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2014年5月17日 (土)

需要があるのに人が集まらないのは医療だけではない

医療現場が大変であるという記事は近年売れるトピックスだと認識されているようで、先日も脳外科・神経内科専門医の4割が燃え尽き症候群だとか、看護師の3/4までもが仕事を辞めたいと考えているだとか、この業界の先行きは大丈夫なのか?と疑わざるを得ないようなニュースには事欠きません。
当然ながらこうした労働環境においては逃散だ、崩壊だと言われるほど各地で離職者が相次ぎ人手不足が言われてきたのですが、今までは医療が専門資格を有する職場であるという特殊事情がその背景にあるものという考え方も相応に支持されていたと言うことなのか、もう無理だと離職していく状況に目をつぶってとにかくひたすら有資格者を増やせばよいと主張する管理職の方すらいたわけです。
医師など国が強制配置すればいいと労働環境改善を怠った病院からはどんどん人が逃げていくのも当然ですが、国としても日本国中の医療機関が多すぎる、もっと統廃合し集約化すべきだと言う考え方を持っていて、職員を無駄に酷使し奴隷労働を強いる病院から次々と逃散が発生して廃業に追い込まれることは結果的にウェルカムなのですから、近年続いてきた数的拡大はそろそろ一段落つきそうだと考えるべきでしょうね。

ただ労働環境が悪い職場から人間が逃げ出していく、その結果場合によっては廃業に追い込まれると言った話は別に医療現場に限った話ではなく社会全般で起こっている現象であるようで、最近話題になっているブラック企業問題などもひとたびブラックと悪評がネットに流れでもすれば人材集めも苦労すると言う声が企業側から漏れ聞こえて来ます。
この方面では飲食業界に有名処が多いようで、夜間になるとたった1人の店員で全ての仕事をこなさなければならないと悪評高かった某牛丼店などはあまりに被害が頻発し強盗御用達の店などと言われていましたが、最近では店員が集まらず閉鎖店舗数多で経営も悪化してきているそうで、経営母体の社長さんなども労働者を不当に搾取する巨悪としてすっかりイメージが地に落ちていらっしゃるようですよね。
同社に限らず外食産業全般で最近人手不足が深刻化していて、場所によっては時給1500円にまで引き上げてもアルバイトが集まらないと言っているそうですが、実は今の時代アルバイト不足に留まらず各種業界で深刻な人手不足が進行していると言うのですから、少し前まで不景気だ就職難だと言っていたのに?と意外な気もします。

消費増税とのWパンチ 「人手不足倒産」激増の恐怖(2014年5月13日日刊ゲンダイ)

 4月の企業倒産件数が18カ月ぶりに増加に転じた。産業界からは「消費増税の影響が大きい」という声が漏れてくるが実はそれだけではない。建設現場や小売業を中心に人材確保がままならず、“人手不足倒産”が起き始めているというのだ。増税と人材難のダブルパンチが“倒産激増時代”をもたらしかねない。

 4月は連鎖倒産を引き起こすような大型倒産(負債額100億円以上)はなかったが倒産件数はなぜか増えた。東京商工リサーチによると、資本金1000万円未満の倒産は前年同月比で10.8%増。従業員数別では「5人以上、10人未満」が7.2%増だった。中小零細企業の倒産激増が全体数を押し上げたのだ。
「中小零細が消費増税のシワ寄せを受けたのです」(経済評論家の杉村富生氏)
(略)
 ただでさえ中小企業は悲惨な状態なのに、安倍政権の公共事業乱発が追い打ちをかけている。建設業を中心に人手不足が深刻になっているのだ。

■バイトの時給上がれど、正社員雇用増えず

「人件費アップを吸収できる大手と違い、中小零細は深刻です。従業員の給与を引き上げないと、社員は他社に逃げるし、賃金を上げれば今度はコストばかりが増える。身動きが取れず、結局、倒産です」(杉村富生氏)
 事実、人手不足倒産は増加傾向にあるという。
「埼玉県の木造住宅の会社が、人材難で倒産しました。職人が集められなかったようです。北海道にある介護関連企業も人材不足から経営が行き詰まり破産しています。13年の人手不足倒産は249件でしたが、今年は1.5~2倍になる危険性があります。特に外食や小売りが心配です」(東京商工リサーチ情報部の関雅史氏)
(略)
「連鎖倒産を覚悟しなければなりません。安倍政権は大手企業を優遇するばかりで、中小零細の倒産を食い止める手を打とうとしません。集団的自衛権などの安全保障より、中小企業対策をしっかりやるべきです」(証券アナリスト)

 問題なのは、アルバイトの時給は上がっても正社員の雇用はほとんど増えていないことだ。
 4月の倒産増加を「一時的なもの」と甘く見ると、日本経済の先行きを見誤る。

この問題、冒頭に取り上げた医療業界における状況と共通する病理が存在しているようで、医療の場合全国一律の公定価格下で商売をしてきた中でその公定価格がどんどん引き下げられ経営が悪化してきた、その結果各施設が薄利多売で利益確保を図ったものの、今まで以上に仕事が増えるばかりでこれではやっていられないとスタッフの離反を招いたと言うのがいわゆる医療崩壊現象の概略であったわけです。
これに対して中小企業の場合も多くは大手の下請けと言う形でもともとコスト要求が厳しく仕事と給与のバランスに対する職員の不満がある、そこにさらにデフレだ、消費税アップだと言う中で大手側からはさらにコスト削減を求められるばかりで仕事は増えども給料は増えないとなれば、それは大抵の人間が嫌になって逃げ出したくもなりますよね。
興味深いのは先日取り上げたブラック企業問題に関する学生の意識調査においてもそうなのですが、このところ世間の労働環境と言うものに対する意識が非常に高まっているのではないかと感じられることで、特にひと頃は給料が下がったと言った金銭的待遇にセンシティブだったものが、一回りして皆が贅沢に関心がなくなってきたせいか単に人手不足で仕事がきついと言った状況に対しても非常に悪印象を持っている気がします。
この点で面白いのが残業に関する内閣府の意識調査で、従業員側は残業を多くすることが上司にも肯定的に評価されていると考えているのに会社側は全然気にしていないと言う結果が出ていて、確かに仕事が遅い上に余計な残業代まで取っていく社員が会社から評価されるはずもないと理屈では判る話なんですが、どうも今現在は働くということへの社会の意識変革期にあるのかなとも感じさせられます。

いささか脱線しましたが、もともと従業員に無理を強いてコスト削減をすることでしか売れなかった会社など国際競争の時代にあって存在価値はないと言ってしまえばそれまでなんですが、日本の産業が数多くの優秀な中小企業によって支えられてきたと言う歴史的経緯があるだけに、成り行き任せで淘汰が進んでいくのをただ見ていればいいのか?と言う心配は多くの方々も感じることでしょう。
これも理屈の上で言えば単に安いだけの仕事は人件費の安い外国産にかなわないのだから、日本国内の産業は高くても品質で商売が出来る高付加価値型であることを目指すべきだ、その過程において価格にしか価値のない会社が淘汰されていくのはやむを得ないと言う考え方はあるはずで、実際に世界でここにしか出来ないと言った質の高い仕事をしている中小企業がたびたびニュースなどでも取り上げられますよね。
理想的にはそうした優秀な技術力を持つ企業に人材が集約化されていけば医療と同じ統廃合と集約化の推進と言うことになるのでしょうが、多くの産業の場合質が最優先される医療と異なって価格をある意味無視してでも質を追及すべき場合はむしろごく限られていて、大多数は一定程度の質さえあれば安い物で構わないと言う位置づけにあることは無視出来ない差異だと思います。
国内雇用確保として考えるならそうしたバリューフォーマネーで売るしかない企業でも雇用先としての意味はあるわけですから、例えば一定額の補助金を出すなりしてでも保護した方が失業者も減り税収も増えると言う考え方もあるでしょうが、何にしろそこで働く労働者がこれ以上は嫌だと言っている状況を改善しない限りはどんな保護的政策も意味がないと言う点では医療と共通するとも言えそうですね。

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コメント

 店にもよるが、クルーは最低限の人数が配置される。それでも、
接客、提供、片付けとやることが山で、かなりヒィヒィ言わされているようだ。
「おまけにすき家の場合は、他のチェーン店に比べて券売機がない。
その作業が減ってくれるだけでどんなに助かるか……。
お客さんのなかでもうっかり食べたら会計をせず帰ろうとする人もいるくらいで。
こないだ、支払いをせずに出ていったお客さんを追いかけたら『こっちは払うつもりだったんだ』と逆ギレされました。
だから下手にお客さんを食い逃げ扱いすることもできず……」(28歳・元クルー男性)

 また、兼ねてから問題視されてきているのは深夜の“ワンオペ”だ。ワンオペレーション、
つまり一人で店内を回すことである。注文を受けた後、キッチンに入って盛りつけ、
そして提供、会計、片付け、そして報告まで全部ひとりでこなす。聞いただけでも大変だ。

「いくら深夜だとしても、集客の山場はある。とあるスクランブル交差点の一角にあるお店だったんですが、
終電後、流れるように入ってきたときは地獄を感じました。なかなか提供できずに
モタモタしていていると深夜のガラの悪い客から罵声を浴びたり、
テンパっていて大変なときに酔っ払い客が食い逃げしたりと、
散々な思いをたくさんしてきました。おまけに洗い物は後回し。
とうとう食器が足りなくなり、仕方ないので水でささっとゆすいだ食器で提供したりしていました」(25歳・元クルー)
http://topics.jp.msn.com/wadai/spa/article.aspx?articleid=4398615

投稿: | 2014年5月17日 (土) 07時53分

給料上がっても物理的にこなせる仕事って限界がありますもんね。
しかし洗い物もしなくて食中毒でないんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2014年5月17日 (土) 10時05分

求人が増えた時に中小企業が人手不足に陥るというのは今に始まった話ではなく、いままで何度となく繰り返してきたこと。
それに、倒産にだけ目をむけても無意味。
なぜなら、
倒産も起業もない社会よりも、倒産も起業もたくさんある社会のほうが健全でしょう。

投稿: JSJ | 2014年5月17日 (土) 10時52分

もの作りのベースラインが一度落ちちゃったら大変だよ
安いものを買ってくればいいじゃすまない

投稿: | 2014年5月17日 (土) 12時26分

日銀が成長戦略の重要性をあらためて強調し始めた。デフレ脱却が順調に進む中で、人手
不足など供給面の制約が成長の足かせになる可能性があるとの見方が出ているためだ。

日銀内では、税収が増えずに物価と長期金利が上昇する事態を懸念する声も聞かれ始め
た。市場にくすぶる追加緩和期待と日銀内の議論との間には距離がありそうだ。

<物価・金利の先行上昇懸念も>

黒田東彦総裁は15日米コロンビア大大学院が都内で開いた会議で「日本経済が中長期的
に成長するためには供給力の拡大が重要」と強調した。「この1年ほどの間に、大規模な
金融緩和、財政支出、民間活動の活性化によって需要が高まると、水面下に隠れていた供
給力の問題が姿を現した」と指摘。「具体的な人手不足という現象を推進力にして、成長
力の問題を広く議論し、解決を模索していくべきだ」と述べた。 

背景には日銀の想定よりも早く人手不足などの供給側の制約要因が現れ、日本経済の成長
の壁が見えてきたことがある。輸出の低迷が続き、成長率が日銀の想定を下回っているに
もかかわらず、物価はこれまでのところ想定を若干上回るペースで上昇。雇用のミスマッ
チや生産設備の老朽化などで日本経済の供給力に思いのほか余力がなかったと解釈されて
いる。

このため日銀は4月末に2016年度までの経済・物価見通しを示した際、13年度と1
4年度の成長率を下方修正する一方、物価見通しはほぼ据え置いた。

理論的には供給制約があれば日本経済の潜在力との差を示す需給ギャップが縮まり物価が
上がりやすいため、2%の物価目標達成を急ぐ日銀には朗報となる。 

実際、日銀の試算によると、需給ギャップは昨年10─12月にほぼゼロまで縮小し、1
─3月以降はプラスが続く見通し。消費増税後の4─6月も1─3月と比べほぼ横ばいと
みており、物価上昇圧力は消費増税で腰折れしないとみている。

ただ、日銀内では物価の上振れリスクに言及する声も聞かれ始めた。黒田総裁は3月以降
、日本経済は、就職希望者がほぼ雇用されている完全雇用の状態に近いと繰り返してい
る。労働需給面では、少なくとも賃金、ひいては物価の上昇圧力が相応に高まりつつある
と意識していると想定される。

 関係者によれば、成長率が十分伸びない中で物価が先行して上昇を続ければ、税収は伸
び悩む一方で物価と長期金利が上昇し、「どちらかと言えばスタグフレーション的な世
界」の実現が近づくことを懸念する声もあるという。

<16年度の成長見通し、政府より慎重>

日銀は、昨年1月に政府と結んだ共同声明でうたわれた成長戦略を政府が積極的に進める
前提で異次元緩和を推進している。黒田総裁も15日の講演で「政府は幅広い分野にわた
って成長戦略の方針を示し、実行を加速しようと取り組んでいる」と指摘した。

日銀による16年度の実質成長率見通しは前年比1.3%。1月に政府の経済財政諮
問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」の同1.8%(成長戦略が奏功し
たケースの試算)を大幅に下回っており、今後の成長率について日銀が慎重にみている証
左と言える。

市場や政府・与党関係者の一部には、2%の物価目標達成は容易でないとして、追加
緩和期待がくすぶり続けている。黒田総裁も、達成が難しい場合は追加緩和を辞さない姿
勢を繰り返し示している。しかし、日銀が懸念する供給面の制約への対応は成長戦略が担
うべき部分でもあり、そうした日銀内の問題意識と市場の追加緩和期待にはずれが生じて
いる。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DW05R20140516

投稿: | 2014年5月18日 (日) 07時36分

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