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2014年8月16日 (土)

「忘れられる権利」に基づく検索サイトへの削除要請は早くも骨抜きに?

先日もお伝えしましたように欧州では検索サイトに自分の過去の情報を削除するよう求めることが出た結果、あちらこちらから「忘れられる権利」を求めての削除要請が殺到していると言いますけれども、日本でもこうした「忘れられる権利」に関するニュースが幾つか出ているようです。

ヤフーのネット検索で逮捕歴 表示差し止め認めず 京都地裁、原告男性の請求棄却「逮捕から1年半程度。不法行為は成立しない」(2014年8月7日産経ニュース)

 インターネットの大手検索サイト「ヤフージャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕歴が明らかになり、名誉を傷つけられたとして、京都市の40代の男性が、サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に、検索結果の表示差し止めや慰謝料などを求めていた訴訟の判決が7日、京都地裁であった。栂村明剛(つがむら・あきよし)裁判長は「特殊な犯罪事実で社会的な関心が高く、逮捕から1年半程度しか経過していない現時点では、公共の利害に関する事実であり不法行為は成立しない」として、男性の請求を棄却した。

「社会的な関心、現時点では公共の利害に…」

 訴状などによると、男性は平成24年12月、女性のスカート内を盗撮したとして京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、翌年4月、同地裁で執行猶予付きの有罪判決が確定した。
 男性は逮捕後に勤務先から懲戒解雇され、判決確定後に再就職活動をしようとしたが、自分の名前を検索すると逮捕の事実や記事、その記事を転載したサイトが表示され、再就職活動が妨げられたと指摘。犯罪が軽微であることや私人であることから、判決確定後も逮捕歴が検索結果に出るのは名誉毀損にあたるとして、慰謝料など1100万円の支払いを求め、同年9月に提訴していた。
 ヤフー側は「検索結果は、キーワードに関するウェブの存在や所在を示し、ヤフーの意思内容は反映されていない。削除要請は元記事の発信者にすべきだ」と反論。実名報道には公益性があり、記事へのアクセス手段を提供しても、違法性はないと主張していた。

「漏洩した個人情報を削除します」詐欺が急増、1000万円以上の被害も(2014年7月31日ITpro)

 国民生活センターは2014年7月30日、「あなたの個人情報が漏れているので、削除してあげる」といった電話をかけてきて金銭をだまし取ろうとする詐欺が急増しているとして注意を呼びかけた(関連記事)。だまされて金銭を支払った人からの相談は126件で、平均の被害額は約218万円。1000万円以上の被害も9件確認されている。

 個人情報の漏洩事件が相次いでいることを受け、国民生活センターや消費生活センターなどの公的機関をかたり、漏洩した個人情報の削除を持ちかける詐欺が増えている。国民生活センターによると、2012年度以降2014年6月末までに寄せられた相談件数は1347件で、2013年度から急増しているという(図1)。
 既に金銭を払ったという相談は126件で、支払額の平均は約218万円。例えば、500万円以上1000万円未満は14件、1000万円以上は9件だった(図2)。

 相談の一例は次の通り。「生活相談センター」を名乗る人物から、「あなたの個人情報が3カ所に漏れている。2カ所については削除できたが、1カ所(A社)については、代理の人の情報を登録しないと削除できない」という電話があり、ボランティア団体の人が代理人になってくれることになった。
 すると、A社から連絡があり、自分に割り振られているという「番号」を教えられた。その後、代理人からその番号を聞かれたために教えたところ、A社から「番号を他人に教えることは違法行為になるため、(A社の)社員が逮捕された。保釈金として1000万円払え」と求められて、宅配便で現金を送ったという。

 国民生活センターでは、公的機関が「個人情報を削除してあげる」などと電話をすることは絶対ないとして、そういった電話がかかってきたら、相手にせずにすぐ電話を切るよう呼びかけている。また、一度払ってしまった金銭を取り戻すことは極めて困難なので、絶対に払わないことが重要だとしている。

ちなみに非常にシンプルな詐欺の見分け方として、現金を宅配便で送らせるのはクロだそうですので覚えておいていただきたいと思いますね。
しかしこの個人情報詐欺なるもの、昔から存在している紳士録詐欺などの亜流と言う気もするのですけれども、それだけ今の時代に個人情報と言うものが流出すると大変だ、怖い、恐ろしいと言う長年のマスコミの教育が行き届いていると言うことでしょうか、実際にはどうでもいいような情報であってもとにかく何とかしなければ!とパニクってしまう人もいるのでしょうかね。
ともかくも基本的に望まない個人情報に関しては削除しておいた方が安心と言う言い方は出来るのかも知れませんが、もちろん本人は知られることを望まなくても周囲は知っておきたいと考える類の情報も少なからずあって、欧州における削除要請などを見てもその多くが過去の犯罪報道などに関連するものであったと言いますよね。
冒頭の記事などを見ていただきますと個人情報だから何でも保護されると言うわけではなく、社会にとって知るべきものに関しては個人の知られたくない権利よりも優先されると言うのが現状での司法判断であると言うことなのですが、ではその線引きをどこにすべきかと言うことが最も難しい問題であることは言うまでもありません。

グーグル、「忘れられる権利」の判断に苦慮 要請9万件超(2014年8月2日AFP)

【AFP=時事】インターネットの検索結果から個人情報の削除を求める「忘れられる権利」をめぐり、米検索大手グーグル(Google)は7月31日、欧州当局に書簡を送り、削除の是非の判断に苦慮していると説明した。判断材料となる情報が少なすぎる上、プライバシーが公益に優先される場合のガイドラインが曖昧なためだという。
 グーグルのピーター・フライシャー(Peter Fleischer)プライバシー担当グローバル法務顧問が欧州連合(EU)のデータ保護委員会に宛てた書簡によると、7月18日現在、欧州の「忘れられる権利」に基づいて受けた削除要請は9万1000件で、削除を求められたリンクの数は計32万8000件に上った
 要請が最も多かったのは約1万7500件のフランスで、次いでドイツが約1万6500件、英国から1万2000件、スペインが8000件、イタリアが7500件だった。グーグルは、このうち53%のリンクを削除したという。

■削除の判断「難しい」

 だが、グーグルによると、削除の是非を判断する際に、削除を要請した当人から提供された情報に頼らなければならないことが困難をもたらしているという。
虚偽情報や不正確な情報を基にした要請もあった」と、フライシャー氏は書簡の中で述べている。「正確な情報が提供された場合でも、本人に不都合な情報は提供されないことがある」
 たとえば、未成年のころの犯罪歴に関するリンクの削除を要請してきた人物が、成人した後も似たような罪を犯したにもかかわらずその事実を隠したり、現在は政治家として選挙に出馬しているとの情報を提供しなかったりするかもしれない。また、同姓同名の他人の情報の削除を要請される場合もあり得る。
 グーグルはまた、何を公益と判断し、何を公益とはみなさないかの基準を明確にするよう当州当局に要請。さらに、政府がインターネット上に公開した情報に対して「忘れられる権利」は適用されるのかどうかを問いかけた。

■「情報の自由」との兼ね合いは

 欧州司法裁判所(European Court of Justice、ECJ)は5月、情報が古かったり不正確だったりするなど特定の条件下では個人が自分に関する情報へのリンクの削除を求めることができるとして、通称「忘れられる権利」を認めた。
 これを受けてグーグルは、プライバシーの権利と情報の自由とのバランスを取ろうと努めている。これまでのところ、削除がおこなわれているのは人物の氏名など特定の検索ワードに関連したリンクのみで、また削除されたリンクも米国版サイト「Google.com」では閲覧が可能な状態だ。

見ていただいて判る通り、今のところ削除に関してもかなり限定的に対応しているのかなと思わされる内容であり、またそもそも検索サイトなどと言うものは自分が望む類の情報をより多くヒットしてくれるサイトを選んで使うと言う面がありますから、欧州版のサイトだけリンクを削除したところでライトユーザーに対する一時的な効果に留まると言うことはありそうに思いますね。
基本的には検索サイト側が言うように基準を明確にしろと言う点に関しては御説ごもっともですし、今後個別に削除要請を拒否された方々が訴訟を起こすことで司法判断も蓄積していくことになるんだと思いますが、下手をするとすでに世間では忘れられかけていた事件なども裁判があったと報じられることで改めて掘り起こされ、新たに以前に数倍する規模で個人情報が拡散しかねないのが今の時代です。
また最近検索サイトによるリンク拒否を行っているサイトなどを中心に検索避けのテクニックも定番化していますが、昔からネット住民は直接的に固有名詞を出す代わりに代用的な表現を用いると言ったことを普通に行ってきた歴史があり、逆に直接的にそれと言及されていないにも関わらず検索にはひっかかると言った形のサイト作りもまあ出来ないわけではありませんよね。
こういうことを言ってしまうと一番効果的に忘れられる方法論とは何もせず忘れられていくことをただ待つことなんじゃないかとも思えてきますけれども、実は検索サイト側の方も単なる善意の第三者と言うわけではなく、判決を受けてあの手この手と考えながら動いているようです。

グーグル、「忘れられる権利」の削除要請に対抗策(2014年7月4日GIZMODO)

誰しも静かに消えることはできない。
今年5月、EU司法裁判所が「忘れられる権利」を根拠としてヨーロッパ版Google上のリンク削除を命じる判決をくだしました。これによってヨーロッパ版Googleの検索結果からは当事者が削除要請したリンクが削除されるようになりました。
でもさすがにグーグルは転んでもただでは起きないとばかり、対抗策とも見える手続きを入れていました。以下、米Gizmodoのアギラー記者です。

EU司法裁判所が「忘れられる権利」を根拠にグーグルにリンク削除を命じました。でもインターネット上では、過去から逃れることはできません。
グーグルの検索結果からのリンク削除を強制するのは、明らかに検閲です。誰かが不都合な真実を消したいからって、それを公共の目の届かないところに葬ることになります。それはたとえばドラマ「24」のプロデューサーが、シーズン6の出来が悪かったからってシーズン6に関する情報をすべて抹消しようとするようものです。
でもすでに、これ幸いとグーグルにリンク削除要請を出した人がたくさんいます。TechDirtによると、その数はすでに数万件にのぼるそうです。

ただしその手続きは、「消してください」「はいわかりました」であとは消えるのを待つだけ、というシンプルなものではありません。グーグルはさすがの賢さで、削除要請されたリンクの飛び先サイトに対し、削除要請があったことを伝えるようにしたんです。
つまり、たとえばニュースサイトのある記事へのリンクについてグーグルに削除要請があったとします。グーグルは検索結果からリンクを削除しつつ、ニュースサイトに対し「このリンク削除しました」と通知するんです。するとニュースサイトは、以下のBBCみたいに「こんなのが来たよ」と記事にできるんです。

    グーグル検索より削除通知:誠に遺憾ながら、貴社のWebサイトの以下のページはヨーロッパ版Googleにおいて特定の検索に対する表示が不可能となったことをお知らせします。
    http://www.bbc.co.uk/blogs/legacy/t...robertpeston/2007/10/merrills_mess.html

上のURLの記事を開くと、メリルリンチで巨額損失を出してクビになった元会長兼CEOスタン・オニール氏のことが書かれていて、誰が削除要請したのかは一目瞭然です。だからこそBBCはこれを記事化したのでしょうね。
つまりオニール氏の残念な過去が、それを隠ぺいしようとしたことでまた晒しあげられてしまったことになります。

グーグルは削除要請という隠ぺいに対し、隠ぺいを暴露するという形で対抗しているのです。そもそもリンク削除自体しないほうがいいのですが、少なくともこの対応によって「誰にも気づかれないままひっそりと消える」なんてできないことが改めて明らかになりました。
そう、過去とは消せないものなんです。間違ったことをしたら、その代償はいつまでもついて回るんです。

この記事を見ていてちょっと気になったのが実際の削除の方法論なのですが、削除要請に関して個別にこことこことここのサイトを削除してくれ、などと言っていたのではきりがないですから、検索ワード○○に関するリンクを削除してくれと言う一括申請の形で行っていると言うことなのでしょう。
それに対して検索サイト側がそれでは○月○日をもって○○に関するリンク一切を削除しますと対応するのだとすれば、要請された(あるいは削除が実施された)その日以降に改めてリンクが貼られたと言う場合には検索サイト側も関知しないし、それもまた削除して欲しければまた改めて申請を出してくれと主張出来ると言うことなのでしょうか。
そうであるとすれば正直削除と言いながら全くの骨抜きで本当にいいのかこれで?と言う話ですし、リンク削除要請が来たことが対象サイトに通知されると言うのはむしろ積極的に「おたくのサイトを気にしている人がいるよ(だからその気があるなら情報を改めてアップし直してね。またリンクし直すから)」とわざわざ教唆しているにも等しいと思うのですがどうなんでしょうね?
要するに検索サイト側としては本音の部分ではリンクを削除したくはないと言うことなのでしょうが、こういうことは本来末端のユーザー側があれやこれやと工夫しながらやりくりするものと言う印象があって、どうも大手サイト側から裏道をわざわざスポットライトで照らし出すようなことをするのも違和感があるようにも思いますが、さてこれに対して削除を求める側が今度はどう出るかですよね。

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