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2014年5月 7日 (水)

今さら科学のイロハから?

STAP細胞騒動は捏造があったかどうか論文を検証するはずが検証する側も論文捏造を指摘されるなど泥沼の様相を呈しているようですが、その騒動に関連してこんな通達が出たようです。

「STAP信じている」だけでは駄目…学会強調(2014年4月28日読売新聞)

 STAP(スタップ)細胞論文の問題をめぐり、日本分子生物学会の大隅典子理事長は、データの正確な記録や再現性の確認など、科学の世界で決められている手続きを守るよう呼びかけるメッセージを、同学会の全会員に電子メールで送った。

 同学会は会員数が約1万4000人で国内の基礎生物学系では最大。学会トップが改めて科学の基本を会員に説くのは異例と言える。

 メッセージは、研究者が「発見」を知らせるための手続きが決まっており、「『発見しました』『信じています』というだけでは駄目だ」と強調。データを正確に記録し、その記録を基に再現性を十分確かめた上で、論文や学会発表の場で他の研究者に見てもらい、必要があれば追加データを示すことが求められると訴えている。

しかしこのSTAP騒動、すでに理研内部では自主的に全研究者の過去の論文チェックを行っているそうですけれども、現職3000人の少なくとも2万本以上にもなると言う全論文を意味のあるレベルで検証する手間もさることながら(まさか一通り目を通しましたでおしまいでもないでしょうしね)、それだけのことをしなければならなくなっている状況であることが問題です。
ちなみに元々の大隅理事長のメッセージがこちらなのですが、正直大学院初年度辺りに言うこととしてはともかく、一応は真っ当な研究活動に従事しているはずの学会会員に今さら出す内容か?と言う気もするのですが、まさしくその辺りがこの問題の思いがけない影響の大きさということなのでしょうね。
ともかくも論文として査読を受けきちんとした雑誌に掲載されて世に出た以上はそれなりに信用されるのが科学の世界と言うものですが、過去を振り返ってみればひとたび掲載された論文であっても後になって否定されたと言うことが決して少ないわけでもなく、有名なところでは「三種混合ワクチンによって自閉症が引き起こされる」として話題になったランセットの論文が後に撤回されたと言う事件がありました。
もちろんこうした論文が世に出ること自体も問題なのでしょうが、それ以上に問題なのがこうして間違いであると判明し撤回された後もこの論文がなおも変わらずワクチン有害論のソースとして用いられ続けていると言う点で、どうも科学というもののあり方にももう少し実社会との関わり方も含めて考えていく必要があるのかなと言う気もしてきます。

週刊文春の「遺伝子組み換え作物で発癌」報道に思うSTAP現象の今後(2014年4月28日日経メディカル)

 週刊文春が4月17日号と24日号で、TPP(環太平洋経済連携協定)に関連して、遺伝子組み替え作物(GM作物)に対するネガティブキャンペーンを行っている。
 「米国産『危険食品』で子供が壊れる」というタイトルの17日号の記事にも「バイオ企業も食べないGM作物」などと刺激的な見出しが躍っていたが、24日号の「遺伝子組み換え作物から子供を守れ」という記事には、「抹殺された動物実験データ」としてフランス・カーン大学のセラリーニ教授の実験データと、「遺伝子組み換え作物を食べたラットは腫瘍だらけになった」という同氏の“衝撃的な”インタビューで構成されている。

 2012年11月、このデータがElsevier社が発行するFood and Chemical Toxicologyに論文として掲載されると(発表は9月)、世界的に議論が巻き起こった。
 しかし最終的にこの論文は、2013年11月に取り下げられている。取り下げに当たって同誌は生データの査読を要求し、結果的に虚偽はなかったものの、サンプルサイズと動物種の選択に問題があり、決定的な結論は導けないとした。
 同誌の論文取り下げの決定に対しては、「GM作物を販売しているモンサントに勤務したことがある研究者が編集に関わっていた」「取り下げには何らかの圧力を感じる」「取り下げるほどの理由はなかった」など、現在も火種がくすぶっている

 この論文発表時の米国Forbes誌の記事によると、セラリーニ氏は批判を封じるために、正式な発表まで記者達と秘密保持契約(non-disclosure agreement)を結び、事前取材を不可能にしていたという。
 その甲斐もあってか、大きな腫瘍を持ったラットの写真を伴った突然の発表は大きな効果をもたらし、フランス首相が「本当なら欧州全域でGM作物を禁止した方がよい」と発言するまでに至った。
 発表後まもなく、研究者・研究機関からは、「プロトコールに問題があり、結論には何の根拠もない」という批判が相次いだ。また、ラットの腫瘍が大きくなるまで放置したことに対する倫理的な批判もあった。セラリーニ氏にはそれまでにも、同様の“前科”があったらしい。

 ……と、こうした経緯を振り返ってみると、「STAP細胞」発表時の理研の報道規制や、マスコミの過熱報道、文部科学相の発言、背中にヒトの耳が生えたマウス、などを想起してしまうのは私だけではないだろう。
 ちなみに、1990年代後半に背中に耳が生えた「バカンティマウス」をつくったのは、STAP論文の撤回に反対している米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授、その人である。
 週刊文春が、今ごろ、なぜこのネタに飛びついたのかはよく分からない。世界的には、もう完全に終わったはずのこの議論が、周回遅れとなった日本で再燃することになるのだろうか。
(略)

もう少し詳しい話に関してはこちら日系バイオテクの記事を参照いただければと思いますが、すでに学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による「食品安全情報ネットワーク」が週刊文春に訂正記事掲載の要望書を提出するなど、文春側としてはそれなりに狙った通りの反響があると言った状況ではあるようです。
数年前に新生児に対するビタミンK投与の問題で大いに世を賑わせたホメオパシー騒動などでも、彼らホメオパスがその主張の科学的根拠と称している一連の論文が元論文に当たって見れば全く逆の内容であったことが明らかになっていますけれども、彼らがこうしたソースロンダリングと呼ばれる手法を根強く用いるのはそれが有効であるからだと言えるでしょう。
ただ商売としてやっている方々にとってはそれでいいとして、一応は事実に基づいて報道していると言う体をとっているマスコミの場合意図してこうしたソースロンダリングを行うことが果たして妥当なのかどうかで、例えば自社の主張をいったん海外の友好紙に提供して記事として掲載させた上で、それを引用して「諸外国でもこの通り!我々と同じ主張をしている!」とするやり方はありふれたものとなっていますよね。
週刊誌などはもともと情報の信憑性など二の次三の次であって、どこの誰とも知れない匿名の「事情通」が耳にしたという「噂話」で記事を組み立てるなんて荒技も当たり前に繰り出してくるメディアですから、あまり細かいことを言っても仕方がないと言う考え方ももちろんあると思いますが、こうした売らんかなの飛ばし記事であってもそこに事実の一端が含まれていると誤解する人がいるなら問題と言えるでしょう。

別の問題としてこうした記事を書いている記者が国民に対するジャーナリストとしての責任感なり善意なりから「世の中の思惑によって闇に葬られている情報を暴き出さなければ!」と考え記事を書いている可能性が全くないわけではないと言う点で、むしろ場合によってはこうした場合の方がより深刻な問題をはらんでいると言えるのかも知れません。
以前からマスコミ業界が文系卒ばかりであることに危惧する声が決して少なくなかったのは、知ったような顔で記事を書いているにも関わらず最低限の科学的常識が全く欠けているという危うさもさることながら、一度でも実験をし論文を書いたことがある人間ならやらないだろう物の考え方を当たり前にしてしまう、そしてそれがおかしいとチェックする人もいないまま紙面なり画面なりで垂れ流してしまうと言う点にあるのだと思います。
この辺りはまともなマスコミの中の人もそれなりに問題視しているところがあるようで、例えば医療バッシング報道から医療崩壊へと続いた流れの中で医師ら医療関係者が徹底的なマスコミ不審に陥った、そしてマスコミの頭の上を飛び越してネットで国民と直接語り合いながらの啓蒙活動を始めた際に、医療の専門的知識を持った上でちゃんとした記事の書ける人が欲しいとあちらこちらから声が上がったことがあります。
今回のSTAP騒動なども外野からマスコミがさんざんに言っているところがありますけれども、それらのほとんど全ては昔から各方面で指摘されてきたマスコミの抱える問題体質に関してもそのまま当たり前に通用する話であって、よく判らないながらに学者先生の批判の尻馬に乗って理研批判をするならそっくりそのまま自分にも降りかかってくるのだと言う自覚は持っていてしかるべきかと思いますね。

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コメント

陰謀論も絡んで訳が分からないことに
STAP騒動もIPS派に潰されたみたいな陰謀論がツイッターでは割と見かけます
まぁ基礎研究なんて金持ち以外はやらない方がいい
サラリーマン研究者になると食う為に研究するようになって結果がでないと捏造に走りますから
本業は別にあってパートタイムで研究できる環境みたいのがあればいいんですけどねぇ

投稿: | 2014年5月 7日 (水) 07時14分

>まぁ基礎研究なんて金持ち以外はやらない方がいい

そう言えば学生からも昼行灯と言われてた解剖の先生は奥さん大金持ちの令嬢だったとか。
研究って騙そうと思ったら騙せちゃうところありますからモラルがないと怖いですね。

投稿: ぽん太 | 2014年5月 7日 (水) 08時45分

あのSTAP細胞なるものも現象面としては非常に面白そうなテーマなのに、今後同種研究が眉唾物として最初から潰されてしまうとなると残念な話だと思いますね。
功利的になると研究が歪められる可能性が高まると言う点は同意しますが、同時に企業技術者流出問題にも見られるように成果を上げたことへの十分な報酬もまた必要ではないかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年5月 7日 (水) 11時45分

これだけ内情暴かれちゃって理研って終わってません?

投稿: | 2014年5月 7日 (水) 13時09分

“小保方モノマネ”放送を賞賛したロンブー淳に批判集中 「マジ死ねってクズが」

6日に放送されたテレビ朝日の「ロンドンハーツ」で女芸人の大久保佳世子が、
STAP細胞論文で“捏造疑惑”が浮上している小久保方晴子氏のものまねを披露し、話題となっている。
同日に同番組で司会を務めるロンドンブーツ1号2号の田村淳は自身のツイッターで
「ロンハー視聴収録は結構前だったから、久保方さんの所が放送されるかなぁと心配してたら、普通に放送に♪ 流石ロンハースタッフ!」
とロンハースタッフを誉め称えた。
しかし、淳のツイートに匿名の一般ユーザーから「非常識な放送をしておいてそれを称えるようなツイートを平然とするなんて流石の図太い神経ですね」と
批判されたが、淳は「ありがとうございます」とツイート。
また、違う一般のユーザーからも批判は止まらず
「おまえの嫁が人より何倍も努力しててちょっとしたミスで世間から人権侵害するような笑いのネタにされたらどうなんだ?マジ死ねってクズが」
とかなり厳しい意見をコメントされると、さすがに淳も「匿名で死ねって言う方がカスだろ?♪ そもそも理研否定派だし…週刊リテラシー見ろ!」と反論。
さらに、他のユーザーからも「小保方さんは 弱者、一般人を笑いにするなんて酷い。よく考えて下さい。
科学者は弱者でも一般人でもありません。世の為人の為の研究者です」との意見を受けると、淳は「ひとつの意見として頂戴しますね」とコメントしている。

http://npn.co.jp/article/detail/42199302/

投稿: | 2014年5月 7日 (水) 17時01分

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