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2014年5月31日 (土)

安全は何よりも勝る?

本日の本題に入る前に、以前に鳩をゆうパックで送ることが出来ると言う話題を紹介したことがありますが、この郵送で生き物を送ると言う行為はかなり広範囲に行われているようで、その結果こんな意外な事件も発生してしまうと言うことです。

ゆうパック:「遅配でクワガタ全滅」採集家が日本郵便提訴(2014年5月28日毎日新聞)

 ◇「腐ったので廃棄」死骸も「標本として価値」

 宅配サービス「ゆうパック」の配達が遅れたことが原因で荷物のクワガタ240匹が死に、死骸も無断で捨てられたとして、大阪府の昆虫採集家の男性が、日本郵便(東京都千代田区)を相手取り、19万2000円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。同種のクワガタは数千〜数万円で取引され、標本の価値も高いという。28日に第1回口頭弁論があり、日本郵便側は争う姿勢を示した。

 訴状などによると、男性は沖縄県の昆虫店の注文を受け、鹿児島県の奄美大島で「アマミノコギリクワガタ」を採集。昨年7月2日、240匹を沖縄へゆうパックで送った。
 ところが、到着予定日の7月4日に届かず、男性が問い合わせたところ、郵便局側のミスで熊本県に誤配されたことが判明し、男性は奄美大島への返送を依頼。男性側は7月6日に届いた時点で「クワガタは全て死んでいた」としている。
 更に男性が弁償を請求したのに対し、郵便局は死骸を預かり、同9日に「死骸の価値は0円」と弁償を拒否。死骸を返すよう求めても「腐ったので廃棄した」と言われたという。男性は「死体を防腐処理すれば標本として販売することもできた。『死骸だから0円』というのは不誠実」と訴える。昆虫店への販売代金は1匹当たり雄1000円、雌600円で240匹分の代金の賠償を求めている。

 一方、日本郵便側は、誤配したことは認めたが、男性に届けた時点で「7匹しか死んでいなかった」と反論。預かった死骸も240匹ではなく140匹だったとしている。代理人弁護士は「男性に返そうとしたが連絡がつかず、腐って業務に支障が出たので捨てたようだ。動物の取り扱いに関しての約款はなく、配達中に死んだとしても免責される」と主張している。
 日本郵便によると、昆虫については▽人に危害を与えない▽死ぬ可能性があることを承諾する−−などの条件で、ゆうパックで送ることができる。【堀江拓哉】

 ◇国内最大級 ペアには数万円の値も

 アマミノコギリクワガタ 鹿児島県の奄美群島などに生息する。雄の体長3〜8センチ程度で、国内のノコギリクワガタでは最も大きい。8センチ近い雄の生体は雌とのペアで数万円で売られることもある。希少な色や形だと標本の方が高価な場合も珍しくないという。

どうも双方の言い分がずいぶんと食い違っていることから裁判は難航しそうですけれども、一般論として考えるとゆうパックと言うものが生き物を送るのに特化したサービスであるとはちょっと思えませんから、本当に高価で間違いがあってはならないと言うことであれば美術品配送等と同様に特別の配慮をされたサービスを利用すべきだったのかと言う気はしますでしょうか。
今現在も議論が続いている原発存続の問題であるとか、あるいは全国に津波対策として堤防を建築すべきかと言った問題もそうですが、リスクはどこまで許容すべきかと言う問題は同時にどこまで利便性を追求すべきかと言う問題でもあって、その評価軸は一次元的に良いと悪いとの間に分布しているのではなくて少なくとも二次元、恐らく多くの場合三次元以上の複雑な分布を示しているのだろうと言う気がします。
それだけ複雑な問題を賛成か反対かという一次元的な結論に落とし込むのは難しいだろうなと思うのですが、世の中にはそれをごくごく簡単な価値観の問題であると割り切って考える人も少なくないようで、しばしば「安全は何よりも優先する」だとか「人の命は地球よりも重い」と言った類の、結局何も言っていないのと同じ意味しか持たない言葉で思考停止に陥りがちなところがありますよね。
このところ急成長中のLCCなどについても欠航等のトラブルが盛んに報道される機会があって、報道する側もどこか鬼の首でも取ったかのような報道ぶりだなと思っていたのですけれども、これに対して「安全に関しては安かろう悪かろうであってはならない」と言った声がマスコミのみならず各方面から少なからず出ていて、もちろん過去の悲惨な飛行機事故の数々を思えば理念としてこれはその通りだとは思います。
ただ安い=悪いと言う直結思考からすなわち安全性もケチっているのだろうと短絡するのはアンフェアな態度なのも確かで、議論のネタとなる一つのデータとしてこんな記事を紹介してみることにしましょう。

LCCは本当に安全か?(2012年5月1日格安航空会社.jp)より抜粋

LCC(格安航空会社)というと、本当に安全なのか?、事故率が高い危険な航空会社なのではないかと、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
「格安」ということなら整備費用など安全面を犠牲にしている部分がありそうだ、と思うのはある意味、人間として当然の危機意識かもしれません。
ただ、LCCについては格安であるのは安全性を犠牲にして整備費を削っているからではなく、あくまでマーケティング費用を削ったり、効率的な運行による機材費等の有効活用を図っているためです。

実際に事故数、事故率の数字を見てみましょう。
元ネタは以下のサイトです(英語)。 

AirSafe.com
Airline Accident Rates | PlaneCrashInfo.com

このサイトによれば、最も有名なLCC3社であるサウスウエスト航空(アメリカ)、ライアンエアー(アイルランド)、イージージェット(イギリス)は、創業以来、乗客・乗員の死亡事故はゼロです。
3社はLCCとしては老舗であり、1980年代から運行し、フライト数もかなりの数をこなしています。

    サウスウエスト航空(約1800万フライト)
    ライアンエアー(約300万フライト)
    イージージェット (約250万フライト)
※フライト数は1992年から2011年までの累計

従来型の航空会社のエールフランスやスカンジナビア航空が何度か死亡事故を起こしていることを踏まえれば、むしろLCCの方が安全とすら言えそうです。

    スカンジナビア航空(約600万フライト:死亡事故数2)
    エールフランス(約670万フライト:死亡事故数5)

日本との関わりが深いエアアジア(マレーシア)も、創業以来、大きな事故は起こしていません。
(略)
当然、LCCも事故と全く無縁というわけではありません。乗客の死傷を伴わない小さな事故は通常の航空会社と同様それなりの頻度で起きています

Low Cost Carriers Accidents or Incidents

こちらも英語のサイトですが、気になる場合はチェックしてみるといいかもしれません。
(略)

記事にもありますようにあくまでもLCCの中でも老舗・大手と言われる会社の数字ですから、近年出現した新興勢力に関しては未だデータが揃っていないとしか言いようがないように思いますが、もともと現行の新しい機体を用いている限り原則飛行機の重大事故率と言うものはそう高いものではなく、「あの会社は危ないぞ」と言われるほど顕著な有意差を示すのはなかなか難しいのかも知れません。
例えばLCCに限らず特定の航空会社が他社平均より事故が多いと言う事実があった場合、元々の航空機事故率の低さを考えるとそれ自体が許容されるものか否かはなかなか判断が難しいところで、特に利用する当事者と利用しないその他社会との間でも判断が分かれそうに思います。
ただ墜落と言った重大トラブル以外の運行休止や遅延が多いんじゃないかと言う懸念はあり得ることで、日本に関して言えばLCCの導入初期であり社会的にも注目を集めている中で特にLCC絡みのトラブルが注目されやすいと言うバイアスはあると感じていますけれども、一方で何かしらトラブルが発生した場合のリカバリー能力が低く容易に運休になりやすいとは当のLCC側も認めていることのようですよね。
この辺りは機材的にも人員的にも余裕の少ない低コスト運行を行っている弊害であると言えますが、価格差が十分大きいなら利便性低下は我慢出来ると言う人はそれなりにいるだろうし、社会のあらゆる場面でリスク低減だけを絶対唯一の判断基準にして行動を決めている人はまずいないと言う現実を見る限り、元々そう危険なものでもないのだから仮にリスクがある程度増えても許容範囲だと言う声も一定数は出てくるでしょう。

絶対譲れない部分に集中投資して他は「適当に」手を抜くと言うのは経営的には大変重要なことで、大衆向け飲食店店で食中毒には万全の注意を払っても高級レストランのような安楽な内装を行わないのはコスト要因以外にも、簡素な内装で客の回転が速くなって薄利多売という目的にかなうと言う側面もあるわけです(実は近年どこのチェーン店も理想的な内装とはどうあるべきかとは盛んに追及しているトピックだそうですが)。
LCCに関して言えばその目標はコスト度外視で安全運行を追及すると言うことではなく、許容される妥当な安全性を確保しながらリーズナブルな価格を追及することだと思いますが、その許容される安全性と言う意味合いもまさに時代や個人の価値観と共に変化するものであって、恐らく日本でもLCC流の運行に慣れてくることによって、今後は命に関わらない程度の多少のトラブルは許容しようと言う人が増えてくる気がします。
安全性に劣ることは承知の上で軽自動車がこれだけ売れていると言うのも、自動車に関してはこの程度の安全性があればもはや十分と言う認識が成立しているからだと言えますが、飛行機の事故率を考えると安全性に関してはすでに自動車よりもずっと信頼感が高いと思われますから、今後は更なる安全性追及を求める声よりももう少し緩くても安い方がいいんじゃないかと言う声が出てくる可能性の方が高いと思いますね。
ただその場合乗っている本人は納得の上で安さを求めるのだから構わないのですが、「安かろう悪かろう」の飛行機が街のど真ん中に墜落して多数の巻き込まれ被害が出たともなれば「それ見たことか」と大激論になること必至と言うもので、自動車が自らの安全性向上だけでなく相手に与えるダメージ軽減にも留意し始めているように、今後はそうした方面での安全性追求と言うことも技術と技能の両面で進められていくべきなのかも知れません。

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コメント

日本航空で昨年10月~今年5月、旅客機のエンジンに部品を取り付けずに飛ばすなどの
整備ミスが16件起きていたことが30日、同社などへの取材で分かった。国土交通省は多くの
ミスが続いた点を重視し、原因究明や再発防止策の取りまとめを指示した。

同社や国交省によると、ボーイング777型機で5月8日、右エンジンの逆噴射装置にある
「整流板」という部品がないのに整備士が気付いた。3月末の整備で担当者が付け忘れて
いたことが判明。同機はこの間、約1カ月にわたり、国内線で運航されていた。
1月にはボーイング767―300型機で着陸用タイヤの間隔を保つ部品の付け忘れがあったほか、
昨年10月には潤滑油が入った缶を胴体下部の電気室に置いたまま離陸するなど、ミスが相次いだ。
いずれも羽田空港で作業が実施されており、同社は5月19日から5日間、羽田での大規模整備を
休止し、手順の再確認や整備士同士の意見交換を行った。
日航広報部の話 真摯(しんし)に反省し、基本作業を忠実に実施して、こういうことがないように努めたい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140530-00000132-jij-soci

投稿: | 2014年5月31日 (土) 07時42分

安全を何よりも優先にしちゃったら医療行為はできなくなっちゃうんだよね

投稿: | 2014年5月31日 (土) 08時55分

意外と成績に差がつかないもんですね。>事故率
機体の安全性能がいちばん大事な要素なのかも知れないですね。
でも定時運行してくれないと使いにくいかなあ…

投稿: ぽん太 | 2014年5月31日 (土) 10時17分

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