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2014年10月17日 (金)

業界のクオリティコントロール

ひと頃から現代社会の暗部の一環として孤独死と言うことが言われていますが、孤独死自体は別に生涯未婚率の上昇がどうこうと言わずともはるか昔から当たり前にあった現象で、ただ亡くなってしまった場合にかんかんのうの一つも踊って弔いをしてくれる人もいないと言う周囲とのつながりの乏しさこそが悲しさを感じさせるのでしょう。
気持ちの問題はさておくとしても、本当に親類縁者もいない孤独死ともなれば大家の方々などは部屋の後始末をどうするか頭を抱えてしまう局面も多いと聞きますし、ご親族の方がいたとしてもそうそう時間をかけて遺品整理と言うわけにもいきませんよね。
そうした社会的需要もあってか遺品整理業者と言う仕事もあるそうなんですが、これが一部では問題ある仕事ぶりなのではないかと言う記事が出ていました。

「遺品整理業者」トラブル続出 貴重品を無断回収、見積もり4倍請求…業者見極め重要(2014年10月11日産経新聞)

 故人の遺品を片付ける「遺品整理」をめぐり、貴重品の無断回収や大幅な追加料金など業者とのトラブルが相次いでいる。1人暮らしの高齢者などの「孤立死」が増加傾向にあり、今後も遺品整理業者に対する需要は高まるとみられ、国民生活センターなどは優良業者を見極めるよう呼びかけている。
 国民生活センターや社団法人「遺品整理士認定協会」(北海道千歳市)によると、業者が無断で貴重品を回収してしまったり、料金の増額を求めたりする例が頻繁に聞かれるという。

 南関東に住む60代の女性は平成24年9月、父親の遺品整理をリサイクル業者に依頼。業者は仏像や花瓶など高価なものを女性に無許可で次々に持ち去った。何をどれだけ持っていったのかも不明だという。
 関東地方に住む50代の女性は今年7月末、70代の母の遺品整理を業者に依頼した。見積もりは約30万円だったが、作業後に請求されたのは約120万円。見積もりを安く提示し、作業後に大幅な増額を求める悪質業者の典型だった。

 同協会によると、遺品整理業者は1人暮らし人口が多い関東圏を中心に増加傾向にあり、現在は全国に約9千社が存在するという。
 利用者には、故人と疎遠になっていた遺族だけでなく、故人への思いが強いがために遺品に触れることができない遺族もいる。相場も分かりにくく、泣き寝入りすることが多い。一方の業者側も、仕事を始める際に行政機関への届け出は不要で、経験不足が目立つ。

 国民生活センターは「見積もりを細かく出し、内容を説明できる業者を選んでほしい。作業に立ち会えば、突然見つかった貴重品についてのトラブルも防げる」と注意を呼びかけている。
 約14年にわたって同業を営む「遺品整理の埼玉中央」の内藤久さん(54)=さいたま市中央区=は、業者を見分ける視点として「見積もりの根拠を説明できるか」「過去のトラブルを答えられるか」などを挙げる。家族間で各自の貴重品を一覧表などにまとめておくことも勧める。内藤さんは「故人との思い出をきれいなまま残すためにも、選ぶ目を養ってほしい」と話している。(佐藤祐介)

まあしかし、こうした場合の価値のあるなしは金銭的価値とイコールではなく個人的な思い入れと言うものに依存しているとも思われますから、やはり客観的評価しか行えない赤の他人との間で行き違いが発生するのはある程度必然的なのかなと言う気はします。
別に遺品整理業者に限らず人の死に関わる業界では直接的に幾らと聞きにくい雰囲気もあってか、例えば葬儀業者なども金銭的なトラブルが多いと言いますし、お寺さんに出すお布施の金額なども諸説あって何が相場なのかもよく分からない部分がありますけれども、やはりお金の絡む問題であるだけに通常の商取引と同程度の注意は払っておくべきなんでしょう。
もちろん勝手に貴重品だけ抜き取っていくような行為はどの業界基準でも悪徳としか言えませんから、持って行かれて困るものがあるのであれば作業に立ち会うしかないと思いますが、一般的にそうした手間ひまをかけることが出来ない方々が利用する機会も多いだろうと考えると実際問題として難しいところですよね。
業者を選ぶ目を養えと言われても一生のうちにそう何度も経験することもないだけにそうそう経験値も高まらないでしょうし、何十年前に頼んだ業者が良かったからと言って今回も頼めるかと言えば営業を続けているかどうか微妙なところですが、それではこうした日常的に利用する機会が少なく、仕事の内容や費用が妥当かどうかも判断が難しい仕事を依頼するに当たって何を判断材料にするかです。
一例として高い専門性から素人には働きぶりの善し悪しが分かりにくい業界の一つとして弁護士業界があり、素人目に何とも判断しようがないからこそ弁護士会のような業界団体もその質の維持には気を遣わざるを得ないのでしょうが、高度な倫理観を備えていてしかるべきと思われている弁護士業界にさえそれは社会常識に照らし合わせてどうよ?と思われる不祥事はあるそうですね。

弁護士の不祥事許さない 弁護士会、対策に躍起(2014年10月13日朝日新聞)

 各地の弁護士会が弁護士の不祥事を防ごうと躍起だ。業務をめぐるトラブルが増え続けているためで、不祥事防止のためのマニュアル作りなどにとどまらず、強制的な調査を発動できるようにした弁護士会まで現れた。関係者は「弁護士の数が増えて仕事が減ったのも一因」とみる。

■強制調査も可能に

 東京弁護士会は昨年、市民から苦情があった弁護士の実態を調べるため、副会長経験者ら3人でつくる調査チームを設置。今年からは、チーム数を3から4に増やした。

 背景にあるのは苦情の多さだ。昨年までの5年間は、毎年約1700~2千件で推移。同じ弁護士への苦情が続いたり、預かり金の横領などの疑いがあったりすれば、チームがただちに調査に着手する

 「弁護士は市民の信頼のもとに成り立っている。仲間内でかばい合うのではなく、弁護士会がしっかり調査していく意識が必要だ」。不祥事対策を担当する柴垣明彦副会長は危機感を募らせる。

専門職の質をどう担保するかはなかなか難しいところで、単純に技能、能力に関する部分であれば各種検定や資格認定などでもある程度評価出来るかと思いますが、その技能を用いてきちんとした仕事をするかどうかは正直各人の職業的倫理観に委ねる部分が多いだろうし、弁護士のように仕事面での独立性が高い職業だと相互の業務チェックも難しいのでしょうね。
記事中で留意いただきたいのが弁護士の数が増えて仕事が減ったのも一因なる文言なのですが、例の新司法試験の導入後短期間に弁護士養成数が激増し弁護士余りとも言われる状況となり、わずか3年間で平均年収が6割も低下するなど一気にワープア化が進んだ結果、もはや喰っていくために手段を選んではいられないと言うほどモラルが低下してきていると言う指摘もあります。
ただ弁護士全体がワープア化したと言うわけではもちろんなくて、古くからの顧客をがっちり抱え込んでいるベテランは相変わらず安定的経営を続けている一方で、新卒者は弁護士会の会費も払えず弁護士活動が出来ないほど貧困にあえいでいる者も少なからずだと言いますから、根本的には業界内に産まれた格差をどうするかが問題なんだろうと言う気はしますね。
その点で業界団体としても「弁護士たる者、他に恥じるところのない倫理観を備えているべきだ」などとお題目を唱えるだけでも、また良からぬ行為を働いた弁護士個人にきついペナルティーを科すだけでも根本的解決とは言えないだろうと想像出来るところで、極言すれば弁護士会を仕切っているようなお偉い先生方がどれだけ既得権益を若手に譲ってやれるかと言う話になるのかも知れません。

弁護士などは国によってはひどくイメージが悪い場合もあるようですが、医療の世界を顧みてみると幸いにしてと言うべきか興味深いことにと言うべきなのか、あれだけ医療訴訟の頻発が問題化し医療崩壊などと言われるようなご時世にあっても医師や看護師のイメージは概して良いようで、これは日本だけではなく世界的にもそうした傾向だと言います。
人間誰しも「こいつは何をするか判らない。信用できない相手だ」と考えている場合には何であれ悪い方に取る傾向がありますから、余計な先入観で仕事を難しくしないためにも個々の人間への信頼と同時に業界全体のイメージを守ることも大事だと思いますが、これまた面白いことにほぼ唯一の医師団体と言える医師会などは(控えめに言っても)必ずしも医師そのものほどイメージが良いわけでもないとは当事者も認めているところですよね。
そう考えると業界団体主導のイメージ改善作戦の実効性も果たしてどの程度なのかと疑問の余地無しとしないですし、国民に対する印象度が必ずしもよろしくないが医師の既得権益を代弁する組織として認識されている医師会と言う組織に対して、当の医師側からおかしいことはおかしいときちんと言っていくことは医師会にとっても決して悪いことではないのでしょう。
全員加入が義務となっていて所属することが活動の必須条件である弁護士会などではこの辺りの内部批判がどの程度大っぴらに行えているものなのか?とも思うのですが、取りあえず医師会加入が医師としての仕事のあり方と全く無関係である現状はその点では望ましいことにも思えるし、なるべくなら今後もそうあるべきなんだろうなと言う気がします。

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コメント

これが日医流クオリティコントロール

薬局活用した健康情報拠点、「容認しない」- 中川・日医副会長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141014-00000002-cbn-soci
 日本医師会の中川俊男副会長は13日、日医会館で開かれた会員向けの研修会であいさつし、
薬局を活用した健康情報拠点「健康ナビステーション」(仮称)を推進する動きについて、
「容認しない」との考えを示した。【松村秀士】

 研修会で中川副会長は、地域で薬局内に検体測定室を設置して、住民が自ら血液検査する
のを支援する動きがあるとし、「看過できない」と強調した。その理由については明言しな
かった。

投稿: | 2014年10月17日 (金) 08時57分

ところで見積もりと極端に違う料金を請求するってありなんですかね?

投稿: tama | 2014年10月17日 (金) 10時02分

割合に見積もりとの差額発生はトラブルが起こりやすいところですが、金額の差に正当な理由があるかどうかが一つの判断基準になるようで、一般論として後片付けで何倍も見積もりが狂うことは考えにくい気がします。
http://www.bengo4.com/houmu/b_288343/
http://www.bengo4.com/shohishahigai/1081/b_276141/

投稿: 管理人nobu | 2014年10月17日 (金) 11時01分

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