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2014年6月30日 (月)

ますます厳しく問われる責任の所在

そろそろ暑さも本格化する時期ですけれども、最近全国各地の学校でこんな動きがあると言います。

学校プール開放「無理」…監視強化へ費用かさむ(2014年06月16日読売新聞)

 夏休みに小中学校などで一般開放するプールを減らす自治体が相次いでいる。

 きっかけは、警察庁が2年前に出したプール監視強化の通知。事故を防ぐため警備業者による監視を求めたが、業者への委託料が高騰し、予算不足から開放を断念するケースが多い。本格的なプールシーズンを前に、現場の職員は「子供の遊ぶ機会を奪うようで申し訳ないが、予算は大きくは増やせない」と頭を痛めている。

 「以前のようなプール開放は今年も無理だ」。千葉県船橋市教育委員会の担当者は嘆く。同市教委は昨年、住民向けに開放しているプールの数を、それまでの56か所から24か所に減らした。監視を任せていた警備業者から、委託料の大幅な増額を求められたためだ。

 それまでは2業者に計約2000万円で監視を委託していたが、「その金額では、半分以下の監視しか請け負えない」と通告された。業者は値上げの理由を「警察庁の通知で、警備員には30時間以上の研修をしなければならず、教育コストが上がった」と説明。市教委は他の委託先を探したが見つからなかったという。

 警察庁の通知は、大阪府泉南市の小学校のプールで2011年に小学1年男児が死亡した事故を受け、12年に出された。この事故では、市から委託された業者がビル管理会社で、監視員が一人もいない時間があるなど監視がずさんだった。このため通知で「お金を払ってプール監視を任せる場合、委託先は警備業者でなければならない」とされた。

 船橋市教委のプール開放ではこれまで、監視員の約半分が高校生だったが、通知で「警備員は18歳以上」とされたため雇えなくなり、業者側の人手不足が深刻化していることも影響した。市教委の担当者は「今年も予算が足りず、昨年並みしか開放できない」と話す。

昔は夏休みのプール開放と言えばPTAの保護者など町の住民が持ち回りでやっていたようなイメージがあったものですが、確かに何かしら事故でも起こればあれやこれやと責任を追及され下手すれば巨額の賠償金を云々されると言う時代にボランティアで引き受けたがる人もいないでしょう。
また昨今ではプールと言えば何やら盗撮めいたことをやってくる人も一定数いるのだそうで、そうした悪意の部外者に対応するためにも専門の警備業者に依頼すべき事案ではあるのでしょうが、面白いことには今の時代であっても学校の先生が交代で担当するだとか、PTAがボランティア(無償)で行うと言った場合には別に問題ではなく、あくまでも「有償で監視業務を行うならそれは警備会社である必要がある」と通達されている点です。
もちろんいざとなれば人命にも関わることなのですから相応の教育を受けた者であるべきだと言う考えは判りますが、どうも業務として行う以上専門家でなければ警備業法違反だと言うのは法律上の文言論争になっている印象もあって、おそらく捜せばそれなりに抜け道も見つかるのではないかと言う気がしないでもありません。
ともかくも今の時代にいつ何が起こっても誰かが責任を問われるものだし、それがある以上いつでも責任を取れる体制でなければならないと言うのはまあ理解出来ない話でもないのですが、それではその責任範囲がどこまで追求していくのが妥当なのかと考えるとこれは難しい問題もあって、先日はこんな裁判が始まったとニュースになっていました。

部活死亡:「AED使わなかった」両親が大学側に賠償請求(2014年06月25日毎日新聞)

 大阪体育大(大阪府熊取町)のサッカー部員が練習中に倒れその後死亡したのは、自動体外式除細動器(AED)で蘇生処置されなかったためとして、部員の両親が大学側を相手取り、約7800万円の賠償を求める訴えを大阪地裁堺支部に起こした。普及が進むAEDを巡り、スポーツ専門である体育大学の指導側の責任が司法で争われるのは異例だ。

 原告は、サッカー部員だった那須正雄さん(当時20歳)の両親=堺市。被告は大学を運営する学校法人「浪商学園」(大阪府熊取町)。提訴は23日付。

 訴えによると、那須さんは今年3月3日朝、大体大サッカー場での練習に参加、ランニングと休憩を繰り返した後の午前9時31分ごろ、突然座り込み、過呼吸などの症状が出た。33分ごろ、学生トレーナーが救急車を要請。那須さんの意識や脈拍は下がり始めた。37分ごろ、トレーナーは心臓マッサージをした

 43分ごろ、部のヘッドコーチが駆け付け心臓マッサージの継続を指示した。同じ頃、約40メートル先に設置されていたAEDを部員が持ってきた44分ごろに救急車が到着、救急隊員はAEDを使った後、病院に搬送した

 那須さんは4日後、脳に酸素が届かなくなる障害(蘇生後脳症)のため病院で死亡した。倒れた際、心臓の心室が震えて血液を送り出せなくなる心室細動(心停止状態)になったとみられる。

 両親側は「電気ショックが1分でも遅れると救命率は下がる。すぐにAEDで電気ショックを与えていれば救命できた可能性が高い」と指摘。スポーツ専門の教育機関なのに、ヘッドコーチらにAEDの使用の必要性を周知させていなかった大学側には監督責任があると訴えている。

 浪商学園法人本部は取材に「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。【服部陽】
 ◇AED

 心室細動で心停止状態になった時、電気ショックを与えて正常に戻す機器。使い方を音声で指示し、電気ショックが必要か自動で判断する。2004年7月の厚生労働省の通知で、医療従事者以外でも使えるようになった。

時間経過がどの程度正確なのかは何とも言えませんけれども、運動中に具合が悪くなってから10分強で救急車が来たと言うのは世間一般での行動としては決して遅すぎると言う印象はありませんし、いきなりこうした状況に遭遇して10分強の間に素人がAEDを使っていなければ遅れたと言えるのかどうか、なかなか判断は難しいところがあると思います。
救急隊到着直前にAEDを持って来たと言うことですから少なくともAEDを使うべき症例であり準備はしなければならないと言う認識はあったはずで、脈拍が下がり始めてからAEDの到着まで心臓マッサージを続けていたこと、早い段階で救急車を呼んでいたことと併せてまずもって妥当な判断が行われているように見えるのですが、あるいは記事には書かれていない別の事情もあったと言うことなのでしょうか。
もちろん民事訴訟で誰でも訴える自由はあると言う状況でのことですから司法判断がどう言う結論を出すかは何とも言えませんが、こうした話が出てくるようですとそれでは何分以内であれば妥当だったのか、プールでおぼれた人に一分一秒でも人工呼吸が遅れれば訴えられてしまうのか等々、様々な応用を想像してしまいそうな話ではあると思いますよね。
部活として学生を預かっているのだから相応の体制を取っていて当然だと言う考え方も当然ありなのですが、医療関係者でも何でもない部活動の管理者側がどれだけの管理体制を取ることが妥当なのかどうか、やはり世間一般における水準というものも考えなければ公平性を欠くように思います。

ちょうどAEDが一般市民にも使えるようになってからこの夏で10年だと言いますが、全国各地に40万台近くが普及しながら年間2万4千件にも登る市中での心肺停止事例に対して実際に市民がAEDを使用したケースは900件足らず(3.7%)に過ぎないと言い、日本の状況を考えると例え使う意志があったとしても今回のケースのように救急車がやってくる方が早いと言う場合がほとんどなのかも知れません。
興味深いのは救急隊に関する調査なのですが、救急隊が現場に到着するのが電話を受けて現場に到着しAEDを使うまでに通常6分以上かかっていて、1分遅れる毎に救命確率が7~10%下がる心肺停止時には救急隊がAEDを到着し使うのを待っていては大半が間に合わない計算ですし、事実AEDを使用し搬送されてきた症例の実に3/4は救命出来ずに亡くなっていると言う現実があります。
となれば救急隊が到着する以前、5分以内に何とかその場に居合わせた人達にAEDを使ってもらえれば少しでも救命確率が上がる計算ですが、経験のない一般人がこうした不測の事態を把握し真っ先に携帯で救急車を呼び(現実的にこれが何よりも最優先されるべき行動でしょう)、そしてそこからAEDを使用することを思いつき(あるいは救急隊に指示され)それを探し、そして説明書きを頼りに取り付け…と言った作業に何分かかるかです。
非専門家が人生で何度もない希な事態に遭遇し最短の対応時間で最善の行動を取れると言うことは現実的にはまずあり得ないことで、そうであるならこの場合のAED使用はあくまでも最短時間で使えてもらえたならば僥倖だったと捉えるべきものであって、ベストな対応が出来なかったから謝罪と賠償だ!と言うのではどこかの国のように、倒れた人に誰一人関わり合いたがらない世の中にもなってしまいそうな気がします。

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コメント

ビル管理会社にプールの監視は無理

投稿: | 2014年6月30日 (月) 08時26分

厳しめに言ってるはずの原告側の主張でもこの程度の遅れなんですね。
これでJBMとして確定したら影響は大きいかもです。
勝っても負けても誰得の裁判になりかねない気がします。

投稿: ぽん太 | 2014年6月30日 (月) 08時52分

大手新聞社が「心臓マッサージ」なんて単語を使うなよ・・・というのはさておき、

少なくとも今回の事故は大学の管理下で発生していますので、善意の第三者による救命という前提ではなさそうです。学校側はこういう事故が起こった時に速やかに「標準的な救命処置」が行われるよう準備しておかなければなりません。
問題は、標準的な救命処置に「AED使用」が含まれているかです。この点は裁判所の判断になるのでしょうけれど、個人的にはそろそろ含めて欲しい。
今回の事件だと、救急車を要請した時間と救急隊が到着した時間は正確なのでしょうから、AEDを持ってくるのに10分かかったことは間違いなさそうであり、「スポーツ専門の教育機関なのに、ヘッドコーチらにAEDの使用の必要性を周知させていなかった」と言われてもしょうがないでしょう。

投稿: クマ | 2014年6月30日 (月) 09時17分

民事ですから直ちにこの結果でどうこうではないのですが、一般論としては懲罰的対応よりも報奨的対応を優先した法が、普及期においては促進的に働き結果として公益に資するものだと思います。
ただ現実的にはもう少し別な問題があって、学生スポーツの場においてもすでに危機管理上の観点から活動全般に対して抑制的であるようにすべきだと考える管理責任者が現れてきていると言うことが挙げられます。
これに対して現場指導者及び当事者である学生は基本的に管理強化に反対を唱える立場ですが、親の立場はなかなか複雑で状況によっても結果によってもいつなんどきでも急変し得るものかなと言う気がします。

まあ結局のところは予想されるリスクと得られる利益とを天秤にかけてどうするか判断すべきことなのですが、結果責任が当たり前になってくると異なる立場からの判断の摺り合わせは難しいものになってくるでしょう。
例えばプロ注目の超高校級投手が親の反対によって甲子園に登板出来なくなるといったことはいつ起こってもおかしくないと思って見ています。

投稿: 管理人nobu | 2014年6月30日 (月) 10時23分

将来有望な選手が潰されたら億単位の賠償が期待出来るかなw

投稿: aaa | 2014年6月30日 (月) 11時18分

とうぜん保険には入ってるんでしょ?
まずは保険金が満額下りるように学校も協力すべきだったのでは
すぐにお金が出ていればこうはならなかったかも知れないし

投稿: | 2014年6月30日 (月) 15時32分

 愛荘町の秦荘中学校で、二〇〇九年七月、一年生の村川康嗣君=当時(12)=が柔道の練習中に
元顧問男性(31)の返し技を受け死亡した事故で、遺族が公務員個人として民事上の責任を負わないのは
不当として最高裁に提出する署名を集めている。
 愛荘町と元顧問を相手取った民事訴訟で、大津地裁は過失は認めつつも「公務員個人は被害者に対して
民事責任を負わない」として町に賠償を命じた。元顧問のみを相手取って控訴した大阪高裁判決も請求を棄却。
遺族は最高裁に上告した。
 遺族は「公務員であるという理由で民事上の責任を免れるのであれば同じことが繰り返される」と話し、
署名への協力を求めている。署名は七月下旬に最高裁に提出する。

http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20140701/CK2014070102000030.html

投稿: | 2014年7月 1日 (火) 06時44分

>まずは保険金が満額下りるように学校も協力すべきだったのでは

1)まず学校側が過失を認め、保険金が下りる。
2)過失を理由に民事裁判(念のため刑事告訴)
3)賠償金判決

ってどこかでよく見た構図・・・。

投稿: すねぞう | 2014年7月 1日 (火) 06時52分

↑武道の有段者って傷害罪厳しく取られるんじゃなかったっけ?
これって刑事告発できるんじゃない?

投稿: | 2014年7月 1日 (火) 10時31分

>1)まず学校側が過失を認め、保険金が下りる。
2)過失を理由に民事裁判(念のため刑事告訴)
3)賠償金判決

相手が過失を認めたから賠償金を請求ってしごく当たり前だと思うのですが。
こうならないような保険金と賠償金の二重取り禁止ルールって出来ないんですか?

投稿: てんてん | 2014年7月 1日 (火) 12時21分

>保険金と賠償金の二重取り禁止ルール

金目だろってことなのかな

投稿: | 2014年7月 1日 (火) 13時02分

>少なくとも今回の事故は大学の管理下で発生していますので、善意の第三者による救命という前提ではなさそうです。学校側はこういう事故が起こった時に速やかに「標準的な救命処置」が行われるよう準備しておかなければなりません。

素朴な疑問ですが金とってお客を乗せる運転手やAKBの会場警備員にもこの種の責任がありますか?
ただの人とそれ以上の責任が求められる人の線引きってどうなってるんだろ?

投稿: たもやん | 2014年7月 2日 (水) 09時59分

花火事故の後日談にも現れているように、そのあたりの区分は非常に判断が難しいものがあると思われますし、今回の裁判においても争点になると言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2014年7月 2日 (水) 11時49分

AEDなんて置かなきゃよかったんだよ

投稿: | 2014年7月 2日 (水) 21時55分

>素朴な疑問ですが金とってお客を乗せる運転手やAKBの会場警備員にもこの種の責任がありますか?

そのあたりは裁判の判例を待つことになりますが、少なくともAKBの場合は会場警備員ではなく客が金を払っている対象(AKBの世界では支配人?)が責任を負うことになると思われます。
同様の事例で小学校で教員がAEDがあるのに使わなかったために児童が死亡した事例も裁判になっているようなので、そちらも興味深いです。

投稿: クマ | 2014年7月 2日 (水) 21時56分

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