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2014年6月12日 (木)

健康で長生きするための一番の大敵?

テレビなどでも「ぎんさん四姉妹」として最近よく登場されていますが、長寿姉妹として有名なこの四姉妹の長女さんが先日めでたく100歳を迎えられたのだそうで、世の中多くの人々が「やはり長生きには遺伝も関係しているのだろうな」と感じられたのではないかと思います。
もちろん遺伝的素因から家族内で多発しやすい病気と言うものは多々あって、逆に言えばそうしたリスクの少ない家系ほど長生きには有利だとは言えるのでしょうが、どうも長寿者の実際を調べて見ると必ずしも遺伝的素因ばかりではないのか?とも思わされる背景事情が浮かび上がってきているようです。

百歳以上の職歴に偏りあり 12%があの職業 第一次産業は危ない!(2014年6月5日週刊新潮)

 厚生労働省が公表した最新の調査では、100歳以上の日本人(百寿者)は5万4397人(昨年9月1日時点)に上る。調査がスタートした1963年の153人と比べると、およそ半世紀で350倍以上に急増したことになる。しかも今年3月までに100歳になる高齢者は2万8169人と見込まれていた。実に3万人に迫る勢いだ。高齢ゆえ亡くなる方も少なくないが、今後も増加傾向がやむ気配はない。

■12%が教員

 百寿者の履歴書に目を通して気付くのは“職業欄”の偏りである。
 東京都健康長寿医療センターの研究員・稲垣宏樹氏が説明する。
「東京都在住の百寿者男性が30代だった頃の職業分布を調査したのですが、農業や林業などの第一次産業より、第三次産業の従事者が多いことが分かりました。なかでも、教員の割合が際立って高い。昭和5年当時、30~34歳で教職に就いていた方の割合は全体の1%に満たないのですが、百寿者に限ると12%に上る。大学や高等女学校への進学率も、百寿者とそれ以外の方々とでは大きな開きがあります」
 約2000人の百寿者を調査した「健康・体力づくり事業財団」元常務理事の荻原隆二氏が分析するには、
「戦前の教員は尊敬の対象で、生徒にとっては絶対的な存在でした。このところ話題のモンスターペアレンツなんていませんから、ストレスとも無縁だった
 家庭環境や収入に恵まれ、高い水準の医療や食生活を享受できたことも、長寿に繋がった理由と考えられる。

■脳の活性化がポイント

 他方、東京都健康長寿医療センターの増井幸恵研究員によると、
「調査の結果、百寿者の多くは高学歴やホワイトカラー層でした。彼らに経済的な余裕があったことはもちろんですが、仕事の内容も長寿に関係していると思われます。たとえば、経理や企画立案、交渉などに携る仕事は、脳の活性化を促して高齢になっても認知機能が維持されやすいと考えられる。また、元気な百寿者には好奇心旺盛で社交的なタイプも目立ちました
 その好例が札幌市在住の石林清さん(101)。
「中央大学法学部を卒業して、商工会議所に勤めていた頃に企画したのが“さっぼろ雪まつり”です。その当時は“一升酒の男”と呼ばれてね。講演会に招いて親しくなった俳優の森繁久彌さんとも飲み友達でした。道議会議員として活動した時期もあります」
 聴力や視力、体力が衰えても、年齢を感じさせない魅力を放ち続ける百寿者たち。その高みを目指すのならば、まずは自らの“老いた生活”を省みるところから始めるべきだろう。

よく言われるように高収入・高学歴の人々ほど健康を維持する意欲が高く、実際に健康であると言う過去の調査結果とも一致する話なんですが、しかし教師と言うものがここまで目立つというのも意外と言えば意外ですよね。
教師が多いと言うのが偶然なのか理由があるのか、そもそも教師生活にはストレスは多いのか少ないのかと言う点も議論が多々あるところだと思いますが、この方々が若かった時代の労働環境を考えると肉体的に相当ハードで貧困率も高かった第一次産業が長生き出来ないと言うのは納得出来ることで、今の時代でさえ工業地帯の労働者では呼吸器疾患持ちが多いと言う傾向が感じられますよね。
ただもちろん今現在の現役世代が超高齢者になった頃に同じ傾向があるかと言えば微妙なところで、第三次産業従事者はろくに年金ももらえず青息吐息である一方で営農者は空気も良くストレスも少ない環境で健康に暮らしているだとか、工場勤めは厳しいメタボ健診のおかげで若年時からきっちり健康管理しているのに対して自営業は好き放題暮らしてあちらこちらにガタが来ている、なんてこともあり得るはずです。
ともかくも当時の社会情勢の中においてはホワイトカラー層の方が単純に生活環境も労働環境も良かったんだろうなと推測されるデータだとは言えそうなのですが、実は全く別の方面からこんな研究結果も出ているようで、双方を比較してみるとなかなか面白そうですよね。

「職場より家庭がストレス?」 最新研究の驚くべき結果(2014年6月10日日経ビジネス)より抜粋

家庭より、職場の方が、ストレスがない?」――。
 こんな衝撃的な研究結果が、先日、米ペンシルベニア州立大学の研究チームにより明らかにされた。ストレスホルモンと呼ばれる“コルチゾール”が、家庭にいる時の方が恒常的にかなり多く分泌されていたのである。しかも、この傾向は、

・性別
・婚姻の有無
・子どもの有無
・職務満足感の高低

に関係なく認められ、さらに、より多くの女性が、「家庭にいるときより、職場にいるときのほうが、ハッピーな気持ちだわぁ~」と答えたのだ。
 「マジ?」と、疑いたくなるこの論文は、タイム誌でも取り上げられ、アメリカで議論を巻き起こしている。
(略)
 まずは、この論文のタイトルから紹介する。原題は、
Has work replaced home as a haven? Re-examining Arlie Hochschild’s Time Bind proposition with objective stress data
(略)
 また、この調査では次の3つを、“ウリ”にしている(原著論文にするには、独自の視点を生かした“ウリ”が必要不可欠)。
 1つ目は、ストレスを感じた時に分泌されるコルチゾール値(=客観的な指標)を用いたこと。
 2つ目は、ecological momentary assessment(EMA)を使ったこと。EMAは、「現象を、その瞬間に評価・記録する方法」で、記憶によるバイアスをなくし、評価の妥当性を最大限にできる。
 研究グループは、1日6回、決められた時間にアラームが鳴るように設定されたタブレットを被験者に配った。被験者は、アラームが鳴ると、(1)場所(仕事or 家庭)、(2)気分(ハッピーかどうか? を6段階で評価)、(3)ストレス(ストレスを感じているかどうか? を6段階で評価)、(4)コルチゾール値(頬をこすり測る)、の4項目を端末に記録するように指示されている。
 そして3つ目が、個々人の職場と家庭のストレス状態を比較したこと。
 多くのワークライフバランス研究が、「仕事に没頭したいのにできない」、「家庭に時間を費やしたいのにできない」といった、仕事と家庭の軋轢(ワークライフコンフリクト=WLC)から職場や家庭生活に及ぼすストレス度合いを検証しているのに対し、この調査では、EMAを生かし、その場(職場 or 家庭)の記録を、統計的に比較したのだ。

 で、その結果、以下の事柄が明らかになったのである。
※調査対象は、無作為に抽出された、米国北東部の中堅都市に住む、18歳以上の男女122人(女性75%、男性25%)。いずれも、自宅以外で週5日間就労するフルタイム労働者。

(1)性別、既婚・未婚、子どもの有無に関係なく、職場にいるときのほうが家庭にいるときより、コルチゾール値が低かった
(2)既婚者を、「子どものいる人」と「いない人」に分けて分析した結果、どちらも「職場」のコルチゾール値の方が低かったが、子どものいるグループでは、その差が小さかった
(3)男性と女性に分けて分析した結果、どちらも「職場」でのコルチゾール値の方が低かったが、女性が「職場」でポジティブな気分を感じていたのに対し、男性は「家庭」だった。
(4)収入を高中低の3つのグループに分けて分析した結果、すべてのグループで「職場」のコルチゾール値の方が低かったが、収入が高いグループでは、その差が小さかった

家の仕事は報いが少ない?

 これらの結果を受け、研究グループのリーダーであるダスマク准教授は、次のようにコメントしている。
「職場にいるときのほうが家庭にいるときより、コルチゾール値が低いという結果は、ホックシールドの仮説と一致するものである。また、それがワーキングマザーだけでなく、未婚者や男性にも示されたことは、『働くことは健康をプラスに導く』とする従来の理論を、裏付ける結果と解釈できる」
 「職場の仕事が有償であるのに対し、家庭の仕事は退屈でそれほど報いのあるものではない。それが、家庭のストレス度を高めている可能性は高い。特に女性は、家事や育児をより多く担っている分ストレスも多く、職場にいる方がホッとできるのだろう」
(略)

もともと前段階としてホックシールドの仮説と言うものがあって、これはワーキングマザーは就労時間を制度的に短縮する機会があるのに敢えて子供と過ごす時間を増やすよりも職場にいることを選んでいると言う事実があった、その理由として職場環境の改善が進んだ結果職場は居心地の良い場所となっている、特に家庭内と違って職場では頑張ればそれだけ認められ褒めてもらえると言う「報酬」が見込めるからだと言う仮説です。
母親がより安楽な環境を求めて職場に逃避すれば、子供は母親を呼び戻そうとわざと問題行動に走る、その結果ますます家庭内がストレスに満ちた環境になっていくというジレンマの解消をホックシールドは訴えたわけですが、どうやらこうした現象は性別や既婚・未婚に限らず発生している、と言うよりもむしろ子供のいない既婚者の方が職場に安らぎを感じていると言うのは、いわゆる「子は鎹」と言う言葉を実証しているのでしょうか。
ともかくも単純に考えてもいつも家庭内に引きこもって同じ環境でいるよりは外に出て空気を変えた方がいいんだろうなと思うのですが、先の記事と照らし合わせてみると昼間は仕事、夜は家庭と言うホワイトカラー層に対して、労働集約型でいつも家族と一緒に暮らす時間が長い営農者の方がストレスが多くなると言う解釈も可能ではあるのでしょうか?

家庭内のストレスとは何かと言えば様々な考え方もあるでしょうが、昔と比べると同じ屋根の下で暮らしていても一緒に食卓を囲むとか同じテレビを眺めると言った集団行動をする機会が激減し各人勝手に過ごすようになってきている、そして記事の終わりの部分にも紹介されていますけれども以前から朝食を皆で一緒に食べると言う家族ほど家庭内の各種ストレスに耐性が高く、家族の結びつきが強いと言う調査結果があります。
各人の生活サイクルや一日のスケジュールがバラバラなのに、同じ時間に起きて同じように食事をするならそれは我慢強くもなるだろうと考えてしまうのですが、興味深いのはアメリカにおいても小学生に同種の調査を行ったところ家族と一緒に朝食を食べる子供ほどストレスに強く、自立心があり、人生に対する満足度が高いと言う結果が出たそうですから、単純に我慢強いと言うだけではなさそうですよね。
もちろんどちらが原因でどちらが結果なんだと言う話で、ストレスに弱く人生に悲観しているような人が家族と一緒に毎朝の朝御飯を食べると言うのもあまり想像出来ない話ですから、「よ~し!うちも最近ちょっとぎくしゃくしてるから明日からみんなで早起きして一緒にご飯食べるぞ!」なんて張り切りすぎるのもどうなのかですが、前述の二つの記事においていずれもストレスと言うことが大きなポイントとなっている点に留意ください。
年中家に引きこもるよりは外に出た方がストレスも溜まらないのだろうし、心身のストレスは多いよりも少ない方が長生きが出来そうだと言うことであれば、やはりストレスなどと言うものはなるべくなら少ない方がいいんじゃないかと言うことなんですが、世界的に見ても我慢強いと言われる日本人の民族性はストレス耐性が高いと喜ぶべきなのか、それとも日常的に強いストレスに慣れてしまっていると悲しむべきなのかです。

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コメント

星新一の短編でたしか長生き薬の話があった気がします。
一日中ぼーっとしてしまう副作用がある(だからストレスもない)って落ちですけど。
ほどほどに緊張感があったほうが生産性は高まるんじゃないですか?

投稿: ぽん太 | 2014年6月12日 (木) 09時07分

この調査は原因と結果が逆だと思う
職場が楽しいって感じる人だから子供置いて働きに出てるんでしょ
嫌々パートに出てる専業主婦だっているはずだよ

投稿: こまる | 2014年6月12日 (木) 09時18分

>「戦前の教員は尊敬の対象で、生徒にとっては絶対的な存在でした。このところ話題のモンスターペアレンツなんていませんから、ストレスとも無縁だった」
> 家庭環境や収入に恵まれ、高い水準の医療や食生活を享受できたことも、長寿に繋がった理由と考えられる。

だったら医者だってもっと長生きしててもよさそうなものだが

投稿: | 2014年6月12日 (木) 09時45分

皆保険制度以前の医師は現代ほど激務ではなかったでしょうが不規則な勤務やストレスはあったのでしょうし、おそらくは肝炎など感染症や放射線障害のリスクも今よりずっと大きかったと思われます。

投稿: 管理人nobu | 2014年6月12日 (木) 10時24分

そんじゃストレスをどう避けるかが一番の課題w

投稿: aaa | 2014年6月12日 (木) 12時10分

戦前の医師のストレス要因といえば、従軍を含む傷病兵の手当も大きかったのではと想像します。現在でも有事には医師は駆り出される、そんな世論が吹き上がるのではないでしょうか。看護師は女性が多いので、どうか分かりませんが。

投稿: 田舎人 | 2014年6月13日 (金) 00時34分

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