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2014年6月18日 (水)

医学部新設問題 文科省審査会での議論が始まる

被災地復興を錦の御旗に例外的に医学部新設が認められた形の東北地方医学部新設問題ですが、先日16日に最終的な開設母体を決める文科省の審査会が初会合を開いたと言うことです。

医学部新設「公正に判断」 東北構想審が初会合(2014年6月16日日本経済新聞)

 東北地方の大学医学部新設に関する文部科学省の審査会は16日、東京都内で初会合を開いた。応募のあった3つの構想について12人の有識者が審議し、今夏にも1つを選定する。座長に就いた遠藤久夫・学習院大経済学部長は「(医学部新設は)1979年以来なく、コンペ方式は前例のない難しい点があるが、公正なプロセスで全力を尽くす」と呼びかけた。

 会合では、脳神経疾患研究所(福島県郡山市)、東北薬科大学(仙台市)、宮城県のそれぞれが提出した構想の概要や、今後の審査の進め方を確認。将来の東北への貢献や、協力者や財源確保の見通しといった審査の観点についても協議した。7月4日に3者からヒアリングを実施し、15日には関係自治体や大学、日本医師会などから意見聴取する方針も了承した。

 遠藤座長は終了後、記者団に「それぞれの構想が特徴をもっている。(卒業生が)地域にとどまる仕組みなどには似たところもあり具体的に聞いてみたい」と指摘。「できるだけ早く結論を出したいが、拙速な議論はすべきではない」と慎重に審査する考えも示した。行政が主体となる宮城県の提案が有利との見方があることに関しては「各委員がどう考えているか、なんとも言いようがない」と話すにとどめた。

東北に医師残る「特殊な医学部を」- 全自病会長、文科省の構想審査会が初会合(2014年6月16日CBニュース)

東北地方の医学部新設に応募のあった3陣営の構想から1つを選定するための構想審査会の初会合を、文部科学省は16日、東京都内で開いた。同審査会の委員である全国自治体病院協議会の邉見公雄会長はその中で、新設される医学部について、「これまでと同じような医学部では、従来と変わらず学生は卒業後に東北に残らない。できるだけ残るような特殊なものにした方がいい」として、例えば地域医療を担う総合診療医の育成に特化することなどが考えられると述べた。【丸山紀一朗】

東北の医学部新設をめぐっては先月、宮城県、東北薬科大(仙台市青葉区)、脳神経疾患研究所(福島県郡山市)の3陣営が、申請書類を同省に提出した。3陣営はいずれも2016年4月に開学予定としており、予定通り進めば、医学部新設は1979年の琉球大以来、37年ぶりになる。
16日の初会合では、各大学の設置構想の概要が示され、今後の審査の進め方や議論する上で重視するポイントなどについて、委員間での意見交換などが行われた。今後、来月初旬の2回目の会合で3陣営からのヒアリングを行い、同月中旬の3回目の会合で岩手県や福島県、東北大、岩手医科大、日本医師会などから意見聴取する。その後、同省は4回目の会合を今夏までに開き、1つに絞る

全国各地から医学部新設の要望が出ては却下されてきた中で、今回東北地方に限ってそれが認められた背景としては当然ながら一つには震災被害からの復興と言う目的があり、加えて元々医師不足が目立つ地域であったと言う事情があったわけですが、そうなりますと当然ながら新設医学部もどれだけの卒業生が地元に残るかと言うことが一番の課題となってきますよね。
東北諸県の医学部における卒業生の地域定着率は控えめに言っても決して高いものではなく、特に一般枠入学生では半数にも満たないと言う現実を見る限り何らかの対策なしでは単に他府県からの流入組にとっての国試予備校化してしまう懸念が大いにあると言えますが、その一つの対案として例えば先日取り上げた札幌医大のように実質全定員を地域枠としてしまうと言う荒技も考えられるでしょう。
また実績を考えると東北地方に限定した自治医大方式と言うのも有りで、単純計算で各県10数人~20人程度の枠が割り振れる事になりますけれども、そもそも現時点でも増える一方の各県医大地域枠で地元残留希望者が囲い込まれている現状で、新設医大にどこまでの人材が集まるのかと言うことはいささか疑問の余地無しとしません。
ともかくも本音の部分では関係者各位とも「とにかく卒業生が地元に残るような大学に」と言う気持ちがあることは言うまでもなく、それゆえに「特殊な医学部に」云々と言うびっくりするような発言も出てきたと言うことなのでしょうが、当然ながらあまりにも露骨な囲い込みには問題なしとしないと言う声もあるわけです。

医学部新設 人材育成が復興の近道 卒業後、進路規制は疑問(2014年6月10日河北新報)

 東北への大学医学部新設で、文部科学省は9日、構想審査会のスケジュールを発表した。40年近い封印を解いて東日本大震災後の東北に新医学部をつくる意義とは何か。東大医科学研究所の上昌広特任教授(医療ガバナンス)に聞いた。(聞き手は報道部・伊東由紀子)

 -東北では震災以前から医師不足が深刻な課題だった。
 「東北に医師が少ないのは、単純に医師の養成機関が少ないのが原因。地域の医師数と医学部の数はきれいに相関する」
 「医師が充足している西日本では人口389万人の四国に4校、745万人の中国に5校の国立医学部がある。人口905万人の東北は、国立医学部が4校しかない。医学部の進学者数では実に3~4倍の差がある」
 「格差の原因を歴史的にさかのぼると明治維新に行き着く。賊軍の汚名を着せられた東日本と官軍の西日本では、人材育成機関の設置に初めから構造的な差があった。医学部はその典型だ」

 -医師数の東西格差は震災で一層顕著になった。
 「2012年の厚生労働省調査で東北6県は、人口10万当たりの医師数が軒並み全国平均を下回った。さらに被災3県では、震災後に医師が減った地域もある」
 「ただ、東北以上に医師不足が深刻なのが関東だ。千葉、埼玉、茨城は際立って不足している。高齢化に伴って今後も医療需要は増える。医師不足にいま手を打たないと、隣接する東北と関東で医師の取り合いになる」

 -卒業生の地元定着策は審査のポイントになるか。
 「卒業生に地方勤務を課す義務年限、入学者の地元枠設定など規制で進路を縛る手法には疑問を感じる。卒業生を地元に残したいのなら、教育レベルとキャンパスを置くまちの魅力が鍵になるのではないか」
 「大学、高校など教育機関の質が上がれば、よりよい教育を求めて人は集まる。いい教育がまちをつくり、魅力ある地域に人は集う。性急に結果を求めず、30~50年のスパンで考えるべきだ」

 -いま、東北に医学部を新設する意義とは何か。
 「地域で人材を育てることが復興や魅力ある地域づくりへの一番の近道になる。まちの力とは人の力だ。それには教育が重要であり、医学部は最大の教育投資となる」
 「医師不足のつじつま合わせだけで医学部新設の意義を語りきってほしくない。地域をよくするための人材育成という大きな発想を持つべきだ」
 「一つの県に二つの医学部ができれば、競争が生まれる。例えば宮城なら、旧帝大の東北大医学部と新設医学部が切磋琢磨(せっさたくま)し、それぞれに力を伸ばせるだろう」

上先生のご意見にいささか異論も無きにしも非ずと言うところなのですが、数十年前に終わった医学部定員の割り振りとその後の地域人口が今や明らかに乖離してきた結果、全般的に医学部定員の少ない地域ほど医師も少ないと言う傾向が認められるとは言えるだろうし、そうした前提に立てば今現在がどうこうと言うに留まらず将来的な人口動態も見越して医学部整備の議論を行うべきだと言う考え方もあるでしょう。
その点でかねて言われているのは医学部新設の緊急性と重要性が高いのは千葉や埼玉のように人口増加が続いていながら医学部定員の不足している地域であって、東北諸県などはしょせんこれから人口が減っていく地域なのだから医学部ばかり増やしても仕方がないと言う考え方もあって、単純に現時点での横断面で判断するのではなく時系列を見ての判断が必要であるとは言えそうです。
ただ国民総人口が減少に転じた中で医学部定員はこのところの大幅増ですでに総数としては大きな不足はなくなったと言う声もあり、この上コストパフォーマンスが大いに劣り教員として多数の医師を囲い込むことにもつながる医学部新設にどこまで意味があるのかと言えば、やはり被災地に特別な配慮をしたと言う名目以上のものはなく象徴的な例外として新設が認められただけであると言う捉え方が妥当なのかも知れません。
基本的には逃散や立ち去り型サポタージュによってようやく医師の労働環境に世間の目が向き始めたことと同じ文脈で、地域に医師不足感があるからこそ環境整備を行い待遇を改善しても医師を呼び込もうと言う動機付けも生まれてくるとも言え、その意味で地域ごと施設ごとの医師分布や労働環境などを関連づけての議論ももっと行われてもいいんじゃないかと言う気がしますけれどもね。

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コメント

地域枠を増やしても既存大学の地域枠志望者を食い合うだけでは?
下手すれば偏差値も最底辺レベルにとどまるでしょう

投稿: こだま | 2014年6月18日 (水) 08時34分

新設医大の地元定着率を見るには十年かかります。
国はその結果が出るまで次の新設はみとめないかもしれないですね。
増え続ける地域枠の出身者が今後どうするかが見ものです。

投稿: ぽん太 | 2014年6月18日 (水) 09時15分

国と言っても厚労省に文科省、財務省とそれぞれに思惑は違うのだろうし、今後どこが主導権を握ってくるかによっても政策は二転三転しかねないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年6月18日 (水) 11時35分

医学部に進学させられるような富裕層がどれほど存在するのかと言う事や、
そもそも相応の学歴と経済を保有する人間は、躊躇なく中央の大学に進学する訳で
地元の足かせ付きの大学に喜ん入るのか?と思います。

投稿: 恥の戸市民 | 2014年6月18日 (水) 11時48分

>そもそも相応の学歴と経済を保有する人間は、躊躇なく中央の大学に進学する訳で
まあ、それ故の「地域枠」ですよ。
医学部定員増の結果が国試合格者数に反映されるのか否か、来年度あたりから答が見え始めることでしょう。

投稿: JSJ | 2014年6月18日 (水) 12時27分

ろくな関連病院もない新設医大にわざわざ行きたいかねえ……

投稿: | 2014年6月18日 (水) 13時14分

入試偏差値がどれくらいになるか、数年後の国試合格率がどうかと見所は多いですな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年6月18日 (水) 18時36分

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