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2014年9月16日 (火)

自殺対策と医療現場

いつの頃からか自殺対策と言うことが言われるようになって久しいですが、先日はとうとうこんな学会まで設立されたと言うニュースが出ていました。

「日本自殺総合対策学会」を設立(2014年9月8日日テレニュース24)

 日本では今も年間2万7000人を超える人が自殺で亡くなっている。こうした中、より自殺対策をすすめていくため、「日本自殺総合対策学会」が設立され、都内で、設立記念フォーラムが開催された。
 「日本自殺総合対策学会」は、自殺対策に取り組む全国のNPO法人や医師、自治体のトップらが発起人となり設立され、7日に設立記念フォーラムが開かれた。

 日本で自殺した人の数は、2010年から減少し、2012年には15年ぶりに年間3万人を下回ったものの、去年1年で2万7000人を超える人が亡くなっている。
 学会の発起人 NPO法人ライフリンク・清水康之代表「ここ数年、より深刻化しているのが若年世代の自殺です。今、日本社会で亡くなっている20代、その約半数は自殺によって亡くなっています
 新たに設立された「学会」では、現場での実践的な取り組みを踏まえて、学問的立場から検証し、自殺に関する政策立案に活用するための枠組みをつくりたいとしている。

今の時代に周囲で自殺者が出た経験が全く無い人も少ないんじゃないかとは思いますが、しばしば取り上げられるデータとして厚労省統計では15歳から40歳までの病気が最も少ないとされる年代において死因の第一位が自殺であると言うことで、特に若年者にとっては決して遠い世界の出来事ではないと言うことが言えるかと思います。
マスコミの報道を聞いていますと日本という国は世界に冠たる自殺大国であるかのようにも思えてきますが、先日のWHOの発表でも世界中で年間80万人の自殺者があり「深刻な公衆衛生上の課題」と位置づけられているところで、興味深いのは世界的に見ると70歳以上の高齢者の自殺が目立つと言う点が何やら日本とは動向が異なっているようですし、いわゆる安楽死的な問題も絡んでいるのかも知れません。
その日本の自殺率は世界平均の1.6倍と言いますからもちろん高いには高いのですが、興味深いのはいわゆる先進国が上位に来るわけではないと言うことで「自殺は高度に発展しすぎた現代社会特有の病理だ」云々の解釈はどうなのかだし、必ずしも心身の健康に対する自己評価自国に対する自己評価が高いと自殺率が低いと言うわけでもないようです(もっとも死因統計上の問題もあるのかも知れませんが)。
要するに世間で言うところの様々な自殺増加の原因なるものは世界的に見ると必ずしも当たってない可能性がありそうなんですが、例えば健康不安から自殺を考える段階からいざそれを実行すると言う過程においてうつなど精神科的な問題が少なからず関わっている恐れは否定出来ないわけですから、対応する医療の側でも当然ながら身体の不調だけでなくメンタルな面での対応も必要だろうと言うことですよね。

自殺未遂:個別に再発防止プログラム 抑制効果6カ月(2014年9月8日毎日新聞)

 自殺未遂の再発を防ぐ方法を研究していた厚生労働省の研究班(研究代表者=平安良雄・横浜市立大精神医学部門教授)は8日、救命救急センターに搬送された自殺未遂者に医療や生活支援など個別の問題に応じた支援プログラムを提供したところ、6カ月間は再発を抑止する効果が認められたと発表した。自殺の危険性が最も高いとされる未遂者への効果が認められたことで、研究班は「自殺者の減少につながる成果」としている。

 研究は、全国17の救命救急センターが参加。2006?09年に搬送された自殺未遂者914人を対象にした。まず参加者全員に心理教育など一定水準以上のケアを実施。そのうえで通常の治療を受けるグループと特別な支援プログラムを受けるグループに分け、再び自殺を図った割合を比較した。支援プログラムでは、精神科医の適切な医療を受けるよう促したり、悩みに応じた生活相談を実施したりするなどの積極的なケアをした。

 その結果、通常の治療のグループで6カ月以内に再び自殺を図った患者は428人中51人で12%の割合だった。一方、支援プログラムでは417人中25人で6%にとどまり、通常の治療から半減した。特に女性や40歳未満の若者で強い効果が認められたとしている。6カ月より長い期間をみると、支援プログラムのグループの方が発生率が低いことに変わりはないが、効果があると判定できるほどの差はなかった

 平安教授は「支援プログラムが広まることで実効性のある未遂者支援につながることが期待される。一方、今回は救急医療を軸としており、長期的な支援には限界がある。適切な時期に地域の支援につないでいくことが重要だ」と話した。

 研究班によると、自殺未遂者の再発予防に関する研究は国内では前例がない。外国では同種の研究があるが、効果的な支援策は見つかっていない。【堀智行、奥山智己】

12%から6%と言うのが半減した、すばらしい効果だと見るべきか、これだけ手間ひまかけても6%しか変わらないのかと見るべきか微妙なところですが、実際にはっきり有意差が出るほどの差ではなかったのだからあまり有効ではなかったとスルーするよりも、今まであまり制度的に重視されてこなかったこの種のサポート態勢構築へと向かう一つのきっかけになると前向きに考えておいた方がいいのかも知れませんね。
メンタル面でのフォローアップなど当たり前の事じゃないか?と思われる方も多いんじゃないかと思いますが、常習的にリストカットして搬送されてくる患者と言うのはあちらこちらの病院で結構いるもので、深夜に叩き起こされて応対する方も毎度のことでいい加減うんざりしていますから「はい腕出して~消毒~」式の流れ作業で処置して終わりと言うことはありがちですし、だからこそ常習的に来てしまうと言う考えも出来そうですよね。
この種の常習者は切り方一つを見ても本当に死ぬつもりなどないのだと言う意見もありますが、そうは言っても何かのきっかけでいつもと違って本気で切ってしまうと言うケースもあるわけで、救急受け入れからスムーズにその後の支援にまでつなげられれば言うことはないのですが、こうした救急を受け入れる急性期の施設で半年、一年あるいはそれ以上と言う長期のサポートがどこまで出来るか難しい部分もありそうです。
身体診療科における急性期から慢性期への受け渡しと同様に地域内でうまく引き継いでいけるような態勢を構築出来れば理想ですが、特に地方では正直精神科領域まで対応出来ないと言うケースが多そうですから、出来れば自治体などが音頭を取って精神科医など専門職以外であってもちゃんとトレーニングを受けたサポートスタッフを用意するようにしていただければとりあえずお任せしたい場合も多いんじゃないでしょうか。

関連する話ですが、自殺企図者の救急受け入れでしばしば問題になるのがどこが引き受けるべきなのかと言うことで、もちろん転落や縊死など本当に死んでしまうような状況であれば救急対応が出来る施設でなければどうしようもないんですが、「精神科通院歴のある患者が睡眠薬を大量服用したらしい」などと言った搬送依頼ですと正直かかりつけの精神科に相談してくれよと言いたくなる当直医も多いかも知れません。
逆に精神科の方は大量服薬なんだからまず胃洗浄や吸着も必要だろうし、ショックにでもなれば全身管理も必要なんだからとても手が出せないと言う考えでとりあえず救急に行ってくれと受け入れを断るケースがほとんどだと思いますが、いくら昨今の睡眠薬が安全とは言え思いがけないことはあるわけですから、まずは救急で身体的安定を図った上で精神科に転院してもらうといった手順が医学的には妥当なんだろうとは思います。
とりあえず救急が受けたもののどの診療科が引き取るべきか何とも言い難い境界症例患者の行く先探しで難航すると言ったケースも似たようなものかも知れませんが、基本的に日本の医者は患者には不自由していなくてこれ以上増やされたらたまらないと思っている人が多いだけに、他人が引き受けた患者の後始末まで押しつけられるのはたまらない、救急が退院まで面倒を見ればいいじゃないかと言う話にもなりがちです。
それでも医師個人個人の普段からの付き合いと言うものがあれば日常的な貸し借りの中で何とかなる場合がほとんどだと思いますが、身体科と精神科の断絶は内科と外科など身体科相互のそれよりもはるかに大きいのが普通ですから、医療以外も巻き込んだ支援グループ結成などと大きなことを言うまでに医療内部での風通しをもっとよくしろよと言う話ではあるかも知れませんね。

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コメント

善意で一回引き受けたら、それ以降 このての患者の搬送依頼が続いて、
他の当直の先生方のひんしゅくを受けたなんてことがありますね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2014年9月16日 (火) 09時02分

非常勤の先生が受けた患者をどこの科がみるかで一騒動ってことも多かったですね。
部長同士の睨み合いの現場に居合わせたときは気まずかった…
忙しすぎて手が回らないのが一番いけないんでしょうけど訴訟リスクもありますし。

投稿: ぽん太 | 2014年9月16日 (火) 09時15分

理想から語るならばかくあるべしと言うことはいくらでも言えるのですが、実際に現場に立つのは往々にして理想を語る人とは別人であることから、何かとトラブルに発展しがちではありますよね。

投稿: 管理人nobu | 2014年9月16日 (火) 12時14分

精神病床の無い総合病院でこういうのを対応するのはなかなか難しいと思います。
しかし、世間の総合病院からは採算の合わない精神病床がどんどん減っていますので、さらに対応が困難になっていくと思われます。

投稿: クマ | 2014年9月17日 (水) 08時01分

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