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2014年8月26日 (火)

医療の供給はいずれ過剰に?

今週になってPCが突然ぶっ壊れてちょっと環境的に不自由しているところなのですが、最近ではクラウドと言う便利なものがあるので昔ほどには苦労することはなくなってきましたね(あらかた仕上げた頃にやってくる「HDDが飛びました」に何度泣かされたことか、です)。
さて、このところ何かとその信憑性を疑われることの多い朝日新聞系列の雑誌に、先日こんな「衝撃」的な記事が出ていました。

病院看護師バブルがやってくる 11年後に14万人 だぶつきの衝撃(2014年8月11日朝日新聞AERA)より抜粋

 大学の看護学科新設ラッシュで看護師が今後急増しそうだ。特に病院では、将来深刻な人余りが予想されている。白衣の天使はいかに生き残ればいいのだろうか。
(編集部 野村昌二)

 11校(1991年度)だったのが、今や226校に(2014年度)──。
 いったい何の数字かといえば、看護学部・学科を設置した看護系大学の数である。97年度以降毎年約10校のペースで増えつづけ、23年間で20倍以上。日本の4年制大学の総数は約770校だから、実に3・4校に1校が看護系学科を持っていることになる。入学定員の数は、558人(91年度)から1万9454人(14年度)と、実に35倍になった。
(略)
 実際、看護師不足は深刻だ。
 看護師(准看護師を含む)の数は約144万人(12年)と、9年間で25万人近く増えた。それでも、厚生労働省の「看護職員需給見通し」によれば、15年時点で看護職員(看護師、准看護師、保健師などの総称)の「需要」が約150万1千人なのに対し「供給」は約148万6千人と約1万5千人不足している。アンケートの「看護学部・学科」の新設理由を見ても、
「社会環境の変化と地域における看護師の人材需要に対応」(北海道科学大学)
「地元千葉県をはじめとする社会に貢献」(聖徳大学)
 などと、いずれも不足する看護師への対応を挙げている。
(略)
●診療報酬改定の余波

 しかし、安易な新設はリスクを伴う
 典型例が04年度に誕生した法科大学院だ。少子化に悩む大学には学生集めの切り札と映り、74校が「乱立」した。だが、司法試験合格率は平均20%台に低迷。学生離れが加速し、募集停止が相次いだ。今年度の入試では67校が学生を募集したが、61校が定員割れし、うち44校は半数にも満たなかった。こうしたことから先の小林さんは、
「本来、看護師の国家試験の合格率は100%に近いが、すでに一部の大学では合格率が60%、70%台のところも出ている。今後、合格実績の低い大学は、法科大学院のように定員割れを起こし募集停止になりかねない」
 と「新設ラッシュ」に懸念を示す。
 そして気になるのが、増え続ける看護師の数だ。
 病院で勤務する看護師14万人が余る──。
 そんなセンセーショナルな試算を、医療コンサルティングの「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(東京都港区)が行った。
 同社の渡辺幸子社長は言う。
「国が描く改革のシナリオをベースに試算した結果です」
「改革のシナリオ」というのが、4月の診療報酬改定だ。
 診療報酬とは、医療機関や薬局が健康保険組合や患者から受け取る代金のこと。原則として2年に1度、改定が行われるが、4月の改定では看護職員数の配置基準も変わった。

●ジェネラリスト目指せ

 国は06年度、高度な医療と集中看護で入院日数を縮め医療費を抑える狙いで、7人の入院患者に対し看護師1人を配置する「7対1病床」の区分を新設。入院基本料も大幅に増額し、それまでもっとも高かった「10対1病床」の1・2倍にした。その結果、増収をあて込んだ多くの病院が7対1病床に飛びついて病院間で看護師の争奪戦が起き、さらなる看護師不足を招いた
 7対1病床の増加は、そのまま医療費にも跳ね返った。12年度の医療費の総額は過去最高の38兆4千億円。7対1病床に関する政策は明らかな失策だった。
 すると厚労省は手のひらを返し、今年4月の診療報酬改定で、7対1病床を約9万床に当たる25%減らす方針に転じたのだ。すべての団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」に備え、自宅に戻る患者の多い病院に対する評価を高くするほか、在宅医療に取り組む診療所にも診療報酬を手厚く配分するとした。
訪問看護師の需要が高まり、日本全体で看護師が余るわけではありませんが、そのことは病院で働く看護師が余る可能性を示しています。その数が、25年は最大で約14万人となるのです」(渡辺社長)
(略)

まあ看護師になるルートは必ずしも四年制大学の看護学部を出るばかりではありませんから、その辺りの数字のマジックは要注意として看護系の定員が増えていると言うのは感じるところで、やはり手に職を持つ者が不況には強いと言った理由もあるのでしょうか。
ともかくも記事を見ていただくと判る通り、病院で勤務する看護師が過剰になってくれば訪問介護など病院外に働く道を見いださなければならなくなるかも、と言った趣旨の予測であるようなのですが、ともかくも看護師を目指す学生の数がこうまで増えていると言うのは驚くほかありませんよね。
実際には手が足りない状況下でようやく回している現場も多いでしょうから、実際にこうも単純計算で看護師余りが発生するのかどうかは判りませんけれども、留意すべきは看護師は今現在も資格を持ちながら離職している人間が多い、そしてその離職理由として圧倒的多数に挙げられているのが職場の人間関係であると言う点です。
労働環境の厳しさや体力的不安など人員不足に起因すると思われる離職も合計すれば同程度になりそうな勢いですが、そもそも明らかに適性や能力等で向いていない、あるいは単に職場の雰囲気を悪くするだけと言う「腐ったリンゴ」ですら辞めさせられないと言うのも、元をたどれば看護師不足に行き着く問題とも言えますよね。
要するに将来的に看護師がそれなりに充足して悪貨をきちんと選別出来る程度に充足してきた場合、こうした様々な問題が解決に向かうとすれば職場環境改善を見て復職したいと考える人も出てくるかも知れずで、逆に予想以上に現場の看護師が増えてくると言うことも考えられるかも知れません。

もちろん医療系の専門職としての教育を受けているわけですから非専門職を使うよりも安心だと言う局面は多々あるはずで、今まで看護師+看護助手と言う組み合わせでやっていた仕事を全部看護師だけで回すようにするだけでも需要など幾らでも創出できるはずです(それが看護師の仕事として満足度が高いかどうかは別として)。
ただ看護師が専門職として高い給料を取っている間はそうしたことも起こりにくいはずで、結局は需給バランスの崩壊は労働量や労働環境と言う点では今より改善に役立つかも知れませんが、給与や業務内容等の変動も込みで考えると必ずしもそれが働く上での満足度向上につながるかどうかは何とも言えないと言うことですよね。
ともかくも足りないから増やせ増やせではいずれどこかで過剰が問題になると言うことはあり得るわけで、すでに弁護士や歯科医がそうした状況に追い込まれワープア化している状況を見ると次は医師か看護師かと言う話なんですが、何かと不足ばかりが話題になることに釘を刺すように先日こんな気になる話が出ているようです。

将来、医療需要減れば「供給側の縮小も」- 日病の常任理事会で厚労省・佐々木室長(2014年8月25日CBニュース)

厚生労働省医政局の佐々木昌弘・医師確保等地域医療対策室長は23日、日本病院会(日病)の常任理事会で、地域医療ビジョンや医療計画の今後について説明した。その中で、医療の需要と供給の将来像を推計した結果、需要が縮小する見通しの地域では、「サプライサイド(供給側)の縮小もあり得る」と述べた。25日に日病が開いた定例記者会見で、堺常雄会長が明らかにした。【佐藤貴彦】

堺会長は会見で、この発言について、「警告なのか、単なる説明なのか分からなかったが、医療機関は心してやっていただきたいというメッセージだったのかもしれない」と受け止めたと話した。

また、「八千何百ある病院が(将来も同じ数だけ)本当に必要かは、今後真摯に考えていく必要がある」と述べ、医療需要の変化に応じた供給側の縮小に理解を示した。その上で、医療の供給体制の再編に向けた議論を、行政だけで行えば、医療の供給側の混乱につながる可能性があると指摘。「(行政からの)一方通行ではなく、相互の理解の下で、道筋を探っていく必要がある」との考えを強調した。

この場合供給とはスタッフの数や施設数など様々な要素を含んだ概念だと思うのですが、一般論として人口減少時代に不足だ不足だと供給側を増やすばかりではいずれ過剰になるのは当然のことなのですが、どこかで供給増から縮小に転じるにしてもさてその時期はいつになるのかと言うことが気になるところですよね。
少しばかり興味深いのはこのコメントが病院団体である日病の理事会で出ていると言う点なのですが、例えばこれがかねて医師の数を増やしすぎるのは問題だとして過大な増員傾向に反対してきた日医相手であれば拍手喝采で迎えられていたのかも知れません。
これに対して日病の場合は基本どんどんスタッフも増やし病床も増やしで経営拡大したいと言う立場ですし、もちろん病院の統廃合ともなれば内心あまり面白くないはずなんですが、だからこそ今の時点から国がこうしてわざわざ言ってきたと言うこともあるのでしょうか。

注目したいのはこの発言が国全体としての話ではなく、「需要が縮小する見通しの地域では」と言う但し書きがついていると言う点なんですが、例えば医学部新設が確定的となっている東北地方などは今後人口減少が最も大きく現れてくる地域だとも予測されていて、どうせ作るならもっといい地域があるのに…と言う声もありますよね。
ただ医師など人員は流動的ですからどこにでも行けるわけで、仮に特定地域内で医師数がどんどん増えたとすれば相場は下落傾向になるはずですから、自然と供給不足で給料なども恵まれている地域に移動しそれなりにバランスが取れていくのではないかと言う考え方もあります。
そう考えてみると結局学生の数だ、国試の合格数だと言った人数面よりも病床数や施設数の方が地域の医療供給を左右する最大要素であるのかも知れませんし、まさにその点でこれから始まる地域医療ビジョンなどは地域内の施設をコントロールするものですから、まあそれなりによく考えてあるものだとは思います。
問題は供給過剰とは何をもって過剰と言うのかで、国全体として順調に供給が増えていけば「未だ平均値にも達していない!」と半数はさらなる供給増を主張出来る道理ですから、相対指標ではなく絶対指標で評価を行うのだとすればいつ何を根拠にそれを定めるのかと言うことがいずれ大きな議論になりそうですね。

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コメント

ぶれない朝日です。いつまで存在できるのかな?

投稿: | 2014年8月26日 (火) 08時54分

>センセーショナルな試算を、医療コンサルティングの「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(東京都港区)が行った。
ここは笑うところですか?と思ったら、やっぱりお笑いですな。
引用で省略された先の
「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン監修のもとに作成した「病院看護師として生き残るための4カ条」」
1.当事者意識を持ったジェネラリストになる
4.専門家としての道を極める
なんだどっちでもいいんじゃん。

そもそも看護師国家試験合格者数は1994年以降4万人以上で少しずつ増え続け、2013年:5万余人、2014年:5万3千余人ですから、
その中の2万人弱が大学卒だ!なんてことを気にするのは、生徒を集めたい学校の経営者と人件費をケチりたい病・医院の経営者だけでしょう。

投稿: JSJ | 2014年8月26日 (火) 08時56分

供給過剰でもコストが高くなりすぎなければ許容されるのでしょうか?
こういう話って厚労省より財務省のほうが影響力ありそうな気がして。

投稿: ぽん太 | 2014年8月26日 (火) 09時12分

ところで、歯医者は供給過剰になってますが、
歯医者の治療のレベルはそのこととどう相関してるんでしょうか?

投稿: | 2014年8月26日 (火) 10時45分

定量的なデータは見たことがないのですが、歯科医に関しては経営的視点から保険外の処置を強くすすめる、治療をいつまでも引き伸ばすと言った患者サイドのクレームはそれなりにあるようで、以前と比べてどうなのかですね。
むしろこの点で注意すべきなのは歯科よりも素人には業務内容が判りにくい司法領域で、先日はこういう興味深い記事が出ていましたけれども、これまた以前と比べてどうなのかが気になるところです。

返還過払い金、弁護士らの着服横行か 「全国45件」消費者金融が抽出調査
http://qbiz.jp/article/44155/1/
(略)
 同社に対しては毎年、過去に借金をした約7万人から過払い金の返還請求がある。同社はこのうち、代理人の司法書士や弁護士に返還を終えたケースについて依頼者約2500人を抽出し、過払い金を受け取ったかどうかの聞き取り調査を実施。その結果、弁護士14人に依頼した27人と、司法書士15人に依頼した18人が「返還されたとは知らなかった。金は受け取っていない」と回答した。

 このうち、弁護士1人、司法書士4人の依頼者については「弁護士や司法書士とは会ったこともない」と回答しており、依頼すら受けずに勝手に過払い金を請求した疑いがあるという。同社は「廃業した貸金業者などから流出した名簿を利用し、無断で過払い金を請求しているのではないか」と話している。
(略)

投稿: 管理人nobu | 2014年8月26日 (火) 11時04分

うつ病の“怪しい診断書” 経営効率化、売り上げ重視の医師も?!
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/140628/ecb1406281810001-n1.htm

投稿: | 2014年8月26日 (火) 15時56分

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