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2014年6月 4日 (水)

近く導入確実な混合診療はどこまで認められるのか

ネタのような本当の話と言うのでしょうか、本日の本題に入る前にこちらの記事を紹介してみましょう。

治療で“カエル生食”続け死亡、怪しい民間療法の犠牲となる人々。(2014年5月31日ナリナリドットコム)

糖尿病は現代の医学技術や薬では完治させることができないと言われているが、世界を見渡せば多くの人が糖尿病に悩まされているのもまた事実だ。中国でも糖尿病患者は急増しており、対策が緊急課題となっている。そうした中、藁をもつかむ思いで民間療法に手を出す患者も増えており、中国の医師が警鐘を鳴らしているという。

中国紙揚子晩報などによると、半年ほど前、糖尿病治療にかかっていた54歳の林さん(仮名)は、友人から「毎日1杯自分の尿を飲めば糖尿病を根治できる」と言われて実践。“毒をもって毒を制す”と張り切って望んだものの、1か月もしないうちに体調が悪化、糖尿病の合併症のひとつである足潰瘍にかかってしまった。結局、それまでは順調だった治療がかえって長引くことになってしまったそうだ。

3年ほど糖尿病に悩まされていた50代の劉さんは、病院で薬を処方されて血糖値の制御はうまくいっていたものの、合併症は完治せず。そこで友人から伝え聞いた民間療法のひとつである“トノサマガエル食”を実践。2か月ほどトノサマガエルを生で食べ続けた結果、めまいとともにひどい頭痛に悩まされるようになり、不幸にもそのまま亡くなってしまった。そのとき、劉さんの身体は寄生虫だらけになっていたという。

こうしたケースを取り上げながら、東莞同済光華医院内一科の李玉鐘主任医師は「糖尿病を根治することは難しい。しかし、多くの民間療法が『糖尿病を根治できる』などと謳っており、犠牲になる人が後を絶たない」と警笛を鳴らす。民間療法とともに、“糖尿病に効く”などと謳っている健康食品の類も眉唾物が多く、「利用には注意が必要」と述べている。

何しろソースがソースだけに「そういうこともあるだろうな」で終わりかねない話ではあるのですが、怪しい民間療法に手を出してしまった結果お金も健康も失ってしまったと言うことは日本でもままあることで、そもそも医療保険の未整備な中国と違って日本では皆保険で安く効果が確実な治療が受けられるのに、わざわざ高くて効果がない代替医療に手を出す人が少なくないのも現実ですよね。
この辺りは患者が医療に求めているものとは一体何なのか、疾患コントロールがうまくいけばそれで満足しているのかと言う声もあり、医療現場における顧客満足度と治療コンプライアンスの関係を示唆する非常に興味深いテーマでもあるのですが、現実的に保険診療を行っている限り顧客満足度向上と言うことは別段格別評価の対象になるわけでもなく、唯一経営視点で見れば顧客が増えれば収入が増えてうれしいと言う程度の意味づけでしかありません。
多忙な現場スタッフにしてみればただでさえ過重労働なのだから、そういう方々は勝手にあちら側で過ごさせていればお互いにとって幸せになれるじゃないかと言う考えもあるかと思いますが、大抵の場合最後まであちら側に留まるのではなくこじれにこじれた段階で医療の側に来たりするものですから、こんなことになるのであれば最初からこちらで面倒を見ていた方が楽だったと嘆く先生もまた多いと言うことですよね。

さて、政府がこの6月にもまとめるとされる新成長戦略の大きな柱として混合診療の大幅な拡大というものが確実視されていると報道されているところで、もちろん各方面から賛成、反対の声が上がっていることは言うまでもなく、また皆保険制度維持を大前提に今のところは当然ながら患者の求めによって初めて行うオプションの付加的サービス扱いの位置づけは崩されてはいないようです。
ただ自費で行うことだから患者の希望第一で行われるべきだと言う考え方で医師と患者双方の合意があれば自由に行える「選択療養」制度の導入が検討されている一方、先進医療同様に一定の安全性、有効性が確認され将来的に保険収載されそうなものに限るべきだと言う考え方も日医等を中心に主張されていて、今後どこまで混合診療の範囲を拡大するかが争点になりそうだと言う状況ですよね。
そんな中でいわゆる民間療法や代替医療に見られるような、有効性を示す真っ当なデータが示されていない怪しげなものに関してはどうするべきかと言うことなんですが、規制改革会議の見解ではこのような扱いにしたいと言う記事が出ています。

規制改革会議が「選択療養」のルール・手続きの考え方(2014年5月21日日経テクノロジー)

 政府の規制改革会議は2014年4月16日、新たな保険外併用療養制度として提案している「選択療養(仮称)」の大まかなルールや手続きの案を提示した。根拠に乏しい医療は選択療養の対象から外すことなどを示した。同年6月をめどにまとめる答申に盛り込みたい考えだ。

 選択療養は、患者が希望する治療の保険診療との併用を個別に認める制度として、同会議が2014年3月27日に提案した。今回のルール・手続き案では、選択療養の対象から外す治療として、(1)「国際的なガイドラインに掲載されている」「一定レベルの学術誌に掲載・査読された2編以上の論文がある」「倫理審査委員会の承認を得ている」のいずれも満たさないもの、(2)最初からもっぱら保険外診療が目的のもの、(3)代替できる保険診療を受診せずに保険外診療を選ぶこと――を挙げた。

 また、患者と医師の情報の非対称性を埋める方法として、「全国統一的な中立の専門家」による評価制度の創設を提言。治療の安全性・有効性の確認などを、この専門家が行うべきとした。さらに、選択療養の適用をより迅速に判断できるよう、評価は合議制ではなく、高度医療機関の専門医の相互ネットワークを通じて決定するなど、機動的な連携協議を検討すべきとした。

一見するとかなり厳しい条件だと言う印象なのですが、この「一定レベルの学術誌に掲載・査読された2編以上の論文がある」と言う文言の一定レベルをどう解釈するかで、例えばかねて社会問題化しているホメオパシーなども身内系の雑誌で相互引用を繰り返し権威付けをしてきたと言う歴史的経緯があるわけですが、その結果インパクトファクターが高くなったからと言ってまともな学術誌と言えるのかどうかです。
さらに悪いことには世の中にはある一定の目的を満たすための学術誌への掲載を手段として用いている(と推察される)方々もいらっしゃるわけで、当然ながら周囲からは後日多大な非難を受けると言うこともままあるわけですが、現在進行形で騒動化している例の万能細胞絡みの騒ぎを見ても判る通りひとたび掲載されれば当事者が認めない限りなかなか取り下げとはいかず、後々までソースとして残ってしまいますよね。
この辺りの真っ当さを担保するために中立の専門家による評価をと言うことなのでしょうが、当然ながらきちんとした評価を行うためにはそれなりの手間暇と時間がかかるのは避けられず、混合診療のように各患者がてんでバラバラにあれをやりたい、これをやりたいと希望してくるような状況下で個々の患者の治療に間に合うようなスピードでどこまで厳格な審査が出来るものだろうか?と言う疑問は残ります。
ただ一般に怪しげな代替医療の類はより多くの顧客を獲得するためでしょうか、医療専門家の手を煩わせずに行える経口や外用と言う形で提供されている場合も多いようですから、「私は勝手に代替医療やってますから、副作用のチェックと全身管理だけ先生お願いしますね」と言った場合もあり得る理屈ですが、深読みすればそれを除外するための「最初からもっぱら保険外診療が目的のもの」なる文言なのかも知れません。

代替医療を離れて考えても非常に面白いなと思うのが「代替できる保険診療を受診せずに保険外診療を選ぶこと」を対象から外すとしている点ですが、これを文字通りに解釈するならばおよそあらゆる疾患は何らかの保険診療による対応法が存在していると言えるわけですから、既存の治療法を全て網羅しこれ以上手はないと言う状況下でなければ混合診療は行えないのか?と言う話にもなりますよね。
例えば最も希望が大きいだろうと思われる癌治療などについて考えると、おそらくファーストラインとしては必ず保険診療で行うと言うことを想定していて、ある程度治療が煮詰まり手段が尽きてきた段階で初めて混合診療を検討すると言うことなのでしょうが、おおよそ新しく未承認な治療などは既存の治療法を大きく上回る効果を発揮する(少なくとも、その可能性がある)からこそ高いお金をつぎ込んででも開発が行われるわけです。
その開発初期段階の「これは大いに有望そうだ」と言うデータだけを見れば「何故こんな効果がある治療法があるのに、大して効き目もない保険診療だけで我慢しなければならないんだ」と言う不満も出るでしょうし、「最初から新しい治療をさせてもらっていればもしかしたら」と言う後悔も残るかも知れない、それを誰が受け止めることになるかと言えばまあ、規制改革会議のメンバーが受け止めてくれるとも思えませんよね。
治療法の選択枝が増えるほど現場の医師はますます多くの事を勉強し、単に有効性や副作用と言った医学的な情報だけでなく幾らかかりそうかと言った費用面にも考えを及ばせなければならない、となれば多忙な現場ではなるべく混合診療はしない方向で行きたいでしょうが、そうした観点からすると今のところいかにも多忙そうな中核施設に限って混合診療を認める方向だと言うのは混合診療に対する厚労省の本音を示してもいるのでしょうか。

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コメント

やるにあたっての説明の面倒さを考えると実施施設を限るのは賛成です。
とりあえずのところはかなり高額な医療中心になりそうですね。
財政面を考えれば保険外でやってくれるのはありがたいはずですけど。

投稿: ぽん太 | 2014年6月 4日 (水) 09時01分

これじゃ先進医療と大差ない

投稿: | 2014年6月 4日 (水) 09時40分

恐らくは小さく産んで大きく育てる式の考え方なのでしょうが、実際のところ丸山ワクチンなど非公式の混合診療はすでに行われているとも言えるわけです。
本当に安全最優先でこうしたものの把握率向上を狙うならあまり厳しい規制は潜伏化を促進するだけかとも思いますが、何を目的に行うかと言う点で今少し関係者各位の間にも見解の相違がありそうです。

投稿: 管理人nobu | 2014年6月 4日 (水) 10時53分

 安倍首相がマイボトルで愛飲する「水」が永田町で話題になっている。衆院予算委員会に水筒を持ち込み、フタを開けてゴクリ。
事務方が用意した水は飲もうともしないのだから、相当なご執心だ。

 「安倍首相が飲んでいるのは、パチンコ玉大のセラミックボールを浸した〈情報水〉というシロモノです。なんでも磁気を含んでいる
とかで、胃腸の働きが良くなり、体調が安定するそうです」(永田町関係者)

 販売元のバイオIT株式会社によると、くだんのセラミックボールは直径1センチで、1個1万800円。漢方やミネラルなど、体にいい
成分の磁気情報をバイオIT(生命情報記憶伝達技術)で水に転写。その水と粘土を混ぜて作ったモノだという。本当に体にいいのか、
飲んで害はないのか、シロウトには理解不能の商品だが、同社の遠藤一義社長はこう話す。

 「弊社は2012年7月設立で、セラミックボールのご愛用者は1000人ほど。安倍首相には創業間もない10月からご利用いただいて
います。作り方は水1リットルにボール1個を10分間浸すだけです」

 発売中の「週刊新潮」によると、知人に勧められた昭恵夫人が半年ごとに約10個購入しているという。

■口にできないと、精神的に不安定に

 安倍が第1次政権を放り出したのは、持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、下痢が止まらなくなったのが原因だった。そのせいか、
11年から「ラドン吸入器」も愛用。1台200万円と高額な健康装置だ。免疫力向上のため放射性物質のラドンを口から吸い込んでいる
という。

 それにしても、一国のトップがこうした“民間療法”に次々に手を出すのは、前代未聞のことだ。いったい、安倍首相はどういう心理状態
なのか、心理学博士の鈴木丈織氏はこう言う。

 「いわば神頼みで、権力を握る政治家や経営者が行き詰まると占いに頼るのと同じ理屈です。自分の力に限界を感じながらも、
それ以上のことを成し遂げたいという心理状態なのでしょう。健康によさそうなモノは〈自分は守られている〉という気分をあおるので
なおさら頼みにする。実際、プラセボ効果が表れることがあります。ただ、依存する恐れもある。思い通りに“頼みの水”を口に
できないと、精神的に不安定になり、思いつきで行動する心配があります」

 すでに、その兆候は表れているのではないか。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150640

投稿: | 2014年6月 4日 (水) 11時16分

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