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2014年5月10日 (土)

技術の進歩と一般化が否応なくもたらす変化

世の中技術的に進歩するだけではなく、それが誰にでも簡単に使えるようになってきていることも今の時代の傾向だと思っているのですが、その結果今までであればやりたくても出来なかったことが出来るようになったと喜んでいる方々も多いかと思います。
例えば今や当たり前になったボーカロイドなども単に見た目に可愛い、キャッチーだと言うだけでなく、作詞作曲能力はあっても歌唱能力のなかったアマチュアミュージシャンの方々にとっては偉大な福音だと思うのですが、特にPCやスマホがこれだけ普及すると機械制御で難しいことをやらせると言うことが普通に出来る時代になりました。
そうした点からも今もっとも注目され大衆レベルでの応用法が探られている新技術の筆頭にも挙げられるのが3Dプリンターだと思いますが、技術というものは常に諸刃の剣であると言う大原則を思い出させるこんな事件も報じられています。

3Dプリンターの銃所持、大学職員の男を逮捕(2014年5月8日読売新聞)

 3D(3次元)プリンターで製造されたとみられ、殺傷能力のある樹脂製の拳銃を所持したとして、神奈川県警は8日、川崎市高津区に住む20歳代の大学職員の男を、銃刀法違反容疑で逮捕した。
 県警は既に銃を押収しており、鑑定で殺傷能力があると確認したという。
 県警によると、3Dプリンターで製造された立体の構造物(3Dプリント)とみられる銃が国内で押収されたのは初めて

 捜査関係者によると、男は4月中旬、自宅で3Dプリントとみられる銃2丁を所持した疑いが持たれている。県警は同月、男の自宅から5丁を押収。県警科学捜査研究所で鑑定し、このうち2丁は弾丸を発射でき、殺傷能力があると判断した。適合する弾丸は見つかっていない。
 銃押収の際、県警は、男の自宅に3Dプリンターがあるのを確認。男は、この時の事情聴取に対し、「自分が作ったことは間違いないが、違法とは思っていなかった」などと話したといい、県警でくわしい経緯を調べる。
 県警は今年に入り、男が動画投稿サイトに、自ら製造したとして、3Dプリントとみられる銃と、基にした設計図の動画を投稿しているのを知り、捜査を進めていた。銃の設計図は、男が海外のサイトからダウンロードしたと県警はみている。

ちなみに「違法とは思っていなかった」と言っているそうですが、銃刀法によると銃砲とは「拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃をいう」とされていて、要するに銃としての機能があるかどうかが問題視され実際に弾が入っているかだとか弾薬を所持しているかと言ったことではないのですから、能力が確認されただけで取り締まり対象とはなり得る理屈です。
問題はこの「金属性弾丸を発射する機能を有する」と言う文言をどこまで解釈すべきなのかなんですが、火縄銃よろしく火薬に点火すれば単なる筒であっても原理的に弾は撃ち出せるわけですから、そこらの金属加工を扱っているような職場であれば銃砲を扱っていると強弁することもまあ出来なくはない理屈になりかねませんよね。
もちろん実際にはそこに行使の意図等を加味して運用しているはずですが、ともかくも自由自在に任意の形を作り出せる3Dプリンターによっても機能的に銃として認定されるだけのものが作り出せると確認出来た以上、今度はどのような形態であれば銃刀法に引っかからずに銃砲としての機能を維持出来るかと言うことを考える人間も出てくると思います。
個人的にはこの記事を見ていて思わずあの伝説的迷銃?を思い出したのですが、実際に似たようなことを考える人間はいるもので元ネタと思われる2013年に公表された世界初の3Dプリント銃にも同じ名前が付けられたくらいですから、もはや銃が出来るかどうかではなく一見してどれほど銃らしく見えないかと言う開発競争が加速していくことになるのでしょうか。
3Dプリンタなどはその原理的に見てもどのような方向性にも応用が利くもので対策もそれだけ難しいと言えますが、ごく身近なところにあるちょっとした道具でも使いようによっては非常に困ったことになると言う問題も最近にわかに注目を集めているようです。

「消せるボールペン」のリスクは“消せる”か…自治体、使用禁止に躍起(2014年5月3日産経新聞)

 ゴムの摩擦熱で筆跡を消し、書き直せることが売りの「消せるボールペン」の公文書への使用を防ごうと自治体が神経をとがらせている。文書を書き換えて手当てを不正受給するなど不祥事が全国で相次いだためだ。公文書の改竄(かいざん)は刑事事件にも発展するため、各自治体は新人研修で注意を促したり、全部署に通知を出したりして周知を徹底。普及とともに現れたリスクを“消そう”と懸命だ。

公文書「改竄」の危機

 「消せるボールペンという筆記具がありますが、当然、公文書には使わないように」。4月7日に行われた大阪市の新人職員研修。講師の文書担当職員は、こうクギを刺した。
 公文書は行政機関などの職員が職務上作成して組織的に使う文書で、行政活動の記録だけに、公文書管理法で厳格な管理が義務づけられている。改竄は、有印公文書偽造罪などに問われる可能性もある。
 同市は大阪府警で消せるボールペンを使った調書の書き換えが発覚した直後の平成24年8月、使用禁止に。文書担当の行政課は「書き換えられる筆記具で公文書を書いたら、市民への説明責任を全うできないことを継続的に職員に周知していく」と説明する。
 堺市も4月30日、使用禁止を徹底する通知を全課に出した。

勤務時間、費用を水増し

 茨城県土浦市は昨年9月、消せるボールペンで勤務表を改竄し計約70万円を不正受給したとして、消防本部総務課の30代の男性職員を懲戒免職にした。消防によると、23年4月に消防隊員から事務職に異動。宿直や休日出勤の時間外勤務手当がなくなったため、不正に手を染めた。消せるボールペンで勤務表を書き込み上司の決裁を受けた後、市人事課に持って行く途中で書き換えていたという。
 三重県津市では昨年5月、学校給食の食材を調達する市学校給食協会の元臨時職員が、ペンの悪用でパンなどの費用を水増しし、約105万円をだまし取った詐欺容疑で逮捕された。
 名古屋市では5局12部署でタクシーチケットなどにペンが使われていたことが発覚。改竄などの不正は確認されなかったが、監査委員は報告書でこう警鐘を鳴らした。「行政文書の重要性に対する意識が希薄化している」。
(略)

この消せるボールペンと言うものもなかなか面白い道具で、60度以上に加熱することで色が消えるインク(フリクションインク)を使っていることから消しゴムの摩擦熱で文字が消えると言う理屈なんですが、一応は冷やせばまた文字が出るのですがこれまたマイナス10度以下とどこででも用意出来るものではなく、現実的に大量の文書に対して簡単な方法での鑑別は難しいようです。
ボールペンでノートを取るフランスの学生向けに売り出した製品だけに日常的な環境でそうそう文字が消えては困ると言うことなのでしょうが、記事にある公文書への意図的使用以外にも借金などの契約文書に当事者には知らせずに使わせて好き放題後で改ざんすると言った悪質な利用法もあるようで、これまた応用法を考えていけば幾らでも悪いことには使えそうですよね。
当事者が意図的に使用する分には直ちにこれと言った対策を講じるのも難しそうなのですが、知らない間に他人に使わされ被害を被ると言うことだけはないよう国民の方々は製品画像をよく承知しておいてもらうべきだろうし、またメーカー側も消えるボールペンだと言うことが誰にでもきちんと判るように製品デザインを改良していただきたいものだと思います。
ただボールペンの性質上中のインク充填部分だけを取り出して流用するということが可能で、実際にこの商品などもオリジナルデザインの筐体に入れて社外品として売っているような場合もあるようですから、書いた時点で何かしら通常のボールペンと区別がつくような工夫をインク自体に施していただくしか抜本的対策はないのでしょうか。

世の中には技術的進歩のこうした負の側面にばかり注目して「問題があるからさっさと規制すべきだ」と言ったことを主張したがりな方々も少なくないのですが、よく言われるように包丁は取り締まれだとか車は全面禁止しろなどと今さら誰も言わないと言う話で、ある一定レベル以上に社会に普及し当たり前のものとなってしまうともはや規制論など唱えることが非現実的なものになってきます。
その有りか無しかの境界線上にちょうど今現在位置しているのが例えば原発であったりするのだと思うのですが、昭和の時代にあれだけ反対運動があった食品添加物なども今や当たり前に使われていて表立った反対論はほとんど聞かなくなった、一方でその使用を許容しない人は無添加食品を利用するなど個別レベルでの対応を図るようになっているように、技術の一般化は必ず人間の意識と行動も変えていきます。
冒頭に登場した3Dプリンターなども現段階では物を作って売ると言う段階から物のデータを売って各自作らせると言う段階への移行が模索されている状況ですが、すでに商業レベルで3Dスキャナで全身像を取り込んでその場で3Dプリンターで自分のフィギュアを作ると言ったサービスが登場しているように、立体造形においても自分で作る側に回るハードルが確実に下がっていることがどんな変化をもたらすのかです。
高精細な3Dスキャナと3Dプリンターがセットで安価に利用できるようになれば、2Dの世界において起こったように3Dの世界においても自炊行為が当たり前になってフィギュア屋さんなどは商売あがったりでしょうし、さらに進んで誰でも思いついたことを自由自在に立体化して自分で作り出せるようになれば、物を作って売ると言う産業の大前提さえもひっくり返りかねない時代が来るのかも知れませんね。

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コメント

消せるボールペンは職場ではがらくた以下ですので、全く購入したことはありません。
以前、某MRが販促品として薬剤名が印字された消せるボールペンを持って来ましたが・・・販促品の選択を誤っているとしか思えません。

黒インクの販売を中止すれば、こういう不正はかなり減少するとは思いますが、その方法しかないのでしょうか?

投稿: クマ | 2014年5月10日 (土) 08時30分

「銃を持つことは基本的人権」 3Dプリンター製造男?ネットに投稿
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140509/crm14050909040002-n1.htm
 3Dプリンターで製造された拳銃が初摘発された事件で、銃刀法違反(所持)の疑いで逮捕された湘南工科大職員の居村佳知容疑者(27)とみられる人物が、短文投稿サイト「ツイッター」に「銃を持つことは基本的人権なので、誰もが製造できるように3D印刷拳銃の図面を普及させる」と書き込んでいたことが9日、分かった。
 「銃のない世界は、正しい人ではなく、体力の勝る悪人が幅を利かせる」とし銃規制を緩めて自衛用に所持できる社会に日本を変える必要性を強調していた。

だそうです

投稿: | 2014年5月10日 (土) 08時40分

「消せるボールペン」の消しゴムはポリスイッチという半導体素子に適当な電流を流すと
発熱するので簡単に消せます。また、-10℃はスプレータイプの冷却材「キュー冷」をひと吹きで
簡単に!ハイテクの盾と矛ですかね。

投稿: HERO | 2014年5月10日 (土) 10時42分

ttp://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2700B_X20C14A2000000/
同僚は「機械」 消え行くホワイトカラーの仕事

技術の進歩と云えばこんな感じの記事がありましたね
要約すると機械の進歩で定型的な作業がどんどん自動化されていくという話
しかも自動化されなくてもIT化でどんどん海外にアウトソーシングもされていくのでホワイトカラーはブルーカラーより
技術の進歩でダメージを受けるって感じです

ttp://news.mynavi.jp/news/2014/04/24/402/
島津製作所など、がんの迅速病理診断支援システム ...

技術進歩で医療職の一部も消えたりするんでしょうか?
何でもIBMのワトソンとかそこらの内科医より凄いらしいですが
確かに知識の量や正確さでは機械には勝てませんしね

投稿: | 2014年5月10日 (土) 11時00分

>世の中には技術的進歩のこうした負の側面にばかり注目して「問題があるからさっさと規制すべきだ」

ドイツなんかでは父親が子供のDNA鑑定をして色々と発覚し社会問題となっていたので
国が父親が子供のDNA鑑定を母親の許可なしにすることを法律で禁止したそうですが
DNAシークエンサーってどんどん安価に速く鑑定できるようになってるので
近い将来にはそれこそガソリンを入れるより手軽になってる可能性もあるので
この法律の実効性ってどうなんですかね?

投稿: | 2014年5月10日 (土) 11時10分

大学で実験してた頃と比べても分子生物学の技術的な進歩はすごいです。
でも道具は変わってもやってることはそこまで変わってない気が。
何やってるかもわからなくなってきたらホントに時代に取り残された時ですね。

投稿: ぽん太 | 2014年5月10日 (土) 11時48分

>ドイツなんかでは父親が子供のDNA鑑定をして色々と発覚し社会問題となっていたので
国が父親が子供のDNA鑑定を母親の許可なしにすることを法律で禁止したそうですが

後ろ暗い母親が許可する筈ないやん!と、一瞬思ったんですが許可しなかった時点で真っ黒だからして別にいいのかw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年5月12日 (月) 10時58分

浮気の有無を知るだけなら高度な検査など不要で、全てが判る検査をすると言ってるだけで十分なのかもですな
一番安い補聴器はドンガラだけだが、それを付けていると皆が大きな声で話しかけてくれるというジョークを思い出しました

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年5月12日 (月) 16時14分

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