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2014年8月25日 (月)

夏の暑い季節には冷たい氷、ですよね

本日の本題に入る前に、安楽死と言えば日本ではようやく消極的安楽死がガイドライン等で「あり」として扱われるようになった段階ですが、世界的に見ますと薬剤等によって命を失わせる積極的安楽死を合法としている国が幾つかあり、オレゴンなどアメリカの一部州やオランダなどが知られています。
ただ世界的に最も歴史と伝統を誇る安楽死の元祖と言えばスイスなのだそうで、昔から「死にたくなったらスイスへ」などと言う合い言葉が欧州各国でささやかれていたのだそうですが、最近その希望者がどんどん増えていると話題になっています。

スイスへの「自殺旅行」が4年で倍増、調査で判明(2014年8月22日ロイター)

[チューリヒ 21日 ロイター] - 安楽死が目的でスイスを訪れた外国人が、2009─12年の4年間で倍増したことが、「医療倫理ジャーナル」誌に掲載された調査で明らかになった。

スイスは1940年代から、直接の関係をもたない人物のほう助による自殺を合法と認めている。このほか、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーと米国の一部の州でも安楽死が法的に認められているが、多くの国では依然違法。こうしたなか、末期患者などが近親者や医師の訴追を回避するため、安楽死目的で外国を訪れる例が出ている。

2012年にスイスでほう助自殺により人生を終えた人は172人で、09年の86人から増加。このうち、ほぼ3分の2がドイツ人と英国人だった。

自殺志願者の約半数については、まひ、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、多発性硬化症など神経性の疾病が自殺の要因となっていた。

08─12年にスイスを訪れた自殺志願者は、31カ国の計611人。平均年齢は69歳だった。半数近くがドイツ、20%が英国から渡航。上位10カ国にはフランスとイタリアからの渡航が含まれ、この2カ国は特に増加が目立っているという。

スイスではそうした希望者に手続き等の手助けをする自殺幇助機関が存在していて、およそ70万円ほどの費用で事が達成出来ると言うのですからリーズナブルと言っていいのかどうか何とも微妙なのですが、当然ながら医学的にそれが妥当であるかどうか、本人の自由意志によるものかどうか等々は徹底的に調査されるそうです。
いくつかの記事を見た限りその志願者が増えている理由についてはっきりこれと言うものは示されていないのですが、数年前の記事を見てみると志願の理由として末期癌が多かった、しかし現時点では半数が神経系疾患が原因であるとされている辺りにその理由の一端が隠されているのかも知れませんね。
ともかくもネットがこれだけ普及した時代ですから、世界中どこにでもそれがあるとすれば検索で見つけ出すことが出来るし、ひとたび手段が存在すると知れれば実行出来る時代ではありますが、しばしば安楽死の原因疾患として名前が挙がるALSと言う病気について最近妙な「流行」が世界中に広まっていると言います。

ALS支援:氷水効果で寄付金急増 日本は5日間で1年分(2014年8月22日毎日新聞)

 ◇米国では3週間で43億円にも

 運動神経の機能が失われ、全身の筋肉が動かなくなる「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者を支援しようと、バケツにいれた氷水を頭からかぶるチャリティーイベント「アイス・バケット・チャレンジ」が国内で広がる中、日本ALS協会に寄せられた寄付金が、8月18〜22日の5日間で、昨年度1年分に迫る394万円に達した。同協会が22日、明らかにした。

 同協会によると、508人から寄付があった。昨年度の寄付金総額は約425万円で、今回集まった寄付金はこれに迫る額だ。「関係者や遺族からの大口の寄付ではなく、フェイスブックなどの口コミで、短期間にこれだけの寄付が集まることに驚いています。これをきっかけに、ALSに対して継続的に関心を持っていただけるとうれしい」と同協会。寄付金は年度によって金額が上下し、2012年度は684万円▽11年度は432万円▽10年度は741万円だった。

 米国発のこのイベントは、寄付をするか氷水をかぶって次の挑戦者を指名することがルール。スティーブン・スピルバーグ監督やマイクロソフト創設者のビル・ゲイツ氏、女優のジェニファー・ロペスさんら著名人が、挑戦の様子を動画で公開して広がった

 日本でも、人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究の山中伸弥・京大教授が氷水をかぶる様子が動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開された(https://www.youtube.com/watch?v=h8SxIN2ILsQ&list=UU-I2cp3hAGPt7qD57CmioKA)。ソフトバンクの孫正義社長、トヨタの豊田章男社長ら財界人のほか、芸能人やスポーツ選手も続々と挑戦し、話題を呼んでいる。

最近やたらと誰それが氷水をかぶった、次に誰それを指名したと言ったニュースが流れていますが、この「アイスバケツチャレンジ」なるもの、ALSの研究を支援するために寄付をするか氷水をかぶることを選ぶと言うもので、もともとこうしたチャリティー目的で氷水をかぶると言うことは以前から行われていたようです。
今回はつい一ヶ月ほどの間に世界中に広まったと言うのは単に氷水をかぶるだけでなくそれを動画としてSNS等で広める、そして何より次の実行者を指名すると言う連鎖的なルールを決めたことが大きかったようですけれども、次に誰を指名するかと言うことが大きなイベント性をもって注目されると言うのはうまいやり方だとは思います。
ただ言ってみれば他人から半ば強制的に氷水かぶりを迫られると言うのもどうなのかで、日本でも敢えて氷水をかぶらずに寄付しますと言う芸能人が拍手喝采を受けたと言う事例もありますし、氷水をかぶる意味が判らないだとかそもそもこうした活動自体が反社会的で問題なのではないか?と言う反発の声も少なくないようです。

世界で流行のアイス・バケツ・チャレンジ、音楽業界でも賛否両論(2014年8月23日サイゾー)

 世界中で流行している「アイス・バケツ・チャレンジ」。難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)を支援するためのチャリティー活動で、知人などから指名を受けた人は、24時間以内に「100ドルを寄付する」か「氷水をかぶる様子をSNSなどで公開」のどちらかを選び、さらに自分も3人を指名するというものだ。
(略)
 同活動に対しては「金持ちなら寄付しろ」「氷水をかぶってどうなるのか」「ただの売名じゃん」「病気のことを本当に理解しているのか?」など批判も多い。ニューヨーク在住のミュージシャン・大江千里も、自身のブログにおいて“否定するつもりはないが、ファッションとして行うのではなく、チャリティー活動の本質を理解した上でやるべきではないか”という趣旨の発言をし、話題となっている。

 一方、乙武洋匡から指名を受けて氷水をかぶった上で寄付をした氣志團・綾小路翔は、活動について学んだ上で賛同したとコメント。ファンからは「売名だと思われたら残念」「辞める勇気を持ち、3人を指名しないでほしかった」などの意見も届いたが、「皆さんそれぞれが、しっかりと考えた上で選択していますよ。ただセレブリティが悪ノリでやっていると思うのは大間違いです」と反論。自分で決めたことだと強調した。チャリティーとミュージシャンの関係について、音楽業界関係者はこう話す。

「慈善活動に意欲的なミュージシャンは昔から多く、代表的なものには1984年にエチオピアの飢餓をきっかけに発足したチャリティープロジェクト『バンド・エイド』やアフリカの飢餓を救うため85年に制作された『ウィ・アー・ザ・ワールド』が挙げられます。チャリティーブームを巻き起こすほどの影響力があった一方で、当時から『偽善だ』『音楽を政治利用すべきでない』などの批判も多かった。今回も同じ議論が繰り返されている印象ですが、“3人を指名”“SNSで拡散”というチェーンメール的な要素が加わっていることから、反発するミュージシャンは今後増えていくかもしれないですね」
(略)

中国で娯楽ショー化する、「アイスバケツチャレンジ」 慈善目的のはずでは=中国メディア(2014年8月21日サーチナ)

 筋委縮性側策硬化症(ALS)に認知度を高めるために始まり、世界的に話題を集めているチャリティキャンペーンの「アイスバケツチャレンジ」。その波は中国にまで押し寄せているようだが、中国では早々にその意味合いが変質しつつあるようだ。中国メディア・新華網は20日「アイスバケツチャレンジは娯楽ではなく慈善であることを忘れてはいけない」とする評論記事を掲載した。

 記事は、このキャンペーンが欧米で流行し始めたころは「インターネットメディアと公益活動のコラボレーションに大きな拍手を送った」が、中国に伝わるとその活動の「テイスト」が変化してしまったとした。そして、SNS上での「ウイルス並みの」伝播速度、ネット上のアクセス数で成績を判断するやり方は「より重要な情報を隠してしまっている」と論じた。

 そのうえで、中国における状況について「浅はかな注目、過度の娯楽的感情で公益活動をもてあそべば、公衆の公益に対する心理を捻じ曲げるだけだ」と指摘。今回のキャンペーンを単に娯楽として捉えるのではなく、ALSについてもっと関心を寄せるきっかけにすべきだと訴えた。(編集担当:今関忠馬)

台湾でアイス・バケツ・チャレンジに疑問を投げかけるALS患者のコメントが話題に(2014年8月20日今日新聞)

アイス・バケツ・チャレンジにはもう参加しただろうか?台湾でもこの活動の輪が広がっているが、これに対して懸念を示す人もいる。アイス・バケツ・チャレンジが売名行為に転化されてしまっているのではないか?というものだ。大学講師をされているある人物はこの活動が台湾に伝わってからというもの、選挙人が票獲得のため、または若者たちがファッション感覚でという風に本来の意義が失われている事態になっていると指摘する。また、あるALS患者がFacebook上に投稿した文章「私はALSです」が共有され始めてもいる。(略)

投稿された文章

私の体はじょじょに動かなくなり、
感覚もほとんど失われてしまったような状態です。
アイスバケツチャレンジに参加している人達の猿芝居は見え透いたものです。
私の代わりに皆さんが冷たい思いをしたところで、何の意味があるでしょうか
しかしそれすら、私は口に出来ないのです。
ある市長がアイスバケツチャレンジに参加し、とても冷たい、と話していました。
冷たい、なら、それは気持ちの良いことでしょう。
もし私の病気を体験したいというのなら、
まず自分自身の体をがんじがらめに縛りあげてから
冷水を被るべきです。
そうすれば自由を他人に任せるしかなくなった子豚のような感覚を体験することができるでしょう。
企業家がチャレンジに参加し、
アイドルの女の子を指名、みんなは彼女が白いシャツを着て水を被るのを期待するわけです。
それすら待たずに二流芸能人が水を被ってみせる。
あなたたちの情熱と私たちの感じている退屈さがまるで噛み合っているかのような扱いに
私はもはや悪態の言葉も見つかりません。
まあいいでしょう。
それもどうせ、あなたたちが期待している私たちの姿なんでしょうから。

まあしかしイベント的に盛り上がっている人達にすれば「もしあなたが私たちの病気を体験したいと思うのなら、まず体をがんじがらめに縛りあげてみてください。」などと言われれば文字通り冷水をぶっかけられたような気分になるかも知れませんが、ALS患者側にしても当事者に無関係に始まったこの騒ぎは何だ?と言う感じでしょうね。
公開の場において強制的に参加を強要されることから一面で反発の声が根強いのは確かで、「これは不幸の手紙と同じことなのではないか?」と言った批判の声もあり、また本家アメリカでもチャレンジした消防士達が重体になるなど実際的な被害も出ているなど、必ずしも手放しで絶讚すべき行為ではないらしいと言うことも徐々に滲透し始めています。
もちろんこうしたチャリティーの常として注目を集めるほどお金も集まると言えばその通りなんですが、芸能人が大勢の観客を集めて大々的に行うと言うのもやはり何か趣旨と違うような気はするところで、正直「他人の病気をネタにして商売するな」と言われればごもっともと言うところはあるのかも知れません。

今回特に行為自体にSNSでの公開と次の実行者の指名と言うイベント性を持たせたことが成功の最大理由でもあり、また同時にこれだけ批判の声も出てきている理由でもあるのだと思いますが、一方で今までにない勢いで寄付金が集まっているのも事実だと言うことですから世間的な注目を集めると言う点では非常に今日的で有効な方法論です。
昔から「しない善よりする偽善」なんて言葉があるように、まずは実行することが大事なのだと言う考え方は一理ありますし、因縁ある方々同士が仲良く氷水をかぶって水に流したなんて話を聞けば単純にいいきっかけになったじゃないかと思ってしまうのですが、それではこれだけ広まった活動の落としどころをどう付けていくかですよね。
その意味では一過性のブームで来年の今頃には「ALS?何それ食べられるの?」と言うようなことでは意味がないのだろうし、ALSに対する知識と関心を普及させる契機にすべきと言うのは記事の言う通りなのですが、この点において実は患者側からも積極的に世間と関わり合っていく好機でもあるとは言えると思います。
ALSと言う病気はどんなものなのかと言う世間の素朴な疑問に対してホーキング博士の果たした役割は絶大なものがありますが、博士の存在はただ日々少しずつ死にゆくことだけが我々の期待しているあなた達の姿ではないと言うメッセージにもなっている気がします。

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コメント

ホーキング博士はじつは違う病気らしいですね

投稿: | 2014年8月25日 (月) 09時20分

ALSって、過酷さゆえかも知れないけど、むしろ「有名な」難病じゃないんですかね

投稿: | 2014年8月25日 (月) 11時33分

医療等の関係者と一般の人とで知識に偏在があるのはままあることですから、特に何がと限定せずにこうした病気全般の知識が広まればいいように思いますね。

話は変わりますが急にメインのPCが壊れてしまったので、明日以降の更新がちょっとだけピンチです。

投稿: 管理人nobu | 2014年8月25日 (月) 12時21分

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