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2014年7月18日 (金)

脱法ドラッグよりはマシ?

このところいわゆる脱法ドラッグと言われるものが各地ではびこっていて、個人で使用してラリっているだけならまだしも最近では服用後に運転し悲惨な人身事故を起こすと言うケースが相次いでいることから、早期の対策が求められるに至っています。
いわゆる麻薬の類と類似の構造、作用を持ちながら法規制の対象外と言うことで、世間的には合法ドラッグなどと呼ばれる一方で厚労省では違法ドラッグと公式に呼称している点がなかなか迷わしいのですが、現状では薬物そのものを取り締まることが出来ず無承認・無許可医薬品の販売としていわば別件逮捕するしかないわけですね。
当然ながらこうした状況で国としても早急に対策を求められているわけですが、現状と対策を示すこちらの記事を紹介してみましょう。

危険な「脱法ドラッグ」なぜ販売されているのか――「薬物規制」の現状と課題(2014年7月15日弁護士ドットコム)

「脱法ドラッグ」が原因とみられる交通事故が相次ぎ、あらためて、その危険性にスポットライトが当たっている。政府も7月8日に関係閣僚会議を開いて、対策に乗り出したという。
背景には、脱法ドラッグのまん延があるようだ。厚生労働省の研究班が今年2月に発表したデータによると、脱法ドラッグを使ったことがある人は、全国におよそ40万人もいると推計されている。
「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」といった名前からは、違法なドラッグと比べれば「まし」なのではないかという印象も受ける。しかし、国立精神・神経医療研究センターの和田清・薬物依存研究部長は、「脱法ドラッグは無限に近いほど種類があり、使用すれば何が起きるかわからない」「種類によっては、覚せい剤などの違法薬物よりも危険だ」と指摘する。
なぜこうした薬物は、「脱法ドラッグ」というあいまいな呼び名で、世に出回っているのだろうか。脱法ドラッグ問題にくわしい中村勉弁護士に聞いた。

●「脱法ドラッグ」に代わる呼び名を募集中

「脱法ドラッグは、以前から問題となっていましたが、特に2011年上半期から乱用され始めました。最近になって、池袋の暴走事件など、脱法ドラッグを吸引しての交通事故・事件が連続し、大きな社会問題となっています」
(略)
それでは、こうした危険な薬物が、どうしていまも売られているのだろうか?

「『脱法ドラッグ』への規制は、しだいに厳しくなってきてはいます。
2013年3月には、一定の物質を含んだ薬品を一括して指定する『包括指定』が行われ、現在では1300種以上の『指定薬物』が規制対象となっています。
さらに、薬事法の改正によって2014年4月1日からは、指定薬物の輸入、製造、授与、販売などに加え、それまで摘発できなかった『使用』や『所持』も摘発対象にされました。
これを受けて警察でも、指定薬物を所持していたり、使用したという事案については、原則逮捕の方針で摘発に当たっています」
中村弁護士はこのように話していた。

ただ、脱法ドラッグは、次々と新たなものが生み出されるため規制が追いつかなかったり、鑑賞用として売られているため摘発がしにくいといった難点が指摘されている。現在、厚労省や警察などでは、販売業者の取り締まりを強化する方法が議論されているようだ。効果的な取り組みに期待したい。

脱法ドラッグ:「指定薬物」スピード決定…池袋暴走受け(2014年07月15日毎日新聞)

 JR池袋駅(東京都豊島区)近くで乗用車が暴走し男女8人が死傷した事件を受け、厚生労働省は15日、逮捕された男が直前に吸っていた脱法ドラッグの成分を特例で専門家の審議など通常の手続きを省略し、「指定薬物」に緊急指定した。25日から販売や所持が禁止される。同省が薬事法に規定する特例措置を用いて緊急指定するのは初めて。事件発生から3週間でのスピード指定で、脱法ドラッグが原因とみられる事故がその後も相次ぐ状況に対し、強い姿勢を見せた形だ。【桐野耕一】

 ◇初の特例、厳格化

 田村憲久厚労相が15日の閣議後の記者会見で明らかにした。同省は指定薬物に定められる前の脱法ドラッグも中枢神経に有害な影響を与える「無承認医薬品」として取り締まる方針を固めており、田村厚労相は「有害性が以前に比べ強くなりつつある。今後も指定の特例措置を含め、あらゆる法的手段を用いて脱法ドラッグを厳しく取り締まる」と述べた。

 厚労省によると、脱法ドラッグの新たな成分を薬事法上の指定薬物に定める場合、覚醒剤や麻薬に似た幻覚作用のある有害成分を特定した上で、専門家会議で指定薬物に定めるべきかどうかを審議。会議で指定薬物にすると判断した後も30日以上の意見公募手続き(パブリックコメント)の期間を設けるため、通常は手続き全体で最大6カ月かかるという。

 池袋の事件では、男が吸引した脱法ドラッグの一種の脱法ハーブから指定薬物は検出されず、警視庁が捜査の中で幻覚作用があるとみられる二つの物質を特定。厚労省と東京都の研究所で有害性が確認された。同省は事件の社会的影響と再発防止の観点から、通常の手続きを省略して緊急に指定薬物に定める必要があると判断した。

 指定薬物にする省令は25日施行され、この物質を含む脱法ドラッグを販売したり所持したりすると懲役刑や罰金が科せられる。

 脱法ドラッグを巡っては警視庁が10日、全国の警察本部に先駆け「脱法ドラッグ総合対策推進本部」を設置。東京都と合同で都内の脱法ドラッグの販売店44店舗を立ち入り調査した。東京都は警察官だけでも独自に立ち入り調査できるよう、警視庁の要望を受け条例を改正する方針。

記事にもありますけれども、従来であればこの薬剤にはこのような成分が含まれこれこれの作用がある、それは人体に有害であるから規制すべきと言う手順を経て薬物規制が行われていた、しかしそれでは雨後の竹の子の如く新たな薬物が登場する脱法ドラッグには到底対応できないし、そもそも薬品として売っていなかった場合には取り締まり対象外であったわけです。
この辺りを実際の運用がしやすいようにどんどん改訂していっているのが現状だと言うことで、もちろん現場での取り締まりの状況を考えると必要な措置ではあるのですけれども、「指定薬物に定められる前の脱法ドラッグも中枢神経に有害な影響を与える「無承認医薬品」として取り締まる方針」などと言われると、何やら法の不遡及原則に反するのではないか?などとも感じてしまいますね。
基本的には有害物質○○が含まれていれば違法と言ったやり方が納得はしやすいのですが、医薬品の世界でまま見られるように化学式の一部だけを変えて別の物質だが同じような作用がある成分を作り出すことなど幾らでも可能な時代ですし、世界中を見渡してみればどこに思いがけない作用を示す未知の物質が転がっているか誰にも判らないだけに非常に難しい問題だと思います。
ただ現状で問題となっているのはラリったことそのものではなくその結果事故など他人に迷惑をかける行為を起こすことであり、また最近では各種疾患の管理不十分によって事故を起こした場合も責任を問われるようになっていますから、薬物その他原因の如何を問わず正常な判断力を喪失した状態で社会的トラブルを起こせば取り締まると言う方向で考えていった方が良いのかも知れません。
ともかくも脱法ドラッグと法的規制のいたちごっこは今後もそう簡単には終わらないし、市民の側にしても何が規制対象か判らず知らないうちに法を犯してしまったと言うことになる可能性が高まるのは愉快なことではありませんけれども、そんな中で一部の人々の間でこんな話さえ出ていると言います。

取り締まりもイタチごっこ……脱法ドラッグによる事故多発で、大麻解禁への動きが活発化!?- 日刊サイゾー(2014年7月15日19時00分)

 脱法ドラッグを原因とする自動車事故が全国で相次いでいる。6月、池袋で8人が死傷した事故を皮切りに、7月8日には仙台市と豊橋市で、12日には大阪府で2件、さらに同15日には新宿区で、脱法ドラッグを使用した運転者による事故が発生している。

 こうした事態を受け、厚生労働省は17日、池袋の事件で運転手の男が使用していた脱法ドラッグを、薬事法の規制薬物として緊急指定するなど、脱法ドラッグ対策を強化している。
(略)
 そんな中、大手新聞社の政治部記者は話す。

「世界的に医療大麻の解禁や、大麻取り締まりの緩和が進む中、日本でも大麻の効果と害について、超党派の国会議員や有識者を交えた意見交換はこれまでも行われてきた。もちろん、大麻解禁を積極的に目指すものではないが、『大麻をかたくなに禁止して、それより危険な脱法ドラッグがはびこるくらいなら、大麻を解禁したほうがいい』という意見も上がっており、近い将来、大麻解禁に向けた動きが、国会の場で活発化する可能性もある」

 医療大麻は、すでに世界21カ国とアメリカの23州で解禁されている。また、米ワシントン州では8日、コロラド州に続いて、成人への大麻の販売が合法化され、昨年12月には、ウルグアイで大麻の栽培から消費までが登録制で認められるなど、嗜好目的での大麻使用も解禁されつつある。

 一方、日本の大麻取締法では、単純所持でも「5年以下の懲役」という、先進国では極端に重い罰則が設けられている。大麻に関しては、「ダメ。ゼッタイ。」を見直す時期に来ているのだろうか?

脱法ドラッグが蔓延してるから大麻解禁って何じゃそりゃ?と思う人もいるかと思いますが、要するに何が起こるか判らない脱法ドラッグをこれ以上蔓延させるくらいなら、長年使用され社会的にも対処法が確立している古典的なドラッグに使用者を誘導した方が対策は立てやすいと言うことで、ちょうどアメリカなどで大麻合法化が推進されているのと同じ文脈で理解出来そうな話ですよね。
この辺りは以前にも書いたように煙草や酒などと比べて麻薬類のリスクが(種類によっては、ですが)決して高いものではないと言う考え方も根底にあって、健康被害が一定見込める嗜好品をどこまで規制すべきかは国毎にも判断が分かれているところですが、基本的にドラッグを使うような方々と言うのは気持ちよくなれるならば煙草飲みや酒飲みほどには薬の種類にはこだわらないのではないかと言う印象があります。
そして麻薬について必ずついて回る非合法取引による不透明な金銭の流れという問題も、例えば既存製薬メーカーが妥当な価格で安定供給し現状のOTC薬程度の管理を行うなら違法組織に流れる分もさして多くはないだろうと予想されますから、様々な点で違法な行為を減少させ全般として社会的リスクを軽減することが可能であると言う予測も成り立つわけですよね。

この辺りの「禁止した場合と管理下に解禁した場合のどちらが社会的リスクを軽減するか?」と言う命題は別にドラッグ類に限らず成立する話で、有名なところではかつての禁酒法が今や完全に悪法として評価が定着していると言う事例もありますし、現在進行形で議論されているところではいわゆる児童ポルノの類は規制を強化すべきなのかどうかと言うことが、表現の自由とも絡めて問題化しています。
禁止派の意見として一つには実写であれば当然誰か小児が歪んだ性愛の犠牲になると言うことがありこの点は規制反対派も許容しているのですが、コミックなど現実に誰かが被害を受けないものに対する規制が必要なのかどうかが議論が別れているところで、規制反対派の大きな論拠として北欧で児童ポルノ解禁が実際の小児性被害を増加させないと言う報告書が出されたと言う点がありますよね。
結局のところ人間の行動原理などと言うものはやってみなければ判らないと言う部分が多くて、その点でアメリカの大麻合法化の成り行きを日本の立法・司法関係者も注目しているのではないかと思うのですが、現状では大多数の日本人一般の感覚として「次から次へと現れる脱法ドラッグの取り締まりは大変だからいっそ大麻を解禁してみよう」と言う論法は、やや支持を得るに当たっての説得力が弱いのかなと言う気もします。

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コメント

>>大麻を解禁したほうがいい

どこの選挙区の議員?

投稿: | 2014年7月18日 (金) 09時14分

ナマポには大麻禁止が大前提だなw

投稿: aaa | 2014年7月18日 (金) 10時06分

一般論として規制を強化するほど消費が地下に潜在化しやすいと言う問題もありますので、まずは可能な限り表で管理できるよう誘導すると言う方針もありかなと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年7月18日 (金) 11時05分

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