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2014年6月10日 (火)

お薬手帳と20円

今春の診療報酬改定で薬局での処方薬を記載、管理するいわゆる「お薬手帳」についての報酬改定が行われた結果、薬局で薬剤服用歴管理指導料を満額算定するためには残薬の確認やお薬手帳への記載などが必須となりましたが、この結果「お薬手帳を持たなければ薬局での支払いが(3割負担の場合)20円安くなる」と言う現象が発生することになりました。
お薬手帳に関しては東日本大震災でも特例で手帳があれば処方箋なしでも持病の薬がもらえたりと大活躍でしたが、特に急病や本人が服薬内容を十分に理解していない場合、複数の薬局をかけ持ちしている場合等々数々の有益な効能があることは言を待たないのですが、持っていた方が有益であるのは理解していても有料(コスト高)となるとその利用を躊躇するのも人として当然と言えば当然の心理ですよね。
診療報酬改定から二ヶ月が経過して、普段診療報酬にあまり興味を持たない方々の間でも「手帳を出さない方が薬局の支払いが安かった」と言う事実が認識され始めたと言うことでしょうか、最近こういう動きが世間で広まってきていると話題になっています。

「お薬手帳断ろう、20円安く」ツイッターで拡散 薬局などは有用性PR(2014年6月8日産経新聞)

 「お薬手帳を断れば、薬局の支払いが20円安くなる」。医療の値段である診療報酬が4月に改定されたことを受け、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」でそんな情報が広がっている。薬剤師などの医療従事者からは「自分の健康を守る手帳なのに、安くするために断るという考え方はなじまない」と戸惑いの声が上がるが、現場では手帳を断る患者が増えている。薬局側は「有用性を分かってもらうことが大切」として説明を強化し、理解を広げたい考えだ。

 お薬手帳は、医療機関で処方された薬の名前や処方量などをシールで貼るなどして記録、管理する手帳。他の医療機関で出された薬との飲み合わせや過去の処方薬の確認ができることから、全国の薬局で取り入れられている。東日本大震災ではカルテを流された医療機関もあったが、患者が持参したお薬手帳が診療の大きな助けとなった

 従来、手帳への記載などで薬局が得られる「薬剤服用歴管理指導料」は410円だったが、4月の診療報酬改定で手帳が不要な人への指導料は340円に減額された。3割負担だと自己負担額は20円安くなる計算だ。

 ネット上では「手帳を断れば20円安くなる」「20円を得るため、薬局は勧めてくるので断ろう」といった情報が拡散。逆に「20円のために健康を危険にさらすのか」などの反論も続出している。

 厚生労働省は「安くなる裏技のように情報が広がるのは好ましくない」とするが、「患者側が手帳にメリットを感じていないから、そういう意見が出るのではないか」と医療者側にも責任があるとする。

 こうした事態に、薬局も対応に本腰を入れ始めた。全国で調剤薬局を展開する「アイセイ薬局」(東京都千代田区)によると、お薬手帳を断る患者は1割ほどで、4月以降増えているという。同社は「診療報酬が改定されたのは、お薬手帳の運営が形骸化しているという批判があったからだろう」と分析。患者に手帳の有用性を説明するため、薬の飲み合わせによる副作用事例などをまとめた冊子を作成中だ。

 こうした動きは多くの薬局に広がり、ポスターを掲げたり、チラシを配布したりする店舗も。アイセイ薬局の担当者は「有用性をアピールするだけでなく、手帳が不要な場合は安くなることも伝え、患者の信頼を得ていきたい」と話している。

もともとはお薬手帳の交付と言う作業が形骸化して意味がないのでは?と言う疑問が先にあり、それなら算定の要件を厳しくしようと言う考え方で始まったことですから当然シールを貼るだけでなくきちんとした説明等も行わなければ算定してはならないコストですが、患者側からすれば毎回毎回同じようなことを聞かされ待ち時間も長くなる上に料金も高くなるのでは正直あまり有り難みがないとも言えますよね。
薬局にとってはもちろん患者一人あたり7点ずつ取れるかどうかで収入に差が出る理屈ですが、全国平均で薬局一つあたり月に約1000枚の処方箋を捌いていると言いますから単純計算で最大7万円の差と言うのはなかなか微妙なところかなと言う印象で、恐らく多くの薬局では手間ひまの増加や顧客トラブルのリスクを考えて「無理にはお勧めせず」と言ったくらいの扱いになっているのではないかと予想しますがどうでしょうね?
ともかくもこのお薬手帳の扱いが変わると言うことが決まった時点で果たして手帳は持つべきなのか否か?と言う議論がすでにあったのですが、医療従事者の考え方はまた別として客観的観点からの意見ということでこちら一般誌の記事から引用してみましょう。

4月から医療費が変わる!おくすり手帳は持つべきか、持たざるべきか? (2014年2月27日ダイヤモンドオンライン)
より抜粋

(略)
 今回の診療報酬改定では、医療費削減のためにおくすり手帳への情報提供は必ずしもしなくてもよくなった。だが、国民の健康を守るという観点からすると残念なことでもある。
 薬は正しく服用すれば病気の回復を助けてくれるが、使い方を誤ったり、飲み合わせを間違えると、大きな事故につながることもある。それを防ぐための重要なアイテムがおくすり手帳だ。

 薬局では、薬の名称、飲み方や使い方、1回の用量、副作用などが書かれた薬剤情報提供書が渡される。これを読めば、渡された薬の内容は分かるが、その他にも医療機関にかかっていて薬を服用している場合の飲み合わせまではチェックできない
 おくすり手帳は過去に処方された薬の情報を1冊にまとめているので、手帳をみれば「他の医療機関から処方された薬との飲み合わせは問題ないか」「以前にのんだ薬で副作用が出たものはないか」といったことが判断できる
 旅先で体調を崩して、現地の医療機関にかかった場合も、おくすり手帳を持っていれば、ふだん服用している薬がわかり、適切な治療も受けやすい。また、東日本大震災では、おくすり手帳を持っていた人は避難所での治療や薬の処方もスムースに受けられ、患者も医療者もその存在の有難さを実感していた。

 4月以降、医療費を少しでも節約したい人は、おくすり手帳への情報提供は省くのもひとつの手段だ。だが、希望者は、これまでと変わらない価格でおくすり手帳への情報提供を受けられるので、持病があって定期的に薬を服用している人やアレルギーがある人などは、自分の身を守るために引き続きおくすり手帳を持つことを勧めたい
 せっかく医療費を支払って情報提供してもらうのだから、おくすり手帳は健康管理に役立つように最大限に活用したいもの。ときおり、医療機関ごとにおくすり手帳を分けている人を見かけるが、過去の服用履歴をまとめておくものなので、手帳は1冊にまとめるのがポインだ。
 また、アレルギーの有無、過去に飲んだ薬による副作用、ふだんよく使う市販薬やサプリメントなども記入しておくと、思わぬ健康被害を防いでくれて、薬剤師から適切なアドバイスも受けやすくなる。

 おくすり手帳を「持つ」「持たない」の判断は、家計の節約だけではなく、自分の身体の健康を考えた上で決めるようにしたい。

そもそもお薬手帳を持参してもらうことで薬局にしろ医療機関にしろ飲み合わせチェックや常用薬確認などの手間が省けるのですから、世間一般の常識から考えても手帳を持参しなければその手間の分高くなると言う形になってしかるべきだと思うのですが、医療現場のマンパワーを削減し医療費削減にも役立つはずのものをこうした扱いにしている診療報酬体系もどうなのかです。
ただSNS等で情報を広げているのは主に若年世代の方々だと思いますけれども、こうした方々の多くは日頃から持病を持っていたりすることもなくたまに医療機関に受診する程度でしょうからそもそも手帳を持ち歩くのが面倒くさいでしょうし、風邪薬をもらうたびに少しずつでも余分に支払いが増えるのはどうなんだと言う気持ちが働くのももっともではあるでしょう。
とりあえず医療の側から考えると定期的に病院にかかって薬をもらっているような方々はお薬手帳の一つも持っておいた方がいいだろうし、少なくとも定期処方薬の内容が変わった時には20円を支払ってでも記載をしてもらい説明も受けた方がいいと思いますが、それ以上に必要な時にきちんと手帳を活用出来るかどうかも重要だと思いますね。
せっかく手帳を持っていてもかんじんな時には「家に置いてきた」では意味がありませんから、保険証や診察券とセットにして医療機関を受診する時には必ず忘れないよう持ち歩いていただきたいものです。

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コメント

医療従事者に対する誘導と患者さんに対する負担が基本的にイコールなので、今の診療報酬体制だといつまでたってもかみ合わないですよね。
本気で誘導したいのであれば、診療報酬を増やすと同時に患者さんの自己負担を減らすようにしないと・・・

投稿: クマ | 2014年6月10日 (火) 07時55分

クマさんの2行で言い尽くされているわけですが、

>「患者側が手帳にメリットを感じていないから、そういう意見が出るのではないか」
今週のおまいう。

投稿: JSJ | 2014年6月10日 (火) 08時23分

役に立つことも多々あるんですけどね。>お薬手帳
でもずっと同じシール貼り続けて無駄に分厚くなるのもどうなんだって言う。
電子化してどこででも閲覧できれば楽になるのかな…?

投稿: ぽん太 | 2014年6月10日 (火) 08時56分

これは国が悪い
有意義なことは患者が進んでするようにしないと

投稿: | 2014年6月10日 (火) 09時38分

>本気で誘導したいのであれば、診療報酬を増やすと同時に患者さんの自己負担を減らすようにしないと・・・

今回のお薬手帳の件に限らず厚労省の設定する診療報酬による誘導の多くについて当てはまる話だと思いますが、その結果医療者側と患者側とが無用の対立関係に誘導されているのだとしたら残念なことです。
もっとも医療費削減を図る国から見れば両者が結託してwin-winな選択をしてしまうことは必ずしも望ましいことではないので、これも敢えてそのようにしているのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2014年6月10日 (火) 11時28分

個人的には、お薬手帳よりもかかりつけ薬局を決めたら自己負担が安くなる制度を作った方が前向きかなと思います。
先日来院された患者さんが、薬局ごとに別のお薬手帳を持っていて意味ねーと思わず口に出そうになったので。

投稿: クマ | 2014年6月10日 (火) 18時58分

診療報酬改訂は無意味。寧ろ手帳をカード型にしてほしい。保険証、診察券と併せて持ち歩くのに手帳だけがでかい!財布に入れられない(泣)

投稿: アン | 2014年6月10日 (火) 19時59分

それでも一番必要性の高いお年寄りはだいたい持っているので何とか助かってはおりますな>手帳
しかしどんどんぶ厚くなっていくのはなんとかならないものか?と思うのだが
通帳のように直接印字したほうがいいかもしれませんな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年6月10日 (火) 20時48分

電子お薬手帳を用いた健康情報や広告の配信事業、電通グループが参入
http://www.ipros.jp/news/article/detail/37422/

投稿: | 2014年6月11日 (水) 10時05分

電通参入ってw
いろんな意味で終わったなwww

投稿: aaa | 2014年6月11日 (水) 14時51分

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