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2014年7月22日 (火)

日本では超過勤務が当たり前?

先日以来大きな反響を呼んでいるこちらのニュースをご存知でしょうか。

死亡しても会社の責任問わず フィリピン人採用で誓約書(2014年7月13日47ニュース)

 関西地域の介護会社「寿寿」(大阪府東大阪市)が、フィリピン人女性を介護職員として採用する際に、本人が死亡しても会社の責任は問わず、「永久に権利放棄する」との誓約書を提出させていたことが12日、共同通信の取材で分かった。

 フィリピン人の女性職員からは「労働条件が厳しい」との苦情が出ており、宿直勤務を月間13回させた書類も残っている。職員が死亡した場合に会社を免責する誓約書に署名させていた理由や、休日取得などの実態について、厚生労働省が調査に乗り出した。

介護会社、外国人から強制天引き(2014年7月14日デイリー)

 外国人職員に死亡時の免責誓約書を提出させていた介護会社「寿寿」(大阪府東大阪市)が、フィリピン人職員から、法令に違反した積立金を毎月の給与から天引きしていたことが13日、分かった。

 これまでにフィリピン人職員約30人を雇用しており、積立金は給与などとは別の口座で会社が管理していた。職員採用の契約書や覚書によると、フィリピン人職員に貸し付けた日本への渡航費などの返済が焦げ付いた場合に備え、天引きしていたとみられる。

 厚生労働省の大阪労働局は、労働基準法で禁じられた強制的な預貯金に当たるとして、フィリピン人職員や元職員らへの返金を会社に命じた。

いったいいつの時代の話かと言うもので、そもそも死亡しても会社の責任を問わないと念書を書かせるなどどんなブラック企業かと言う話なんですが、興味深いのが当該会社の経営理念として「社会的に弱い立場の方々が泣かされる事の無い社会づくりを念頭に」云々と記載されていることで、なるほど同社の考える理想的社会とはどのようなものか判る気がします。
当然ながら司法畑の見解によればこうした公序良俗に反する契約はそもそも無効であると言うことなのですが、唯一の救いと言っていいのかどうか何とも言い難いのはこれが別に外国人差別だと言うわけでもなく日本人に対しても同様に使い捨てが横行していると言うことで、ネット上では自虐的にこれぞクールジャパンの実態だと言う声も上がっているようです。
先日は夫が自殺したのは職場での過労が原因だと言う妻の訴えが二審で退けられると言う逆転敗訴の判決が出ていましたが、今後は残業代もゼロにしようと言っている折に労働者の心身の健康をどう担保していくのかは非常に重要で、先日は日本での「常識」を海外にまで持ち込んで大失敗した事例としてこんな記事が出ていましたが、現地の状況を示す冒頭部分を引用させていただきましょう。

日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上)残業ご法度なシンガポールで面食らった僕 周囲と衝突して学んだ「仕事圧縮」のオキテ(2014年7月16日ダイヤモンドオンライン)より抜粋

(略)
 日本では先日「ホワイトカラーエグゼンプション」の対象者を「年収1000万円以上」と決めたが、シンガポールでは管理職・専門職だけでなく、事務職、新卒社会人、非正規社員(時給制以外の非正規社員)もホワイトカラーエグゼンプションに近い労働形式にある。

 つまり、シンガポールの多くの職が「残業代ゼロ」の対象なのだ。シンガポール以外の他のアジア諸国においても、管理職以外の専門職・事務職ではかなりの割合でホワイトカラーエグゼンプションを導入している。

 シンガポールの中小・零細企業では、十分な従業員がおらず、1日8時間以上の労働を強いられる会社もあるようだが、その制裁は「手厳しい」の一言に尽きる。企業は、ある一定時間以上の労働を社員に強いると、人材開発省(MOM/Ministry of Manpower)からクレームが入り、営業ライセンスを剥奪されてしまうのだ。こうしてシンガポールでは、過度の長時間労働は「仕組み上」(ここが大事!)できないようになっている。

 もちろん、長時間労働が必要な職種はある。コンサルティング会社、会計事務所、法律事務所などのプロフェッショナル・ファームや医療関係機関などだ。しかし、このような業界はもともと他業界よりも給与水準が高く、また昇進も早い傾向があるので、ワーカーたちも長時間労働を納得済みで入社、勤務しているため問題はないようだ。

 また、スタートアップのベンチャー企業も長時間労働職場として知られるが、株式上場時や企業売却時に多額の収入が入る“ハイリスク・ハイリターン”な仕事であるため、こちらも特別に長時間労働には寛容なようだ。こうして見て来ると、やはりシンガポールでは、「サービス残業は基本、ない」と言えるだろう。
(略)

かなりの長文記事ながら労働観の差異が伺われて興味深いのでご一読いただければと思いますが、要するに基本的に部下に残業させるような上司は無能であり、そんな上司の下で働くと言うことはあり得ないと言う社会常識が制度上も担保されているからこそ残業代ゼロが成立していると言えそうですよね。
日本の場合どのような制度設計が妥当なのかと言えば恐らく全くこれと同様なシステムがベストと言うわけではないのでしょうが、基本的に残業は禁止すると言う大前提がなければ残業代ゼロだからと幾らでも残業させてしまうと言う感覚が日本人上司にある以上、やはり制度的な歯止めなりペナルティなりが必須になるのではないかと言う気がします。
この点でまさに歯止めなき業務量増加がどのような結果を招くかと言うことを示した一つの典型例が医療崩壊を起こした某業界ですけれども、新臨床研修制度によって研修医を安い労働力として酷使せず研修の実を上げさせるように制度設計されたはずが、研修開始後2ヶ月で1/4が抑欝症状を呈していると言う調査結果もあると言いますから困ったものです。
そしてこの研修医の例においても典型的に見られるのが上司を始めとする周囲の無理解で、周囲による早期発見・早期介入どころか何かと言えば「俺の若い頃は」式の叱責ばかりではそれは誰も相談しようと言う気になりませんから、ここでも意識改革がおいそれと進まないからこそ強制力を持った制度が必要であると言えるのでしょうね。

最近の若い世代はもはやバブル以前の頃を知っている世代のような強い上昇志向はなく、身の丈にあったそこそこの暮らしが出来れば十分だと考えていると言う声もあって、確かに大金持ちになるために手段を選ばず努力すると言ったぎらぎらした野心に燃えるタイプは少数派なのかも知れませんが、ではどんな扱いをされても大人しく甘んじているかと言えばむしろ逆である気がします。
日本とアメリカの労働感を語る上で機会の平等と結果の平等などと言う言葉があって、日本が長く総中流社会などと言われてきたのも機会の平等よりも結果の平等を求める傾向が強かったからだと言う意見は根強くあったわけですが、労働の国際化が叫ばれ結果の平等が半ば否定されつつある時代にあっても、やはり最低限これくらいはと言う部分においては担保を求めたがるのが日本人の特質なのでしょうか。
その最低限これくらいはと言う内容についてもちろん金銭的報酬と言うこともありますが、以前よりも労働の内容と言うことも厳しく問われるようになったのが今の時代で、それは21世紀に入ってすでに長いのに今更野麦峠や蟹工船の感覚では通用しないのは当然ですけれども、年を追う毎に強化改善が進んできた労働者の権利意識はすでに残業有りが大前提と言う旧来の感覚には異を唱えているのだと思います。
その点で研修医が9時5時で帰ることに対してすばらしい労働管理を実践していると称讚する上司は未だに稀だと思いますが、では何故おもしろくなく感じるのかと言えばやはり自分がもっと長時間働いていると言う現実があるからで、特に本来労働を自己管理する立場にあるはずの管理職が慢性的に過労状態にあると言うのであれば、やはりこれは何かがおかしいんじゃないかと常識をアップデートする必要があるのでしょうね。

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コメント

日本人の時間当たりの生産性って決して高くないって聞いたことがあります。
残業残業で働いているように見えてもぜんぜん仕事進んでない人って確かにいますから。
がんばった人はそれなりに評価されるうまい制度ってないんですかね?

投稿: ぽん太 | 2014年7月22日 (火) 09時04分

>プロフィール
>代表者名 児林 健太
>生年月日 昭和58年(1983年)8月7日
>出身校 縄手南中学校
>座右の銘 継続は力なり/感謝・出来る・プラス発想

投稿: | 2014年7月22日 (火) 09時49分

え?中卒が30そこそこで社長なの?実家はお金持ち?

投稿: コマンダーダン | 2014年7月22日 (火) 10時16分

記載を見る限りでは継承と言うのか、親族経営でグループ企業の一画を任された形であるように思われます。
今回の件に関して言えばキャリアを考えてもこの社長さんではなく、誰か別の人間が実行に関与しているのでしょうけれどもね。

投稿: 管理人nobu | 2014年7月22日 (火) 11時10分

薬事日報のコラム  無季言 から
新人薬剤師の退職理由から見えるもの
http://www.yakuji.co.jp/entry37569.html
>ある薬剤師を店舗に配属した。その店舗では定期的に薬局周囲の草むしりをしていた。「草むしりをするために薬剤師になったのではない」。憤慨したその薬剤師は退職したという
◆新人の早期退職は他の業界でも見られるが、それとは次元が異なるのではないか。多くの薬剤師は常識を備えているだろうし、紹介した事例は極端だとしても、需要と供給の偏りが薬剤師の増長を促しているのだとしたら問題だ。いずれ薬剤師不足は緩和する。将来は選別される側に立たされるという危機意識を持ち、認識を改めるべきだ。
 
 今年の薬剤師国試合格率低迷で新人の供給が滞り、辛酸をなめた所為もありましょうが、ずれまくってますな。 
>需要と供給の偏りが薬剤師の増長
>いずれ薬剤師不足は緩和する。将来は選別される側に立たされる
>認識を改めるべきだ。

誰が?

投稿: 感情的な医者 | 2014年7月22日 (火) 13時18分

当院でも時に草刈りに駆り出されますが、暑い時期の作業は正直勘弁願いたいものですな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年7月22日 (火) 14時42分

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