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2014年7月 4日 (金)

利己的行動と利他的行動

本日の本題に入る前に、先日の大阪市のいじめ学童隔離政策の話に関連してご紹介いただきました、三河の小学校でいじめられる級友を見かねた女児が「いじめるなわ私をいじめろ!」と名乗り出たところ「いじめてもいいんだって(笑」と担任の目の前で殴る蹴るの暴行を受けたと言うトンデモ事件がありましたが、当然ながら世間的にも極めて大きな反響を呼んでいるようです。

いじめかばった小3女児に称賛の声 「勇気をほめるべきだ」「めちゃくちゃかっこいい」…(2014年7月2日J-CASTニュース)

 いじめられている同級生を見かねて、「いじめるなら私をいじめて」とかばった女子児童が暴行を受け、全治1週間のけがを負っていたとわかった。
   自ら身代わりを申し出た女児の正義感ある行動に、インターネット上では「勇気をほめるべきだ」などと称賛の声が上がっている。

「私を代わりにいじめて」と申し出る

   被害を受けたのは、愛知県豊橋市立の小学校に通う、小学3年生の女児(8)。豊橋市教育委員会によると、被害児童は2014年6月3日午後、同級生3人から乱暴行為を受け、全治1週間のけがを負った。気付いた男性担任(23)はその場で暴行を止め、事実確認と指導を行っている。
   きっかけは、前日の被害児童の発言だった。別の女子児童が4月から悪口などの嫌がらせを受けていたため、被害児童は2日の放課後、児童クラブ(学童保育)で「いじめるなら私を代わりにいじめて」とかばった。それを伝え聞いた加害児童が、暴行に及んだという。
   担任は4日、学年主任に相談。校長へ伝え、学校は複数人による授業を始めるなどの対応を始めた。また学校は10日、加害児童、被害児童双方の保護者に、騒動の概要と今後の対応について説明したが、被害児童の保護者は改めて謝罪の場を設定するよう求めた。
   26日に再度謝罪の場が設けられ、27日に被害児童は保護者同伴で登校。週が明けた30日からは、以前と同じように登校している。
   報道によると、担任は4月に採用されたばかりの新任教諭で、学校側の支援も十分ではなかったため、暴行をからかいや遊びだと思っていた。いじめをかばった理由について被害児童は、「いじめを見るのが嫌だった」と話しているという。

尾木ママ「その勇気をほめたたえたのでしょうか!?」

   ツイッター上では担任や学校批判もあるが、目立つのが女児を称賛するものだ。
    「かばった女子児童を尊敬する」
    「この女の子の勇気をほめるべき!!」
    「頑張ってかばったこの子 めちゃくちゃかっこいいわ」
   法政大学教授の尾木直樹さんもブログで、
    「その勇気を誉めたたえたのでしょうか!?」
    「いじめ起きない学校づくり児童に約束したのでしょうか!?」
    「いじめるのなら私をいじめて…と叫んだ小学三年生の女の子 学校は絶対に守らなければなりません!」
と熱弁。13年施行の「いじめ防止対策推進法」を引き合いにだし、「なんていう無責任な学校! 今は担任任せにしない 校内の対策委員会で動くのが原則!」と学校の対応についても非難している。

記事にもありますように新任教師が担当していた教室内での出来事で、これ以前からコントロール不良な状態であったことを把握していたにも関わらず学校組織として十分な対応が出来ていなかったようですけれども、ちょうど人気漫画「3月のライオン」で昨年頃に同様の問題を取り上げ大きな反響を呼んだことがあるように、この種の問題についてはやはり誰しも我が事として感じてしまうようです。
ただここで注目していただきたいのは、いじめをかばって被害を受けた件の女児が「いじめを見るのが嫌だった」と話していると言う点で、そもそも彼女達の交友関係は明らかではないのですがやはり他人への共感だけではなく、自分自身の価値観に照らし合わせてどうかと言うことが人間の行動を決定付ける大きな要因であるのかなと言う気がします。
その意味で一見すると利他的な行動も突き詰めてみれば利己的な行動であると言う考え方にも一理あるかとも思うのですが、ともかくにも人間の行動心理というものは単純ならざるものであって、一体何故そんなことを?と思うような行動の背景にもそれなりに深い意味があるのかも知れないと改めて感じさせられるのがこちらの記事です。

立場を死守するため仕事を教えないベテラン(2014年7月3日日経メディカル)

トラブルの経緯
 今回紹介するのは、整形外科の無床診療所で起こった職員トラブルだ。同クリニックの事務は、常勤3人、パート2人の体制。事務主任が退職したため、勤務5年目の常勤Aさんに、「あなたが中心となって頑張ってほしい」とお願いした。Aさんは30歳代前半で、前職を含めると8年の経験がある。感情的になりやすいところもあるが、仕事はできる
 退職者の補充のため常勤職員を募集し、Bさん(30歳代後半、経験4年)を採用。能力を見極めるため、3カ月の試用期間中に基本業務を経験させるようにAさんに指示した。
 まずは受付からスタート。2週間後、Bさんに「仕事はどうですか?」と聞いてみると「慣れてきました」とのこと。だが、Aさんに「Bさんの仕事ぶりは?」と聞いてみると「まあまあです。覚えるのに時間がかかります」と評価が低い。他の職員は特に問題ないと評価しており、Aさんだけが低評価を下している印象だった。

質問しても無視、院内の雰囲気が悪化
 1カ月が経過しても、まだBさんは受付業務しか任されてない。本人に状況を聞いたところ、「受付はできるようになりましたが、他はまだです」とのこと。
 そこで、Aさんに「次の業務を教えたらどうだろう?」と話すと「レジミスや指示を守らないこともあるので、まだ無理です」と言う。「とはいっても、当初よりミスは少ないでしょ?」「そうですが……」「受付だけを任せるならパートで十分。常勤なんだからレセコン入力を教えてください」。Aさんは不満そうな顔で「分かりました」と返事をした。
 仕事を教えない理由が分からないので、弊社から医事担当の女性スタッフをサポートで派遣することにした。1週間後、彼女から驚くような報告があった。「Bさんが質問してもAさんが無視しています。教えないこともあります」「雰囲気が悪くてBさんは辞めるかもしれません。周りの職員もAさんの顔色をうかがいながら仕事しています」「業務分担は全くできていません。Aさんが1人で抱えています。皆逆らえません」。ここまでひどい状況になっていたとは予想外だった。
 院長も、「Aさんは仕事ができる人なのに……。意外だね」と信じられない様子。再度Aさんを呼んで、「Bさんにもっと計画的に業務を教えてほしい」「ローテーションで業務分担を図るように」と、今度は手順を示しながら優しく指示した。
 それから2週間。耳に入るのは「Bさんは教えてもミスがあり覚えが悪い」と言うAさんの愚痴と、「Aさんは気分次第で仕事がやりにくい」と言う周り職員の話ばかり。Aさんがどんどん浮いてきていることは明らかだった。

「辞めてもらうのも致し方なし」と腹をくくる
 たまたま昼休みに事務室に行くと、Aさんが「大変だったら辞めた方がいいよ」とBさんに話しているところに出くわした。私の顔を見ると、Aさんはさっと離れて他の仕事を始めた。
 院長の前では一生懸命仕事をしているが、自分の立場が脅かされると思う人や気に入らない人はプレッシャーをかけ追い出そうとする。このまま放置すれば、Aさんがいなければ成り立たない職場になる。注意してもAさんの態度が改まらなければ、辞めてもらうのも致し方ないと考えるようになった。これは、院長も同じ考えだった。
 その後も、Aさんには同様の指導を繰り返したが、改まる気配が見られない。そこである日、私はAさんとの個人面談の場を設定した。
 面談の場で私が「仕事は教えていますか」と聞くと、「教えています」と言うので、「そうは聞いてないけど」とはっきり伝えた。次に、「ローテーションで業務分担を図る件はどうなった?」と尋ねてみたら、「まだできていません」とのこと。「忙しいからできていないんです。余裕ありません」と不服そうな顔をした。
 反省の態度が見られないため、私は、「数回同じ話をしているのだから、忙しいだけでは理由にならない。業務分担しないと回らなくなります。今のままでは、皆ついていかない。もう少し考えて仕事してください」と厳しい表情で通告した。そうしたところAさんは、「そのように思われているなら辞めます」と怒った顔で答えた。院長からは対応を一任されていたので、私は「分かりました」と認め、「辞める時期は相談しましょう」と言って面接を終えた
 Aさんは、院長が引き留めると思っていたようだが、院長からも慰留されず、「それなら明日にも辞めたい」と言い出したという。院長が「引き継ぎをすべきではないか」と話したところ、Aさんは「引き継ぎはするけど、自分が勤務する日は、あのコンサルタント(筆者のこと)を出勤させないでください」と条件を出したとのことだ。これは、もちろん受け入れた。悪役に徹するのも、こちらの仕事である。
(略)

様々な意味でなかなか教訓的な事例だと思うのですが、もともと一職員としてはそれなりに仕事も出来るベテランだった個人が上司の退職で責任者としての立場に立った、そして新規のスタッフ教育を任されたが何故かうまくいかないどころか、意図的にスタッフ教育を阻害するような行動すらしていたため結局辞めさせられたと言うのが基本的な流れでしょうか。
Aさん自身仕事を抱え込んで忙しいと言うのも確かなのでしょうが、一方で周りのスタッフにうまく仕事を回すことも出来ていなかったようですから、単純に管理責任者としての能力が不足していたと言うこともあるのかも知れませんけれども、記事中でも匂わされているようにこうした事態を招いたのは多くはAさんの意図的な行動の結果であるとも読み取れますよね。
その理由は幾らでも想像出来るのですが、一つには院長が当然に自分を慰留すると思い込んでいたらしいことからも伺えるようにAさんとしては自分が職場において必要な人材であると認識もしていたし、その立場を強化することが今後の地位安泰のためにも必要なことであると考えていた、だからこそ職場業務を自分がいなければ成り立たないものにしようと画策していたと言うことも事実あるのかも知れません。
どこの職場にもこうしたベテランスタッフが職場の実権を牛耳っていると言うことは多かれ少なかれあって、それによって職場の効率が上がっていると言うのであればまだしも正当化できるのでしょうが、今回のように明らかに職場の効率低下を招き再生産性を阻害していると言うのであればこれはいわゆる腐ったミカンであって、早めに取り除かなければ大変なことになってしまうと言う判断が為されたと言うわけですね。
もちろんこの場合Aさんの個性や人格も最も大きな要因となっていたことは間違いなさそうですが、人間である以上自分の裁量によって幾らでも自分に有利な状況に持って行けると言う環境に置かれた場合にその誘惑に逆らえるかどうかはなかなか難しい問題であって、事実毎日のようにこうした甘いささやきに負けてしまった人々の姿が報道されるところから見ても人間の本性の一面を示している事例とも言えそうです。

こうした事例を別な側面から見てみますと、例えば医師という職業は当然ながら高度専門職として長い教育期間を必要とするのですけれども、その教育と言うことを誰がどのように行うのか、教える側のメリットは何かと言うことを考えると難しい問題があって、実際に現行のローテートによる臨床研修制度が始まってから研修が充実した施設もある一方で、ただ見学するだけの実のないお客様研修で終わっている施設もあると言います。
昔のように医局に所属した上で関連病院に出て学ぶと言うシステムであれば上司は同門の先輩であり、後輩を早く鍛え上げて戦力化出来ればそれだけ自分の仕事を任せて楽が出来ると言うモチベーションがあったのですから話は理解しやすいのですが、今のように長くても数ヶ月たてば他科に行ってしまい二度と関わることもないだろう相手に、考えてみると人間どうやったら真剣な教育を施せるかと疑問も湧きますよね。
冒頭のように初等教育において問題が多数発生している一因として、教師の側には自ら苦労を買って出てでもきちんとした教育を行うことでさしたるメリットがない以上、何かと事なかれ主義でただ子供達を次の学年に送り出すことだけを考えてしまうのも仕方がないと言う考え方もあって、確かに素晴らしい教育を行った結果その子が何十年かして教師になり後を継いでくれる確率と言うのは決して大きなものではないわけです。
臨床研修の場合はネットや口コミによる全国的な評価によって研修医の集まりにも影響が出るはずですから、少なくとも病院という組織にとってはそれなりのモチベーションになるはずですが、後々までその病院に残る意志もなく研修が終わればさっさと他所に行ってしまうことが判っている若手に現場の指導医が教えたところでまあ、給料が上がるわけでも出世に影響するわけでもなく仕事が増えるだけな場合がほとんどですよね。
金だとか地位だとかの見返りを期待して行う行為など邪道だと言う批判は世間一般に根強くありますが、やはり教育という行為自体が好きだという一部の先生を除いて現場臨床医の大部分は教育ではなく別なものを目的にして仕事をしているわけで、そう考えると利他的な行為を利己的な行為に転換するためにそれなりのインセンティブでもなければ、本当に真剣で質の高い教育は難しいのかも知れません。

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コメント

あきらかな暴行事件を起こした加害者達にどんなペナルティがあるかですね。
大人なら刑事事件なのだから当然放校処分なども検討すべきなのでしょうけど。
社会的に厳罰化を求める風潮も高まっている中ですしね。

投稿: ぽん太 | 2014年7月 4日 (金) 09時06分

「身代わりを申し出た女児への称賛」ていうのが、今の日本人のレベルの低さを現しているんですよね。
これが20代30代なら感動しますが。
小三あたりなら、半分夢の世界?お話の主人公への憧れとかの可能性大じゃないですか。
女児っていうとこ(男児じゃまずしない)からも、やはり利己的な行動であり、ここまで実行する子なんて、
たぶん後10年もすると恐ろしい娘になってそう。

投稿: hisa | 2014年7月 4日 (金) 09時10分

仕事放り出して逃亡したお局Aさんはこれからどうやって食ってくのかw

投稿: aaa | 2014年7月 4日 (金) 09時34分

偽善だろうが利己的だろうが、見て見ぬふりをする子よりも数段マシかとも思うが、
ただ正義を振りかざせば勝てると信じてるとすれば、今後苦労するだろうし周囲も大変ですよね

男の子なら、まずは暴力に勝てる腕力を持たないと助けられないと悟り・・・って、熱血ストーリーを思い描いてしまうけど
そうすると大人が手を出していじめた子を処罰なんて、余計なお世話っちゅうことになりますかw

投稿: | 2014年7月 4日 (金) 09時47分

そこで仮面ティーチャーですよ

投稿: | 2014年7月 4日 (金) 10時00分

文明社会における私的制裁の禁止と言う約束事の背景には、ルールを破った者に対しては公的にきっちり責任を取らせると言う前提があって初めて成り立つことで、その前提をないがしろにすると社会が動揺します。
ただいずれにしてもこの場合何よりも被害者でもある学童の保護が最優先の課題であることは言うまでもないことで、その文脈の上でも加害者側に対するしかるべき処置と言うものが議論されるべきかなとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年7月 4日 (金) 10時47分

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