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2014年8月29日 (金)

盲導犬、刺されても声を上げず

盲導犬と言う存在もかなり社会で定着してきている一方で、様々な理由から犬猫等の立ち入りを禁じている飲食店などでは未だに対応が別れる部分もあるようですけれども、ともかくも人間社会に混じって立派に仕事をしている犬と言う点では警察犬や救助犬などと同様、頼もしいとか好ましいとか言ったポジティブなイメージで捉えられている場合が多いんじゃないかと漠然と思っていました。
ただ実際にはそう単純なものでもないようで、単純に犬嫌いと言った視点からの「俺のそばに犬を近寄らせるな」式の素朴な反発もあれば、連日昼夜を問わず動物を奴隷のように使役している、アレは動物虐待だと言った類の反盲導犬運動なるものも存在しているのだそうで、そうなりますと先日発生したこちらの事件は果たしてどのような背景事情によるものなのかも気になってきますよね。

盲導犬が刺され負傷!「例のない」虐待 痛みこらえたか声出さず、警察も捜査へ(2014年8月28日スポーツ報知)

 埼玉県で7月、全盲の61歳の男性が連れていた盲導犬が電車内か駅周辺で何者かに刺され、けがをしていたことが埼玉県警などへの取材で27日までに分かった。訓練された盲導犬のため刺されても鳴き声を我慢したとみられる。命に別条はない。盲導犬育成団体の公益財団法人アイメイト協会(東京都練馬区)では「1957年に設立以来、例のない虐待」としている。インターネット上でも「許せない」との声が相次ぎ、県警は器物損壊容疑で捜査に乗り出した。

 埼玉県警武南署や男性の関係者によると、事件が起きたのは7月28日。午前11時ごろ、さいたま市の全盲の男性が職場に向かうため、ラブラドルレトリバーのオスカー(雄9歳)を連れて自宅を出発し、JR浦和駅から京浜東北線と武蔵野線を乗り継いで東川口駅で下車した。
 職場に到着後、同僚がオスカーが着ている犬用シャツに血がついているのに気がついた。先端が鋭くとがった千枚通しのようなもので腰の辺りを2、3か所刺されていた。動物病院で手当てを受けて回復し、現在は元気に男性と生活している。

 男性は同日、被害届を提出し、同署が防犯カメラの解析や聞き込みなどの捜査を進めている。シャツには穴はなく、何者かが意図的にシャツをめくり上げて刺した疑いが強いという。男性が東川口駅で下車して立ち寄ったコンビニの防犯カメラの映像ではすでにけがをしており、電車内などで刺された可能性がある。
 盲導犬はパートナーに危険を伝える際などを除き、無駄な声を上げないよう訓練されている。オスカーは痛みをこらえほえなかったとみられる。
(略)
 ネット上では男性の職場関係者の書き込みからツイッターやフェイスブックなどで広まり「犯人を捕まえて」などと大きな話題になっている。

何者かが盲導犬を刺す 被害男性「これは自分の“傷”」(2014年8月25日マイナビニュース)より抜粋

(略)
「見えない」「抵抗しない」につけ込む

 まず、事件の概要から追ってみよう。被害に遭ったのは、埼玉県の全盲の男性(61)とアイメイトの『オスカー』だ。国産盲導犬第1号『チャンピイ』を送り出した育成団体、「(公財)アイメイト協会」出身の盲導犬は、「アイメイト」と呼ばれる(=その理由は後述)。オスカーは、間もなく9歳を迎えるラブラドール・レトリーバーのオスだ。
 7月28日、男性とオスカーはいつものように午前11時ごろに自宅を出て、JR浦和駅から電車に乗り、県内の職場へ向かった。いつものように職場の店舗に到着すると、店長が飛んできて「それ、血じゃないの!?」と声を上げた。オスカーはいつも、他の多くのアイメイトと同様、抜け毛を散らさないようにTシャツタイプの服を着ている。その服の後端、お尻の上のあたりが真っ赤に染まっていたのだ。服をめくると、腰のあたりから流血していた。
 傷口を消毒し、応急処置を施して動物病院に連れて行った。直径5ミリほどの刺し傷が500円玉大の円の中の4か所あった。大型犬の皮膚はかなり厚く、獣医師の見立てではサバイバルナイフのようなものを強く何度も突き立てなければできない傷だという。あるいは、鋭いフォークのようなもので刺したか。服に傷がなかったことから、何かに引っ掛けた“事故”ではなく、何者かがわざわざ服をめくってつけた傷であることは明白だった(同日届け出た警察も事件性を認めている)。
 被害男性は「聴覚にはまだまだ自信があるが、まったく気づかなかった」と言う。犬は比較的痛みに強い動物だ。加えて、アイメイトとして訓練を受けてきたオスカーは、人に対する攻撃性を持たない。全てのアイメイト/盲導犬がそうだということではないが、吠えることはおろか声を上げることもめったにないという。
(略)
警察は「器物損壊」容疑で捜査中

 男性は当日、地元警察署に被害届を出している。同署は、傷の状況から事件性ありと判断。駅の防犯カメラ等を調べ、当日の経路で聞き込みをしたが、今のところ有力な手がかりはないという。
 警察の見立てでは、聞き込みの結果などから電車内での犯行が有力だという。一方、男性と職場の仲間は、オスカーのお尻が最も無防備な形で後ろに立つ人の前に来る浦和駅のエスカレーター上が怪しいと踏んでいる。
 いずれにせよ、実際に犯人を割り出すのは極めて難しい状況だ。そして、万が一犯人を罪に問うことができても、動物の場合は傷害罪ではなく器物損壊罪にしかならない。当日、男性から連絡を受けて警察にも同行した動物愛護団体役員の佐藤徳寿さんは、こう語る。
 「どこに怒りをぶつけていいのか、本当に悔しいです。刑法上は『物』かもしれないが、盲導犬はペットとは違い、ユーザーさんの体の一部です。早急に法を変えて傷害罪と同等の罪に問えるようにしてほしい
 一連の経緯を聞いた職場の同僚の家族は、「もう我慢できない」と、全国紙の読者投稿欄に今回の経緯を寄稿した。これを読んだNPO「神奈川県視覚障害者福祉協会」は、犯人への厳正な処罰と再発防止を求める声明をHPに発表した。
(略)

後段のマイナビの記事では受傷当時の傷の画像(血は拭い取った状態です)も掲載されていますので興味のある方は参照いただければと思いますが、しかし見立てによれば駅構内なり電車内なりと言った公共の場所での大胆不敵な行動に及んでいると言うことになり、これだけ突き刺さるほどですから相当に力も必要でしょうにどのような人物がどのような考えから犯行に及んだのか、周囲の目撃者はいたのかどうかが気になります。
ただ今回たまたまこうして報道されたからこそ認知されましたが、実は盲導犬に対する各種の加害行為は他にも報告されているだそうで、そもそもパートナーが視覚障害者である上に当の盲導犬は反撃はおろか声も上げないと知っているからこその犯行なのだとすれば、いかなる思想信条的な理由からにせよ何にせよおよそ許容されるべきことではないように思います。

<盲導犬>たばこの火押しつけ、顔に落書き…心無いいたずら(2014年8月27日毎日新聞)

 さいたま市の全盲の男性(61)が連れていた盲導犬が先月、何者かに刺され、けがをする事件があった。全国に11ある盲導犬育成団体の一つの「日本ライトハウス」(大阪市)によると、盲導犬に対する悪質ないたずらは初めてではないという。最近10年間でも顔を蹴られたり、歩行中にしっぽを引っ張られたりしたなどのいたずらが数件報告されている。

 同ハウスの盲導犬訓練所の赤川芳子所長代理は「十数年前には盲導犬にたばこの火を押しつける場面がある映画の公開後、香川県などで数件まねしたような被害が出た。今回も模倣する人が出るのでは」と懸念する。今回被害に遭ったオスカーを訓練した育成団体「アイメイト協会」(東京都)の関係者も「これまでもたばこの火を押しつけられたり他のペットにかみつかれたりという盲導犬被害は多々あった」と明かす。

 また、福岡県内の女性(43)は2010年4月、地下鉄で移動中に盲導犬の顔にペンで落書きされたことがある。目の辺りが丸く囲まれ、鼻の下には線が書かれていたという。女性は「目が見えないことと、盲導犬がおとなしいことにつけ込まれた。今回の被害男性も私と同じ悔しさを味わったはずで、周囲の人が気づいたら声を上げてほしい」と話した。【垂水友里香、木村敦彦】

何者かが盲導犬を刺す 被害男性「これは自分の“傷”」(2014年8月25日マイナビニュース)より抜粋

(略)
 アイメイト/盲導犬は、刑法上は「物」扱いだが、2002年に成立した「身体障害者補助犬法」では、ペットとは一線を画した権利を与えられている。同法は、公共施設やレストランなどの店舗、公共交通機関が盲導犬を伴っての入場を断ってはならないと定めた法律だ。誤解されがちだが、補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)は「特別扱いされている犬」ではない。障害者の「体の一部」として、施設利用などの面ではパートナーと同等の権利を認められているのだ。

 にも関わらず、今回のような事件・事例は後を立たない。例えば、今回の被害男性が直接知る女性ユーザーの盲導犬は、気付かないうちに額にマジックで落書きされ、女性は深い心の傷を負った。タバコの火を押し付けられたという話は「珍しくない」と、使用者や関係者は口を揃える。被害男性自身も「しっぽを踏まれる、わざと蹴られるのは日常茶飯事」と訴える。かつて白杖で歩いていた時には、若者のグループに腕を捕まれ、ツバを吐きかけられたこともあったという。

 アイメイト協会は1957年以来、1200組余の使用者・アイメイトのペアを輩出しており、他の9の育成団体と合わせた全国の盲導犬の実働数は、現在1000頭余と言われている。初期のアイメイト使用者は、電車やバスに乗せてもらえるように個別に運行会社に掛けあったり、行政や国会議員への働きかけを積極的に行ったりしていた。21世紀になって「身体障害者補助犬法」が成立するに至り、長年の積み重ねが花開いたかのように見えるが、実態はそうでもないらしい。アイメイト協会の塩屋隆男理事長は、入店拒否は今も日常的にあると語る。例えば、神奈川県のアイメイト使用者の男性(69)は、「今年になってレストラン・旅館で4回も入店を拒否された。ちょっと多いですね」と話す。

 また、近年特に目立つのは、逆のベクトルでアイメイトの存在そのものを“虐待”だと受け止め、執拗に協会に抗議してくる市民の存在だ。多くは「犬を暑い中無理やり歩かせている」「きつく叱っていた」といった使用者や協会スタッフに向けた非難だという。「事実と正しい理解に基づいた批判ならば真摯に受け止めなくてはなりません。しかし、ほとんどは犬を安易に擬人化した、言いがかりのようなものです」と、塩屋理事長はため息をつく。

 彼らは「盲人を導く」スーパードッグではない。あるいは、刑法上は「物」だからと言って、何をしてもいいということでもない。少なくとも、人の目となる対等なパートナー=「アイメイト」だということは、公にも認められている。先の今年4回入店拒否に遭ったという使用者は、次のように訴える。

 「アイメイトを傷つけたりむやみに拒否することは、単に動物愛護の問題ではありません。人権侵害です

記事にも記載されていますが盲導犬の立場を担保する法律として近年成立した身体障害者補助犬法と言うものがあり、見ていますとなかなか興味深いのは公共の施設では一般論として盲導犬の同伴を拒否してはならない、「ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない(第七条)」と記載されています。
この「著しい損害」の意味について補足があって「「身体障害者補助犬の使用により国等の事業の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合」と読み替えるものとする。 」とあるのは、当然ながら拡大解釈される余地を最小限に留めるべきだと言うことなのでしょうが、一方で民間の店舗等を想定した規定が同法第九条「不特定かつ多数の者が利用する施設における身体障害者補助犬の同伴」に関する規定と言うことになるのでしょうか。
これまた読んでみるとこちらでは公共交通機関での規定を記した第八条と同様、先の公的施設の場合を規定した第七条と異なって特段の補足記載がないようですので、要するに今のところ高い水準で盲導犬拒否の禁止を求められているのは公共施設だけであり、飲食店等民間施設においては施設管理者なり利用者なりが「著しい損害」を受ける恐れがあると判断した場合には利用を拒否できると解釈される余地がありそうですね。
前述の第七条でわざわざ補足が挿入されていることを見ても、恐らくこの辺りは法律の制定に当たってもどこまで義務として定めるべきかずいぶんと議論になった結果の妥協の産物だと思うのですが、ともかくも全体を概観して気になるのは盲導犬の立場とはどのようなものかで、法的記載に従ってみるとどうやら「ユーザーさんの体の一部」ではなく権利を認められた別個の存在とされていて、盲導犬への加害を別人格であるユーザーそのものへの傷害行為と認めるのは難しそうです。

この場合考え方は二通りあると思うのですが、古来SFなどでもよく取り上げられるテーマとして高度な知性を備えたロボットや異星人など人間以外の存在に人権を認めるべきか否か?と言う議論の延長として盲導犬にも相応の権利を認めると言う考え方に至った場合、これは当然ながら利用者とは別個の人格(あるいは犬格?)を認めたと言うことですから盲導犬と言う存在なりの(動物愛護的な?)権利だけを認めるのが妥当だろうと言うことになります。
一方で障害者の義足を叩き壊したりすれば傷害罪に準じて扱われることにさしたる違和感はないと思いますが、盲導犬も視覚障害者の体の一部であり感覚の延長であると言う考え方で盲導犬への加害行為をユーザーへの傷害罪として罪を問うべきだとなった場合、これは言ってみれば盲導犬を別個の人格ではなく単に障害者の付属物としてモノ扱いする方向性につながるとも言えますでしょうか。
気持ちの上で盲導犬にももっと権利を!と叫ぶのは理解できるとして、それを法的に実現しようとするほど盲導犬の人格を否定することにもつながりかねないと言うのであれば理念と実利のどちらを取るかと言うジレンマですが、この辺りは案外利用者の間にも見解が分かれてくる問題なのかも知れずで、犬と言う生き物全般への距離感などによっても答えが変わってくることなのかも知れません。
ただ即物的な実利と言う点に限って言えばそれこそ昨今ではどんなところにでも仕込める超小型のカメラなども売られているわけで、単純に被害防止と言う観点から言えば盲導犬にもこうしたものを装備しておくのもまさか悪用とも言われないだろうし、盲導犬の教育などにおいてもこういう映像情報があった方が効果が上がりそうな気もしますね。

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コメント

犬の背中にカメラをつけるキットはすでに市販されていますので、管理人様の書かれたような「優れた介助犬育成のため」という大義名分でカメラをつけてもいいような気はします。
ただ、法律に触れるような映像を図らずも撮影してしまう可能性があるという問題はあります。

投稿: クマ | 2014年8月29日 (金) 09時06分

刺されたら鳴き声立てなくても反射的に動くんじゃない?
盲導犬の突然の動きに気づかないことってある?

投稿: ソネット | 2014年8月29日 (金) 09時26分

>ただ、法律に触れるような映像を図らずも撮影してしまう可能性があるという問題はあります。

ローアングルからの映像でお送りしておりますw

投稿: aaa | 2014年8月29日 (金) 09時32分

メディアをロックして何かあったときだけ盲導犬団体の人がチェックするってのはどうでしょう?>カメラ

投稿: ぽん太 | 2014年8月29日 (金) 09時51分

御指摘のように日常的に映像をチェックするというのでなければ、数も限られているので大きな反対はないんじゃないかと思うのですが、残念ながらよからぬ目的で映像を入手・利用しようとする輩は出るかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2014年8月29日 (金) 11時13分

動物虐待だって非難してた連中は犯人探し出してつるせよ

投稿: | 2014年8月29日 (金) 13時54分

動物虐待を非難する人は、犬が刺されたことなんてどうでもいいんだよ
やつらが言う虐待は、刺されたことじゃなくて、盲導犬としての生活だからさ

投稿: | 2014年8月29日 (金) 13時57分

これ犬いじめっつうより障害者いじめが目的だったんじゃ?
犬はいじめの手段に使われただけじゃないの?

投稿: 童子 | 2014年8月29日 (金) 17時45分

盲導犬 「絶対に許せない!」に要注意!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kandatoshiaki/20140829-00038662/

投稿: 警告!!! | 2014年8月29日 (金) 18時04分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140902-00000025-dal-ent
埼玉県で7月に盲導犬「オスカー」が何者かに刺されて負傷した事件に絡んでデヴィ夫人(74)が1日、
公式ブログで盲導犬制度の廃止を主張した。

 デヴィ夫人は加害者を憎み、厳しく罰するための法改正を訴えるとともに、盲導犬が選ばれて訓練を受け、
やがて引退するまでの生涯を記して「私はそんな盲導犬制度に対して強く反対の気持ちを持っております」
とかねてから抱いていた主張を公にした。

 デヴィ夫人は「目の不自由な方にとって盲導犬は身体の一部とも言える働きをしているのです」と理解しながら、
盲導犬は「本来のネイチャー通り自由に飛び跳ねることも出来ず、はしゃぎ遊ぶことも出来ず、
吠えることも出来ず、ただ黙々と目の不自由な方に仕えるのみ」で「それは一種の“虐待”と思っています」と結論付けた。

投稿: | 2014年9月 2日 (火) 22時09分

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