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2014年9月17日 (水)

またも起こった視覚障害者絡みの事件が思いがけず波紋を

単純明快な事件に見えたものが後々妙に複雑になっていくと言うことがしばしばあるものですが、先日報道されたこちらの事件も当初は単なる粗暴犯によるありふれたトラブルのように考えられていました。

全盲女子生徒:足蹴られケガ つえで転倒の腹いせか 川越(2014年09月09日毎日新聞)

 埼玉県内の盲学校に通う全盲の女子生徒が8日朝、同県川越市のJR川越駅構内で何者かに足を蹴られてけがをしたとして、県警川越署に相談していたことが分かった。女子生徒のつえに引っかかって転倒した腹いせとみられ、同署は被害届を受理し次第、暴行または傷害事件として捜査する方針。

 被害を訴えているのは同市笠幡の県立盲学校「塙保己一(はなわほきいち)学園」(荒井宏昌校長、児童生徒114人)の高等部専攻科に通う女子生徒。同校によると8日午前7時50分ごろ、同駅で電車からバスに乗り換えるため改札を出て点字ブロック上を歩いていたところ、正面から来た誰かが白杖(はくじょう)に接触し、転倒。直後に背後から右膝の裏を強く蹴られたという。
 女子生徒は目撃者が「何やってるんだ」と相手を注意する声を聞いたが、蹴った本人は終始無言で、性別や年代は分からないという。毎日新聞の取材に、女子生徒は「何が起こったか分からず怖かった。これまで白杖に引っかかった人に文句を言われることはあったが、暴力を振るわれるなんて思わなかった」とおびえた様子で語った。医療機関を受診し、骨に異常はなかったが、全治3週間のけがで「膝を曲げると痛く(マッサージの訓練など)一部実習もできない」と訴えている。
 荒井校長は「無防備の生徒を蹴るなんてショックで悲しい。身元が分からないようわざと声を出さなかったのならさらに卑劣だ」と話した。【大島英吾】

川越駅で蹴られた盲学校女生徒「いまも一人で歩くのが怖い。白杖のこと知って」(2014年9月11日J-CASTニュース)

   埼玉県のJR川越駅構内で8日(2014年9月)午前7時50分ごろ、県立盲学校「塙保己一学園」の女生徒が白杖につまずいた何者かに背後から右足膝の裏側を蹴られた事件で、女生徒は「いまも一人で歩くのが怖い。白杖や点字ブロックを意識しないで歩いている人が多い。きちんと理解してほしい」と訴えている。

「たまたま見ていたご年配の方が『あんた、何やってんだ』と怒ってくださった」

   当時の状況を女生徒は「『痛い』って声だけは少し出たけど、怖くてもうどうしていいかわからなくて。たまたま見ていたご年配の方が『あんた、何やってんだ』と怒ってくださった」と話す。ただ、蹴った人物は「終始無言で性別などは分からないまま立ち去った」という。女生徒は相手への怒りを表すこともなく、丁寧に受け答えしていたのがいじらしい。
   塙保己一学園の新井宏昌校長は「目の見えない状態の中でいきなり、つまり逃げられない状態で蹴られたというのは察するに余りある怖さです」という。
   では、日常生活でどんな不安があるのかという質問に、女生徒は「やはり前を見ないで歩いている方が多いことです。携帯電話をいじっていたりとか、音楽を聴いていたりとか、いつかぶつかるんじゃないかって不安です」と語る。
   白杖や点字ブロックは彼女たちにとってどういうものなのか。「私はまるっきり見えないので杖は目の代わりです。点字ブロックはどっちに行くか誘導されているんですね。私たちの目印、道という感じです。その白杖や点字ブロックを意識しないで歩いている人が多いんです。きちんと理解してほしい」と訴える。

しかし先日も盲導犬が何者かに刺されたと言う事件が話題になったところですが、あれも同じ埼玉県内の川越市とはお隣のさいたま市の事件であったことから、当初は何かしら両者には関連性があるのか?と疑った方もいたようですし、マスコミも当然のように「またも弱者に対する卑劣な凶行が!」と大きく取り上げたわけです。
いずれにしても盲導犬と同様あるいはそれ以上に白杖も全盲者にとっては身体の一部のようなものと言う考え方は十分成り立つだろうし、この場合は明確に外傷も負っているのですから単なる器物破損ではなく傷害罪に該当するものと思われますが、ともかくも当初報道から見る限りでは何やら真っ当ではない人間の真っ当ではない行為と言う印象で、誰しも「またDQNの暴走か…」と思ってしまいがちですよね。
記事中で校長が「身元が分からないようわざと声を出さなかったのならさらに卑劣」とコメントしていることに留意いただきたいと思いますが、駅でぶつかると言うどこにでもありふれた事故でこれだけの尋常ならざる暴力行為に走ってしまう、しかもその方法論としても何やら尋常ではないだけによほどの人間が…と言う印象を人々が漠然と抱いているところに、数日経ってから出てきた続報がこちらです。

全盲女子生徒傷害:44歳男を任意捜査 埼玉県警(2014年09月12日毎日新聞)

 埼玉県川越市のJR川越駅で8日、同市の県立盲学校「塙保己一(はなわほきいち)学園」(荒井宏昌校長)の高等部専攻科に通う全盲の女子生徒が足を蹴られ全治3週間のけがをした傷害事件で、同県警は12日、同県狭山市の男(44)を容疑者と特定し、任意捜査を開始したと発表した。男には知的障害があり、刑事責任を問えるかどうかも含め慎重に調べている

 県警捜査1課によると、複数の目撃情報などから男が浮上。受け答えが困難なため、明確な供述は得られていないという。男は同市内の施設に住み込んで軽作業に取り組んでいる。
(略)

興味深いのはこの一方が出てからマスコミの報道が一気にトーンダウンしたと言うことなのですが、マスコミ的には社会の弱者として扱われてきた方々同士の間で発生したトラブルと言うことで、社内ルール上どのように取り扱ったものか解釈に迷うところがあったと言うことでしょうか、振り上げた拳の降ろしどころに困っている印象もありますよね。
そこで事件が起こった時間帯に改めて注目していただきたいのですが、都市部の駅構内で朝の8時前と言えばもっとも通勤通学のラッシュも激しくなっている時間帯であり、今回は他人がぶつかり転倒し怪我をしたと言うことで事件化しているわけですが、そもそもこの時間に全盲学生が意図的にしろそうでないにしろ誰にもぶつからずに駅を歩けるものなのかと言えば本来非常に難しいはずだと思えますよね。
仮に今まではそれが可能だったのだとすれば、一部マスコミの論調にある「社会的弱者に対する配慮が不足し」云々とは全く逆でむしろ周囲が非常に気を遣ってきたのではないかと言う推測も成り立つわけだし、それが出来ない相手とたまたまかち合ってしまったからこそトラブルになってしまったと言う考え方も出来そうです。
それは「視覚障害者であることは明白(日本盲人会連合)」であったとはおそらく考えがたい知的障害者の側からすれば、いきなり正面からぶつかってきて転倒までさせられているのに一言もないままスタスタと立ち去っていく相手を見て思うところがあっただろうし、その意味で加害者側の視点で見た方が今回の事件は非常にすっきりと理解出来ると言う声も少なくないわけです。

他方では今回の事件と関連して、ネット上では一般人があまり知る機会のなかった全盲者の教育とはどのようなものなのかも(その真偽は不明ながら)掘り下げられていて、例えば人とぶつかった時にどう行動するべきかと言ったことも教えられると言い、もちろん学校によって教育方針も様々なのでしょうが、仮に今回一般人と同じようなパターンで対応をしていたならそもそも事件は起こらなかっただろうと言う声もあります。
実際に当事者自身の証言で当時の行動を当たり前のことだと考えている(だからこそ言いつくろう様子もない)らしいことに違和感を覚える人もいて、その意味で被害者の受けてきた教育そのものが問題だったのでは?と言う声が出ているのも理由なきことではないし、もし社会に出て周囲と関わるにあたってトラブルになりやすいやり方がデフォルトとされているのであれば、無駄なトラブルを軽減するためにも改善の余地があるかと思いますね。
白杖そのものは道路交通法で盲導犬かいずれかの携帯が義務づけられていて、逆に言えば義務づける側はそれと認識すればそれなりの対応をする義務があると言うことでもありますが、そうしたことを初めて知ったと言う人も配慮する意志はあっても「いやそれは無理だろjk」と現実との摺り合わせに違和感を感じているようでもあります。
やはりこうした法律が出来た頃と比べれば世間も賑やかで気ぜわしくなっている以上、視覚障害者と認識しても一切触りも近づきもせずにおけるほどスペースがない場合も多く、現実的な安全対策として考えるとそもそも全盲者もラッシュの時間帯に通学するべきなのか?と言う疑問も出てくるかも知れません。
この種の学校では低学年は多くがスクールバスで通うそうですが、学年が上がるとトレーニングのためもあって公共交通機関を積極的に使うよう指導するのだそうで、もちろん将来社会進出をするのであれば他と同じ通勤時間帯に出かけて行けるようにしておかねばと言う考えもあるでしょうが、例えば全盲者に関してはフレックスタイムを柔軟に認めて欲しいと言った要求はさほど周囲に困難な配慮を求めるものでもない気がします。

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コメント

>「わたしは点字ブロックの上を白杖をついて歩いていたんですね。そしたら正面からぶつかってきた感じがしたんですけど歩き続けていたら、その方が起き上がってきて、私をおいかけてきて。まさか、おっかけてきて蹴るってのは人としてどうなんですかっていうのは一番に言いたいです」

まずはぶつかった相手に一言あるだろ人としては

投稿: 敢えて言うが | 2014年9月17日 (水) 08時12分

この事件を社会のせいにするってことは池沼さんたちは外に出すなってことかなw

投稿: aaa | 2014年9月17日 (水) 08時28分

責任割合としては点字ブロック上の全盲者との衝突は、歩道上を歩いていた歩行者を突っ込んできた車がはねたくらいには一方的なものになりそうですが、いくら正当な立場でもひかれた時点で損ですからね。
ただ転倒した側が怪我をして終わっていたらどうなっていたか等々、いろいろと想定は出来る事故ではあったようですし、そうした各種想定はした上で全盲者教育は行われるべきなんだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年9月17日 (水) 10時20分

全盲の人、職員採用で受験認めず 熊本市
http://www.47news.jp/CN/201409/CN2014091701001407.html
http://a.excite.co.jp/News/society_g/20140917/Kyodo_BR_MN2014091701001417.html

身体障害者を対象にした熊本市の職員採用試験で、全盲の人の受験が認められていないことが17日、市への取材で分かった。受験資格を「活字印刷文による出題に対応可能」と規定し、点字での試験を実施していないという。
厚生労働省は「公的機関は障害者雇用の規範となる必要がある」と指摘、障害の種別でなく、能力に応じた採用を呼び掛けている。
熊本市人事委員会によると、市内の全盲の男性が今月、東区役所を訪れ、点字で職員採用試験を受けられるか問い合わせた。応対の職員から連絡を受けた市人事委の担当者は、規定により不可能だと電話で伝えた。

投稿: | 2014年9月18日 (木) 05時56分

秋田の栗田養護学校高等部3年男子生徒が女性講師に暴力、重体
http://www.xanthous.jp/2014/09/30/akita-attempted-murder/
秋田県警は 29 日、学校で注意された事に腹を立て、女性講師の頭部を床や机に叩きつけ、脳挫傷を負わせたとして秋田市内の県立高校 3 年の 18 歳の男子生徒を傷害容疑で逮捕したと発表した。女性講師は病院へ搬送されたが意識不明の状態だという。一部では知的障害者ではないかとの情報もある。

投稿: | 2014年9月30日 (火) 10時36分

↑これ発達障害の子だったそうです。講師の人も20代だそうで親御さんはやりきれないでしょうね。

投稿: tomo | 2014年9月30日 (火) 13時15分

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