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2014年7月31日 (木)

住吉市民病院統廃合 市当局の描いた素晴らしい計画が全くの白紙に

大阪と言えばこのところ市長絡みのネタばかりと言う印象でしたが、今回は少しばかり毛色の違うニュースが出ているようです。

小児科医の確保巡り、市と対立…病院新設を辞退(2014年7月29日読売新聞)

 大阪府立急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)への統合で2016年3月末に廃止予定となっている大阪市立住吉市民病院(同市住之江区)の跡地について、新病院の開設が内定していた医療法人が辞退の意思を市側に伝えたことが分かった。

 市は事業者を再公募する方針。

 辞退を申し入れたのは、堺市内で病院を経営する医療法人。16年4月、4階建て、病床数100の新病院を開設し、夜間や休日の小児救急も行うとしていた。

 辞退に至った要因は、事業者決定の過程で細かな条件を詰め切れていなかったことだ。公募条件では、新病院は現行と同等のサービスを維持するため、小児科医5人の確保を目指すことになっていた。しかし、確保時期について、「開業時点での人数確保は譲れない」とする市と、「開業後に段階的に目標達成する計画」とする事業者の主張が対立し、溝が埋まらなかったという。

 府市は、約2キロ離れた総合医療センターの敷地内に小児・周産期医療機関「住吉母子医療センター(仮称)」を16年度に開設予定。しかし、市議会は新病院のめどが立つまで関連予算を認めない考えで、計画に遅れが出る可能性がある。

橋下市長、一体どないすんねん?! 大阪市の市民病院跡地への誘致協議が決裂 小児科体制めぐり堺市の医療法人と見解対立(2014年7月29日産経ニュース)

 老朽化のため閉院する大阪市立住吉市民病院(住之江区)跡地への民間病院の誘致で、大阪市の公募で選ばれていた堺市の医療法人が大阪市側に病院新設の辞退を申し出たことが29日、大阪市への取材で分かった。両者は新病院の小児科体制の整備スケジュールをめぐり対立しており、医療法人は市の主張は受け入れられないとして断念したもようだ。市は今後、再公募などを検討するとみられるが、この病院誘致が条件になっていた高度な小児・周産期医療センターの新設計画も暗礁に乗り上げた格好だ。

 公募では「医師5人以上の小児科体制」が決まっていたが、協定書締結に向けた協議の段階で市側が「開院当初からの整備」を要請、医療法人側が「段階的な整備」を主張。折り合わない状況が続き、28日夜、法人から市に病院新設辞退を申し出る文書が届けられた。

 この問題は、橋下徹市長が地域の小児・周産期医療を担っている住吉市民病院を平成28年3月末で閉院させる代わりに、約2キロ離れた住吉区内に高度な医療サービスを提供する「住吉母子医療センター」(仮称)を大阪府と共同整備する構想を表明。市議会も住吉市民病院跡地への民間病院誘致を条件に認め、病院廃止の議案を可決していた。

 市病院局は診療科や病床数などの条件をつけて公募を実施。唯一の応募者だった堺市の医療法人が条件を満たしているとして選ばれ、今年4月にも協定書を結ぶ予定だったが、協議が難航していた。

 市議会の過半数を持つ野党会派は5月議会で「協定書が結ばれておらず、病院誘致が確約されていない」として住吉母子医療センターの整備費の予算を認めず、協定書の早期締結を求めていた。協議決裂の背景には全国的に問題視されている「小児科医不足」があるとされ、市が同じ条件で再公募を行った場合に応募があるかは不透明。民間病院が誘致されずに、住吉市民病院が閉院する事態を懸念する声もあがりそうだ。

橋下市長「大失敗だ」、条件緩和し再公募へ 住吉市民病院跡地の誘致(2014年7月29日産経ニュース)

 老朽化のため閉院する大阪市立住吉市民病院(住之江区)跡地に誘致する民間病院の運営事業者に公募で選ばれた医療法人が病院新設を辞退したことについて、橋下徹市長は29日、「市病院局などに任せていたが、公募条件のハードルが高すぎた。大失敗だ」と述べ、条件を緩和して再公募する方針を明らかにした。

 公募では「医師5人以上の小児科体制」が決まっていたが、協定書締結に向けた医療法人との協議の段階で市側が「開院当初からの整備」を要請。法人側が「段階的な整備」を主張して双方が譲らず、法人が28日に辞退を申し出ていた。

 協議決裂の背景には全国的に問題視されている「小児科医不足」があるとされ、橋下市長は「(市の条件は)あまりに画一的、形式的でハードルが高すぎだ」と分析。8月中に条件を練り直して9月に再公募し、年内の事業者決定を目指す意向を表明した。

 この病院誘致が条件になっている住吉区内への「住吉母子医療センター」(仮称)の新設計画については「(予定されている平成28年4月の開業に)何とか間に合うと思う」と述べた。

まあ催促無しのあるとき払いでは公的な契約としてどうかですから、それなりに条件を付けて公募するのはもちろん自治体としては当然なのでしょうけれども、小児科医5人と言う数字にそこまでこだわるほどの根拠があったのかどうかと言えば、単純に「今までと何も変わりません」と言いたいだけちゃうんかそれ!と言う印象が拭えないところですよね。
そもそもこの住吉市民病院問題に関しては以前にも取り上げたことがありますけれども、大阪で数ある府立病院と市立病院とを統廃合しようと言う流れの中で当初単純に建て替えを計画していた住吉市民病院が近隣の府立病院に統合する話になった、ところが市民病院の跡地に「現行と同等のサービス」提供を謳う民間病院を開院させると言うのですから整理統合どころか、新病院と併せてむしろ大幅な拡大路線と言えそうですよね。
以前にも書いた通りこの市民病院建て替え計画が出た当初から「まずは黒字化させると言う目標に沿って需要を算出する」と言う本末転倒の事前計画が打ち出されていたようで、もちろん最初から赤字を予定しますでは降りる予算も降りないのでしょうが、今の時代に非効率な公立病院が大勢のスタッフを囲い込むと言うことが許されるのかどうかです。
建て替えを断念した後の新計画でも府立病院の方は市民病院からもリソースを統合し拡張する、その上で全く同等のサービスを維持した民間病院を新たに建てると言うのではさすがに人材をどこから調達するのか?と言う話で、それは橋下市長ならずとも市当局の計画には一言あってしかるべきと考えざるを得ないでしょう。

地域の病院で小児科の存続が問題になることは昨今決して珍しいことではなく、以前には埼玉で小児科の連鎖的崩壊なども取り上げたことがありますが、一つには全国的に見ても人材が限られているのですからどこでもかしこでも「住民サービス維持・向上」を合い言葉に(と言うより、下手すると選挙対策で)人材を片っ端から囲い込まれてはたまらないわけです。
特に地方公立病院においては地域内の需要分布と人材がどれだけ確保出来るかを総合的に勘案して計画を立てるべきなのでしょうが、ともすればあちらこちらにいい顔をしようと無計画に要望だけを積み上げたような計画が立てられがちで、医師の意向を無視してでも計画的人員配置を行うと言うのであればせめてまともな計画を立てろですよね。
そして大阪市内のようにもともと医療リソースが潤沢にある地域で公的病院が無闇矢鱈と規模拡大するのもどうなのかで、昨今では都市部の公立病院を廃止すると言うケースも出てきていますけれども、多くの場合赤字垂れ流しの公立病院を無理矢理維持するよりは地域の民間病院の人材確保に補助金でも出した方がよほど効率的に医療が回ると言うこともあるでしょう。
いずれにしても唯一応募があった法人の計画にもダメ出しをしてしまった以上、市側としても公募要件そのものの抜本的見直しが必要になってくるはずですが、その結果そもそもダメ出しした今回の案と似たような「現実的な」ものになってしまった日には、一体市当局は税金を使って何をやっているんだとこれまた橋下市長ならずとも言いたくなる人も増えてきそうです。

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コメント

近所に産科小児科を集約したセンターが出来るのに小児科5人いります?
そんなに人がいるならセンターにもっと増やしたほうがいいような。

投稿: ぽん太 | 2014年7月31日 (木) 08時46分

あたらしく手を挙げてくれるとこが出てきたらいいですね(棒

投稿: | 2014年7月31日 (木) 09時11分

むしろどのような新条件を設定するのが妥当なのかですが、現地ではすぐ近所に内科外科の総合病院があるようなので、単独ではなく近隣医療機関と連携して医療供給体制を整備すると言う方針を徹底するべきでしょうね。
医師の計画的配置と言うことに関しては今も議論の別れるところですが、地域内でのバランスは無視するべきものではないし、設置母体の違いを乗り越えて考えるべきことだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年7月31日 (木) 10時59分

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