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2014年8月 8日 (金)

エボラ出血熱大流行中

感染症の教科書を見れば決して大きなページ数を割いているわけではないにしろ、一生のうちに出来れば遭遇したくない類の極めて危険性の高い感染症として必ず名前が挙がっているのがウイルス性出血熱ですけれども、その特徴として人から人への感染力が非常に強いことと致死率が大変に高いこと、そして何よりこれと言って有効な治療法が確立されていないことが挙げられますよね。
今回すでに1000人近くの死亡者が出ていると言うアフリカ一帯でのエボラ出血熱大流行はすでにコントロール不能な状況にあるとも言われていて、とりわけ現地を離れて世界各地で散発的に発症が疑われる患者が出現し始めるなどパンデミック(世界的流行)に移行する懸念も出てきています。
先日は現地で治療に当たっている最中に自らも発症した医師を治療のため帰国させるに当たってアメリカ国内で大騒ぎになったように、世界各地で過敏反応とも取れる動きも出始めていますけれども、とりわけ物理的にも対応手段が限られる場合が多いアフリカ現地の状況は「コントロール不能」と言われるほど大変なことになっているようです。

エボラ熱拡大のリベリア 院長が感染で死亡、首都の病院閉鎖(2014年8月7日スポニチ)

 エボラ出血熱が猛威を振るう西アフリカのリベリアの首都モンロビアで6日、感染者の主要な受け入れ先だった病院が閉鎖された。ロイター通信が伝えた。カメルーン人の院長がエボラ熱で死亡したほか、スペイン人司祭ら病院関係者の感染も確認されたためという。

 リベリア国内では、他の病院でも医療従事者が感染を恐れて逃げ出したり、エボラ熱をデマだと信じる地元住民の反発に遭ったりして、多くが閉鎖に追い込まれている。急拡大するエボラ熱に既存の医療システムが対応できない状況だ。

 リベリアでは米国人医師が感染し、治療のために帰国。隣国シエラレオネでもエボラ熱対策を指揮していた男性医師が7月下旬に死亡するなど、医療従事者が相次いで犠牲になっている。

 世界保健機関(WHO)は感染の危険性と負担を減らすため、医療従事者の増員が不可欠だと訴えている。(共同)


アフリカ最大の都市ラゴスで2例目のエボラ熱感染(2014年8月5日ウォールストリートジャーナル)

 ナイジェリア保健省は4日、アフリカで最も人口の多いこの国で2件目となるエボラ出血熱の感染を確認し、このほかに8人を隔離したことを明らかにした。これらの人々は皆、7月に同国のラゴスで死亡したリベリア系米国人の治療に携わっていた。
 ナイジェリアのチュク保健相は4日、首都アブジャで記者団に対し、「死亡した米国系リベリア人の治療にあたっていた医師の1人にエボラウイルスの陽性反応が出た」と述べ、「医師は隔離施設で治療を受けている」と付け加えた。
 チュク保健相は、この医師のほか、8人の医療関係者が隔離されたと述べた。また、死亡したリベリア系米国人パトリック・ソーヤー氏と接触した62人について、病気の兆候が出ていないかを監視していることを明らかにした。

 ナイジェリアで2件目となるエボラ熱の感染は、西アフリカの医療関係者が直面する難しい問題を浮き彫りにしている。それはエボラ熱の患者が、自分は感染していないと否定することだ。
 死亡したソーヤー氏は、リベリア財務省のコンサルタントを務めていた。同氏は最近、エボラ熱に感染した自分の姉妹の一人の最期をみとり、7月20日にリベリアの首都モンロビアからラゴスに到着するまでには、エボラ熱の顕著な症状を示していた。ラゴス州の保健当局者が明らかにした。ソーヤー氏は、自分が2日前からマラリアにかかっていると思うと病院のスタッフに伝えていた。このため、その間、スタッフはエボラウイルスの拡大防止のために通常取られる防護服の着用といった予防措置を取らなかった。同氏は7月25日にその病院で死亡した。
 ナイジェリアの当局者は、すぐに空港やソーヤー氏が死亡した病院で同氏と接触した人全ての特定と監視を行った。その結果、治療に当たった医師の一人のエボラ熱感染が明らかになったことで、エボラ熱がラゴスに定着する恐れがあるとの懸念があらためて強まった。ラゴスはアフリカで最も人口が多い都市だ。
 チュク保健相は4日、エボラ熱がラゴス以外の場所で発生したとしても、当局が感染者の隔離に努める意向を示し、「全ての州に緊急センターを設置し、発生が報告された場合、それに対応できるようにしている」と述べた。

 2月に始まったエボラ熱の流行は、過去最悪の事態に陥っている。世界保健機関(WHO)は4日、8月1日時点でギニア、シエラレオネ、リベリアとナイジェリアで887人が死亡したと述べた。死者数は7月31日に公表された数から158人増加した。
 WHOは、西アフリカで今年、エボラ熱が発生して以降、1600件を超える感染が確認されていると述べた。
(略)

エボラ熱の封じ込めに苦戦、リベリアでは路上に放置される遺体も(2014年8月6日ロイター)

[モンロビア/ダカール 5日 ロイター] - エボラ出血熱の感染が拡大している西アフリカのリベリアでは、感染者の遺族らが政府当局の指示を無視し、遺体を路上に放置している。今回のエボラ熱流行ではすでに死者887人が出ているが、西アフリカの各国政府は、ウイルス封じ込めのための対策強化に苦戦している。
7月後半に初の感染者が確認されたナイジェリアでは、米国籍のエボラ熱患者パトリック・ソーヤー氏と接触した8人に感染の兆候が出ていることが明らかになった。

今回のエボラ熱流行は、ギニアの森林部で最初に確認され、隣国であるシエラレオネとリベリアに広がった。同3カ国は先週、ウイルス封じ込めを目指し、学校閉鎖や感染者の自宅の検疫などの強硬手段を取ると発表していた。
しかし、リベリアの首都モンロビアでは、亡くなった患者の親類らは遺体を適切な場所に移送するのではなく、路上に引きずり出しているという。
同国のルイス・ブラウン情報相はロイターの取材に対し、患者の家のウイルス除染と感染者の周辺人物の追跡も義務付けた規則が、一部の人に不安を与えているかもしれないと説明。「それゆえ、彼らは遺体を家から持ち出し、路上に置いている。彼らは自ら感染のリスクにさらしている」とし、「遺体は当局が収容するので、家の中に置いておくよう呼びかけている」と語った。

リベリア当局はエボラ出血熱で亡くなった人の火葬を3日に開始し、また、4日夜からは、感染地域を封鎖するために軍部隊も派遣されたという。
同相は「過度の力は使われないことが望ましいが、われわれは感染地域からの人の移動にできる限りのことをしなくてはならない」と述べた。

すでに大都市部に入ったとなるとこれくらいの数で済むこととは思えませんけれども、もちろんこの種の疾患で防疫上隔離すると言う措置が非常に重要であることは判りきったことであり、日本においても新型インフルエンザとの絡みで個人の権利との兼ね合いをどうするのか、そのためにどのような法的裏付けが必要なのかと言った議論がなされたのは記憶に新しいところですよね。
ただ先年の宮崎における口蹄疫騒動などでもそうなのですが、感染が疑われるのだから地域内の全頭を処分すべきだと言う防疫的見地からの対策に根強い反対があったりだとか、下手をすると感染の恐れが否定出来ないものが出荷されてしまったりだとか言う疑惑が持ち上がると言うのも、結局は経済的に損をしかねない対策を現地の人々の犠牲の元に行おうとするからだと言うことになるのだと思います。
以前にも福島産食品が産地偽装されて出荷されていると言って問題視されていましたが、本当に市場に出てきて欲しくないのなら市場に出すよりも高値で全量引き取ればいい話であって、そのためのコスト負担は流通規制の受益者である国民がするべきだろうと思うのですが、逆に言えばそういう対応が出来るのも懐の豊かな先進諸国だからこそだとも言えますよね。
その意味で今回非常に注目すべきなのは感染者が出たと言うことが周囲に知られれば非常に大きな不利益を受けると住民が認識してしまっている様子が見えることで、こういう認識が広まれば適切な早期対応など出来るわけもないのですが、社会保障や個人の権利保護なども未整備な地域であるだけに当事者が自ら名乗り出るほどの妥当なインセンティブを用意出来るかどうか極めて難しいところだと思いますね。
また先日はちょうど現地で活動していた日本人スタッフの方が帰国して状況報告をしているのですが、我々の目線で妥当と思える医療活動が必ずしも現地目線ではそうではない可能性もあるなど、アフリカという地域性を考えずにはいられない混沌とした状況になっているようです。

国境なき医師団がエボラ流行地での活動を報告(2014年8月6日日経メディカル)より抜粋

 8月5日、国境なき医師団(MSF)は記者会見を開き、エボラ出血熱の流行が拡大する西アフリカでの医療活動について報告した。現地から帰国したばかりの看護師が登壇し、治療施設の感染管理体制や、MSFによる地元住民への啓発活動などの様子を紹介。感染拡大が収まらず、MSFの対応能力に限界が生じている現状も明かした。
(略)
エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症で、有効な治療法はなく、点滴などの対症療法が中心。血液や汗などを通じて感染するため、医療者には患者の体液に触れないための徹底した感染対策が求められる

 MSFのスタッフは、防護服、マスク、ゴーグル、ブーツ、二重手袋、エプロンを着用。皮膚の露出がないことを鏡で確認し、さらに他のスタッフによるダブルチェックを受ける。現地の気温は高く、防護服の中はサウナ状態だ。スタッフは常に2人以上で行動し、活動は1時間以内と制限されている。吉田氏は「1時間でも暑さと緊張で疲労困憊(こんぱい)になる。感染対策に重要な防護服の着脱手順も忘れるほど意識がもうろうとなったこともある」と話す。

 なお、活動後、防護服は次亜塩素酸で消毒した後、焼却処分を行う。患者が確認された家のマットレスや衣類も同様に処理し、患者が回復して自宅に戻る際に新しいものを提供し、感染拡大を防ぐ。

 MSFの施設では感染疑い患者と、感染確定者を完全に分けて収容している(写真1)。汚染の高い区域から低い区域への行き来を制限するため、スタッフの動線は一方通行となっている。管理区域からはメモ用紙一枚も持ち出せない徹底ぶりだ。
(略)
 さらに、感染予防に関する現地住民の知識不足が流行の収束を妨げている。死者を清めて弔う風習があり、遺体に触れて感染するケースも散見される。また、「病院に行くとかえって感染する」との理由で患者を受診させなかったり、「MSFがエボラを広めている」という誤解から、救急車に石が投げられるなど、不信感は強い。そのほか、現地の医療者が感染を恐れて病院から逃げ出す事態も起きている。
(略)

それはまあ、身近に訳の分からない病気でどんどん死んでいく人がいて、そうした病人がバタバタ出る先々で見たこともない珍妙な格好をしたガイジンが動き回っているとなれば誰がどう考えても「あいつらが怪しい」となりそうなものですけれども、単純にこれを教育レベルの低さや公衆衛生学的知識の欠如と言った捉え方で済ませてしまっていいのかどうかです。
例えば極めて激しい胃腸炎を起こして脱水から死に至ることもあるコレラなどは日本などでは見つかれば結構大騒ぎで点滴漬けの毎日ですけれども、アフリカの田舎の診療所では排泄用の穴の開いたベッドがずらりと並べてあって、患者はスポーツドリンクの類だけ与えられて放置されているなんてこともあるそうで、厳しい医療リソースの制約を考えれば確かにそういうやり方も彼の地では妥当なのかなとも思います。
逆に前述の記事にあるような福島の原発作業員もかくやと思われるような厳重な防疫対策が、今後際限なく感染拡大が起こってきた時にどこまで行えるものなのかと言うとなかなか難しいところがあって、もちろん医療従事者への二次感染防止と言う点では必要な措置ではありますが、このレベルの自己防衛が行えない現地住民からすれば「俺達には死ねと言うことか」と自暴自棄になりたくもなる光景でもあるかも知れません。
新型インフルエンザ騒動の際にも病院が一杯でどうしようもなくなったら食料飲料を買い込んでひたすら自宅に引きこもってろ、なんて一見暴論とも言えるような究極の対策が言われたことがありましたが、この状況でより大きな安心感をもたらすのは先進国水準の高度装備がなければ行えないものではなく現地で誰もが行えるレベルでの対策だろうし、今後のためにもそのための方法論をこそ今早急に確立しておくべきなんでしょうね。

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コメント

日本じゃほとんど報道されてないのがいいのかわるいのか・・・・

投稿: ちんみ | 2014年8月 8日 (金) 09時17分

パニックにならない程度の距離感を保って議論できるのはいいことではないかと。
ただエボラって人口稠密地域でも自然収束していくものなんでしょうかね?
こうなったらもう完全封鎖はできなさそうに思うんですけど。

投稿: ぽん太 | 2014年8月 8日 (金) 10時01分

今まさに爆発的流行になるかどうか行方が別れそうな状況ですが、その結論が出る頃までには何らかの対策が出てくることを期待したいところです。

投稿: 管理人nobu | 2014年8月 8日 (金) 12時15分

リベリア国内ではエボラ出血熱の流行に伴って医療関係者が逃亡し、
リベリア外相が「医療システムは崩壊した」と言及する事態になっています。
「医療崩壊により、人々は一般的な病気で死亡しています。」

エボラ危機は長期的な影響を及ぼすことが懸念されています。

医療施設ではエボラ出血熱への恐怖から、マラリアや下痢など治療可能な患者も受け入れが拒否され、
これらの疾患による死者はエボラ出血熱の数倍に及んでいるとのことです。

http://www.bayoubuzz.com/us-news/item/721403-exclusive-liberia-health-system-collapsing-as-ebola-spreads

投稿: | 2014年8月 8日 (金) 13時05分

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