男子学生は、これらが原因で重度ストレス障害になったといい、現在は地元の福岡県に帰省し休養している。

●いじめは防大や自衛隊の悪弊

 防大OBで現役幹部陸上自衛官は、こうしたいじめは、防大はもとより自衛隊全体にはびこる悪弊であるといい、その内情を次のように明かす。
「寝ている学生を靴やスリッパで叩いて起こす。服を脱がせ体毛を焼く。先輩の男性器をくわえさせ、それを写真に撮るなどのいじめは、数年前でも校内では行われていた。自衛隊の中でも、そうした事案は多々耳にする。今回、こうして公になったことで、自衛隊の悪弊を絶つための、いいきっかけになると思う」
 その一方で、同じく防大OBで現役幹部海上自衛官は、「こうしたいじめに耐える、いじめられないように立ち振る舞うことも自衛官としての修行になる」と話す。
「そもそも、いじめに遭うのは動作が緩慢な者か、やたらと正論を吐く理屈っぽい者が多い。自衛隊のような戦闘組織は命令一下、たとえ理不尽な命令でも率先して動かなければならない動作が緩慢な者はいざというときに組織の足を引っ張る。海外からの侵略や震災などの有事の際は、『何が正しいか』を議論している間に、事態が深刻化することもある。本人の考え方を自衛官らしく矯正し、もし向いていないと判断するならば、別の進路を考えさせることも防大同窓の役目だ」
 異なる見解を示すOBだが、「この告訴した男子学生が、これから防大に復帰して生きていくことは極めて難しい」との点では一致している。

●ITの発達で、密室の出来事を告発しやすい環境に

 昨年は保険金詐欺事件が発覚したが、防大ではほかにも、ここ数年の間に不祥事が頻発している。
 これについて前出の防大OB2人は、「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が発達するなど、インターネットの利用が増えたことで、防大外部へのアクセスが容易になったからではないか」という。つまり、不祥事が増えたというよりも、不祥事を告発しやすい環境になってきたということか。
 それでも公になっているのは、氷山の一角にすぎないようだ。防大OB、現役防大生をはじめとした関係者たちは、上級生による下級生への暴力を伴う指導、男子学生による女子学生への性的暴行など、表に出てこない不祥事は数多くあるといい、今回発覚したいじめ事案は、あくまでそのうちのひとつでしかない。
 長年、防大という密室の中での出来事は、外からはうかがい知ることができなかった。しかし、IT環境が発達したことで、内部からおかしいと思うことを告発し、事を公に解決しようとする動きが出てきた。防大内の膿を出し切ることはできるだろうか。

自衛官を育てる施設ですから自衛官として適切でない行動を取るものは矯正しなければと言う考え方もまあ理解出来ないわけではないのですが、その目的で行われることであればあくまでも組織としてルールなり基準なりを定めた上で公的な処分として行われるべきものであって、志願して入った者相手ではあってもいじめや私的制裁の形で行うと言うことは全く事情が異なるものではないかと言う気がします。
例えば医師という職業も他人を傷つけることを法的に認められた唯一の存在である、などと言う人もいますけれども、もちろん医師であるから街中で刃物を振り回して好き放題切り刻んでいいはずがないのであって、今の時代にふさわしい手順を正しく踏んで正当な医療行為であると認められる形での処置として行わなければ傷害罪等に問われてしまいますよね。
医療行為も例えば災害時など緊急避難的に通常のルールを逸脱して行われることはあるし、自衛官や警官なども同様に非常時には通常と異なる行動基準に従って活動することが求められるのは確かですけれども、少なくとも今回の防大内部でのいじめ行為に関しては全くそうした緊急性も考えられない犯罪行為である以上、通常のルールに従って法的処分を下されるのも仕方がないでしょう。

学校現場でのいじめと言うものも果たして悪化しているのか改善しているのかはっきりしないところがあって、文科省の調査結果を鵜呑みにすると85年の調査開始以来短期間に急減していたいじめ件数が近年また急増しているのだそうで、かつての学級崩壊世代の子供世代が再びトラブルを起こしていると言う意見もあるようですが、それにしてもここまで急増、急減を示すと言うのは調査のバイアスを疑わざるを得ませんよね。
医療事故なども年々把握される件数が増えていると言うのは医療安全がどんどん後退していると言うよりも、とにかく医療事故と言えるようなものは報告し把握しなければならないと言う認識が現場に根付いてきたからだと言いますけれども、いずれにしても表沙汰になろうがならなかろうがいじめがなくなると言うことはまず考えられないし、しばしば把握が難しいからこそ把握されたものにはきっちり対処しないことには話が進みません。
この点で近年ではいじめによる自殺事件なども受けてか、犯罪的行為には警察との早急な連携も必要であると文科省からも通達が繰り返されていて、当然ながら学校側としても見て見ぬふりを続けるなど許されないのは当然なのですが、ルールに基づいて厳正な処罰を行いますと言うのは簡単でも実際に行うとなるとなかなか難しそうだと感じさせられる訴訟が始まっているそうです。

いじめの「処分重すぎる」と高校生、停学取り消し求め訴訟(2014年9月25日サンスポ)

 福岡県立高校に通う男子生徒が、同級生へのいじめを理由に学校から受けた停学などの処分は重すぎるとして、県を相手取り停学とクラス変更の取り消しを求める訴訟を起こし、福岡地裁(高橋亮介裁判長)で25日、第1回口頭弁論があった。県側は請求棄却を求めた。

 提訴は7月30日。

 訴状によると、学校は7月14日、生徒を無期限停学とし、在籍していたクラス変更を伝えた。学校が認定したいじめは(1)からかう目的のあだ名で同級生を呼んだ(2)「近づくと汚染される」と言った-などと推認されるが、生徒側は「そういう事実はない。認定に誤りがある上、処分も重すぎる」としている。

 県教育委員会は取材に「複数の生徒から話を聴き、悪質と認定した。処分は妥当だ」と話した。(共同)

ちなみに無期限停学と言いますと停学が解けない限りは進級も卒業も出来ないわけですから、社会人における懲戒処分で言うところの長期の停職処分と同じく実質的には自主退学をしろと言っているとも受け取れる厳しい処分ですが、そこまで言うなら退学にしろ、うちの高校ではいじめは退学だったと言う声があるのもまあ理解は出来るところですよね。
この点は学校等の組織内部での処分は原則的に自治の範囲とされ一般の法律による司法権が及ばないと考えられているのですが、学校における処分の場合その境界線となるのが停学と退学の間なのだそうで、この理由として退学や卒業取り消しとなると学校の外部にも影響が及ぶからだと言うのですけれども、考えようによっては外部から口出し出来ない確実な方法論を採ったと言う見方も出来るかも知れません。
記事の内容は簡単なものなので実際の詳細はあまりはっきりしないのですけれども、記事のタイトルを見てもそうなんですが「認定に誤りがある上、処分も重すぎる」と言う表現からもいじめをしたこと自体の認定には異論がないとも受け取れるところで、このあたり当事者がどの程度までのいじめ行為を認めているのかどうかも今後の法廷で問題になりそうに思います。
ただ一般論としていじめを行っている側がおいそれとそれを認めると言うこと自体が滅多にないと言いますし、また行うにしても客観的な証拠がない状況だからこそ好き放題やっている場合が多いでしょうから、学校側も周囲に聞き取りもしてこれだけの処分を出している以上は今さら疑わしきは罰せずで、確たる物的証拠がないから無罪放免と言うわけにはなかなかいかないんじゃないかと言う気はしますね。

この種のいじめ行為は全国各地で日々当たり前に行われているのでしょうが、マスコミがこういうタイトルで報道したことをもってしても「いじめをしておきながら処分が重いとは何だ」と言う視点か少なからずあることが伺えるし、実際にネット上でもそうした見方が圧倒的に多いと言うのは、それだけ社会的な問題意識が高まっていると言うことが言えるんじゃないかと思います。
今まで教育関係者に直接話をうかがった範囲でも、やはり公立の小中学校における義務教育と言うものにはそれなりに配慮が必要と言う空気はあるようですから、小中学校の間であれば表向き教育的配慮云々からはっきりした処分もなされないまま指導をしました、みんな仲直りしてめでたしめでたしで有耶無耶にされるところがあると言うことを誰しも感じているところもあるでしょう。
そうした反動もあってか義務教育を済ませた高校生ともなれば厳正に処分されるのが当たり前だと期待値も高まろうと言うものだし、文句があるなら最初から高校生にもなっていじめなどするな、反省も全く見えないのだからもっと厳罰でもよかったと言う声も当然出てくるのでしょうが、ただし訴えた主体が形の上では高校生本人となっているとは言え、恐らく実際的には期待を裏切られたスポンサーたる親が訴えているんだろうと言う気はしますね。
そう考えるとこの高校生自身がいじめやそれに対する処分に関してどのように感じているのかは軽々しく論じられませんけれども、義務教育を終えて高校に通う歳ともなれば社会に出て一人前に働いていても何らおかしくない歳ではあり、自らのしでかした行為に対してはその責任は自ら取ると言う社会常識はすでに身につけていることが求められる歳ではあると思います。

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コメント

>上級生に服を脱がされて体毛に火をつけられ

すみませんそれ学生時代の宴会芸で自主的にやってました…
もうちょっと先までやってたら店から出入り禁止になりました…

投稿: ぽん太 | 2014年10月 2日 (木) 09時22分

以前にあった死亡事故では隊を離れる隊員に格闘技訓練で一同総掛かりで相手する伝統が問題視された事件があって、この種の伝統を持っている運動部は他にもありそうなだけに微妙なところだなとは感じました。
ただ今の時代には本人の嫌がること、拒否することをさせるにはそれ相応の理由付けが必要であると言うのが社会常識になってきていて、昔ながらの個人の裁量によるしごきの類は難しくなってはいるのでしょうね。
個人の限界ギリギリまで突き詰めるタイプの業務なり特訓なりを文書ルールで明示するとなるとどのような文言が妥当なのか、法務の面からはどう解釈するのが妥当なんでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2014年10月 2日 (木) 11時32分

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